タイトル:夢幻の如くマスター:水貴透子

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/11/25 00:57

●オープニング本文


苦しい時間は長く続くのに、
平和な時間は長くは続かない。

まるで夢か幻かのように‥‥。

※※※

町にキメラが現れた。

少し前にもキメラが現れ、その時も能力者達がやってきて退治して行った。

安心していたら、再びキメラが現れ、町の住人達は避難せざるを得なかった。

特に何か理由があったわけでもないだろう。

一言でいえば『運が悪かった』だけなのかもしれない。

だけど戦うすべを持たない一般人にとっては、毎日が恐怖でしかなかった。

※※※

「2回目か、言い方は悪いかもしれないけど‥‥運がなかったわよね」

女性能力者が資料を見ながらため息混じりに呟く。

「運が悪いって‥‥実際その通りかもしれないけど、もうちょっと言い方はないのかよ‥‥」

呆れたように男性能力者が呟き、女性能力者から資料を受け取って視線を落とす。

「特に何があるって場所でもないんだよな」

「そうね、バグアにとって有利な地でもなければ特別な何かがある場所でもない。
 だから言うんじゃない、運が悪かったって」

「怪我人が出てるけど、死人はなし――か。不幸中の幸いってところだな」

男性能力者はため息を吐き、残る資料を読み始めるのだった。

●参加者一覧

須佐 武流(ga1461
20歳・♂・PN
ジン・デージー(gb4033
16歳・♀・DG
鳳 勇(gc4096
24歳・♂・GD
ジョシュア・キルストン(gc4215
24歳・♂・PN
トゥリム(gc6022
13歳・♀・JG
フール・エイプリル(gc6965
27歳・♀・EL
エルレーン(gc8086
17歳・♀・EL
坂上 透(gc8191
10歳・♀・FC

●リプレイ本文

―― キメラ退治に向かう能力者達 ――

(今回の敵は一体か。一般人には脅威だろうが油断せず、徹底的にやらせてもらう)
 二度と反撃する気力が起こらんほどに、と心の中で言葉を付け足すのは須佐 武流(ga1461)である。
 彼は他の能力者達よりも先に高速艇へと乗り込んでいて、今回オペレーターから渡された資料に目を通していた。

 そして本部の方では‥‥今回同じ依頼を受ける能力者達の顔合わせが行われていた。
(運が良いだとか悪いだとか、そーゆーことって確かにあるんでしょうけどー。わけのわからない物を押しつけられて、わけのわかんないままに死んで行くのが人間ですもん)
 嘆いたって何も始まらないです、と資料を読みながら心の中で呟いているのはジン・デージー(gb4033)である。
「キメラ退治をしても再び襲われる町か。厄介な事情がありそうだな」
 鳳 勇(gc4096)はオペレーターに所有するジーザリオの輸送申請を提出しながら呟く。再び襲われた事に何かの原因があるのではないかと考え、町の中を調べて回るつもりだったからだ。
「まぁ、簡単に言えば全員でおっさん狩り――という事ですかね」
 ジョシュア・キルストン(gc4215)が呟く。
(多勢に無勢ですから、苦労はそうないと思いますが‥‥油断なく行きましょうか)
 ジョシュアは資料を見ながら心の中で呟く。例えどんな弱いキメラであろうと、油断すれば最悪の事態になりえるのだから。
「物事には必ず原因があり、それを取り除かない限り繰り返されると僕は思います。だから、運の悪さだけが原因とは思えないです」
 トゥリム(gc6022)が呟く。
「確かに‥‥何かしらの原因があるかもしれない。調べるに越したことはないわね」
 フール・エイプリル(gc6965)が呟く。
「まぁ、現地で調べてみない事には何とも言えないね。理由は特にないかもしれない‥‥けど、もし何か理由があるのなら、探さないといけないね」
 エルレーン(gc8086)が資料を見ながら呟く。
「ふむ、二度現れた事に何か意味があるのかもしれんの。大した目的もなくやってきたというのなら、腹立たしい奴らじゃのぅ」
 坂上 透(gc8191)はため息交じりに呟き。
「まぁ、我は早くお家に帰ってごろごろしたいのじゃ。そのためにもさっさとキメラ退治を済ませてしまおう」
 あくびを噛み殺しながら坂上は続けると、能力者達は高速艇に乗って、目的地へと出発していったのだった。


―― 静かな町に潜むキメラ ――

 今回の能力者達は、組んで行動する者と単独で行動する者とに別れてキメラ捜索を行う事にしていた。
 班で行動する能力者は鳳、トゥリム、エルレーン、坂上の4名。須佐、ジン、ジョシュア、フールの4名は単独でキメラ捜索を行い、
「私はバイク形態のAU―KVでキメラ捜索をしますね。あ、それとこれ町の地図です。人数分の地図を預かってたんですー」
 ジンが能力者達に地図を配りながら呟く。
「キメラが一か所に留まってるってこともないでしょうから」
 すんなり見つかったら良いんですけど、とジンは言葉を付け足す。
「町の広さは‥‥広くはないですね、どっちかと言えば町というより村に近い感じのような気がします」
 ジョシュアが地図を見ながら呟く。確かに彼が言う通り、町の規模は小さく、固まって行動するよりもいくつかに別れてキメラ捜索を行う方が効率は良いのだろう。
「さて、このままこうしていても何も始まらないし、そろそろキメラ捜索を始めましょうか」
 フールが呟き、能力者達は単独で、そして班で行動を開始したのだった。

※※
「こうして見ていると、至って普通の町なんですけどね」
 トゥリムが周りを見渡しながら呟く。彼女は暗視スコープ、探査の眼、サプレッサーを使っており、スコープを使用していない能力者達よりは視界が開けていた。
「そういえば、住人は避難済みなのだったな」
 坂上が資料に書かれていた事を思い出しながら呟き「狭い町であれ、こうも静かだと不気味にも思えるのじゃ」
 坂上が呟くと「確かに‥‥」と納得したように鳳が言葉を返した。住人が避難しているせいか、家にも灯りはなく、町全体がひっそりとしていて不気味さを醸し出していた。
「まさかとは思うが‥‥こんな所にはおらんじゃろうな」
 坂上がゴミ箱のふたを開けて中を覗き込みながら呟く。
「そんな所にいたら逆に怖いような気がしますよ‥‥」
 トゥリムが苦笑しながら言葉を投げかけると「確かにそうじゃな。そこまで阿呆でもないじゃろう」と言葉を返した。
「あっちは住宅地かな? 身を隠すのに不自由はしなさそうだし、あの辺から探してみない?」
 エルレーンが前方を指差しながら他の3名の能力者に言葉を投げかける。
「ふむ、謎の秘密結社のようなものがあれば面白そうじゃな。あるわけないと思うが」
 坂上は呟き、鳳やトゥリム、エルレーンの後ろをついていきながらキメラが絶対に居る筈がないであろうゴミ箱や壁の隙間などを見ながら呟いた。
「キメラ退治が終わった後は我のジーザリオで町の中を見て回るとするか」
「そうだね、キメラが戻ってきたってのも変な話だし、念には念を入れてきちんと見て回った方がいいよね」
 エルレーンが鳳に言葉を返す。
 それから暫くの間、4名の能力者達は住宅地付近を重点的にキメラ捜索を行ったが、残念ながらキメラを発見する事は適わなかった。
 しかし――まもなくジョシュアからキメラを発見して、フールと一緒にキメラを牽制しているという連絡が町のそれぞれに別れている能力者達に告げられたのだった。

※※
 少しだけ時をまだキメラを発見出来ていない頃に遡る。
「うーん、暗いせいもあって見つからないなぁ‥‥」
 ジンはAU−KVに乗りながら夜の町を走っていた。怪しそうな場所があればすぐに見て回っていたのだが、残念ながら彼女もまだキメラ発見には至っていない。
(でも住人が避難済みのおかげで、万が一の心配もないし、その点だけは良かったかも。住人が留まったままだったら戦闘するのも大変でしょうし‥‥)
 心の中で呟きながら、ジンは再びバイクを走らせる。

「何で僕は夜の町でおっさんを探しているんでしょうねぇ。どうせ探すなら美人なお姉さんがいいんですけど」
 はぁ、とため息を吐きながらジョシュアがビルの屋上に行き、双眼鏡でキメラ捜索を行っていた。
「それに今回はナンパしていいのか悪いのか、分からない人が多めなんですよね。小さすぎたり、仮面の人だったり‥‥ナンパの事でこんなに悩むのは初めてかもしれませんね」
 苦笑しながらジョシュアは再び捜索を続ける。
 すると、町から少し離れた場所で怪しげな人物を見つける。今回一緒に来た能力者ではないし、資料にあったキメラ像と一致している。
(‥‥とりあえず確かめてから連絡はした方がいいですよね)
 ジョシュアは心の中で呟き、ビルから降りてその人物の所へと向かい始めた。

 ジョシュアがキメラの所へ向かう途中、偶然にもキメラ捜索を行っているフールと鉢合わせになった。
「フールさんもあの怪しいおっさんがキメラか確かめる為に?」
 ジョシュアが問い掛けると「キメラが近くにいるんですか?」とフールは首を傾げながら言葉を返した。
 どうやら彼女は偶然にもキメラが近くにいる場所までやって来ていたらしい。
「僕はあっちのビルから見ていたんですけど、ちょっと怪しい人を見つけたんで。一緒に来た仲間でもなさそうでしたし」
 ジョシュアが説明すると「気づかれないようにした方がいいですね」とフールが言葉を返す。
 そして2人はキメラの死角になる場所から確認すると資料にあった通り、高齢の外見、そして槍を所持している事からほぼ間違いなくキメラである事が判明した。
「はいはい、こちらジョシュア。キメラっぽいおっさんを見つけましたよ。ちなみにフールさんも一緒にいます。場所は――‥‥」
 ジョシュアは説明を終えると「さて、逃げないように牽制しなくちゃいけませんね」と言葉を付けたし、フールと共に武器を構えたのだった。


―― 戦闘開始・キメラ VS 能力者達 ――

 連絡を受けた能力者達が合流したのは10分も経たないうちだった。
「ふん、俺の前に現れた事を後悔するんだな――死んだあとで」
 須佐は呟き、スコルとミスティックTを使用してキメラへと攻撃を繰り出す。
「そっちばかりに気を取られていていいのかな?」
 ジョシュアは呟き、キメラの背後から攻撃を繰り出す。その際、反撃を受けて槍の柄で腹部を強打されたため、痛みに表情を歪めながら、ジョシュアは後ろへと下がる。
「離れて下さい!」
 ジンは小銃・FEA−R7を構え、キメラを狙って射撃を行い、仲間の援護を行う。
「奴の攻撃はこちらで受ける。後の事は頼んだ」
 鳳はスキュータムを構え、ジンへと言葉を投げかける。彼はジンが射撃で他の前衛能力者達を援護しやすいようにキメラの攻撃が来ても守る、と言いたいのだろう。
「あなたにセベクの神からの慈悲は与えられないようですね」
 フールは呟き、ピクシスアックスを大きく振り上げ、スキルを使用しながら強力な一撃をキメラへと見舞う。
 その際、エルレーンが側面から大鎌・プルートでキメラを斬りつけており、エルレーンの攻撃に気を取られ、キメラはフールの攻撃を防御する事が出来なかった。
「嘆かわしい奴じゃのぅ、男なら正々堂々と戦いを申し込めば良いというのに‥‥我がお主の性根を叩き直してやろう」
 坂上は呟いた後、竜斬斧・ベオウルフを大きく振りかぶる。
「穏やかに暮らしていた人たちを脅かした罪は重いよ」
 坂上の攻撃が当たる前、トゥリムはクルメタルP−56でキメラの手を狙い撃つ。彼女が放った弾は手を貫き、キメラは持っていた槍をがらんと地面に落としてしまった。
 そして、坂上の攻撃が当たり、ぐらりとよろめいた所を須佐が回し蹴りや膝蹴りを行う。能力者達にとっては幸いなのか、キメラそのものの強さは大した事はなかった。1人で戦うならともかく、8人で戦うキメラとなれば相手が哀れになるくらいに実力の差があった。
「そろそろ頃合いか‥‥。お遊びはここまでだ、朽ち果てろ!」
 鳳は大きな声で叫び、驟雨を構えてキメラへと攻撃を行う。そして同時にトゥリムも射撃を行い、エルレーン、坂上、フールの3名がそれぞれ合わせてキメラへと攻撃を行い、無事にキメラを退治する事が出来たのだった。


―― キメラ退治後 ――

 キメラを退治した後、能力者達はそれぞれ傷の手当てを行っていた。無事にキメラを退治できたとはいえ、無傷で戦いを終える事は出来なかった。
 そうしているうちに、町から離れていた人達が戻ってきはじめ、能力者達は最初に町の中を見て回る事から始めた。
「僕の提案に賛成してくれて、ありがとうです」
 トゥリムは能力者達に深く頭を下げながらお礼の言葉を述べる。
「いや、二度も襲撃があるとは‥‥運が悪いだけじゃ片づけられないかもしれないからな。一度調査をしてみるのも悪くはない考えだと思う」
 もし理由になる物があれば運が悪い所の話じゃないけどな、と須佐は言葉を付け足す。
「あの、何かしら原因がある筈なのです。何か知らないですか? キメラに見覚えがあるとか、他に些細な事でも何でもいいんですけど‥‥」
 トゥリムが帰ってきた住人達に問い掛けるのだが、住人達も心当たりがないのか、能力者達が知りたい情報を持っている者はいなかった。
「住宅地やビルも、キメラ捜索の時に見てみたけど‥‥何も見当たらなかったよね」
 はぁ、と小さくため息を吐きながらエルレーンが呟く。
「はー、お家に帰ってごろごろしたい‥‥あーあー、誰かおんぶしてくれないかのー」
 坂上は壁に寄りかかりながら「キメラ退治でも疲れたしのー」と再びため息を吐く。
「おんぶ、しましょうか?」
 苦笑しながらジョシュアが坂上に言葉を投げかけると「そうか。悪いの!」と笑顔で言葉を返し、ジョシュアの背中に張り付いた。
「ジーザリオで周辺を見てきたが、特に怪しい場所や物は見つからなかったな」
 鳳が能力者達の所へと戻ってきて呟くと「一体何の意味があったんでしょう」とフールが言葉を返す。
「意味があったにせよ、なかったにせよ、こうまで何も原因が見つからないとなると‥‥怖いというか、不気味な感じがしますね」
 フールの言葉にトゥリムも胸にもやもやしたものが溜まっているらしく「この町‥‥大丈夫かなぁ」と小さな声で呟いた。
 もちろん、それは呟いたトゥリム本人にしか聞き取れないくらいに小さな声だったのだけれど。
(あんまり不安にさせるような事を言うのは駄目ですかね‥‥)
 キメラが退治され、喜んでいる住人たちの姿を見て、今回の出来事が不気味な物だと知らせてはいけないような気がしていた。
「とにかく、戻りましょうか。本部には今回の出来事をきちんと報告して、相談してみるというのも良いかもしれませんし‥‥」
 ジンが能力者達に言葉を投げかけ「そう、だな」と鳳も言葉を返し、能力者達は高速艇へと向かう。

 そして、本部に帰還して、今回の不気味な出来事を能力者達は報告するのだった。


END