●リプレイ本文
―― クイーンズ主催の新年会 ――
「新年と言えば新年会! 新年会と言えば皆で馬鹿騒ぎ! という事でクイーンズ主催で新年会を始めちゃうよー!」
週刊個人雑誌・クイーンズの編集長兼記者でもある土浦 真里(gz0004)の発案により様々な能力者たちを招待して新年会を行う事になった。
「‥‥新年会とか季節折々にイベントを開催してくれるマリには感謝だな――‥‥まぁ、そういう心遣いを旦那や編集部のみんなにも割いてやったら、気苦労も減るんだろうが‥‥無理だろうな」
苦笑しながら呟くのは威龍(
ga3859)だった。彼はクイーンズの記者である静流の彼氏であり、マリから気苦労を受けている一人でもあった。
「真里〜! あけましておっめでと〜♪ 今年もよろしくね〜♪」
キョーコ・クルック(
ga4770)がマリに抱き着きながら挨拶を行う。
「ひっさしぶりー! 今年もよろしくねー!」
ぎゅうっとマリもキョーコに抱き着きながら挨拶を返す。
「結構な人数が来るみたいだし、あたしも配膳とかお酌とか手伝うよ」
キョーコの言葉に「ありがとー♪ 結構みんな苦労してるみたいだから喜ぶよ」とマリが言葉を返し、キョーコはそのまま台所へと向かい始めた。
「こんにちは、今日はお邪魔するわね」
百地・悠季(
ga8270)がマリに挨拶を行い「あたしは一賑やかし加える為に鏡割り儀式を執り行おうかしら」と言葉を付け足す。
「おおう、それはマリちゃんも考えてなかったから助かるっ!」
百地に言葉を返した時「やっほー! マリさん、舞さん!」と椎野 のぞみ(
ga8736)が後ろから声を掛けてくる。
「こんにちは、今年もどうぞよろしくおねがいします」
ぎゃあぎゃあと騒いでいるマリに代わり、挨拶を行ったのは室生 舞(gz0140)だった。
「あけおめのことよろですよー!! という事で手作りのお煮しめと味付け数の子を持ってきましたよー」
青い振袖とウィッグで腰までのポニーテール、そして伊達めがねをかけた椎野は普段と雰囲気が違い、普通にしていれば椎野だと気が付かない程だった。
「わぁ、美味しそうな匂い‥‥台所に置いておきましょうか、案内しますよ」
舞は椎野と一緒に台所へと向かい始める。
「どうもどうも! お世話になりまーっす! ほら、久志兄さん、早く!」
ぐいぐい、と狭間 久志(
ga9021)の腕を引っ張りながら水門 亜夢(
gb3758)がクイーンズ編集室の玄関へとやってくる。
「分かった‥‥分かったからそんなに引っ張るな」
ため息を吐きながら狭間が呟き「お邪魔する」とマリに言葉を投げかけ、水門と一緒に中へと入っていった。
「しょぼい家ねぇ、こんな所に何人も住んでるなんて信じられないわ。私の家では犬小屋なみの大きさだけどね。まったく何で私がこんな所で新年会をしなくちゃならないわけ? ねぇ、ちょっと聞いてんの!」
ばちーん、と白虎(
ga9191)を引っ叩きながらキルメリア・シュプール(gz0278)が登場早々から文句を言い始める。
(ぐぬぬぬぬ‥‥新年早々お姉ちゃんと一緒だと喜んでたらこれだよ!)
赤くなった頬を擦りながら、しかしキリーと一緒だという事実に喜びを感じているのか多少の事なら許せてしまうらしい。
「あけましておめでとうございます、マリさん」
佐倉・拓人(
ga9970)がマリに挨拶を行う。彼はマリに頼まれて料理などを作る為に呼ばれていた。もちろんマリとしては新年会を一緒に楽しんでくれれば、という気持ちもある。
「お酒にもあって、みんなで手軽に食べられるものというとピザを思いついたのですが‥‥大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ。結構和食とか新年にちなんだ物が多いから、手軽に食べられるピザとかあるとみんな喜ぶと思うし! ありがとね!」
「いえいえ、それでは早速料理に取り掛からせてもらいますね」
佐倉は穏やかに微笑みながら台所へと向かう。
「あけましておめでとうございます! 師匠、今年もよろしくお願いします!」
千祭・刃(
gb1900)がびしっと敬礼をしながらマリ、そしていつのまにか横に立っていた大石 圭吾(gz0158)に挨拶を行う。
「はっはっは☆ 今年こそもう一度褌ブームを引き寄せるんだZE☆」
きらん、と無駄に爽やかに笑う大石だが新年早々、野郎の褌姿など見て誰が喜ぶのだろうか、いや、喜ぶ者はおそらく――必ず皆無である。
「あ、これ僕のかーちゃんからの差し入れです。急いで用意したので種類が少ないですが、かーちゃんお手製のおせち料理です」
皆さんで召し上がってください、千祭は言葉を付け足しながら重箱をマリへと差し出す。
「わぁ、ありがとう! 後で皆で食べさせてもらうね! あ、静流ー! このおせち貰ったから台所に置いといてくれるー?」
近くを通りかかった静流を呼び止め、おせち料理を台所へと運んでもらう。
「ささ、今日は楽しんでいってねー!」
千祭と大石を編集室に案内しながらマリが手を振って叫ぶ。
「おお、ここがクイーンズ編集室か。クイーンズって聞いた事はあるけど実際に入るのは初めてだな‥‥なぁ! もやしが来てるんだろ?」
ガル・ゼーガイア(
gc1478)がマリに言葉を投げかけると「キリーちゃんだったら、さっき小さい男の子と一緒に入っていったよー?」と言葉を返してくる。
「‥‥小さい、男の子‥‥だと。総帥ィィィィッ! 抜け駆けはさせねぇぞぉぉぉ!」
くわっと目を見開き、ガルは叫びながら編集室へと入っていく。
「あらあら、騒がしいけど何かあったのかしら?」
鵺(gz0250)が目を瞬かせながら呟く。
「まぁ、色々と青春があるんじゃない? っととお客様いらっしゃーい!」
鵺と一緒にいるラサ・ジェネシス(
gc2273)とエイミー・H・メイヤー(
gb5994)を見て、マリが慌てて言葉を投げかける。
「HAPPY NEW YEARだよ!」
水色地に白薔薇の柄、髪飾りも柄と併せた白薔薇でまとめたエイミーが元気よく挨拶をしてくる。
「ハッピーニューイヤー、今年もよろしくデス」
エイミーと同じ振袖を身に纏ったラサがぺこりと頭を下げながら挨拶をしてくる。
「うわぁ、綺麗な着物だねー♪ すっごく二人に似あうよ! それに‥‥あ、相変わらず派手な感じだねえ」
赤い振袖を身に纏った鵺を見ながらマリが苦笑する。
「あらぁ、お正月の女と言えば着物でしょー?」
「生物的に男だけどね、あなたは。それにオカマのくせに彼女もいるから完璧に男だよね」
ばちばちと火花を散らす鵺とマリを見て、慌てたラサとエイミーが「ま、まぁまぁ‥‥」と宥めながら鵺と一緒に編集室へと入っていく。
「ご招待頂いて嬉しいです。楽しい新年会になればいいですね」
にっこりと笑顔でマリに言葉を投げかけてきたのはミレーユ・ヴァレリー(
gc8153)だった。
「いやいや、こっちこそ来てもらえてうれしいよ! 中は結構騒ぎになってるかもしれないけど楽しんでいってね!」
「はい、それでは‥‥」
ぺこりと頭を下げながらミレーユは編集室の中に入っていく。
「あれ、もしかしてボクが最後なん?」
ユオ(
gc8541)が「時間通りに来たつもりやったんやけど」と言葉を付け足しながら呟く。
「大丈夫だよ、集合時間とかあんまり決まってないから。それよりようこそー! 楽しんでいってねー!」
「ありがとな」
ユオは言葉を返し、そのまま編集室へと入っていく。
「おおう、今の人でちょうど全員集まったかな? さて寒いからマリちゃんも早く中に入ろーっと」
身を竦めながらマリは編集室へと入り、恐らくカオスになるであろう新年会が開始されたのだった。
―― 新年会、開始 ――
マリがリビングに戻ると、そこでは結構な騒ぎが起きていた。ひたすらに食事を食べている者、ひたすらに飲んでいる者、そしてひたすらに裏方に徹している者――と。
「ねぇねぇ、2人に聞きたいんだけど‥‥」
マリと舞がご飯を食べている時、遠慮がちに話しかけてきたのは椎野だった。2人は互いに顔を見合わせ、椎野が座る場所を作り彼女の話を聞く事にした。
「実は‥‥恋人作るコツとかってあるんですか? ボク、ルックスも性格もこうだからなかなかねー‥‥」
苦笑しながら椎野が呟き、何か重要な事を聞かれるのでは――と身構えていたマリと舞は肩の力ががくっと抜けてしまう。
「ルックスや性格って‥‥椎野さんは可愛いですし、性格も良いと思いますよ?」
かくりと首を傾げながら舞が言葉を返し、マリもその言葉に賛同するようにうんうんと頷いている。
「だってよく考えてみてください。非常に性格難のマリさんですら結婚することが出来たんですよ? ボクだって、その‥‥まさか彼氏が出来るとは思ってなかったですし、ボクやマリさんよりも可愛い椎野さんなら、なおさら男の人がほっとかないと思いますけど‥‥」
舞の言葉に「うぉいっ」とマリがツッコミを入れながら「でも、マリちゃんもそう思うなー」と椎野に言葉を投げかけた。
「そう、なんでしょうか‥‥」
「何なら俺なんかどーだい! はっはっは☆」
いつから話を聞いていたのか大石がきらーんとしかもポーズ付で椎野に言葉を投げかける。
「ありがとうございました、2人とも――えーと‥‥初めましてで言いにくいんですけど‥‥近づかないでいただけますか?」
椎野はマリと舞に言葉をかけ、大石には酷く冷めた視線を向けながら何処かへと行ってしまったのだった。
「師匠! 諦めては駄目です! いつか師匠の良さを分かってくれる人が奇跡的にいるかもしれません!」
がっくりと項垂れる大石の隣では弟子の千祭が必死に励まされ、他の能力者たちから憐みの視線を送られていたのだった。
「ほらほら、久志兄さん! 飲んで飲んで!」
「飲んでるよ‥‥っていうか、普段からあんまり飲まないんだけどな――‥‥あれ? キョーコさん‥‥?」
グラスに入った酒を少しずつ飲んでいると、見知った顔が壁に寄りかかりながらちびちびとお酒を飲んでいる姿があった。
(はぁ‥‥男ってあたしなんかよりも、守ってあげたくなるような可愛い女の子がいいのかな〜‥‥)
ため息を吐きながらキョーコがざわつくリビングを見て心の中で呟く。楽しそうな雰囲気であればあるほど、キョーコは自分の気持ちがふさぎ込んでいくような気がしていた。
「あたし、バツイチだしね‥‥可愛い女の子って柄じゃないし‥‥」
「僕が知ってる限り、キョーコさんは相当可愛らしい方だと思うけどな」
「わっ」
突然話しかけられ、キョーコは驚いて持っていたグラスを落としそうになった。
「なっ‥‥び、びっくりした‥‥」
「連れて歩いたら自慢できるくらいだと思いますよ、キョーコさんは」
狭間の言葉に「なっ‥‥そんなに褒められても何も出ないよ‥‥」と顔を赤くしながらキョーコが言葉を返す。
「いや、別にお世辞とかじゃないんですけど‥‥」
お互いに恋愛に関して傷つく事があったのだろう、言われてはいないけれどお互いにそんな雰囲気を感じる事が出来た。
「そういえば、1人みたいでしたけど一緒に何か食べませんか?」
「え、あ、うん。そういえば配膳ばかりしてたから何も食べてないや」
狭間の言葉に頷きながら、キョーコは彼と2人で食事をする事にしたのだった。
「久志兄さ――‥‥ん? 女の人?」
水門は食事をしながら狭間の方を見ると、キョーコと一緒にいる姿が視界に入ってきて、とりあえず少しだけ様子を見る事にした。
(いつもより優しい顔‥‥ひょっとして‥‥? いやいや、ずっと久志兄さんを見上げてきた私だからこそ何となく分かる気がする)
たまに外れますけどね! と心の中で呟きながら水門は狭間とキョーコの様子を柱の陰から見守る事にした。
(空気が読めて、兄さんに気を利かせて1人で去れる私、くぅ、良い女だなぁ!)
自分で自分の事を褒めながら水門は次の料理の所へと向かい始めたのだった。
「マリ、もう静流を借りていってもいいだろう」
静流の腕を掴みながら威龍がマリに言葉を投げかけ「もちろーん。2人でイチャラブしてなさいな」とからかうように言葉を返し、去っていく2人を見守ったのだった。
「本当に久しぶりだな」
「そうね、お互いに仕事があるし‥‥」
素っ気ない静流の言葉だったが、それが照れ隠しであるという事に威龍は気が付いている。
「なぁ、シズ――‥‥俺たちの付き合いも結構長いよな」
突然の言葉に、静流は不思議そうな表情をしながらも「‥‥? そうね、結構長いと思うけど‥‥」と言葉を返した。
「だから、そろそろ形にしておきたいと思う‥‥」
「形‥‥?」
首を傾げながら呟く静流に「きちんと、いつとは約束できないが‥‥受け取ってくれないか」とリングケースの中できらりと光る指輪を差し出した。
「少し落ち着いたら、俺の嫁さんになってくれ――‥‥」
愛してる、という言葉と共に威龍は静流にキスをしたのだった。
「にゅあー、この席は渡さんぞー! この場所は絶対に渡さんぞー!」
椅子にしがみつきながら白虎がリビングで叫んでいる。ちなみに白虎が何故こんなにも椅子にしがみついているのかと言うと、キリーの隣には自分以外を座らせたくないという恋心からだった。
「総帥! 抜け駆けしてもやしと一緒に新年会に来たくせに! 席くらい俺に譲りやがれ!」
ぎゃあぎゃあと騒いでいるのはガル、彼としては先を越されているのだから席くらいは隣に座りたい、これもまた淡い恋心からだったのだが‥‥。
「うるっさいわよ! 大人しくしてられないなら私帰るからね!」
「「ごめんなさい!」」
キリーの言葉に間髪入れずに謝るあたりがキリーからヘタレと言われる所なのだろう。
「あっちはあっちで楽しそうだねぇ。そういえばさっき聞くのを忘れていたんだけど今年の抱負は?」
エイミーがジュースを飲みながら鵺とラサに話を振る。
「今年の抱負は鵺殿のお嫁‥‥っとバグア倒すゾー」
ラサは本音が漏れ掛け、慌てて『バグア倒す』と言葉を言い直す。
「鵺嬢は?」
「そうねぇ、アタシは家の問題を何とかしたいわねぇ‥‥このまま避け続ける事も出来ないでしょうし。色んな事が片付いたら、ラサちゃんをお嫁にもらう事かしら」
きゃ、と言葉を付け足しながら鵺が言葉を呟く。
ちなみにその言葉を聞いてラサはお酒を飲んでいない筈なのに、顔を真っ赤にしていた。
(あたしはお2人の晴れ姿を見るのが目標かなー。キューピッド役として頑張らねば!)
エイミーは心の中で呟き、晴れ姿の鵺とラサの姿を思い浮かべて微笑む。しかし彼女の想像の中では何故か2人ともウェディングドレス姿である。エイミーの想像の中なので、何故2人ともドレス姿なのかツッコミを入れる者はいない。
「鵺さ――――んッ! しっと団メンバーでありながらイチャイチャするとは何事だー!」
ピコハンを持って白虎が粛清しようとするのだが‥‥何故かその姿を見てラサが感激している。
「ついにこの時が! 襲われたという事はリア充と公認されたという事ッ!」
「ら、ラサ嬢?」
ラサがあまりにも感激しているのでエイミーが目を瞬かせながら言葉を投げかける。
「鵺殿、逃げよう! リア充認定された後は逃げるのみっ!」
ラサの言葉に「ふふ、そうね」と鵺はラサをお姫様抱っこして「粛清されちゃ適わないものねー」と言葉を付け足しながら逃げ始める。
「しっと団しっと団言ってても、ほとんどの団員はリア充じゃない! 総帥自ら桃色全開だしー!」
椎野の言葉に「ち、違うぞー! こ、これは闘士活動の一環としてだなー!」と混乱しながら言い訳をするのだが、図星としか言いようがない。
「まぁ、楽しそうですね‥‥桃色、私にもいい人がいればいいんですけどね」
お菓子をぱくりと食べながらミレーユが自嘲気味に呟く。
「あれ? 何か美味しそうな匂い、あれ? こういうのあったっけ?」
ミレーユの食べているマドレーヌを見ながらマリが問い掛けると「あ、これ‥‥差し入れとして持ってきたんですけど‥‥」とおずおずとマリにマドレーヌを差し出す。
「うん、凄く美味しい! もっと貰っちゃっていい?」
「どうぞ、お口にあったなら良かったです」
にっこりと微笑みながらミレーユはもう1つマドレーヌを差し出したのだった。
「師匠! 去年の師匠は何をしていたんですか?」
きらきらとした眼差しで千祭が大石へと言葉を投げかける。
「うっ‥‥そ、それはだな‥‥な、なんというか‥‥」
期待のまなざしを向ける弟子に言える筈がなかった――‥‥何もしていない、なんて大石には言う事が出来なかった。普段は救いようのない変態の彼でも弟子を裏切るような事は言えなかったのだろう。万年褌変態の男なのに。
「今年も褌パワーで大活躍するんですよね! その前に上級職に転職して師匠のお役に立つようにしておきますね! あれ? そういえば師匠は転職しないんですか?」
さらりと投げかけられた質問に「うっ」と大石が言葉に詰まる。ほとんど(むしろ全然)戦闘では役に立たない大石がどんな上級職になっても役に立たない事に変わりはない。結論から言えば大石如きが転職しようがしまいが状況は全く変わる事はないのだ。
「きゃあ♪ お久しぶりだわ! 拓人ちゃん♪」
鵺が裏声を使いながら佐倉にすり寄る。
「ぬ、鵺さん‥‥お久しぶりです‥‥今日はお友達はいらっしゃい、ませんか‥‥?」
周りを見渡しながら佐倉が問い掛けると「今日は都合がつかなかったのよぉ、しかも呼ばれてないみたいだから来てないわよ」と鵺が言葉を返す。
「えーと、それじゃ鵺さんもラサさんとお幸せに――って何で脱がされてるんです!? しかも何故ラサさんが脱がせてるんです!?」
「うん、佐倉殿‥‥あなたには素質がありそうダ。鵺殿、しっかりと捕まえていてネ」
「もちろんよ♪」
「ちょっとぉぉぉ! この最凶タッグから助けて下さい!」
悲痛な叫びがリビングに響き渡ったが、誰1人として助ける者はいなかった。何故なら佐倉の代わりに自分に被害が来そうだったからだ。どんな良い人でも我が身が可愛い事には変わりない。結論から言えば佐倉を助ければ自分が被害に遭う、そんなのヤダYO! という結論に達したのだろう。
「なんや、すごい騒ぎになってんだな‥‥」
ジュースを飲み、おせちを食べながらユオが驚いて周りの騒ぎを見ていた。
「これから鏡割り儀式を執り行うわよー」
百地の言葉に能力者たちがそちらへと視線を移す。用意した硬くなった餅をみんなで少しずつ割っていき、最終的に食べやすいサイズになった所で網で焼き、きな粉、餡、醤油を各自好みで使って食べるという食べ方にした。
「あぁ、台所にはぜんざいも作ってあるから取りに行ってね」
百地が付け足すように呟き「ちょっとお話でもしましょ」とマリや他の女性を誘って女子トークをする事にした。
「あたしは去年はほぼ丸一年家族計画の為に最前線から引いていて、その結果娘を儲けたわけなのだけれど、既婚の編集長としてはその辺どうなのかしら?」
百地の言葉に餅を食べていたマリが「げほっ」とむせてしまう。
「あぁ、ごめんごめん。でも結婚して随分経つでしょ? 旦那さんとそういう話はしないの?」
「あー、うー‥‥や、ほ、欲しいなぁとかは思うわけでありますけど、はい、うん‥‥」
ぷしゅうと顔を赤くしながらマリが言葉を返すと「経験も踏まえて相談とかには乗るからね」と百地が優しく言葉を返したのだった。
「はい、キョーコさん」
狭間は台所にあったぜんざいを2人分取り、そのうちの1つをキョーコに渡す。
「‥‥ありがと‥‥‥‥温かいね‥‥‥‥」
狭間みたい、という言葉は本当に小さい声だったけれどしっかりと狭間には届いていた。
「そういえば、初夢にキョーコさんが出てきたんですよ」
「げほっ‥‥ごほっ‥‥初夢にあたしが‥‥?」
キョーコも初夢に狭間が出てきており(まさか同じ夢なんて事は‥‥)と狭間をちらりと見ながら心の中で呟く。
(‥‥酔ってるのかな、あたしも‥‥そろそろ帰ろう)
ふらつきながら立ち上がり、キョーコが「帰るね、ほんとごめん‥‥新年から愚痴とかにつき合わせちゃって‥‥」と狭間に言葉を投げかける。
「一緒に歩いたら自慢できるって言ったでしょう‥‥それに放っておけないんですよ」
外に出ると、冷たい風が吹きぬけており「さぶっ‥‥」とキョーコが身を竦める。そこに狭間が自分のコートをキョーコにかけてやる。
「‥‥あ、ありがと‥‥」
狭間の匂いがする、なんて思いながらキョーコはどきどきと高鳴る胸を押さえる事が出来なかったのだった。
「あ、鉄太くんも来てたんだ!」
椎野が七海 鉄太(gz0263)を見つけて言葉を投げかける。
「うん! ごちそういっぱいだって聞いたから!」
「ふぅん、そっか! そういえば彼女とは上手くいってますかー? ‥‥彼女、大事にしなかったら、キミノコトユルサナイヨー?」
椎野が目が笑っていない笑顔を鉄太に向けて言葉を投げかける。
「わ、わかってるよ! 俺だって彼女の事、大事にしてる、つもりなんだから!」
顔を真っ赤にしながら何処かへと去っていく鉄太を見て「初々しいなぁ」と椎野は苦笑交じりに呟いたのだった。
「あれ? 気が付いたら粛清も出来てないし、キリーお姉ちゃんと一緒にいる事もしてないよ、ボク」
はた、と立ち止まりキリーの方を見るとガルや何故か鉄太と一緒にご飯を食べている姿があった。
「うおおおおい! 何を抜け駆けしとるかぁぁぁぁ! しかも何処から現れた!」
びしっと白虎は鉄太を指差しながら問いかけると「俺が誘ったんだぜ!」とガルが威張りながら言葉を返してきた。
「別に私は誘ってないけどね。うるさくて信じられないわ」
キリーの毒舌に鉄太がしょんぼりとしていると「鉄太! もやしはツンデレなんだ! ちょっとでもデレる所を見ればお前ももやしを好きになるはずだ!」とガルが力説するのだが‥‥。
「でも俺、彼女いるから」
その時、ガルは現代の表現力では絶対に表現出来ない表情を見せて『orz』ポーズを取ったのだった。
「そ、そうだ‥‥もやし! こ、これをお前にやるぜ! でも今見るなよ? 家に帰ってから開けてくれよ? ガルお兄さんとの約束d「誰が兄さんか!」ぐふっ」
ガルへのパンチが入り、キリーはガルの言う事など全く聞く耳持たず、その場でプレゼントを開ける――中から出てきたのは『セーラー服』だった。
「‥‥あんたはこれを私にプレゼントして何がしたいわけ? 萌えたいの? 変態なの? どっちなの? このドエムが!」
「ふっ‥‥そうさ、俺はドエムさ! もやし限定のな「うざっ!」がはっ‥‥」
今度は飛び蹴りを食らってしまい、ガルは派手に倒れてそのまま暫く動く事はなかった。
「き、キリーお姉ちゃん! もし、もしだよ? デートするならどこがいいかなー」
白虎がもじもじしながら問いかけると「魚市場」という言葉が返ってきた。
(な、何故に魚市場!? なぜこの場面で魚市場が!)
参考にならない言葉が返って来て、白虎の方は精神的ダメージを受けてしまっていた。
「‥‥な、何で女装してるんですか‥‥」
舞がびくっとしながら佐倉を見る。そこには立派に化粧を施された佐倉の姿があり、それはそれはもう見ていて哀れになるほど似合っていた。
「いや、もう今日はこの姿でいる事にしましたよ‥‥着替えてまた脱がされても適いませんからね‥‥」
ふ、と遠くを見ながら佐倉は台所へと向かい「次の料理を作らなくちゃ〜」と独り言のように呟いていたのだった。
「あ、師匠! これを受け取ってください! これで新しい褌でも買って下さいね」
そう言いながら千祭は大石に『お年玉(白)』を渡した。大石は喜んでもらっていたのだが、周りの能力者たちは(弟子からお年玉を巻き上げるなよ‥‥)と大石を見ながら心の中で呟いていたのだった。
(はぁ、結構みんな幸せそうにやってるんだなぁ‥‥私もこんなにいい女なのに! 空気読める子なのに! だから、だから早く帰って来てよ! キミの人生半分以上損してるぞ!)
ぐぐ、と拳を握りしめながら水門は心の中で叫んでいたのだった。
「ふふ、らぶらぶな2人を見るのは楽しいな♪」
エイミーは小さな声で呟き、デジカメで鵺とラサのイチャラブタイムをばっちり写真に収める。
もちろんその間にしっと団襲撃があってはいけないのでバトルハリセンとバトルピコハンはすぐに持てる場所に置いてある。
「そういえば、桃色総帥さん。想い人と何か進展はあったかい?」
不敵な笑みを浮かべながらエイミーはちらりとキリーを見ながら白虎へと問いかけた。
「‥‥ちくしょぉぉぉぉ! 進展なんて全然ねぇよぉぉぉぉ!」
泣き叫ぶその姿はとても子供には見えず、色んな苦労をしてんだなぁと去っていく白虎を見ながらエイミーは心の中で呟いたのだった。
「ハッピーニューイヤー! 我輩とお話ししませんか!」
ラサがミレーユへと言葉を投げかけ「あ、はい。よろしくおねがいします」とミレーユは丁寧に頭を下げながら言葉を返した。
「あっちでみんなとお喋りしよウ!」
「それじゃ、ちょっとお菓子を持っていきますね。先に行っててください」
ミレーユは台所へと向かい、軽くつまめる物を皿にとってラサたちの所へと向かう。
「あ、鵺殿鵺殿。これは我輩からの気持ちデス」
こっそりとラサは鵺に『ローズリング』を贈る。ローズリングを貰った鵺は「ありがとね」と笑顔でラサに言葉を返す。
それからも騒ぎは続き、新年会が終わったのは朝日が昇り始める頃だった。能力者たちは散らかった編集室を見て、ある程度の片づけを手伝ってからそれぞれ帰宅していったのだった。
END