タイトル:忍者屋敷 4Fマスター:水貴透子

シナリオ形態: イベント
難易度: 易しい
参加人数: 17 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/05/22 07:50

●オープニング本文


さぁ、忍者屋敷4Fのオープンよ!

今回は普通のアトラクションにしてあるから、普通に楽しんでもらえるはずよ!

だから武器&スキルの使用は一切禁止!

もし一人でもルールを破る人がいたらチーム全員強制退場させるからね!

※※※

「さぁ! ニンジャヤシキの新しい階層のオープンよ!」

キルメリア・シュプール(gz0278)の母親・リリシアの友人であるマッドサイエンティスト、ジョセフィーヌ・ララが高らかに笑いながら叫んだ。

「今回は普通のアトラクションらしいけど、信用ならないわね」

「ふふふ、大丈夫よ! キメラもいないし、普通のちょっと危ないアトラクションでしかないわ!」

ちょっと危ない時点で『普通』ではない気がするけれど、その辺をつっこんではいけない。

「こんな怪しいモン作ってるから男が寄り付かないのよ」

「‥‥寄り付かないんじゃないわ! 誰も見向きしてくれないのよ!」

びしっと指さしながらジョセフィーヌが叫ぶのだが‥‥あまり意味が変わっていないように見えるのは気のせいだろうか。

「とにかく、ちゃんとお金払って入りなさいよ! じゃないといい加減私の会社兼研究所が潰れちゃうんだから!」

ジョセフィーヌの後ろには崖っぷちの経営状況に巻き込まれている研究員たちが「お願いします」と土下座をしそうな勢いでキリーに頼んでいた。

「ちなみにニンジャヤシキは5階まで作るつもりよ!」

「いい加減経費の無駄遣いはやめなさいよ」

盛大なため息を漏らしながらキリーが言葉を返したのだった。

―――

忍者屋敷のご案内

・忍者屋敷は日本の武家屋敷のような外見で作られている小さめのテーマパークです。
(武家屋敷のように作られていますが、ビルになっており今回は4Fの攻略です)
・今回も前回同様にオープン前のモニターとして皆様には参加していただきます。
(入場料1000Cは実際に消費されますのでご注意下さい)
(1000C未満の所持金だった場合、所持金全てが没収になります)
・今までの階層と違って、比較的安全ではありますが多少の危険が伴いますのでご注意ください。
(多少の危険は伴いますが、覚醒、スキル、武器の使用は一切禁止です)
(もし使用する者が現れた場合、参加者全員が強制退場となりますのでご注意ください)
・今回は4つの扉が用意されていて、その扉から入っていただく事になります。
※愛の扉→大石圭吾が同行します。
※羅の扉→七海鉄太が同行します。
※武の扉→鵺が同行します。
※勇の扉→キルメリア・シュプールが同行します。
・それぞれの班に人数制限はありません。
・今回も扉によって仕掛けが違ってきます。
(愛→羅→武→勇の順番で仕掛けの難易度が高くなっています)

●参加者一覧

/ UNKNOWN(ga4276) / 土方伊織(ga4771) / 百地・悠季(ga8270) / 香坂・光(ga8414) / リュドレイク(ga8720) / ユーリ・ヴェルトライゼン(ga8751) / 白虎(ga9191) / 仮染 勇輝(gb1239) / 篠崎 宗也(gb3875) / ハミル・ジャウザール(gb4773) / クレミア・ストレイカー(gb7450) / ガル・ゼーガイア(gc1478) / ラサ・ジェネシス(gc2273) / 和泉 恭也(gc3978) / ルーガ・バルハザード(gc8043) / エルレーン(gc8086) / 山魂(gc8935

●リプレイ本文

―― 忍者屋敷 4Fのオープン! ――

「はわわ、また忍者屋敷かくちょーしてるのです。ジョセフィーヌさんはじちょーしれーですよ‥‥」
 土方伊織(ga4771)は忍者屋敷のパンフレットを見て、がたがたと震えながら呟く。果たして彼の震えが怒りなのか嘆きなのか、それとも恐怖なのか彼自身にしかわからない。
「こんなもんばっかり作ってるからこいび‥‥」
 土方の言葉がピタリと止まる。なぜならかなり遠くにいるはずのジョセフィーヌがギロリと目を輝かせて睨んできたからだ。
(はわわ、僕は何もいってないですぅー! なにもいってないのですー!)
 サッと視線を逸らし、今回の忍者屋敷が無事に終わる事を切実に祈っていた。
「むしろ、これってもう屋敷じゃなくてビルになってるわよね‥‥」
 百地・悠季(ga8270)が忍者屋敷を見上げながら呟く。
(絶対、これの製作者は『忍者』を誤解してるわ‥‥)
 百地は心の中で呟き、パンフレットに目を通す。
「忍者屋敷も4Fにさしかかって、今回はどんな催しで来るのかしらね。一応『普通』って銘打ってるけど‥‥どこまで信用できるかもわからないし」
「っていうか、忍者屋敷はまだ作ってたんだねー。次で完成になるみたいだけど、どんな風になるか楽しみなのだ――って大石さんあぶな――いっ!」
 香坂・光(ga8414)が大石圭吾(gz0158)に向かって飛び蹴りを行う。
「ぐはっ! 登場早々なんのイジメ!?」
「‥‥ちっ、バグアめ!」
 先ほどまで大石が立っていた所にUNKNOWN(ga4276)が車で突っ込んできていた。
「ふぅ、なんとか助けられたかな?」
 香坂は予め予測していたのか、大石が轢かれないように飛び蹴りという方法で大石を救出していた。
(大石さんはUNKNOWNさんに気づいてないみたいだし、うん、大丈夫だよね)
 ふぅ、と香坂は安堵のため息を漏らしながら心の中で呟いたのだった。
「普通とちょっと危険が両立で語られるのが、この施設の不思議な所ですよね」
 リュドレイク(ga8720)が苦笑しながらパンフレットを見ている。
(世間一般では『ちょっと危険』な時点で『普通』とは言いませんし‥‥どうせ言っても無駄でしょうけど)
 リュドレイクは少し離れた所で高笑いをしているジョセフィーヌを見ながら疲れたようなため息を漏らした。
(まだ施設の中に入っていないのに疲れてしまうんだから不思議ですよねぇ)
 リュドレイクは心の中で呟き、再びパンフレットに視線を落とした。
「5階まで作るのか‥‥これがまだあと1階分‥‥大丈夫か、これ、普通の人が参加しても大丈夫なのか? それとも能力者専用?」
 ユーリ・ヴェルトライゼン(ga8751)が疑問を口にする。
(ま、まぁその辺は製作者も考えている――よな? それよりラサの恋人はどこだ?)
 彼が今回のアトラクションに参加したのはラサ・ジェネシス(gc2273)の恋人である鵺(gz0250)を見に来た――というのが一番の目的だったりしたりする。
(結構参加者がいるから見つけづらいな。まぁ、あとで会える‥‥かな?)
「こ、これが忍者屋敷か‥‥。何かビルっぽいな、っていうかビルだよな? 忍者屋敷っていうからにはもっとこう一等地にドーンとあるもんだと思ってたが、まぁ、気にしない方がいいか!」
 篠崎 宗也(gb3875)は「うん」と頷き、あまり深く考えないようにした。
「よう! 鉄太! この間は悪かったな!」
 七海 鉄太(gz0263)に言葉を投げかけると「ううん、俺もごめんなさい」と言葉を返してくる。
「お詫びに俺が漢を教えてやるぜ!」
「漢‥‥? あの人みたいな?」
「うっ!」
 鉄太が指差したのは褌一丁の大石だった。確かにあれも見ようによっては『漢』なのかもしれないが、篠崎の目指す『漢』とは少し違うタイプの『漢』だった。
「あ、あれは悪い漢の見本だからな? 真似するなよ? 絶対にするなよ!?」
「う、うん‥‥」
 篠崎の迫力に思わず鉄太は何度も頷いて言葉を返し、開場時間を待つ事にした。
「‥‥何でここに来ちゃったんでしょう、僕」
 がっくりと項垂れながら呟いているのはハミル・ジャウザール(gb4773)だった。
(普通という言葉が‥‥これほど似合わない施設も‥‥珍しいですよね‥‥というか、この施設の『普通』は‥‥普通じゃないんですよね‥‥えぇ、分かってます、わかってますけど‥‥)
 何でここにいるんだ、とハミルは自分の勢いとノリを心の底から激しく後悔していた。
「忍者屋敷か‥‥3階から結構経ってるわね。ある意味、長かったからその分危険も増しているのかしら‥‥」
 クレミア・ストレイカー(gb7450)が苦笑しながら呟く。時間と危険が比例しているとなれば、今回はかなり危険な忍者屋敷になっているはずだ。
「忍者屋敷4Fかぁ、これはもう城って言うんじゃないカナ? 我輩と鵺殿の愛の城もこんな風にできるといいナァ‥‥」
 一人乙女パワー炸裂のラサが「きゃあ、ハズカシイ!」と言いながらもじもじしている。
 しかし彼女の呟きを聞いていた能力者たちは(こんな危険満載の愛の城なんて嫌だよ)と全員でツッコミを入れていた――が、もちろんラサは気づいていない。
「うわー! すっごいねぇ! ルーガ! こんな大きな所で遊べるの!?」
 エルレーン(gc8086)がきゃあきゃあと騒ぎ、師匠であるルーガ・バルハザード(gc8043)に言葉を投げかけている。
「あぁ、今回は4Fの攻略らしいが、暇つぶしにはなるだろう」
 ルーガが言葉を返すと「楽しみだねー!」とエルレーンはルーガの腕に抱き着きながら楽しみを隠しきれないでいた。
(‥‥ちょっと危険? 依頼を受けるのは初めてだからコレを選んでみたんだけど‥‥大丈夫かな?)
 山魂(gc8935)はパンフレット、そして能力者たちの言葉を聞き、少しだけ不安になっていた。
「ふっふっふ、キリーお姉ちゃんと一緒に遊べるのだー!」
 白虎(ga9191)は拳を強く握りしめ、大きな声で叫ぶ。彼にとってキリーと遊べるのは久しぶりであり、かなりのワクワク気分でやってきていた。
 それがたとえジョセフィーヌの忍者屋敷だったとしても彼は満足なのだろう。
「うるさいわよ!」
「ぎゃふん!」
 登場数行でキルメリア・シュプール(gz0278)によって白虎は殴られてしまった。
(今回は4F‥‥そろそろシャレにならないレベルになっているような気がするし、本気で参加者――むしろキリーさんを守る盾になろう)
 仮染 勇輝(gb1239)はぐっと拳を握りしめながら心の中で呟いている。
「そう、たとえ何があろうとも‥‥キリーさんだけは守る!」
「抜け駆けさせるかぁぁぁぁ! キリーお姉ちゃんを守るのはボクだにゃああ!」
「よう、もやし! ドMを克服した天竜騎士がカッコよくお前を守るぜ!」
 仮染と白虎が言い争いをしている間に、ガル・ゼーガイア(gc1478)がキリーに言葉を投げかけていた。
「うるさいわ、この究極ドM!」
 ガスッとキリーがいつものようにガルを蹴ると‥‥彼は派手に吹っ飛び「イッテェー!」と大げさなくらいに痛がり始めた。
「見ろよ! この痛がりようを! これでも俺が気持ちよさそうにしてるっていうのか!」
「うるさいわよ。私がMだと言ったらアンタはMなのよ。その辺ちゃんと理解しなさいよ、この究極ドMヘタレ!」
「ち、ちくしょおおおお!」
 見ていて哀れなくらいに蔑まれているガルだが、彼を助けようとする者はいなかった。
 なぜなら、彼を助けた瞬間――キリーの標的スイッチが助けた者に変わるとわかっていたからだ。
「はいはい。それじゃみんなどのドアを開けるか決めたかしら? 決まってるならソノドアの前に行ってちょうだいね!」
 会場時間が近いのか、ジョセフィーヌがメガホンを持って叫び始めた。


―― いざ、忍者屋敷へ ――

 今回は4つの扉が解放されるらしく、能力者たちは自分が進むドアの前へと並び始める。
 愛→大石、香坂、リュドレイク、クレミア、ルーガ、エルレーン、山魂の7名。
 羅→鉄太、百地、篠崎、ハミルの4名。
 武→鵺、ラサ、ユーリの3名。
 勇→キリー、白虎、仮染、ガル、土方の5名。
「な、なんでこんなことに‥‥」
 クレミアはがっくりと項垂れ、怒りに手を震わせている。彼女は無難に鉄太の所に行こうとしていたのだが、なぜか大石から声をかけられてしまい、断る事もできずに『愛』の扉に行く事になってしまったのだ。
(まぁ、私も前から『褌』に興味はあったから別にいいんだけど‥‥)

「それじゃ始めるわよ! 前もって言ってた通り、ルール違反は強制退場だからね!」
 ジョセフィーヌの言葉が響き渡った後、能力者たちはそれぞれ忍者屋敷内部へと入って行ったのだった。
「さて、今回の実験では良いデータが‥‥ってあら? あなたは入らないの?」
 ジョセフィーヌは忍者屋敷に入らず、ビールを飲んでいるUNKNOWNに言葉を投げかける。
「いや、気にしないでくれ」
「いや、別に気にしてないけど入っても入らなくても入場料はもらうからね」
 ジョセフィーヌはしっかりとUNKNOWNに入場料を請求した後、モニター室へと向かい始めたのだった。

※愛の部屋※
「ねぇ、大石さん! 手を繋いでもいいかな?」
 香坂がにっこりと微笑みながら大石へと言葉を投げかける。
「なっ! お、俺と手を繋ぐだとぅ! お、お前はそれでも女か! 破廉恥な!」
(自分はもっと破廉恥な姿してるくせに、よく言うよ‥‥)
 香坂は心の中でビシッとツッコミをいれつつ、大石に手を差し出した。
「‥‥相変わらず、気合いが入っていて何よりだ、大石殿――しかし、貴様まさかリア充か?」
 ゴゴゴゴ、と黒いオーラを出しながらルーガが大石へと問いかけるが「違うよ」と香坂が即答で言葉を返してくる。
「ね、ねぇ‥‥そんな恰好で寒くないの?」
 エルレーンが恐る恐る大石に問い掛けると「全然寒くないぞう、はっはっは☆」と無駄に爽やかな笑顔をしながらエルレーンに言葉を返した。
「これ、何か特別な防具なの? どうなってるの? ねぇ、見せてぇ!」
 エルレーンが目を輝かせながら、大石の褌を引っ張り始める。
 ちなみに彼女は大石のすっぽんぽんが見たいわけではない。純粋に大石の褌が特別な防具なのかもしれないと思いながら引っ張っているのだ。
「や、やめろおお、これは俺の褌だ! 誰にもやらんぞぉぉぉ!」
「俺、完璧に来る場所間違えた‥‥」
 ぎゃあぎゃあと騒ぐ大石とエルレーンを見ながら山魂がポツリと呟く。
「でも、まだこの辺は安心だと思いますよ。鉄太くんや鵺さんがいるチームなんて‥‥考えるだけでも恐ろしいです」
 山魂の呟きを聞いていたリュドレイクが苦笑しながら言葉を返す。
 ちなみにリュドレイクは今までの忍者屋敷経験から学習しており、山魂と共に最後尾にいた。
(俺だって学習しましたよ。後ろの方が安全だという事を‥‥。どうせ比較程度の問題ですけど、少しでも被害を減らしたいですからね)
「アナータ タチ アイ ヲ シンジマースカ?」
 突然金髪の顎割れ神父が現れ、能力者たちに質問をしてくる。
「あ、愛? 確かにここは愛の部屋ですけど‥‥」
 リュドレイクは苦笑しながら(嫌な予感しかしない)と心の中で言葉をつけたした。
「信じなくはない。しかし私に愛やら春が来ない以上、信じるはずがない!」
 どーん、とルーガが言葉を返すと‥‥。
「オーゥ、アリエマセーン ジゴク ヘ オチナサーイ」
 顎割れ神父はロープをクイッと引っ張り、能力者たちは『地獄へ落ちろ』という言葉から『落とし穴』を連想して、床への警戒を強めた。
 しかし――。
「アホゥ ガ シタ ヲ ミルゥ」
――ゴゴゴゴゴゴゴン!!!!
 能力者の人数分だけ、金タライが落ちてきて下ばかり見ていた能力者たちは全員金タライの餌食となってしまった。
「アハハハハ バチアータリメェ」
 顎割れ神父は楽しそうにどこかへと行き、能力者たちはなぜかイラッとした気持ちを抱えたまま先に進む事になった。
「あああああ! み、みんな! 大石さんを見ちゃダメ!」
 香坂が顔を赤くしながら能力者たちへと言葉を投げかける。
「え?」
 しかし、見るなと言われると見てしまうのが人間の本能というもの――。
「「「「「おーぅ‥‥」」」」」
 香坂以外の能力者たちの視線の先にいたのは――香坂が褌を引っ張ったせいか、その、ねぇ? なんていうか、ほら、ノリでわかるだろ? 言わせんなよ、すっぽんぽんだよ! な状況の大石がドオーンと立っていた。
「何で仁王立ち!?」
「きゃああああ!」
「大石殿! 見苦しい物をエルレーンに見せるな!」
「ありえないわ、これも褌に興味を持った私の罪だっていうの!?」
 リュドレイク、エルレーン、ルーガ、クレミアはそれぞれ大石に怒りの言葉を投げかける。
(あちゃぁ、すべてに置いて失敗しちゃったよ‥‥)
 香坂が大石に手を繋ごうと言い始めたのも自分への被害をすべて大石に押し付けるため、しかしその矢先に罠が仕掛けられていて彼女は大石の褌を引っ張ってしまったのだ。
 一生懸命記憶の中から大石のイヤーンな姿を忘れようとする能力者たちの姿をモニター室から見ていたジョセフィーヌはげらげらと笑っていたのだった。

※羅の部屋※
「うわぁ、なんかボタンがいっぱいあるね!」
 羅の部屋に入ると『さぁ、私を押して!』『いや、俺の方を押すんだ!』『いやいや、拙者を――!』とでも言いたいのか、視界のいたる所にボタンが見え隠れしている。
 今すぐにでもボタン押したい衝動に駆られている鉄太を見て、百地とハミルは(危険すぎる‥‥!)と心の中で叫んでいた。
「鉄太! まずは誰よりも先頭に立ってみろ! 頼もしさがアップするぜ! それから罠を恐れるなよ!? 恐れたら試合終了だぜ――ってぇ!」
「嘘を教えないように!」
 篠崎の『漢理論』を聞き、百地が背中をバシっと叩く。
「僕も同じ意見です‥‥ただでさえ七海さんが本気になったら‥‥こっちが危なさそうですし‥‥」
 ハミルと百地の言葉を聞き「何でだよ!」と篠崎が背中をさすりながら言葉を返した。
「何でみんな否定的なんだ! 漢ってこういうモンだろ!? それとも俺の漢論が間違ってるのか!?」
「「間違っているよ」」
「えぇっ!?」
 言葉をハモらせながら百地とハミルが言葉を返し、篠崎は「そ、そんな‥‥」と膝をついて落ち込み始めた。
「へ、へへへ‥‥漢を教えるはずが逆に否定されちまった‥‥褌男もきっとこういう扱いを受けてたんだろうな‥‥そっか、俺、褌男と同レベルかぁ‥‥」
 褌男と同レベル、その事がどれだけ彼の心を傷つけただろう。
 きっと言われた事のある人にしかわからない傷の深さなんだろう。
「大体そんな無茶を言って、鉄太があんな風にボタンを連打したらどうするの!」
「‥‥あんな風に?」
「そうよ、あんな、風‥‥」
 ギギギ、と軋んだロボットのように鉄太の方を見ると、これ以上ないくらい楽しそうにボタンを連打連打連打連打もうやめてぇ! と叫びたくなるくらいに連打していた。
「あはははっ、おもし――はぶっ!」
 壁から出てきたロケットパンチを受け、鉄太がぎゃあぎゃあと泣き叫び始める。
「あぁ、もう! お弁当で釣って迂闊な事をさせないようにって思ってたのに、変な漢理論なんか言うから!」
「えぇ! 俺のせい!?」
「ちょっ、み、目の前から大量に水が来るんですけどおおお!」
 ハミルの言葉に百地と篠崎が視線を前に移すと‥‥。
「あはははははははっ!」
「うそぉ!?」
 水に流されながらも楽しそうな鉄太が視界に入り、その後3人も水に飲まれ、スタート地点の扉で強く背中を打つ羽目になってしまった。
「ぐっ、い、いてぇ‥‥」
「お弁当は死守したわよ‥‥」
「すげぇな! あれでどうやって死守したんだ!?」
(もしかしたら‥‥水関連の事があるかと思って、レインスーツ着てきて正解でした‥‥)
 着替え等は持ってきておらず、ハミル以外の能力者たちはびっしょりと濡れたまま先を進む事になった。
「鉄太、ここにあなたのお弁当があるわ。他のみんなの分はジョセフィーヌに預かって貰ってるけど、あなたの分だけここにあるわ」
 鉄太の前にお弁当箱を差し出し、百地は言葉を続ける。
「もしあなたがさっきみたいにボタンを押しまくって罠を発動させたりしたら、このお弁当はなくなるわ。終わった後にみんなでお弁当タイムなのに、あなただけ食べられなくなるの」
「えぇ、そんなのいやだよ‥‥」
「だったら、ボタンを押さない事! わかったわね?」
 鉄太に怪しそうな物に近づかないことと言っても『怪しそうだと思わなかった』と言って罠を発動するに違いない。
 そう考えた百地は鉄太をボタンなどに絶対近づけさせない方法を考えた。
「僕も終わった後にみんなでお茶でもと‥‥思っていたので、ハーブティーを持ってきています‥‥」
「俺は、えぇと、俺は‥‥みんなで楽しくご飯とかお茶飲みたいな!」
 篠崎は何も用意してなかったので、自分がしたい事をとりあえず告げてみた。
「う〜ん、ボタンは押したいけど‥‥お弁当がなくなっちゃうなら、俺、押さない!」
 満面の笑みで言う鉄太だったが、何せ中身が子供の彼が言う事だ。
(常に不測の事態を想定して動いた方がいいでしょうね‥‥)
 ハミルは音の違う所、木目が不自然に途切れている所などを特に注意しながら先へと進む。
 鉄太以外の能力者たちが気を張り詰めていたせいか、それ以上の被害に遭う事はなかったが、気を張り詰めすぎて出てくる頃には何故かみんな顔色が悪かった。

※武の部屋※
「鵺殿、お弁当を作ってきたのダ!」
「あらぁ、かわいいおにぎり! アタシ、おにぎりって大好きなのよ!」
「‥‥‥‥」
 鵺と一緒に行く武の部屋はラサと鵺が初っ端からラブ全開だった。
(別に邪魔するつもりはなかったけど、ここまで俺眼中に無しだと少し悲しい気がする)
 ユーリも予め渡されていたおにぎりをもぐもぐと食べながら心の中で呟く。
(それに何で鵺は、くのいちの衣装なんか着ているんだ?)
 なぜかくのいち衣装できゃあきゃあと騒ぐ鵺に、ユーリの中の鵺は『少し、いやかなり変わった人』という印象しか持てない。
「あらぁ、何でそんなに離れてるの? こっち来て一緒に話しましょうよぅ」
「え、いや別に俺は‥‥」
 断ろうとしたけど、しっかりと腕を掴まれてしまい、ユーリは逃げるタイミングを失っていた。
「ヤダァ、アタシったら両手に花〜♪」
(え、俺も花扱い!? 少し悲しく思った罰なのか、これは‥‥)
 真ん中に鵺、鵺の右側にラサ、鵺の左側にユーリ。真ん中と右はきゃっきゃウフフ状態なのだが、左だけは顔面蒼白である。
「あら、何でそんなに視線を逸らすの? アタシ、悲しくなるじゃない!」
「いや、そっちもそんなに近づかれると俺が困るっていうか‥‥」
 必死に顔を寄せてくる鵺から離れつつ、ユーリは「ちゃんと足元とか見てくれな?」と言葉を付け足した。
「それにしても、さっきから何も発動する気配がないな‥‥。モニターなんだから少しは作動させてみないと不味いよな?」
「む、確かにそうですネ。このまま何も作動しなかったらジョセフィーヌさんに怒られそうダ」
 ユーリの言葉にラサが頷き「そうねぇ、危険な物じゃないといいんだけど」と鵺も呟く。
 危険度としては3番目だから、他の部屋より多少危険な仕掛けになっているんじゃないだろうか、とユーリは心の中で思いながらあからさまに『押して』と己の存在を誇張しているボタンに手をかけた。
「ラサ、鵺、頑張って避けろよー。俺も頑張って避けるから」
 えいっとユーリがボタンを押すと――――ガコン、と床が動き始めた。
「えっ、避けるどころか床が全部動いてるんだけど!?」
 しかもランニングマシーンのように目的地から離れていくようになっている。
「ちょっと、これ何!? きゃああああああ――!」
「鵺殿――――ッ!」
 どすん、と転び、鵺は瞬く間にラサとユーリから引き離されてしまう。
「ボタン押しても元に戻らない‥‥つまり、この状態でゴールを目指せと‥‥!? 覚醒無しだとかなりキツそうなんだが‥‥」
 ユーリが苦笑しながら呟き、引き離された鵺の所へラサと共に戻る。
「鵺殿! 鵺殿! うしろ、うしろ!」
 ラサが慌てて、鵺の背後を指差す。
「‥‥ん? きゃあああああっ! ちょ、槍!?」
 ドアや壁から槍が突きだし始め、鵺だけではなくラサとユーリもその仕掛けには驚いた。
「一定間隔で槍が突きでてくるのか‥‥」
「こ、これ‥‥真面目に危なそうなんですケド‥‥とにかく鵺殿走って走って! そんな所にいたら我輩も庇えない! 何とかここまで追い付いて!」
「死んでたまりますかぁぁぁぁっ!」
 鵺はダダダダと必死に走ってラサとユーリの所まで戻る。
「とにかくこれ以上、罠を増やすとこっちの命にも関わりそうだから無視の方向で行くよ?」
「それでお願いシマス」
「あ、アタシも‥‥それ、には大賛成、よ‥‥」
 普段から依頼で役に立っていないせいか、ユーリやラサに比べて体力も何もかもが劣る鵺には、この罠ですらキツいようだ。
「とりあえずがんばれしか言えない。終わったら打ち上げ用にレモンクリームのパイと苺のロールケーキを作って持ってきてあるから、お茶会でもしよう」
「おお、素晴らしいですネ! 鵺殿、頑張りましょウ!」
 せめて床が自動になっていなければ鵺を背負えたのに、とラサは心の中で呟く。
 それからラサ、鵺、ユーリは必死に襲い来る槍から逃げながら、ゴールへと向かって行ったのだった。

※勇の部屋※
「何でキリーお姉ちゃんの所が一番高難易度ッ!? しかも毎度おなじみのメンバーではないかっ!」
 うおおお、と叫んでいるのは白虎。
「それにしても扉が『愛羅武勇』ね‥‥いまいちセンスが感じられないというか、なんというか‥‥」
 仮染が苦笑しながら言うと「センスなくて悪かったわね! 後で覚えてなさい!」とスピーカーからジョセフィーヌの叫び声が聞こえてくる。
(‥‥俺、大丈夫かな)
 少し心配になった仮染だが、まずはこの忍者屋敷を乗り越えなければならない。
(はぁ、な、なんで僕‥‥(物理的に)でんじゃらすな恋の残念関係に巻き込まれているのか、すっごく理不尽を感じるのですぅ‥‥)
 僕の平穏をかえしてー、と心の中で切実な願いを叫ぶ土方だが、現実は時として無情なものであり、彼の望む平穏は決して取り戻させない――いや、取り戻せない。
(せ、せめて僕への被害が少なくなるように残念な三人にキリーさんを丸投げしなくちゃなのですぅ)
「もやし、こっちに来た方がいいぞ? 落とし穴とか電流とかお約束がありそうだし‥‥」
 ガルがキリーへ言葉を投げかけると‥‥「させるかぁっ!」と白虎がガルとキリーの間に割って入る。
「それじゃ、俺はこっちに‥‥」
 すかさず仮染もキリーの隣へと立ち、キリーの両脇は白虎と仮染に取られてしまった。
「何でだよ! これじゃもやしの騎士である俺の立場がねぇだろうが!」
「え? あんたに立場なんてあったの? 初耳だわ」
 ガルの言葉に、もやしがきょとんとした顔で言葉を返す。
「うおおおおお‥‥」
 ちなみに今の言葉はキリーの毒舌ではない。心からの疑問を口にしただけなのである。
(はわわ、まだ罠も作動してないのにガルさんが戦闘不能なのですぅ)
「キリーお姉ちゃん! 罠の事は僕に、僕に! 安心して任せてくれていいのです!」
 白虎が胸を張りながら罠の作動スイッチを押す。ちなみに白虎が立っているのは明らかに罠があるであろうと見える色違いの床の上。
(これで罠を作動して、僕が引っかかればキリーお姉ちゃんに被害はない! お姉ちゃんを守った僕の株もあがる!)
 ぐ、と拳を強く握りしめながら白虎が心の中で呟いたのだが――。
「きゃあああっ!」
 キリーの立っている床から風が巻き起こり、彼女のスカートがぶわっと‥‥。
 しかもキリーは白虎が持参してきた服を着て、くのいち姿になっている。ちなみにこの服は白虎の趣味なのか、かなりのミニスカである。
「「「「ッ!?」」」」
(な、何であそこが作動するのにゃー!?)
(‥‥‥‥ピンク)
(も、もやしの‥‥ぱ、ぱんつ‥‥!)
(はわわわ、バナナ以外でもこんな事が起きるなんて聞いてないですぅ!)
 上から白虎、仮染、ガル、土方の心の叫びである。
 罠の種類は他の部屋より易しいものかもしれないが、この部屋の主はキリーであり、一緒に行動するのはお馴染みのメンバーである。
 はっきり言って精神的にダメージが大きいのはこの部屋に入ってしまった能力者たちなのかもしれない。
「‥‥‥‥白虎、ゆーき、ガル、わんこ――そこに座りなさい」
 それから1時間半、キリーのびんた付きで説教を食らう4人の姿をカメラから見てジョセフィーヌは笑いが止まらないでいた。
「ぼ、ボスキャラなんていないのかなー!」
 両頬を腫れさせながら、白虎が言うが彼以外の能力者は(これ以上ボスを増やさないでくれ)とキリーを見ながら心の中で言葉を返していた。
「うわっ!」
 罠が作動し、仮染が上から落ちてきた包丁を避けた――が、躓いてしまいキリーに抱き着く事になってしまう。
「き、きさまー! その場所を今すぐ代われ!」
「うおおお! 俺だってもやしに抱き着きてぇ!」
 白虎とガルは己の願望を口にして、仮染へと詰め寄る。
「そ、その! 別にやましい気持ちはなくて! でも、良い匂いがしたなー‥‥ハッ」

―― しばらく お待ちください ――

「‥‥な、何で僕までぶたれているのですかぁ」
 更に腫れた頬を押さえながら、土方が涙声で呟く。ちなみに今の出来事の中に土方はまったく関わっていなかったはずなのに、キリーの暴力は彼にまで及んだ。
(もしかして、難易度が高いってまおー様がいるからなんじゃ‥‥)
「くっ、俺は別に喜んでいない。ぶたれて喜ぶ変態じゃないんだ!」
 しかし、キリーに構ってもらえるという事が嬉しいのかガルの表情は笑顔のままだ。
(やっぱり、こいつ変態なんだわ‥‥)
 にやにやとしているガルを見ながら、キリーは心の中で呟いていた。
「‥‥何かビリビリしてるように見えるんですけど」
「奇遇だにゃ、ボクにもそう見えるにゃ」
「同じく、僕にも見えますぅ‥‥」
 ゴール目前で電流が流れているであろう場所を見つけ、電流を止めるスイッチは電流の向こう側にある。
「‥‥仕方ないわね、ここは私が行くしか「待て! もやしが行くなら俺がい「じゃあ、さっさと行って来なさいよ」――うわぁぁぁぁぁぁっ」
 押してダメなら引いてみる作戦に出たのか、キリーが呟いた――しかし、ガルが行くと言うので快くその役目を彼に譲ったのだ。
 哀れな彼はキリーにビシバシされ、電流でビリビリして、踏んだり蹴ったりの結果になってしまっている。
 その後、勇のチームは無事にゴールしたのだが、頬を腫らし、想像以上にぼろぼろな能力者達を見て、他の部屋に入った能力者達は(よほど罠がキツかったんだな)と思っていたのだとか‥‥。
(愛羅武勇――)
 ゴールをした後、仮染は『愛羅武勇』の後に『輝』の文字を書き足し、ほっこりと和んでいた。


―― 忍者屋敷、お疲れ様でした ――

「モニターとして参加してくれて、ありがとう! 良いデータを取る事が出来たわ!」
 忍者屋敷攻略の後、ジョセフィーヌが労いの言葉を能力者たちに投げかける。
「みんな、必要以上に気を張って疲れたんじゃない? お弁当を用意してあるからみんなで食べましょう」
 百地はチキンライス、オムレツ、ソーセージ、から揚げ、温野菜サラダ、コーンポタージュなど人数分を用意してきており、それらを能力者たちに渡していく。
「あ、俺もサンドイッチを持ってきたですけど‥‥折角ですし、研究員の方たちもお茶会に参加しませんか?」
 リュドレイクが研究員たちを誘うと、研究員たちは嬉しそうに近寄ってきて「ありがとうございます! 今日初めての飯ッス!」と涙ながらにサンドイッチを食べ始めた。
「俺はデザートになるかな? レモンクリームのパイと苺のロールケーキ。お弁当を食べた後にでもどうぞ」
 ユーリが差し出すと「お菓子ならボクも持ってきたのです!」と白虎も子供が喜びそうなものからつまみになりそうな物まで、テーブルの上にどさっと置いた。
「僕は‥‥お茶を‥‥。カモミールやミント、タイム‥‥レモングラス、ローズヒップ‥‥他にも色々とありますので‥‥お好みでどうぞ‥‥」
 ハミルは得意のハーブティーを能力者たちに振る舞う。
「あの‥‥研究員の方たちもどうぞ‥‥」
 ハミルがハーブティーの入ったポットを差し出すと、研究員たちは「所長より優しいっす!」と涙ながらに言葉を返し、飲み始める。
(‥‥飲まず食わずだったんでしょうか‥‥)
「キリー、抹茶のチーズケーキを持ってきたけど食べない?」
 自慢の巨乳でキリーの背後からぎゅっとすると「何、人を乳ではさんでんのよ!」と真っ赤になりながらキリーが反論する。
「鵺殿、鵺殿、はい、あ〜ん♪」
「ありがとう! ラサちゃん!」
 ラサが差し出したのをぱくりと食べながら鵺が「美味しいわね」と言葉を返す。
「うんうん、やはりデートは忍者屋敷に限るナ」
 ラサが頷きながら呟くが(なんかちがう)と能力者たち全員から心の中でツッコミを受けている事にラサは気づいていない。
「あれ? ここに何か書いてある‥‥愛羅武勇――輝?」
 エルレーンがこっそりとドアにらくがきされているのを見つけ、かくりと首を傾げる。
「あ、アイラブ勇輝だとぉぉぉっ!」
 見つけられて、慌てて仮染は消そうとしたが――さっき彼が使ってしまったのは油性マジックだ。簡単に消せるものではない。
「それなら俺だってらくがきしてやるぜ! アイラブガル!」
「語呂悪ッ!」
「やれやれ。結局ああなるのね‥‥」
 百地はため息を吐きながら、今日も平和だな‥‥と言葉を付け足したのだった。


END