タイトル:聖なる夜に嫉妬の炎をマスター:水貴透子

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 5 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/01/05 03:01

●オープニング本文


生まれて(ピー)年。
俺の年齢が彼女いない歴になってから、どれくらい過ぎたんだろう。
あれ? 何か変な言い回しになってる気がするけど、まぁ気にしないでくれ。

まぁ、何が言いたいっていうと‥‥‥‥。
彼女が欲しいよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!
モテるイケメンになりたいよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!

‥‥というわけだ。

※※※

「俺が神様を信じなくなったのは、幼稚園の時だな。
 自分の顔を見て『あぁ、この世に神様なんて絶対いないんだ』って悟ったね」

「そんな幼稚園児、逆に嫌だわよ」

見知らぬ女性能力者から辛辣な言葉でばっさりと斬り捨てられ、俺のマイハートは砕け散ったね。

「っていうか、俺の敵はキメラとかバグアもだけどモテるイケメンも敵だね!
 何かっこいい顔してるわけ? 俺へのあてつけ!? はぁ!?」

力説していると女性能力者からパンチ(もちろんグー)がお見舞いされてしまった。

「あんたのその力説が「はぁ!?」って感じだし! キモいし!」

「お、俺は‥‥その加減のなさに「はぁ!?」って言いたい‥‥マジ痛い‥‥」

鼻を押さえながら男性能力者は呟いたのだった。

●参加者一覧

終夜・無月(ga3084
20歳・♂・AA
白虎(ga9191
10歳・♂・BM
イスネグ・サエレ(gc4810
20歳・♂・ER
フェンダー(gc6778
10歳・♀・ER
エルレーン(gc8086
17歳・♀・EL

●リプレイ本文

―― キメラ退治に向かう能力者たち ――

「バグアは敵だー! キメラも敵だー! イケメンも敵だー! モテる奴すべてが俺の敵だー!」
 ぎゃあぎゃあと騒ぎ立てているのは太郎という名前のファイターだった。
「宜しくお願いしますね‥‥」
 終夜・無月(ga3084)が微笑みながら太郎、そして他の能力者たちへと挨拶を行う。
「おお、美人さん! どうぞ宜しく!」
 太郎が勢いよく挨拶すると「終夜さんは男だよ」と他の能力者から訂正されてしまい「‥‥ケッ、イケメンでモテない苦しみが分からん奴とは宜しくしたくないね!」と態度を変えて、ぷいっと太郎は終夜から差し出された手を弾きながら言葉を返す。
 完全に妬みでしかない。
(おお、これはしっ闘士として申し分ない男ではないかっ!)
 白虎(ga9191)が太郎を見ながら心の中で呟く。
「しっと団総帥の白虎にゃー! さ、君はこっちに来るんだ。皆でシングルベルを鳴らしながら待っている仲間がいるよ。皆でリア充を粛清しようー!」
 しっと団という言葉を聞いて「他にも同士がいるのかっ!」と目を見開きながら「宜しく!」と白虎の手をガシッと掴みながら言葉を返す。
 ちなみに白虎は太郎に教えていない事がある。しっと団に所属すると新しい出会いがあるというジンクスを――‥‥もしかしたら太郎みたいな男でもしっと団に所属すればリア充になれるかもしれないという事を。
「う〜ん、モテるイケメンねぇ‥‥キメラが?」
 イスネグ・サエレ(gc4810)が苦笑しながら、今回の任務の資料を見て呟く。
「き、きさまー! リア充が何故ここにいる!」
 白虎がカッと瞳を見開きながらイスネグに言葉を投げかける。イスネグの方と言えば(やっぱり来たか‥‥)と小さくため息を吐きながら、どう誤魔化そうか思案する。
 ちなみに終夜もリア充である。
「太郎殿、能力者でかっこよく戦っていれば、いつかは彼女も出来るかもしれないのぅ。我も主に祈っておこうぞ」
 フェンダー(gc6778)が太郎に言葉を投げかける。
「主はいつも見ているのじゃ。見てるだけかと思った奴はケツバットじゃ」
 言葉を付け足すフェンダーに「そっか、神様は見てるって事か‥‥」と太郎は何故か感激して彼女の言葉を聞いている。
 しかし他の能力者たちにはどの言葉で感激したのか分からない。
「でも、神様が見ていても遅いんだ! 俺は彼女いないもん! 神様いるっていうんなら今日俺は1人で寂しく任務に行く事なんかなかったんだぞ!」
 うわああああん、と突然泣き始め、ほとんどの能力者たちは(うわぁ、ウザ‥‥)とため息を吐きながら、心の中で呟いていたのだった。
(‥‥随分荒れてるの、かわいそう‥‥うーん、今日の任務で太郎君が活躍できれば、ちょっとは気分も変わるかなぁ‥‥)
 エルレーン(gc8086)は哀れみの目で太郎を見て、心の中で呟く。しかしエルレーンの言う『活躍』が世間でいう『八つ当たり』に匹敵する事に彼女は気づいているのだろうか。
「と、とりあえず行きましょうか‥‥ここで、こうしていても何も変わりませんし‥‥」
 苦笑しながら終夜が呟き、能力者たちは高速艇に乗り込み、イケメンキメラが待つ場所へと出発していったのだった。


―― 公園に潜むはカップル、そしてイケメンキメラ ――

 ラストホープを出て、能力者たちがやってきたのは1つの町だった。キメラが現れたとされているのは、町から少し離れた自然公園だった。
「これは、イルミネーションとか綺麗ですね‥‥恋人同士で来るなら本当に雰囲気たっぷりの場所ですね‥‥」
 終夜が公園を見渡しながら呟く。あまり大きな町でないにも関わらず、公園の木々は綺麗にきらきらと輝いている。
(確かに‥‥女の子が好きそうな感じの場所ですねぇ)
 イスネグが心の中で呟くと「俺も、俺も彼女が出来たらここに来るんだ‥‥」と死亡フラグ的な言葉を太郎が呟いていた。
「太郎さん、やっぱり見た目より行動じゃないかな‥‥? かっこよくキメラを倒すとか‥‥後は雰囲気イケメンを目指すとか?」
「雰囲気イケメン?」
 聞きなれない言葉に太郎が問い掛けると「髪型とか変えれる所から変えていくのもいいんじゃないかな」とイスネグが言葉を返した。
「なるほど、髪型か‥‥目立つ髪型がいいんだろうか。モヒカンとかアフロとか‥‥!」
(‥‥うん、何かもうこの人すべてにおいて駄目な気がする。モテない理由がひしひしと伝わってくるよ)
 表情は笑顔のまま、イスネグは心の中で呟く。
「太郎、人は外見だけではありません‥‥」
 終夜が小さく呟くと「外見だけ、では‥‥? つまり少しは外見も必要って事じゃないかぁぁぁぁぁぁ!」と太郎が地面を転がりながら騒ぎ立てている。
(太郎、それは揚げ足取りってものですよ‥‥)
 はぁ、と小さくため息を吐きながら終夜は心の中で呟いた。
「うむ、しっと団総帥として言わせてもらえば‥‥なんていうか、君の場合は顔以前の問題な気がする」
 ずばりと言った白虎の言葉に「ち、ちびっ子にまで‥‥言われる俺って‥‥」とがくりと膝をつきながら太郎が涙声で「天は我を見放したか‥‥」と言葉を付け足した。
「何を言っているのじゃ、最初から太郎殿は天に見放されているではないか」
「ふぇ、フェンダーさん!?」
 ずばりと物申すフェンダーにエルレーンが慌てて「本当の事でも言っちゃ駄目ですよ!」と言葉を投げかける。
(凄いな‥‥ざっくりと斬りつけた後、天然でトドメを刺してる‥‥)
 その様子を見ながらイスネグが心の中で呟く。
「え、えーと‥‥さっきからバイブレーションセンサーを使っているんですけど‥‥そこの茂みがちょっと怪しいかな‥‥」
 エルレーンがきらきらとライトアップされた木の下の指差しながら、他の能力者たちに言葉を投げかける。
「むっ、リア充キメラかっ!」
 白虎が武器を構え、茂みの中を覗き込むと――‥‥。
「ぎゃー! 本物のリア充ー!? こんな所で何をしてるかぁぁぁ!」
「あ、あわわ‥‥えええ、えっちぃのはいけないと思いますのー! ‥‥じゃなくって、ここ、恐いお化けが出るから、危ないから、どどど、どっか行って下さいなの!」
 白虎とエルレーンが視線を逸らしながらイチャつくカップルに言葉を投げかける。
「まさか‥‥こんな所で、キメラが現れている時にイチャつく強者がいるなんて思いませんでしたけどね‥‥」
 イスネグが呆れたように呟くと「確かに‥‥よく今まで襲われませんでしたね」と終夜が言葉を返した。
「あ、あっちにも反応がありますので‥‥い、行ってみましょう!」
 エルレーンが呟き、反応する場所に行くと――「え?」とエルレーンが固まる。
 そこに現れたのは男性。剣を所持しており、資料とも一致する部分が多いので恐らくかなりの確率でキメラなのだろう。
「‥‥はぅ」
 キメラだけれど、あまりのイケメンぶりにエルレーンは暫くの間言葉を失くしていた。
「これは、なんというリア充イケメンキメラ‥‥! 粛清するしかない!」
 ぎらり、としっと団総帥の威厳を見せる為、白虎は100tハンマーを構える。
「確かにイケメンじゃのぅ。これでキメラでなければ我の婿にしてやっても良かったのじゃが、キメラであるとは残念じゃのぅ」
 ホーリーナックルを構え、フェンダーが呟く。
「うおおおおおお! 貴様は! 貴様はそんなに俺を馬鹿にしたいのかあああああ!」
 血の涙でも流すかのような心からの叫び声をあげながら、太郎がキメラへと突進していく。
(さて、太郎さんの実力は――と‥‥。キメラがイケメンなら案外善戦してくれるかもしれないなぁ)
 イスネグは突進していく太郎の姿を見ながら心の中で呟く。
(でも、白虎さんやフェンダーさんのサポートもしなくちゃね)
 心の中で呟き、イスネグはいつでもスキルを使用して仲間たちのサポートが出来るように態勢を整えていた。
「はっ、こうしている場合じゃなかった‥‥!」
 エルレーンが呟き、他の能力者たちより少し遅れてだったが戦闘に参加し始める。もちろん相手がイケメンという事もあり、斬りつけるという行動に少し躊躇いが出てしまったが、油断すれば殺されるのはこちらなのだと割り切って、戦闘に集中する事にした。
「うぐっ、ぐはっ‥‥白虎――なぜ、俺を盾にする‥‥ぎゃあっ」
 キメラに突進していったものの、大した戦闘力もないため、すぐに前線から下がろうとした太郎だったのだが、白虎によって盾にされてしまい、下がるに下がれない状況になっていた。
「大丈夫なのにゃ、回復役はちゃんといる」
 びしっと親指を立てながら、白虎がイスネグを指差す。確かに先ほどから的確に回復してもらえているため、太郎のダメージは少ない。
「い、いや、しかしそういう問題ではな――ぐふっ」
「庇う男はモテるぞよ! 身を挺して我を庇ってくれる太郎殿はなんとかっこ良いのじゃ!」
 フェンダーが太郎(と書いて盾と読む)に隠れながら言葉を投げかける。普通の男ならばここで騙される筈がない――が、所詮太郎(と書いて非リア充と読む)は女にもてはやされるという事が今までなかったせいなのか「そ、そう?」と乗り気で盾役を買って出た。
(こいつ、馬鹿だにゃー‥‥)
 清々しいくらいの馬鹿さ加減に白虎も、そしてフェンダーも哀れになってくる。
「太郎、大したキメラでもないですからそろそろ倒してしまいましょう」
 終夜が言葉を投げかける。
「今がチャンスだよ」
 エルレーンは太郎に言葉を投げかけ、自らはスキルを使用して攻撃力をあげ、キメラに斬りかかる。
 その攻撃に合わせるように白虎、終夜、そして太郎がキメラへと攻撃を仕掛け、能力者たちは無事にキメラを退治することが出来たのだった。


―― キメラ退治後 ――

「あぁ、もったいない事したの‥‥」
 キメラを退治した後、イスネグからの治療を受けながらエルレーンが小さな声で呟く。
「あんなにかっこよかったのに、キメラだなんて‥‥あぁ、キメラじゃなかったらなー」
 盛大にため息を吐きながら呟くエルレーンに他の能力者たちは苦笑した。
「よし、これでみんなの治療は終わりかな」
 イスネグが呟くと「そういえば、粛清対象がここにいたのにゃ」と白虎がぼそりと呟く。静かな場所で呟かれたその言葉は、やけに能力者たちの耳に響いた。
「あー、キメラ退治したって報告に行かないとね」
 くるりと背中を向け、イスネグが「ほら、急がないと」と言葉を付け足す。
「俺のハートはこんなにガラガラ粉々バッキバキに壊れたって言うのに、キミには慰めてくれる恋人がいるのか‥‥ウオオオオオッ」
 太郎が嘆きながらイスネグに「何で彼女いるのだ! 何で俺にはいないの!? ねぇ、意味わかんなくない!?」と肩をがっしりと掴みながら叫ぶ。
 もはやイスネグには目の前の太郎という人物の方が意味分からないと考えたが、それは言葉として出ないように口をぎゅっと閉じて耐えた。
「太郎殿、主は言っておるぞ。今日くらいはカップルを許せ――と」
 フェンダーが太郎に言葉を投げかけながら問いかけると「だが俺は言っている!」と泣きながら太郎が叫び始める。
「今日くらいは俺だってきゃっきゃウフフしてもいいじゃないかと!」
「もう何を言えばいいのか我には分からんのじゃ」
 はぁ、とため息を吐きながら(そんなねちっこい性格がモテない原因だと思うのじゃが)と心の中で言葉を付け足した。
 太郎が騒ぐのを見ながら「次の依頼があるから、グッドラックー!」とイスネグがスキルを使用して高速艇の方へと逃げていく。
「あ、逃げましたね」
 苦笑しながら終夜が呟くと「追えー! 追うのだー!」と白虎が叫び、太郎と共にイスネグを追いかけ始める。
「で、でもイスネグさん‥‥大丈夫なのかなぁ。どんなに逃げても高速艇って行先は一緒だから意味ないと思うの‥‥」
 エルレーンの言葉に「確かにそうじゃな‥‥今頃は捕まっておるじゃろう」とフェンダーが言葉を返す。
「酷い事にならないうちに、俺達もいきましょうか」
 終夜が呟き、3人も先に向かったイスネグ、白虎、太郎を追いかけて高速艇の方へと向かう。3人が到着した頃、白虎と太郎に捕まっているイスネグの姿があった。


 その後、能力者たちはキメラ退治の報告を行うためにラストホープへと帰還していったのだった。

END