タイトル:彷徨う男マスター:水貴透子

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/12/22 05:47

●オープニング本文


その町には、からからと槍を引きずって歩く奇妙な男がいた。

※※※

「住人が2人、犠牲になったみたいね」

女性能力者が資料を見ながら、ため息混じりに呟いた。

始まりは人型キメラが町の中に現れた事だった。

今までキメラ襲撃などもなく、奇跡的に平穏無事に暮らせていた小さな町だったが人型キメラが現れ、女性と小さな子供の2人が犠牲になってしまったのだ。

「いつキメラ襲撃があってもおかしくないから、避難場所とかはちゃんと考えていたみたいだがな」

男性能力者も資料に視線を落としながら呟く。

「そうね。今、この町にいるのはキメラだけみたいだし、住人は避難済みって連絡もあったみたいだものね」

「町の方の被害も結構あるみたいだな。キメラの数が1体だし、大きな被害じゃないんだろうが‥‥これからも住み続ける住人にとっては大変かもしれないな」

「そうね‥‥犠牲者を出しただけでも住人の心に傷がついたはずなのにね‥‥」

女性能力者は小さく呟き「早く平和が来ればいいのにね」と言葉を付け足した。

●参加者一覧

辰巳 空(ga4698
20歳・♂・PN
黒羽・勇斗(ga4812
27歳・♂・BM
比良坂 和泉(ga6549
20歳・♂・GD
ヘイル(gc4085
24歳・♂・HD
フェンダー(gc6778
10歳・♀・ER
ルーガ・バルハザード(gc8043
28歳・♀・AA
烽桐 永樹(gc8399
17歳・♂・FT
エリーゼ・アレクシア(gc8446
14歳・♀・PN

●リプレイ本文

―― キメラ退治に向かう者達 ――

(男性型キメラ‥‥ですか。元は何だったのか余り想像したくないですが、いつか能力者自身がこのような扱いをされないように今から心がけたいと思いますし、このような者を決して許すわけにはいきませんよね‥‥)
 辰巳 空(ga4698)が資料を読みながら心の中で呟く。
「‥‥ふぅ」
 黒羽・勇斗(ga4812)が自らを落ち着かせるかのように深いため息を吐く。
(久々の傭兵活動がこういうものとはな‥‥どんなに平穏な所でもキメラの襲撃ってのがあるんだな‥‥住人を安心させる為に、さっさとキメラを倒しちまおう)
 そして黒羽は資料に視線を落として、住人が避難済み、そしてキメラが1体のみという事がありがたいと思っていた。避難が必要ならば退治に手間取り、最悪その避難誘導中にキメラから襲われる――という事も考えられるのだから。
「‥‥でも、2人も犠牲者が出ているんですよね‥‥」
 比良坂 和泉(ga6549)が資料に書かれている犠牲者の数を呟き、拳を強く握りしめる。
「大規模な作戦の時はともかく、野良キメラ等が相手では犠牲者が出てからしか動けない‥‥『傭兵』の弊害、か」
 まるで掃除屋だな、と言葉を付け足すのはヘイル(gc4085)だった。確かに傭兵活動は何か起きてから連絡が来るので『防ぐ』という事に無理があるものだった。
 だけど、それは傭兵だけのせいではなく何か起きてからしか連絡を出来ない現状にも責はあるのだ。誰だって襲われたくはないだろうが『襲われそうだから助けて下さい』などとキメラが現れていない時期から連絡をする住人達はいないのだから。
 それにそれが許されてしまえば、動ける能力者の数が絶対的に減少してしまい、現状が悪化するばかりなのだ。
(まるで悪循環だな)
 ヘイルはため息と共に心の中で呟く。
「ふむ、初依頼じゃが我がいれば大丈夫じゃろ」
 能力者達を見渡し、フェンダー(gc6778)が根拠のない言葉を呟く。だが、大人ではなく子供の言う言葉のせいか、どこか微笑ましいものもあった。
(また、人型キメラ‥‥なんだ、バグアどもは一体何を考えている? なぜ、こうも人型を選ぶ?)
 ルーガ・バルハザード(gc8043)が唇を噛みしめながら心の中で呟く。
(我々傭兵の精神を揺さぶる為か? ただそれだけの為に? それに‥‥いや、やめよう)
 考えても始まらない事だ、とルーガは緩く頭を振って今回のキメラ退治に集中する事にした。
「へぇ、キメラも槍を使うのか」
 同じ槍使いとして負けられないな、と言葉を付け足しながら呟くのは烽桐 永樹(gc8399)だった。
 キメラとは違う槍だが、烽桐も『イグニート』という槍を用いてキメラ退治に臨んでいた。
(とりあえずキメラを退治して、全員が大きな怪我をする事なく帰れれば大成功なんだけどな)
 烽桐が心の中で呟く。
「あ、あの‥‥宜しくお願いします」
 丁寧に頭を下げて挨拶をするのはエリーゼ・アレクシア(gc8446)だった。
(まだ二度目の依頼だし、皆さんの足を引っ張らないように気をつけなくちゃ‥‥)
 エリーゼは深呼吸をして自身を落ち着かせながら(頑張ろう)と心の中で言葉を付け足した。
「そろそろ行くとしようか、数年ぶりの依頼なんでうまくいくかどうかだが‥‥住人の為に何としてでも退治してやらなきゃな」
 黒羽が能力者達に言葉を投げかけ、高速艇に乗り込んでキメラの現れた町へと出発していったのだった。


―― 誰もいない町、キメラ以外は ――

 今回、能力者達はキメラ退治を迅速に行う為に班を4つに分けて行動する作戦を立てていた。
A班・ヘイル、フェンダーの2人。
B班・比良坂、ルーガの2人。
C班・黒羽、辰巳の2人。
D班・烽桐、エリーゼの2人。
「何かあったらトランシーバーで、もしくは照明銃を打ち上げて連絡を取り合おう」
 ヘイルが呟き、能力者達はそれぞれの班に分かれて行動を開始たのだった。

※A班※
「ヘイル殿、我が来たからには安心じゃ、ドーンと戦うが良いぞ」
 腰に手を当て、ドヤ顔で言うフェンダーを見て「それはありがたい事だね」と苦笑しながら言葉を返した。
 ヘイルの言葉に気を良くしたのか、フェンダーは「そうじゃろう」と得意気に言葉を返す。
 態度はやたらと大きいフェンダーなのだが、索敵はきちんとスキルを使用してやっている。
 もちろんヘイルもスキルを使用しながら索敵を行い、町の中部から螺旋状に移動しながらキメラ捜索を行っている。
「‥‥さて、どこに隠れているのやら」
 曲がり角や自分達にとって死角となる場所からの奇襲などを警戒しながらヘイルが呟く。
「他の班からも連絡はないようじゃ」
 フェンダーがトランシーバーを見ながらため息交じりに呟く。
「この先は確か‥‥住宅街があったな。もしキメラを見つけても、この辺での戦闘は控えるようにしなくちゃいけない、か」
 ヘイルは事前に町の地図を入手して、頭に叩き込んでいた。それは住人達の為を思っての事だった。
(俺達、傭兵はキメラ退治が終わったらここを去るだけだけど――住人にとってここは住む場所なんだもんな、なるべく被害は最小限に抑えたいんだが)
 ヘイルはため息を吐き、キメラ捜索を再開したのだった。

※D班※
「やれやれ、こういう感じの良い町には仕事じゃなくて休みの時に来たかったなー」
 はぁ、とため息を吐きながら呟くのは烽桐だった。
(が、がんばらないと‥‥足手まといにだけはなりたくありませんし‥‥)
 緊張の為か、何度も深呼吸をしながらエリーゼは自分を落ち着かせる。
「エリーゼちゃん、エリーゼちゃん。あんまり緊張しなくても大丈夫だって。他の仲間もいるんだし、何とかなるって」
 烽桐がエリーゼの緊張を和らげようと言葉を投げかけると「は、はい!」と少し大きな声で言葉を返した。
「緊張しまくりだったら、いざって時に思うように動けなくなるよ? 油断は駄目だけど、適度にリラックスしていこう――って初任務だけどね、俺」
 言葉だけを聞けば楽観的な烽桐なのだが、彼はきちんとやるべき事はやっている。死角になりそうな場所、建物の上、または木の上、それらすべてに警戒を強めて、愛用の槍もいつでも振るう事が出来るようにしていた。
「民家とかに隠れていたら、厄介ですね‥‥」
 エリーゼは呟きながら、窓の外から家の中を覗きこむ。
(ご、ごめんなさい。好きで覗いているわけじゃなくて、仕方なくって言うか‥‥本当にごめんなさい)
 申し訳なさでいっぱいになりながら、キメラ退治の為と割り切って民家の中を覗いたりしてキメラがいないか確認をしていた。
「もうすぐ一時間か‥‥そんなに捜索に苦労するとも思えないし、見つかるとしたらそろそろかな」
 時計を見ながら烽桐が呟き「さ、キメラ捜索の続きに行こう」とエリーゼに手を差し出しながら、キメラ捜索を再開し始める。

※C班※
「‥‥狭い所に隠れているとも思えませんが、念のためですね」
 辰巳は細い路地裏を覗きこみ、キメラがいないか確認しながら呟く。
「おーい、そっちにはいたか?」
 黒羽が辰巳に言葉を投げかける。彼もエリーゼと同じく、建物の中に潜んでいるのではないかという考えを持っており、民家の中を探していた。
「いいえ、いませんでした。そちらの方はどうでしたか?」
 辰巳が振り返りながら黒羽に言葉を返すと「駄目だ、いなかった」と肩を竦めてみせながら黒羽は言葉を返した。
「槍を持ってるって資料にはあったし、引きずって移動してくれてれば音とかで簡単に見つけられるかもしれないんだけどな」
 黒羽は「まぁ、そんな一筋縄でいくはずもないか」と言葉を付け足しながら、次に捜索する場所へと移動する。
 2人は固まって捜索しているわけではなく、お互いの声が聞こえる範囲程度に離れて捜索をしており、辰巳は破壊の痕跡を手掛かりに高い所から捜索を行っており、逆に黒羽は建物の中などを中心に捜索を行っていた。
「他の班からの連絡は?」
「今のところありませんね」
 辰巳の言葉に「そうか」と短く言葉を返し「俺達もキメラも動き回ってるわけだから、意外とすれ違ってる事があるかもな」と付け足し、再びキメラ捜索に集中するのだった。

※B班※
(住人の避難は済んでますから、これ以上の犠牲が出ないのは幸運なのでしょうが‥‥遺族の方々の気持ちを考えれば‥‥幸運では済まされないですよね)
 比良坂はキメラ捜索を行いながら、静かな怒りをたたえて拳を強く握りしめていた。
(‥‥人型、か‥‥例えどんな姿をしていたとしても、敵は敵‥‥だ)
 ルーガは任務が始まってから、何度も自分に言い聞かせるように呟く――が、割り切れるほど彼女は冷酷に徹する事が出来なかった。
「物音‥‥?」
 がさ、と耳に聞こえる物音に比良坂が背後を振り向こうとした瞬間――ひゅ、と風を切る音が聞こえ、反射的にそれを避ける。
「キメラ‥‥?」
 比良坂が離れ、ルーガが烈火を構えながら襲い掛かってきた者を見る。その人物は外見こそ人間と変わりないけれど、明らかにこちらに対して敵意を持つ者だった。
「資料にあった槍を所持していますし、キメラ――でしょうね」
 比良坂は呟きながらチンクエディアを構え「キメラの攻撃は俺が捌きますから、ルーガさんは他の班に連絡をお願いします」とルーガに背中を向けたまま言葉を投げかける。
 ルーガは「分かった」と短く言葉を返し、持っていたトランシーバーで他の班へと連絡を行い始めたのだった。


―― 戦闘開始・キメラ VS 能力者達 ――

 ルーガの連絡を受け、能力者達は戦闘に適した広い場所へと向かっていた。比良坂たちがいたのは民家が連なる住宅地、あの場で戦闘をすれば近くにある民家も決して無事では済まされない事が分かっていたから、比良坂とルーガはキメラを別の場所へと誘導し始めたのだ。
 住宅地から少し離れた公園、能力者達が選んだ戦闘の場はそこだった。そして比良坂たちがキメラを誘導してきたのは、能力者たちが公園に合流してから数分後の事だった。

「どうやら、近い間合いが苦手のようですね」
 辰巳は呟きながら、スキルを使用してキメラとの距離を詰めて槍の降り回しを阻止する為に腕を狙って攻撃を行う――が、攻撃は当たったものの辰巳が思っているようなダメージは与える事が出来なかった。
「お前が彷徨うのはここで終わり、つまり終着点だ。久々の戦闘の相手してもらうぜ!」
 覚悟しな、と言葉を付け足しながら黒羽がスキルを使用して風林火山でキメラへと攻撃を行う。
「それで槍を使ってるつもりなのかね、それじゃただ振り回してるだけだろう」
 烽桐が呆れたように呟き「槍ってのはこうやって使うんだよ!」と言葉を付け足しながらキメラへと攻撃を行った。
「そっちばかり気にしていていいのですか?」
 風に白銀の髪をなびかせながらエリーゼが言葉を投げかけ、キメラの腹部に強打を行い、キメラからの反撃が来る前に後ろへと下がる。
(くそ‥‥『これ』はキメラなんだ‥‥)
 ルーガは表情を歪めながらキメラへと攻撃を仕掛けるのだが、キメラの顔に痛みの色が浮かぶと一瞬だけ烈火を振るう腕が揺らいでしまう。
(だいたい、この人型のキメラたちは‥‥何処からやってきたんだ!? 何もない無から人型を作りだせるはずが、ないだろう‥‥!)
 怒り、悲しみ、やりきれなさ、どの感情がルーガを支配していたのかは分からないが彼女は烈火を強く握りしめながらキメラへと攻撃を行っていた。
「がんばれー、我は期待しておるぞ」
 呪歌でキメラの動きを制限しながら、フェンダーが後方から能力者たちに向けて言葉を投げかける。
「キメラは我の美声で動く事が出来ぬ、遠慮はいらぬから今のうちに退治してしまえ」
 どこまでも偉そうな態度で呟くフェンダーだが、きちんと能力者たちを支援しているから誰も文句を言う者はいなかった。
「槍使いのキメラ、こちらは二槍だが‥‥さて、どうでる?」
 ヘイルが不敵な笑みを浮かべながらキメラへと向けて言葉を投げかけ、スキルを使用しながら片方の槍でキメラの槍を弾き、もう片方の槍を使い、足を攻撃してキメラの機動力を削ぐ。
 その時、キメラがぐらりと体勢を崩したのを見過ごす事なく比良坂が「さぁ! 懺悔の時間ですよ!」と大きな声で叫び、スキルを使用してキメラへと攻撃を仕掛けた。
 いくら槍を使うキメラと言えど、間合いを取る事も叶わず、能力者たちは人数の多さを利用してキメラを徐々に追い詰めていく。
「お前は根本的に間違っている。槍が密着して使えないなんて思うなよ! 喰らえ!」
 烽桐は密着した状態からスキルを使用してキメラへ攻撃を行い、結果的にその攻撃がキメラへのトドメとなっていた。


―― 戦闘終了後 ――

 無傷、というわけにいはいかなかったけれど能力者たちは予想よりも少ない負傷でキメラ退治を終える事が出来た。
「本当に元は何だったんでしょうね‥‥それを知ってしまえば、戦えなくなる事もあるんでしょうか‥‥」
 倒れたキメラの死体を見ながら辰巳がポツリと呟く。
「騒がせていたキメラを退治する事は出来た――だが、この町に平穏が戻るのかどうか‥‥」
 2人だったにしろ犠牲者が出てしまったのだ。住人たちはこれからも同じ生活をしながら、きっと同じ気持ちで生活する事は出来ないのだろうと黒羽は心の中で呟く。
(早く誰もが苦しむ事にない世界がやってくれば良いのですが‥‥)
 瞳を伏せながら比良坂が心の中で呟く。
「セイギノミカタ、等と自惚れるつもりはないが‥‥この町だけに限らず、これ以上犠牲者が出したくはないな」
 ヘイルが救急セットで傷の手当をしながらため息交じりに呟く。
(戦いは続く、か。だが――終わるまで続けるだけだ)
 ぐ、と拳を強く握りしめながらヘイルは何度も誓った気持ちを再度奮わせるように厳しい視線で空を仰いだのだった。
「皆、我の為によく頑張ったのじゃ。礼代わりに傷の手当をしてやらん事もない。手当が必要な者は遠慮なく言うが良いぞ」
 フェンダーが能力者たちに言葉を投げかけ「む、何をしておるのじゃ」とルーガに声をかけた。
「‥‥この人型キメラがどこからやってきたのか、それらの謎を解く鍵にでもなればと思ってな‥‥」
 キメラの写真を撮り終えたルーガが小さな声でフェンダーに言葉を返す。もし行方不明になっている一般人、能力者がキメラにされているのであれば‥‥とルーガは考えたのだろう。
 その真剣な表情に「‥‥そうか」としかフェンダーは言葉を返す事が出来なかった。
「大丈夫ですか?」
 初任務で疲れ果てたのかだらけている烽桐にエリーゼが声を掛ける。
「あー、疲れただけだから大丈夫」
 大きく伸びをしながら言葉を返し「ちゃちゃっと報告してぱぱっと帰るか」と呟く。

 その後、能力者達は報告の為にLHへと帰還していったのだった。


END