タイトル:カマの花束マスター:水貴透子

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/05/07 06:25

●オープニング本文


鵺(gz0250)には兄弟が3人いる。

その中でも2人は兄弟という枠から外してはあるけれど、末妹のつばめだけは可愛がっていた。

※※※

「迷ってしまいました‥‥」

しゅん、と俯き、泣きそうな声で呟いているのは鵺の妹でもある『里中 つばめ』という少女だった。

彼女は鵺に会おうとして、こっそりと家を出てきたのだが‥‥。

運の悪い事にキメラが現れている町の中で迷子になってしまっていた。

(どうしよう)

どうすればいいのか聞こうとしたけれど、町の住人は逃げ回る事に必死で誰もつばめの言葉に耳を貸そうとはしなかった。

(みんなについていけば逃げられるけど‥‥)

だけど、つばめはこの町に用事があって、住人と一緒に逃げるわけにはいかなかったのだ。

(でも、町の人がみんな逃げちゃったら用事も終わらせられない‥‥)

そう思い、彼女はやはり住人と一緒に逃げよう――と思い、後ろを振り返ったのだが‥‥。

「あ、あれ?」

すでに住人は逃げていて、誰もつばめの周りには残っていなかった。

(ど、どうしましょう。このままではどこに逃げればいいのかわからないです‥‥)

おろおろとしながら心の中で呟いていると、少し離れた場所から雄叫びのようなものが聞こえ、つばめはびくっと肩を震わせた。

※※※

「あれ? どこに行くんだ?」

鼻歌を歌いながら、ボストンバッグを持つ鵺を見かけた知人が話しかけると‥‥。

「ヤダ、デートのお誘い!? 困っちゃうわぁ♪」

「誘ってねーし」

「アタシ、ちょっと今から行かなくちゃいけない場所があるのよぅ。だからデートは今度しましょう!」

「人の話を聞けよ。誘ってねぇっつってんだろ」

だが、この男性能力者も予想しなかった事だろう。

これより数時間後、鵺よりSOSの電話が能力者達に向けてかけられるという事に――。

●参加者一覧

辰巳 空(ga4698
20歳・♂・PN
鐘依 透(ga6282
22歳・♂・PN
佐倉・拓人(ga9970
23歳・♂・ER
エイミー・H・メイヤー(gb5994
18歳・♀・AA
ラサ・ジェネシス(gc2273
16歳・♀・JG
セラ(gc2672
10歳・♀・GD
鳳 勇(gc4096
24歳・♂・GD
入間 来栖(gc8854
13歳・♀・ER

●リプレイ本文

―― 鵺からのSOS ――

「‥‥我々、傭兵もまだ信用がないものですね」
 辰巳 空(ga4698)は小さくため息を吐きながら言葉を続けた。
「ここは適切に救出して、キメラを退治して役に立つ事を示すしかないですけど‥‥うまく行くかと‥‥」
 今回、住人からではなく同じ傭兵である鵺(gz0250)からのSOSが来た事を気にしているのだろう。
「どういう事からこんな状況になったのか分かりませんけど‥‥キメラがいる町‥‥」
 鐘依 透(ga6282)が表情に影を落とし、俯きながら小さく呟いた。他の能力者達は彼について知らない事がある。先日、彼は助けたいと思っていた人を助けられない結果に終わり、それが彼の心に傷をつけていた。
(絶対に、絶対に助ける‥‥)
 ぐ、と拳を強く握りしめながら心の中で強く決意していた。
(人を助けたいと思うのは当然のこと、それに鵺さんは友人です。たとえどんなに時間がかかったとしても、助けるまで諦めません)
 佐倉・拓人(ga9970)は心の中で呟く。
「‥‥鵺嬢、つばめ嬢、どうか無事で。今助けに行くよ」
 エイミー・H・メイヤー(gb5994)が静かに呟く。一見すると冷静にしている彼女だったが、鵺とつばめの二人に面識がある彼女が心穏やかでいられるはずがない。
「鵺殿、つばめ殿‥‥」
 ラサ・ジェネシス(gc2273)は手を強く握りしめながら絞り出すような声で呟いた。恋人である鵺、そしてその鵺が大事にしている妹――その二人が危険に曝されていると知り、一番穏やかでいられないのは彼女、ラサだろう。
「ラサさん! セラに任せておけばばっちり安心! 姉妹(?)の感動の再会を邪魔する悪いくまさんはセラがどっかーんってするです!」
 胸を張りながらセラ(gc2672)がラサに言葉を投げかける。
「迷える少女の探索とクマキメラ退治か‥‥しかし、鵺という能力者――いや、何でもない。気にしたら負けだろう」
 うん、と小さく頷きながら鳳 勇(gc4096)が煙草をふかしながら呟く。
「ラサさんの恋人さんの妹さんがピンチですっ! かならずつばめさんを助けます!」
 入間 来栖(gc8854)が真剣な表情で叫んだ。しかし、彼女は知らない。ラサの恋人である鵺自身もピンチであるという事を。
「でも、い、勢いで来ちゃいましたけどラサさんの恋人さんってどんな方なんでしょうか‥‥? きっとカッコイイ人なんでしょうねぇ」
 ほわ、とまるで花でも咲くかのようなふんわりとした雰囲気で入間が呟く。
「‥‥詳しい事は話していないのかい?」
「え、イヤ、普通に話しただけデス」
 エイミーが苦笑しながらラサに問い掛けると、ラサも苦笑しながら言葉を返す。
(きっと鵺さんを知ったら、卒倒しちゃうんじゃないでしょうか‥‥)
 それまで黙っていた佐倉が心の中でぼそりと呟く。恐らくそれほどまでに入間が抱いている鵺のイメージと現実の鵺はかけ離れているだろうから。
「それじゃ、早く向かいましょう。時間が経てば経つほど、状況は困難になるんですから‥‥」
 鐘依が呟き、少し気を緩めていた能力者も気を引き締め、鵺とつばめの救出を行うために高速艇へと乗り込んだのだった。


―― キメラ捜索開始 ――

「見事に男女で別れましたね‥‥」
 辰巳が苦笑する。
 今回の捜索地は町の中、大して広くはないけれど効率をあげるために二班編成にしてキメラ、そして救助者を捜索する作戦を取っていた。
 A班・ラサ、エイミー、入間、セラの4名。
 B班・佐倉、鐘依、鳳、辰巳の4名。
「‥‥大丈夫カナ、B班」
 もしB班が鵺を見つけたら、と思うと鵺を知る女性陣は苦笑するしかなかった。
「出来るならA班で見つけたい所だけど‥‥こればかりは分からないからね」
 エイミーも呟き、能力者たちはそれぞれ班で行動を開始した。

※A班※
「そういえば‥‥鵺殿と初めて会ったのもこんな依頼だったナァ。それがいまじゃ‥‥」
 きゃー! と顔を赤くしながらラサが照れながら叫ぶ――車を運転しながら。
「‥‥ラサ嬢、今は運転に集中してくれ。これでは救助する我々が事故でたどり着けなくなるよ」
 シートベルトにしっかりと掴まりながら、エイミーが苦笑交じりに呟く。
「め、目が‥‥ぐるぐるしてきたです」
 入間がくらくらとした表情で呟き「す、スミマセン!」とラサはぴしっと運転に集中する事にする。
「だ、大丈夫! セラサーチ☆ セラに任せておけばバッチリしっかり見つけちゃうんだから!」
 捜索の際、セラがスキルを使用しながら呟く。
「反応があったら、すぐに行って下サイ!」
 ラサが運転しながら、ちらりと視線をセラに向けて言葉を投げかけ、再び前へと視線を戻した。
「はやく‥‥はやく見つけないと‥‥」
 入間もスキルを使用し、自らの運を上昇させながら呟いた。
「見つけたよ!」
 ぴくりとセラが反応して、その対象がいる場所へと指示をする。
「鵺殿――――ッ!」
「ちょっと待って、でもこれは‥‥」
 やや暴走気味のラサにセラが言葉を投げかけるが、今の彼女には届いていないようだ。
「‥‥‥‥」
 確かにセラが指示した先に探していた物はいた。
 しかし、探していた物は探していた物でも――キメラの方だった。
「‥‥お、おおきい‥‥」
「何故そこにお前がいるノダ。流れ的に鵺殿かつばめ殿だろう!」
 後にエイミーは語る。この時ほどがっくりしたラサは見た事がなかった――と。

※B班※

「これは、キメラの足跡ですかね」
 地面に残された足跡を見ながら冷静に分析していく。
「足跡から分析すると、向かったのはあちらですね」
 足跡を見た辰巳が再び車に乗りながら佐倉へ言葉を投げかける。
「ちょっとこの建物の上から見てくるよ」
「分かりました。それでは、この付近を回ってきますから」
「了解」
 鐘依は言葉を残し、佐倉が運転する車から降りてスキルを使用しながらひらりとした動きで屋根へと上る。
(早く見つけないと‥‥)
 じわり、と双眼鏡で周りを見る鐘依の手に嫌な汗が滲んでくる。
「鵺さん! 聞こえていたら返事をしてください! 鵺さーん!」
 佐倉はキメラに見つかる事も構わず、大きな声で叫んだ。こちらが呼びかける事によって鵺やつばめが出てきてくれれば問題ない。
 もしキメラが現れたとしても、その間、鵺やつばめが危険に曝される事はないから問題ない。
(むしろ、怪我をしていないのか――しているとすれば、どれくらいなのか‥‥)
 鵺さん、と呼びながら佐倉は心の中で呟く。
「あれ? 妹さんは鵺さんの事を『鵺』って呼ぶって知ってましたっけ?」
 かくりと首を傾げながら考えてみるが、どうだったか思い出す事が出来ない。
「仕方ありません。鵺さんからグーパンチを貰う覚悟で本名の方を呼ばせて頂きましょう。
 妹さんのためです、仕方ないんです。竜三さーーん!」
 仕方ないと何度も呟き、佐倉は鵺ではなく『竜三』と呼ぶ事にした。
「目的のつばめ嬢は何処にいるのか、それと兄の鵺氏だったか。まぁ、キメラは音を忍ばせたりしないだろうから、先にそっちを始末してしまってもいいと思うんだがな」
「そうですね、ですが鵺さんと妹さんがどんな状況になっているか分からないので‥‥やはり見つけられるなら見つけた方がいいです」
 鳳の言葉に佐倉が言葉を返す。
 周辺を一回りした後、鐘依の所に戻ると「見つけました」と鐘依が車に乗り込みながら話しかけてきた。
「少し先に行った所に廃屋があります。そこで女の子を見つけました」
「女の子――つばめ嬢か?」
「分かりませんけど、可能性は高いと思いますよ」
 鳳と鐘依の言葉を聞き、佐倉は「ナビしてください」と言い、車の運転を再開した。
 その時、A班からキメラを発見したという通信が入った。


―― 戦闘、そして保護 ――

「今、連絡したらB班が鵺嬢とつばめ嬢を発見したみたいだよ。手当てをしたらすぐに来るみたいだから、それまで何とかキメラを逃がさないようにしないといけないね」
 エイミーが呟き、ラサ、入間、セラ――いや、今はアイリスと入れ替わっている。とにかくエイミーを除く3名は頷いて答えて見せた。

「お、おねにー様は大丈夫でしょうか‥‥? つばめを庇って怪我しちゃって‥‥」
 B班がおろおろとするつばめを保護すると、彼女は能力者たちに泣きついてきた。
 どうやら、鵺はキメラからつばめを庇い、負傷したらしい。
「大丈夫ですよ。少し出血が多いようですけど命に別状はありません」
 辰巳がつばめを安心させるように言い、佐倉が持ってきていた救急セットで治療を行う。傷は派手に見えるけれど、辰巳の言う通り命に別状はなさそうだ。
(良かった‥‥)
 その様子を見て、誰よりも安心していたのは鐘依であろう。それに自分の恋人と同じ名前のつばめが怪我をしていなくて、本当に良かったと心の中で呟く。
 たとえ、初対面であろうと恋人と同じ名前の人間が傷つくのは見ていられないからだろう。
「とりあえず、A班の所に向かおう。大丈夫だとは思うが、万が一の可能性もある」
 鳳の言葉に「それじゃあ、皆さんで向かって下さい」と佐倉が他の3名に言葉を投げかけた。
「鵺さんの治療が終わった後、車に乗せてから向かいますから」
「分かった」
 鳳が頷き、つばめ、鵺、佐倉を残して3人は戦闘が行われている場所へと向かい始める。
「そんなに離れていない場所ですね。お互いの班でキメラ、救助者を見つける事が出来たのは幸いでしょうか」
「そうですね、お互いの班が少しでも遅れていたら――と思うとゾッとします」
 辰巳の言葉に鐘依が答える。
「どうやらB班も来たみたいだ」
「いた」
 鳳が呟き、前方には熊型キメラとの戦闘を行うA班の姿があった。


 ヒットアンドアウェイを行っていたエイミーが呟く。
「攻撃しますっ!」
 入間が呟き、超機械・マジカルドライバーで攻撃を仕掛ける。
「そちらには行かせませんよ」
 天剣・ラジエルと朱鳳を構えた辰巳がスキルを使用しながらキメラへと接近して、攻撃を繰り出す。キメラは辰巳の攻撃を受けた後、反撃してくるけれど大振りで避ける事は容易かった。
「そんな大振りの攻撃は当たりませんよ」
 辰巳は呟き、再び攻撃を行う。
 その時、鵺とつばめを乗せた佐倉のランドクラウンがやって来た。
「‥‥っ、させ、るか!」
 キメラの視線が車に向いた事で、佐倉たちの方へ行こうとしたキメラを止める為に鐘依がスキルを使用しながらイオフィエルを振るう。
「そうがっつくな。そこにいる皆が相手してくれるんだから」
 鳳は攻撃を行い、佐倉たちの車から注意を逸らそうとする。
「行きます」
 佐倉は超機械・ビスクドールでキメラの足を狙って攻撃を行う。
(うまく膝が落ちてくれればもうけものなんですけどね‥‥)
「我輩も手伝うヨ」
 ラサは小銃・AX−B4を構え、佐倉の攻撃した同じ場所を狙って射撃する。
「ほぅ? それだけ攻撃を受けながらこっちに来ようという執念は評価してあげてもいいかもしれないね。褒められた事ではないけれど」
 アイリスは冷たく微笑み、車に向かおうとするキメラを見て呟き――。
「レイディアントシェル発動」
 光盾でキメラを弾き飛ばし「悪いが、ただの力自慢ならそれこそ飽きるほど相手にしているのでね」と言葉を付け足した。
「さて、あと一押しで倒せるはず。皆、最後は派手にな!」
 鳳の言葉に、能力者達はそれぞれ互いの動きに合わせるように攻撃を仕掛け、キメラを無事に退治する事が出来たのだった。


―― 無事に救助 ――

「オネエ‥‥お兄さん? ‥‥に会えて良かったね」
 つばめの頭を撫でながら、鐘依が優しく微笑むと「皆さんのおかげです」とつばめはにっこりと笑顔で言葉を返した。
(一つでも‥‥笑顔を守れるなら)
 つばめの笑顔を見て、鐘依は恋人の笑顔を思い出す。
(その為に、強くなりたいんだ‥‥もう、しくじらないように)
 鐘依はそっと心の中で決意した。
(鵺さんの意識がなかったのはラッキーでしたね。本名で呼んでいた事を知ったら、殴られ‥‥いや、殴られた方がマシな目に遭わされるかもしれません)
 佐倉は自分の悪運の強さに心から感謝して、ほっと安堵のため息を吐いたのだった。
「鵺殿、つばめ殿! 無事でヨカッタ!」
 ラサは車に積んでいた【OR】オレンジのバラの花束を取り出して鵺に渡す。
「きゃあ☆ 綺麗だわぁ♪ ありがとうね!」
 ぎゅ、とラサに抱き着きながら鵺がお礼を言う。
「‥‥あ、あれ!? お、終わってる!? 何で!?」
 セラは周りをきょろきょろと見渡しながら驚いた表情で呟く。アイリスになっている時の記憶はないようで、彼女自身、戦闘が始まったすぐ後に終わったという感覚なのだろう。
「‥‥なぁ、つばめ嬢と鵺氏は本当に血縁関係あるのだろうか?」
 似ても似つかない、とはまさにこの事。鳳の疑問に答える者は誰もおらず、彼の疑問はいつまでも渦巻く羽目になった。
「‥‥‥‥」
 ラサと鵺が抱き着く姿を見て入間は無言だった。
(彼氏さん、女の言葉を使っているようにみえるのはわたしの気のせいですか)
 入間は頭の上に『?』を幾つも並べて、状況を懸命に把握しようとしているのだが、把握しきれずに何度も目を瞬かせていた。
「ラサさんとおねにー様、随分と仲がよろしいのですね」
 無邪気な笑顔を向けられ、ラサは鵺と自分が付き合っている事を告げる。
「おねにー様とお付き合い‥‥つまり、ラサさんはつばめのお姉様になるんですね!」
「げふっ!」
 嬉しそうに爆弾発言をするつばめの言葉を聞き、ラサが吐血しそうな勢いだった。
「だ、大丈夫ですか!?」
 辰巳と佐倉が慌ててラサに駆け寄ると「わ、我輩‥‥!!」と二人には理解できない言葉を呟いており、辰巳と佐倉は互いに顔を見合わせた後、首を傾げた。
「つばめ嬢、お兄さんに恋人が出来たのをどう思う?」
 エイミーがこそりとつばめに問い掛ける。
「え? 凄く嬉しいです。私、お兄様ばかりでお姉様がいないから‥‥もちろんおねにー様の事は凄く大好きですけど‥‥お姉様って呼べる人が出来るのは嬉しいです」
「そう、なんだ‥‥」
「エイミーさんは何故そんな事を聞くんですか?」
「あたしにも兄がいて‥‥お相手が出来て、幸せになってくれたら、少し寂しいけど素敵な事だなって思って‥‥」
「そう、それじゃつばめと同じですね」
「そうだね」

 それから能力者達は高速艇に乗り、ラストホープへと帰還していく。

(‥‥良かった、鵺氏が俺に気づく事はなかったようだ。妹と恋人効果だったのかな)
 すたすたと早歩きで去っていく鳳は、自分に被害が来なかった事を心の底から喜んでいたのだった。

END