タイトル:週刊記者と南瓜の王様マスター:水貴透子

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/11/13 00:12

●オープニング本文


ちぃ――ッス!

久々にマリちゃん出動なのだよ!

※※※

「ねぇねぇねぇ、これ面白いキメラだよね! 南瓜だよ。南瓜!
 南瓜の被り物なのかな? それとも本物の南瓜なのかな!」

朝も早くからぎゃあぎゃあと騒ぎ立てるのはクイーンズの記者である土浦 真里(gz0004)だった。

「はぁ‥‥まさかしゅz「取材に行ってきます!」最後まで言わせなさいよ」

同じ記者であるチホがため息混じりに呟くが、マリは気にする事なく取材の準備を始めている。

「止めても無理よ! マリちゃんは久々に取材に行けて嬉しくて飛び出しそうなんだから!」

びしっと指を指しながら叫ぶが「止めないわよ、止めるって行為自体が無駄じゃないの」とチホは二度目のため息を吐いた。

「大丈夫だって、ちゃーんと能力者に護衛は頼んであるし!」

「ならいいんだけど‥‥なるべく大人しくてなさいよ? ただでさえ一般人の護衛とか能力者にとって面倒なんだから少しでも負担を減らせるように‥‥」

「わーかったってば! チホってば煩いなぁ‥‥そんじゃ、行ってきまーすっ!」

荷物を抱え、マリは叫びながら編集室を出て行ったのだった。

●参加者一覧

小鳥遊神楽(ga3319
22歳・♀・JG
辰巳 空(ga4698
20歳・♂・PN
玖堂 鷹秀(ga5346
27歳・♂・ER
シュブニグラス(ga9903
28歳・♀・ER
佐倉・拓人(ga9970
23歳・♂・ER
フローラ・シュトリエ(gb6204
18歳・♀・PN
エレナ・ミッシェル(gc7490
12歳・♀・JG
ルーガ・バルハザード(gc8043
28歳・♀・AA

●リプレイ本文

―― 南瓜キメラ退治に向かう能力者達 ――

「‥‥今回はマリさんも最低限の自重はしてくれたみたいね、毎回こうだと玖堂さんやあたしの心労が減るんだけど‥‥」
 小さくため息を吐きながら小鳥遊神楽(ga3319)が呟く。クイーンズ記者、土浦 真里(gz0004)の強引さ、横暴さを知らない能力者達から見れば今回も多少強引ではあるはずなのだが、マリという人物を知りすぎている能力者達にとっては、これでも自重していると判断したようだった。
「とりあえず、護衛の人の言う事をきちんと聞いてちょうだいね、マリさん」
 小鳥遊がマリに言葉を投げかけると「戦闘に入ったら何が起こるか分かりませんからね、私から離れないようにしてください」と辰巳 空(ga4698)が言葉を付け足した。
「むー、これでもマリちゃんは結構大人になっているのだよ! 子供みたいに言い聞かせられなくても大丈夫ですー!」
「大人になるまでにどれだけ私達の苦労があった事か‥‥それにこの季節なら読書、芸術、食欲など色々な秋がありますが、やはり取材の秋ですか‥‥」
 そうでなければ真里さんとは言えませんが、としみじみとした口調で呟くのはマリの夫でもある玖堂 鷹秀(ga5346)だった。
「そうねぇ、でも相変わらずのキメラセンサーね。こんなキメラばかり見つけてきて‥‥貴女、ほんとに連れてかれるわよ?」
 シュブニグラス(ga9903)が苦笑しながらマリに言葉を投げかける。
「その辺は、ほら‥‥皆を頼りにしてるしー!」
 あはは、と笑いながら言葉を返してくるマリにシュブニグラスは盛大にため息を吐いた。
「ふん、それにしても南瓜のキメラとはな‥‥ジャック・オ・ランタン気取りか。いいだろう、こっちもそれなりに供応させてもらおうかな」
 ルーガ・バルハザード(gc8043)が資料を見ながら呟く。
「死神です。宜しくお願いします‥‥死神です」
 大事な事なのか死神という言葉を二回言って現れたのは死神に扮している佐倉・拓人(ga9970)だった。
 今回、南瓜のキメラが現れた事で能力者達は仮装してキメラ退治に向かう者も少なくはなかった。小鳥遊は漁師の格好をしており、玖堂はミイラ男(もちろん白衣は着ている)、シュブニグラスは魔女、そして佐倉は死神、ルーガはワーウルフと仮装している能力者の方が数多くいた。
「仮装ねー‥‥検討はしたんだけど、どうもイマイチ良いのが浮かばなくて」
 苦笑しながらフローラ・シュトリエ(gb6204)が呟いた。彼女は任務に来る前、件の廃村の地形やキメラの特徴などを調べており、仮装をする暇がなかった、というのが正しい表現なのかもしれない。
「ふふふ、私も仮装してみたよっ!」
 今回のキメラと似たような格好をしているのはエレナ・ミッシェル(gc7490)だった。
「今回のキメラってかぼちゃでしょ、かぼちゃ! バグアって面白いねー♪」
 マリに勝るとも劣らないテンションで「かぼちゃ!」とエレナは叫んでいた。
「私も仮装してみたつもりはないんですが‥‥どう見ても仮装のような装備ですね」
 苦笑しながら辰巳が呟く。彼が装備しているのはセラフィックアーマー、エンジェルシールドと天使に扮しているような物ばかりだった。
「それじゃ、そろそろ出発しましょうか。暗くなってもこちらが不利になるだけですからね」
 佐倉が呟き、マリと能力者達は高速艇に乗り込み、南瓜キメラが徘徊している廃村へと向かい始めたのだった。


―― 古びた村で待ち受けるは南瓜キメラ ――

 今回、キメラが現れたのは誰も住んでいない小さな村。大きな場所でない事から能力者達は班を分けずに固まって行動をしてキメラ捜索と退治を行う作戦を立てていた。
「うっわー、いつくらいから人が住んでないんだろうね! 草が茫々じゃん!」
 マリがカメラを構え、写真を撮りながらきゃあきゃあと騒いでいる。
「あぁ、真里さん! あまり離れないで下さい」
 護衛役にもなっている辰巳はマリが離れるたびに注意をしているのだが、既に廃村に到着してから何度も注意を行っていた。
「もー! 早くこっちに来てってば! まったく取材心を分かってないなぁ」
 ぶつぶつと文句を言うマリに対し、夫である玖堂が何度も「すみませんすみません」と頭を下げていて、能力者達は玖堂に同情せざるを得なかった。
「草も茫々だし、瓦礫とかも多いから隠れる場所はありそうね――真里ちゃん、さっき注意されたばかりなのに離れちゃだめよ」
 シュブニグラスが周りを警戒しながら呟くが、一番警戒しなくてはならないのはマリかもしれない、と心の中で言葉を付け足していた。
「複数とも単体とも資料にはありませんでしたが、キメラの数はどれくらいなんでしょうね‥‥」
 佐倉が資料を見ながら呟くと「どうだろ、とりあえず複数いるって考えてた方がいいかもしれないね」とフローラが言葉を返した。
「複数いる場合は退治しちゃえばいいし、いなかったらいなかったに越した事はないからね」
「そうですね」
 フローラと佐倉は言葉を交わし、再びキメラ捜索に戻る。
「もう、早く出てきてくれないと食べ‥‥退治出来ないー!」
 エレナが大きな声で叫ぶ――が『食べる』という本音が聞こえたのは気のせいではないだろう。
(同じ目的の能力者がいたのか)
 ルーガはエレナを見ながら心の中で呟いていた。
 今回のキメラが南瓜だと知ったルーガはエレナと同じく、キメラ退治という目的の他に食べる――いや、むしろ調理するという目的も持っていた。
 その時、少し離れた所からガサと物音が聞こえ、能力者達は一斉にそちらへと視線を移す。
「‥‥南瓜だね」
 現れたのは資料にもあった通りの南瓜キメラ。色んな意味で興味を引くキメラだった。
「この手のキメラ、素早いタイプが多いのよね‥‥受け売りだけど」
 シュブニグラスが呟き、キメラが向かってくるのを合図としてそれぞれ戦闘態勢に入ったのだった。


―― 戦闘開始・南瓜キメラ VS 能力者達 ――

「えぇ〜! ちょっと離してよ! この位置からだと良い写真が撮れないってば!」
 辰巳の制止を振り切ってキメラに近づこうとしているのは、もちろんカメラを構えたマリである。
「真里さん‥‥あまり派手に大暴れすると後でお仕置き、するぞ」
 覚醒を行いながら玖堂がマリに言葉を投げかけると、「‥‥ま、マリちゃん大人しくこの辺で写真撮ってまぁす‥‥」と辰巳の近くへと戻っていった。
(玖堂さんは一体どんなお仕置きをしてれば、暴走した真里さんを止める事が出来るのかしら‥‥)
 少し疑問に思った小鳥遊だったが、とりあえず目の前のキメラ退治に専念しようとスナイパーライフルを構え直す。
「‥‥化け物め!」
 ルーガは叫びながらスキルを使用しつつ烈火で攻撃を繰り出すが、真剣な戦いぶりと彼女の現在の格好が浮いており、特に獣耳ヘアバンドが一番浮いていた。
「トリック・オア・トリート! 死んでくれないと殺しちゃうぞ☆」
 どこまでも楽しそうに大鎌プルートを振り回すエレナの姿は、少しだけキメラよりも怖い気がしたのだが気のせいと言う事にしておこう。
「死んでくれないと殺しちゃうぞって‥‥どっちにしてもそのキメラに『死ぬ』って選択肢以外は与えないのね」
 苦笑しながらシュブニグラスが呟き、キメラの攻撃を鉄扇で受け止める。
「真里ちゃん! カメラカメラ!」
 たまには格闘しているシーンを提供したいのか、シュブニグラスが真里を呼んで写真を撮るようにと促す。
「南瓜という形に嫌な予感が、まさか自爆したりとかしませんよね? 攻撃を行います! シャドウボルト!」
 佐倉は超機械でキメラへと攻撃を行いながら呟く。その際、誤射しないようにと能力者達に声を掛けてから佐倉は攻撃を行うようにしていた。
(何か外見効果もあって魔王って気がするのは気のせいでしょうか)
 だが肯定されても悲しいので、佐倉はその疑問を口にする事はなかった。
「ほらほら、そっちばかりに気を取られていいの?」
 フローラはキメラの側面から攻撃を行い「よそ見してると危ないんじゃない?」と言葉を付け足す。
「避けて!」
 小鳥遊が叫び、キメラの近くにいたフローラがすぐさまキメラと距離を取る。それを狙って、小鳥遊はスキルを使用しながらキメラへと強力な射撃を行っていた。
「トリックオアトリートってか? 俺のキャンディーは甘かねぇぞコラ!!」
 玖堂はキメラへと言葉を投げかけながら、スキルを使用してキメラの防御力を低下させる。
「いい加減にしてくれないかな〜? かぼちゃだからっていつまでもハロウィン気分でいると駄目だよ? 用無しの南瓜の行く末は‥‥わかってるよね?」
 にっこりと笑顔で大鎌を振るい、キメラへと攻撃を仕掛けながらエレナが言葉を投げかける。もちろんキメラが言葉を理解している――という事はないのだけれど。
「そろそろお暇願いましょうか」
 辰巳は呟き、近くに来たキメラに朱鳳を振り上げて攻撃を繰り出す。
「そろそろ決めさせてもらおうか」
 玖堂が呟き、スキルを使用して能力者達の武器を強化を行う。
「‥‥一刀両断だっ!」
 ルーガはスキルを使用し、叩きつけるように全力でキメラに攻撃を行う。その間に小鳥遊がキメラの動きを止める為に射撃を行っており、佐倉とフローラもルーガに合わせるように攻撃を行い、ジャック・オ・ランタンに扮した南瓜キメラを退治する事が出来たのだった。


―― キメラ退治後に ――

「治療が必要な方はいませんか?」
 キメラ退治を終えた後、玖堂が能力者達へと言葉を投げかける。
 今回、キメラを無事に退治する事は出来たものの、能力者達も無傷というわけにはいかなかった。
 だから戦闘が終了した後、玖堂は能力者達に声をかけてスキルでの治療を行っていたのだ。
「よぉし、次の雑誌掲載に必要な写真が沢山撮れてよかったよかった!」
 カメラを大事に抱え、満足そうに呟くマリの姿を見て一番苦労した辰巳が「良かったですね‥‥」と少し疲れた表情で言葉を返していた。
「さて、このキメラの構成物は、と‥‥」
 治療を終えた玖堂がキメラの生体を調べようとキメラの死体に近寄るのだが‥‥。
「‥‥ふむ」
 キメラの死体を見て、ルーガが小さく呟いた後に粉砕されたキメラの欠片を両手いっぱいに拾って大鍋の中へと入れて、ぐつぐつと煮込む。
「かぼちゃのスープ? 出来たら私も食べる!」
 エレナが手を挙げながら叫ぶ。
「あはは、誰かやるんじゃないかって思ってたけど‥‥本当にやっちゃったわね」
 煮込まれるキメラの姿を見て、小鳥遊が苦笑しながら鍋の中を覗き込む。
「そういえば、何で皆仮装してたの?」
 今さらながらに問い掛けるマリに対して「‥‥それほど強そうな敵でもないし、この程度の遊び心は依頼に差支えないなら、許される範囲だと思いますが、土浦女史はどうお考えで?」と小鳥遊が言葉を返してくる。
「えっ、何か言葉づかいが違うんだけど!?」
「ふふ、あたし達だってしゃれ心の分かる普通の人間なんだって、読者に分かってもらえるような記事を頼むわね」
「う、うん! その辺は任せて!」
 小鳥遊の言葉にマリは「記事に関してはマリちゃん妥協なし!」と言葉を付け足す。
(能力者、ですか‥‥能力者不要論を唱える方もいるみたいですし、今の内に人々の役に立つ事は生き残りには欠かせませんね)
 これからも頑張らなくては‥‥と心の中で辰巳は言葉を付けたし、空を仰ぐ。
「ねぇ、真里ちゃん? 今度キメラを見つける時は室内にいるキメラにしてね。そろそろ寒くなってくるから」
 シュブニグラスが少し震えながらマリに言葉を投げかける。今日も少し風が冷たく、シュブニグラスにとっては寒いのだろう。
「そういえば、さっき可愛い武器持ってたよね! 人形のやつ!」
 マリが思い出したように佐倉へと問いかけると「あぁ、これですか」と超機械ビスクドールを見せる。
「ちょ「駄目です」‥‥最後まで言ってないのにー!」
 佐倉はマリの言葉を遮り、にっこりと笑顔で言葉を返す。
(まさか本当にちょうだいって言われそうになるとは思いませんでしたね‥‥)
 佐倉は苦笑しながら心の中で呟く。
「取材は出来た?」
 フローラがマリに問い掛けると「うん、ばっちり取材出来たよ!」とカメラを見せながら言葉を返した。
「そう、それなら良かった。後はマリさんの仕事だから、頑張ってね」
「もちろん! 協力してくれてありがとね!」
 フローラとマリが話している間、ルーガとエレナは煮込んだ南瓜キメラを食べていた。
「‥‥普通の南瓜っぽい面白みに欠ける味だね‥‥もっとこう、なんていうか南瓜キメラ! って感じの味かなって思ってたのにー!」
 エレナが不満そうに呟き(どんな味なんだろう)と彼女の言葉を聞いていた能力者達が心の中でツッコミを入れる。
「私的には良い味が出ていると思うが‥‥」
「普通の南瓜にしては良い味出てると思うけど、南瓜キメラの味にしてはインパクトが弱い感じがする!」
 不満を言いながらもエレナは完食していた。

 その後、能力者達は報告の為に本部へと帰還し、マリは記事を書く為に編集室へと戻っていったのだった。


END