●リプレイ本文
「今回は‥‥パーティーですか‥‥大丈夫ですかね? 色々とストレス‥‥溜まっていそうですが‥‥」
二人へのプレゼントを手に持ちながら呟くのは神無月 紫翠(
ga0243)だった。
「色々とお二人の噂は聞いていましたが‥‥ご結婚されていたんですね。おめでとうございます」
ぺこりと奉丈・遮那(
ga0352)がアルカに頭を下げながら話しかけると「‥‥あんまりおめでたくないんだけどな‥‥」と風に髪を靡かせながら答える。
「ふふ、お祝いが遅くなってごめんなさいね? 志保ちゃん、パーティーに呼んでくれてありがと♪」
志保に話しかけるのはナレイン・フェルド(
ga0506)だった。ナレインの言葉を嬉しく思っているのか志保は照れながら「お祝いありがとうございます」と答えた。
「この間のアレからどうなるかとちょびっとだけ思ってたけど、うまーくやっているようで良かった!」
ミア・エルミナール(
ga0741)がアルカの背中を叩きながら明るく話しかけながら、お土産として持って来たローストしたハムと紅茶、志保にはメイクセットをプレゼントしていた。
「まぁ、ご丁寧にありがとうございます」
志保は受け取り、続いてシェリル・シンクレア(
ga0749)もプレゼントに自分で作ってきたクッキーとカスタードパイを渡した。
「‥‥これも‥‥」
ベル(
ga0924)も二人にとペアのマグカップを渡す。彼は今まで志保に関わると命がいくつあっても足りないことを学び、騒ぎがあるたびに逃げていたが、今回は運悪くアルカに捕まってしまったのだ。
「あはは〜、新婚さん宅にお邪魔するなんてー、野暮かなぁと思いましたがー『巻き添え』らしいから、良いですよね〜?」
あはは〜、と楽しそうに笑いながら話すのはラルス・フェルセン(
ga5133)だった。
「巻き添え‥‥アルカ様、どういう事ですの?」
志保が怒りメーターを上昇させ、鉄拳を食らわせながらアルカに話しかける。ちなみに鉄拳を食らったアルカは言葉を返すどころではない。
「‥‥‥‥すげぇ嫁さん‥‥」
志保の鉄拳を見て、ザン・エフティング(
ga5141)が目を瞬かせながら呟く。
ちなみに彼はアルカが美人の奥さんと結婚して、そのノロケを見せる為に呼んだのだと思っていた。
もちろん、その考えは目の前で粉々に砕け散った。
「あらあら、皆様立ち話もなんですから家の中に入ってくださいな」
志保がフリル付エプロンを翻し、右手にアルカの服(ちなみに襟)を引っ張りながら家の中へ入るようにと促したのだった。
●そんなこんなでパーティー開始! 惨劇が起きるか!?
「これ‥‥つまらないものですが‥‥」
神無月が志保に持って来た花束とシンプルな腕時計のペアを渡した。
「まぁ、ありがとうございます。大事に使わせていただきますね」
その後、能力者達はリビングに通され、テーブルの上に用意されていた料理と酒、ジュースを煽りながらパーティーを楽しんだ。
アルカのところにいるのは、神無月・奉丈・ベル・ラルス・ザンの五人。
「その後は‥‥どんな生活ですか‥‥?」
神無月がアルカに酒を勧めながら問いかけると「見ての通りさ」とやつれた顔を見せながら不敵に不幸に笑う。
「大変ですね‥‥俺も本気で女に間違われることが多くて‥‥」
ベルがため息と共に悩みを打ち明けると「そうなんですか?」と奉丈が話しかけてくる。
「出会った人の多く‥‥八割ぐらいの人には『ごめんなさい、女の人かと思ってました』と言われます‥‥」
「八割――それはキツいですね‥‥」
「いいじゃないか、八割なんだから。俺なんか十割の確率で志保からの攻撃を受けるんだぞ‥‥」
アルカが泣きまねをしながら話すが「確かに‥‥」とベルから納得されてしまい、余計に彼は泣きたくなったのだとか‥‥。
「でも、料理は美味しいじゃないですか〜。奥さんも美人ですし〜」
あまりのどんよりムードにラルスが料理を一口食べながらフォローに入る。
「そうそう、まあこれでもやるから元気だせって!」
ザンがアルカにプレゼントを渡すが――それが志保の逆鱗に触れた。
「私のアルカ様に何してますのーっ!」
フライパンが台所から飛んできて、ザンは避けたがアルカに命中する。
(「ええええっ!? 俺、何か悪い事したか?」)
ザンはフライパン直撃で仰向けになって倒れているアルカを見ながら心の中で叫ぶ。
さすがの奉丈も何も悪い事をしていないザンにフライパンが飛んできたのには驚く。能力者が驚く中、ベルだけが一人冷静にジュースを飲んでいた。
(「‥‥生きて帰れるかな、俺」)
「ま、まぁ〜、こんな美味しい料理を毎日食べれるんですからアルカ君は幸せものですね〜」
(「おぉ、無理矢理話を変えた」)
ザンが料理を食べながら話すラルスに心の中でツッコミを入れる――が、ラルスの言葉すら志保の中では逆鱗に触れたのだろう。
「何でアルカ様だけが幸せですのーーーっ!」
(「ええええっ!」)
続いて鍋が飛んできて、ラルスは驚きながらも手に持っていたお茶を守る為に鍋をかわす。もちろん鍋の行く先は、フライパン攻撃で漸く起き上がろうとしていたアルカの顔面。
(「ひいいっ、毎日これでよくアルカは生きていられるな‥‥」)
志保の強さとアルカの打たれ強さに驚きながらもザンは息を切らせる志保を恐怖の対象で見ていた。
「まぁまぁ、志保ちゃん。折角のクリスマスなんだもの。怒ってばかりじゃ駄目よ。プレゼントがあるから受け取ってくれるかしら?」
志保の怒りを宥めようとナレインが志保に持って来たプレゼントを渡す。
「え‥‥これは‥‥」
受け取った瞬間、志保は顔を赤くしてプレゼントとナレインとを交互に見る。
「ちょっと早いかとおも思ったんだけど、早くあなた達の子が見たくて、買ってきちゃった‥‥貰ってくれる?」
ナレインが渡したのはベビー用品、黄色を基調とした可愛らしい洋服や玩具が詰め込まれていた。
「まぁ‥‥気が早いかもしれないですけど、私もお二人のお子さんを見たいですわ」
シェリルも両手を頬に当ててにっこりと笑う。
「あの志保――――ビールを‥‥」
宴会場のビールがなくなったのか、アルカがビールを取りに来た瞬間「恥ずかしいですわああっ!」と連続パンチがアルカを襲う。
「‥‥何で俺こんな目に――」
よろよろとビールを脇に抱えてアルカはリビングへと帰っていく。その後でミアが志保に問いかけた。
「そういえば、結婚生活ってどんな感じなの? 後学の為に聞いてみたいなぁ、なんて思ったりするわけで!」
ミアの言葉に志保は照れながら「毎日がスリル満点ですわぁ♪」と答える。
(「うん、きっとその台詞はアルカの台詞だろうね‥‥」)
ミアは志保の言葉に苦笑しつつも心の中で答える
「そうそう、もう一つプレゼントがあるんでしたわ」
シェリルが大きな袋を持って来て、中身を志保に渡す。
その中身は――猫ぱんち、猫ぶーつ、尻尾付きスーツ! の三点セット。
猫ぱんちは肉級のおかげで志保パンチの威力を弱めるというもの。シェリルのコンセプトは『可愛い上にアルカの疲労度低下』だった。
「おぉ、上手いものを考えるもんだね」
ミアが感心したように呟く。
「アルカ様は気に入ってくださいますでしょうか」
猫ぱんちだけを装着した志保が照れたように呟く。
「もちろん、可愛いわ。そうそう、聞いたんだけどかかと落としだけじゃ芸がないから回し蹴りもしてみない? きっと志保ちゃんなら出来るわ♪」
(「うぉぅ、回し蹴りではアルカの命が‥‥」)
ミアは楽しげに話すナレインを見て、本気でアルカの心配をし始めたのだとか‥‥。
その後、志保を含む四人もリビングに向かい、志保の料理を堪能した。
「そうだ、今度一緒に飲みにいこうぜ、今回の礼におごってやるよ」
ザンの言葉に「や、悪いよ」とアルカが答え「俺とお前の仲じゃないか♪」と軽い口調で呟いた瞬間、鬼が降臨した。
「あなたとアルカ様の仲―――どんな仲ですの! 不潔ですわ!」
志保は叫ぶと同時にナレインに教えてもらった回し蹴りをザンに向けて使う――が、もちろん回りにいた奉丈やベル、ラルスなども被害に合う。
「‥‥結論は簡単なものになりました」
今までアルカの悩みなどを聞いていた奉丈は一つの結論に辿り着く。
「アルカさんの悩みを解決するには、志保さんが攻撃を緩めるか、アルカさんが強くなるしかないですね、前者は聞いてくれそうもないので、頑張ってください。アルカさん」
そう言って奉丈は立ち上がり「そろそろお暇しますね」と話す。
「せっかくのクリスマスに長くお邪魔しているのも悪いので、この後にも誘われているパーティーもあるので‥‥」
そう言って縋るアルカを振り払い、奉丈は無事に志保宅から帰っていったのだった。
「でも‥‥こんなに一途な想いを向けられているアルカちゃんって、本当に幸せよね〜」
微笑みながらナレインがアルカに話しかける。
「‥‥確かに志保は美人で料理も上手いし、気立てもいい‥‥乱暴癖さえなければっ!」
嘆くアルカの背中を叩きながらミアが「元気出せって!」と叫ぶ。
「若いうちに可愛いお嫁さん貰えるって勝組だよ! ‥‥多分、世の中ポジティブに考えた方が幸せになれるよ!」
後半は何となく説得に入っているようなミアの言葉だったが「そうかな、そうだよな」と自分に言い聞かせるように納得した。
「ぐはっ!」
鈍い音と共にザンがアルカのところに倒れこんでくる。
「何者だ、あの嫁さん‥‥アルカ、俺はもう帰る。大変だな、アルカ――強く生きろよ」
ザンは棒を杖にするような形でよろめきながら帰っていった。
「‥‥大変ですね‥‥愚痴ぐらいなら‥‥いつでも聞きますので‥‥これを」
神無月は呟きながら自分の携帯番号を書いた紙をアルカに渡す。
「あら? どうかされたんですか?」
番号交換をしている最中に志保が現れ「酔っ払いの戯言です‥‥」と少し苦しい言葉で場をやりすごそうとする――。
「別に‥‥悪いことではないですよ? アルカさんも志保さんも‥‥今幸せなんですから」
神無月が言うと「そうですわね! 幸せですとも!」と志保は満面の笑みを見せた。
その後、能力者達は志保の攻撃(主にラルスに向けて)を避けながら、帰る時間が迫ってきたのだった。
「‥‥それでは、帰ります」
ある程度、片付けの手伝いをした後で能力者達は玄関へと向かった。
(「良かった、生きて帰れそう‥‥」)
「そういえば、ハーブ茶とか下さったのはラルス様ですのね。攻撃しちゃってごめんなさい」
志保がしおらしく謝ると「いいえ、僕も好きなものばかりですけど」とラルスは答える。
「‥‥何故にアルカさまも好きだと言うんですのーっ!」
(((「「「言ってませーーーーんっ」」」)))
志保の最後の攻撃に心の中でツッコミを入れながら、能力者達は無事に志保宅から帰宅する事ができたのだった‥‥。
彼らに幸あれ!
END