タイトル:【WF】リア充、爆ぜろマスター:水貴透子

シナリオ形態: ショート
難易度: 易しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/11/30 01:59

●オープニング本文


今年もあと少しで終わりになる。

今年一年、色んな人たちが色んな経験をしたのだろう。

しかし、一年を終える前に――『クリスマス』という行事がやってくる。

恋人がいる人は『クリスマス』を過ごす事が出きて、残念ながら恋人が欲しくてもできない人にとっては『クルシミマス』な日になってしまうのだ。

今日は『クリスマス』が近づき、浮足立っている人たちに自分の使命を思い出してもらおうとい親切心――という名の嫉妬に駆られた人が集まったのだ。

※※※

「クリスマスが、なんだー!」

『クリスマスがなんだー!!』

「恋人がいるからって調子に乗るなー!」

『乗るなー!』

本部近くでは、おそらく今年のクリスマスは「友達と過ごすの」という人や「一人ですが何か?」という人たちが集まりお互いを慰めあっていた。

「我々能力者はキメラやバグアを退治する為に集まった者だろう! その目的を忘れ、恋愛などに現をに抜かしている場合ではない! 畜生、うらやましいぞ!」

どんなに尤もらしい理由をつけても、最後の方で本音がダダ漏れである。

※※※

「さて、どうしましょう」

リア充の室生 舞(gz0140)

●参加者一覧

ミッシング・ゼロ(ga8342
20歳・♀・ER
白虎(ga9191
10歳・♂・BM
ジェーン・ドゥ(gb8754
24歳・♀・SN
市川良一(gc3644
18歳・♂・SN
村雨 紫狼(gc7632
27歳・♂・AA
エルレーン(gc8086
17歳・♀・EL
スロウター(gc8161
24歳・♀・FC
アーレイ・バーグ(gc8261
16歳・♀・HA

●リプレイ本文

―― リア充、覚悟しろ ――

 今年も残す所、あと一ヶ月と少しになっていた。
 今回は『リア充め、覚悟しろ』という意気込みを見せた能力者達が紡ぐ嫉妬の物語である‥‥。

「ボクも男の子とクリスマスイチャイチャしたーいっ!」
 本部の中心で嫉妬を叫ぶのはミッシング・ゼロ(ga8342)だった。
「ふふふ、今年もしっと団も全力で活動する楽しい季節がやってきたのだー♪」
 白虎(ga9191)はミニスカサンタの格好で「リア充めっ、覚悟するにゃー!」と叫んでいる。
「色々リア充がいるのねぇ‥‥しばらくぶりのLHだけど、何あのリア充たち。なんかイラッとするんだけどー。やっつけようっていうか、イライラ解消に付き合って貰いましょうか」
 黒いオーラ全開で微笑んでいるのはジェーン・ドゥ(gb8754)だった。面白ければ何でもいいのよ、と呟いている辺り結構なストレスが彼女の中に溜まっているようだ。
「騒がしいな‥‥いや、まだマシな方か。これからもっと騒がしくなるんだからな」
 市川良一(gc3644)が苦笑しながら集まった能力者達を見渡す。このメンバーが集まってカオスにならない方がおかしい――というくらいにカオスな能力者がいるのだから。
「クリスマスは家族で過ごす日なんだよ? それなのにカップルでイチャイチャしてる悪い子さんは、天使さんがお仕置きしますの」
 エルレーン(gc8086)が浮ついているカップル達を見ながら呟いている。天使がお仕置き、という割にはエアーバットを持つ彼女の姿は恐らくカップルから見たら悪魔に近いのだという事にまだ彼女は気が付いていない。
「クリスマスって実は俺様の誕生日なんだよね! ようするに俺様=神! 平伏せや、愚民ども! そしてリア充爆発しろォォォッ!」
 スロウター(gc8161)がブーブークッションを鳴らしながら高らかに叫ぶ。ちなみに他の能力者達は気が付いていないかもしれないが、彼女自身もリア充である。リア充なのにリア充を粛清しようというのである。
「‥‥今回、リア充撲滅のために私は非情な決断をせざるをえません!」
 アーレイ・バーグ(gc8261)は「ふっ」と妖艶に微笑みながら呟く。
「何だこの罰ゲームゥゥゥ!」
 頭を抱えて叫んでいるのは村雨 紫狼(gc7632)だった。
 今回の目的は『リア充撲滅』だったはず。だから村雨はいい年した野郎ばっかりが集まると予想していた。
 しかし、ここで村雨にとって予想外だったのは『いい年した野郎』が自分しかいなかった事である。
「何コレ! 美少年2、美少女5、野郎――俺! ねぇ何コレ! ある意味、一番ダメージ受けてるのはこれから粛清されるリア充じゃなくて俺だよ!?」
 ちくしょおおお、と叫びながら村雨は今受けたダメージ以上にリア充撲滅を行おうと決意したのだった。


―― それぞれの粛清方法 ――


「ふ、ふふふふ‥‥カッコイイ、そして美味しいお食事をくれる男の子をGETだ!」
 ぐ、と拳を強く握りしめながらミッシングは心の底から叫ぶ。
「と、いうわけで! そこのカッコイイ人! とりっく・おあ・とりーと! ボクとデートしよー♪」
 街歩くイケメンに抱き着きながらミッシングがデートに誘う。しかしそのイケメン既に彼女がいるらしく、抱き着かれてまんざらでもない顔をしている男性を般若の顔で見ている女性がいた。
「何デレデレしてんのよ! 誰よ、そいつ!」
「えぇ!? し、知らないよオレ!」
「じゃあ何で抱き着かれてんのよ!」
「ねぇねぇケンカするのは構わないけど、ボクとデートしてくれるの? してくれないの?」
 ケンカする2人を見ながらミッシングが問い掛けると「彼女いるってわかってるのに何で誘うのよ!」と彼女の方が今にも掴みかかりそうな勢いでまくし立てる。
「え、じゃあクリスマスイブ――「アンタも受けてんじゃないわよ!」はぐっ‥‥」
 ミッシングの誘いを受けようとした男性を女性が殴り「行くわよ!」と引きずって何処かへと去っていった。
「くっ、仕方ない‥‥初めから上手く行くとは思ってないからね‥‥このミニスカサンタ服でつられてくれるカッコイイ人を探すのだ」
 次のイケメンは何処だー、とミッシングは叫びながら美味しい食事を奢ってくれるイケメンを再び探し始める。
 ちなみに彼女は気づいていないだろうが、行動としてはリア充を目指しているように見えるが、実際は彼女持ちのイケメンにばかり声をかけているので密かにリア充撲滅行動に貢献していた。

「仕事を干されたとはいえ、モデルはモデル。そこらのアイドルとか、眼じゃないのよー!」
 ジェーンは「ふっ」と黒く微笑み、最初のターゲットに声を掛ける。
「あ、あなた‥‥酷い人! 私だけって言ったじゃない!」
 泣き真似をしながらジェーンが駆け寄ったのは宝石店に入ろうとしていたカップル。
「えっ、だ、誰!?」
「私だけって言ってたのは嘘だったの!? そうなのね、裏切者なの? 私のお腹の中にはあなたの子供がいるっていうのに‥‥最近連絡をくれないと思ったら、別に女がいたのね!」
 うわあああ、と大きな声で泣き叫び「ちょ、ちょっと‥‥」と男性が周りを気にしながら宥めようとしているのだが‥‥それを聞いた彼女がもちろん黙っていなかった。
「どういう事? 子供がいるとかこの人言ってるんですけど。ねぇ、ちゃんと私に理解できるように説明してくれるわよね? クリスマスプレゼントを買ってる場合じゃなくなったわよね?」
 詰め寄る彼女に「ま、マジで知らないって! この人が勘違いしてんだって!」と言葉を返したのだが‥‥。
「そんな‥‥ひどい‥‥あの日の、あの時の、甘い夜は嘘だったの? そうなの? 遊びだったのね!?」
「ちょっとどういう事なのよ! ちゃんと説明しなさい!」
「マジで知らないんだってば!」
 うわぁぁぁ、と再び泣き真似をするジェーンを見て「この人とは何もないって!」と男性が叫ぶ。
 しかしその言葉の違和感に気づいたのは彼女の方が先だったらしく「‥‥この人、とは? つまり他の人とはあったという事なのね?」と彼女の顔が鬼神のごとくゆがみ始める。
(‥‥あら、この人ってば本当に浮気してたのね‥‥ある意味、天罰かもしれないわ)
 冷めた目で2人を見て(喧嘩に巻き込まれないうちに他のターゲットに変更しようかしら)とジェーンは心の中で呟き、新たなターゲットを見つけるため、その場を去っていったのだった。

(よし、あの人にターゲットロックオンです)
 街を歩くカップル達を見て、アーレイは心の中で呟く。
 そして突然走りだし、男性めがけてわざとらしく「きゃあっ」と可愛らしい声を出しながら男性の背中に飛びつくように倒れこんだ。
「す、すみません、転んでしまって‥‥」
 申し訳なさそうにアーレイが謝るのだが、己の最大の武器である胸をチラ見させながら「お怪我はありませんか?」と男性に問い掛ける。
 背の高い男性からは、もちろんアーレイの胸の谷間が見えており「い、いえお気遣いなく」と少し顔を赤く染めながら言葉を返してきた。
 ‥‥もちろん、隣にいる彼女は面白くないのかあからさまに不愉快そうな表情を見せていた。
 その事に気づいたアーレイは彼女の胸と自分の胸を交互に見比べ「‥‥ふっ」とあざ笑うような表情を見せる。
 ここでアーレイが巧妙なのは、男性からアーレイの表情を見えないようにしていて笑ったのは彼女の方しか気づいていない。
「ちょ、ちょっと早く行こうよ」
 男性の腕を引っ張りながら彼女が急かすように言うが「後日、お詫びをさせて頂きたいので宜しかったらご連絡下さいませ」とアーレイが一枚の紙を渡す。
 ちなみにこれはアーレイのアドレスでも何でもなく、しっと団である。アーレイの思惑のまま彼らがしっと団に行けば、もれなく粛清のプレゼントを貰えるという算段だった。
(それにしても、男性というのはちょろい人が多いんでしょうか‥‥ちょっと胸を揺らせば誰もが彼女よりも私の胸を見てきます‥‥)
 次の胸大好き男を探す為、アーレイは心の中で呟きながら街の中を歩き出すのだった。

「ふ、はははははは‥‥ブーブークッションセット完了ォォォォ!」
 公園の影でこれから来るであろうカップルの末路を見るためにスタンバイしているのはスロウターだった。
 そして、待つこと10分。スロウターがトラップを仕掛けているベンチに仲の良さそうなカップルがやってきた。
「ねぇ、今日は大事な話があるんだ‥‥」
「大事な話‥‥?」
「そう、俺と――『ブッ』――‥‥」
「くさっ!」
「えぇぇ! 俺してないよ!?」
「ねぇねぇ、いいムードの中彼氏がいきなり屁ェこいて今どんな気持ち?」
 あはははは、と高笑いをしながらスロウターがベンチの周りをぐるぐると走りながら「ねぇどんな気持ち!?」と何度も彼女に問い掛けていた。
「こんな時代に桃色なんて許さねぇ! ぶち壊す! 水鉄砲を食らえ!」
 メリークリスマス! と叫びながらスロウターはカップルに水鉄砲で水をかけていく。
「安心しなよ。おまえの彼氏は屁ェなんかこいてない。ベンチの下にブーブークッション仕掛けてあるだけだから」
 市川が一応フォローに入ると「なぁ、さっき「くさっ」って言ったよな!? 俺してないのに!」と男性が彼女に詰め寄っていた。
「しょうがないでしょ! あんなタイミングで『ブッ』なんて音がしたら屁ェだと思うでしょ、普通!」
「うわぁ‥‥思惑通りに事が進んでるよ‥‥」
 嫉妬する能力者の妨害をしようとしていた市川だったが、喧嘩を始めた2人を見てため息混じりに呟いた。
(ここをフォローするのは無理かな)
 先ほどまでは甘いムードだったにも関わらず、大喧嘩をはじめる2人を見て市川は他の騒ぎを妨害する為に、その場を後にした。

「はい、そこのラブラブカッポー! クリスマス風紀委員の俺が取り締まるよ!」
 ピッピーと笛を吹きながら村雨がカップルの前に立ちはだかる。
「こんな街中でイチャイチャなんて何考えてるの、キミ達! 孤独な人が可哀想だと思わないのか! ちなみにその代表、俺!」
 親指で自分を指しながらポーズを決める村雨だが、あまり選ばれても喜ばしくない代表である。
「ごめんなさい。ちょっと可哀想な人なんです」
 カップルに牙をむく村雨を市川が引きずりながら「引き続きイチャイチャを続けて下さい」とカップルに言葉を投げかけた。
「ちょ、ちょ、ちょっと! 何で邪魔するかな! キミは今回の任務の趣旨を分かっているのか! 嫉妬の意味を分かっているのかー!」
 村雨が抗議するが、それからも市川は村雨の嫉妬活動を妨害し続ける。恐らく市川にとって一番妨害しやすかったのが村雨だったのだろう。

「くりすますは家族と一緒に過ごす日だっておししょー様が言ってたから! いちゃいちゃベタベタべとべとするカップルはいけないのです!」
 だからお仕置きするのー、とエルレーンはカップルをエアーバットで殴りつける。
 もちろんエアーバットだから殺傷能力はないのだが、エルレーンの行動は甘いカップルの雰囲気を微妙な物にするという別な意味での殺傷能力は満載だった。
「いちゃいちゃしてる暇があったら、おとぉさんとおかぁさんのためのプレゼントでも買うのー!」
 ぽかぽかと叩くエルレーンにカップルはただただ茫然とするばかりだった。
「さっきあなたが綺麗だって言ってたツリーは常緑樹なのー! 何が『わぁ、キレイ☆』なの、アラスカいっちゃえー、アラスカー! しかもおっきいからって胸見せつけてんじゃねーぞ! ‥‥なのー!」
 彼女の胸がエルレーンより大きかった事にショックを受けたのか、言葉の最後に普段の言葉が出てしまっていたが、慌てて『なのー』をつけて誤魔化す。
 しかもカップル撲滅行動の筈なのに、エルレーンの攻撃対象は確実に彼女の方に行っているのはきっと気のせいではない。

「‥‥な、なんという事だ‥‥LHはまだまだ広かった! これ程の猛者‥‥もとい、しっ闘志たちがしっと団に所属もせずに存在していたとは‥‥!」
 しっと団総帥である白虎は所属していないにも関わらず、様々な方面で嫉妬を見せる能力者達を見て、歓喜に震えていた。
 ちなみに、白虎が立っている後ろの木には(おそらく)リア充のカップルたちが飾り付けのようにして吊るされていた。
 本当は爆竹の飾りがついたケーキも用意していたのだが、室生 舞(gz0140)がどこからともなくやってきて「危険物は没収します」とケーキを持ち去っていったのだ。
 白虎が抗議しようとしたが「な・に・か?」と黒い笑顔で言葉を返され「な、何でもないのにゃー‥‥」と言うしか出来なかった。
「総帥、あれって粛清なのか?」
 村雨を引きずっていた市川がツリーの飾りにされているカップルを見て呟く。
「もちろんだにゃー☆」
「でも余計にくっついて桃色度合が増えているような気がするが」
 市川の言葉にハッとした表情を見せる白虎だったが、すでに吊ってしまったのを下すのも大変(面倒)なので、とりあえずそのままにしておく事に決めた。
「‥‥しかし、なんていうか、簡単に粛清が達成できて物足りないのだー!」
 白虎が叫び、粛清を終えた能力者達が戻ってきたが「あれ? スロウターさんも粛清する側にいるの? リア充なのに」と誰が言ったのかは分からないが、嫉妬に燃えているの力者達に燃料を投下した者がいた。
「ぐぎぎ‥‥美味しい食事を奢ってくれる人見つからなかったっていうのに‥‥」
「へぇ、何か今日最大のイラっとする出来事なんだけどー」
 ミッシングとジェーンがスロウターを見ながら妬ましそうに、それなのに笑顔で言葉を投げかける。
「っつーかさ、チミたちぃ? なーんで今回の任務に参加したんだYO! みーんなかっこいいし、可愛いし、異性がほっとかないだろー!? 全然悲壮感とかないじゃんかー! 一番悲壮感漂ってるのは俺だよ!? 俺!」
 村雨ががっくりと項垂れながら叫ぶ――が。
「ま、残念だが俺の対象は9歳から13歳なんでなー! あー、どっかに俺を「おにいちゃん☆」って呼んでくれる美幼女とか落ちてねーかなー。それとか拾った子猫が猫耳幼女になって「ご奉仕するにゃん☆」とかさー」
 1人、妄想の海に漂っている村雨を見て能力者達はドン引きしたのか、村雨との距離を取り始めていた。
「と、とりあえずーリア充なのに粛清に参加しちゃった人をお仕置きなのー! という事でいいのー?」
「そうですね‥‥ここにお相手がいない事が残念ですが、とりあえず粛清の方向で宜しいでしょう」
 アーレイが爽やかな笑顔でエルレーンに言葉を返す。
「待て、落ち着け? これ、やるから落ち着け?」
 スロウターはブーブークッションを能力者達に投げつけ、一目散に逃げていく。
 もちろん、能力者達が粛清の為にスロウターを追いかけ始めたのは言うまでもない。


END