●オープニング本文

そういえば、ここ最近‥‥おとなしくしてたから、
奴の存在を忘れていたわ‥‥。

このラストホープには悪魔が住み着いているってことを‥‥。

※※※

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Ｄｅａｒ　キリーちゃん♪
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ＧＯ　ＴＯ　ＨＥＬＬ♪

せっかく同じラストホープに住んでるのに、
キリーちゃんと遊べなくて、ユーリすごくさびしいなあ。

そういえば、ユーリ、キリーちゃんの頑張ってる姿を、
叔母様に伝えてあげようと思うの。

だってきっとキリーちゃんが戦うの、
叔母様もすごく心配してると思うわ。

だから、キリーちゃんはこれだけ怪我しても
大丈夫なんだって証明するために、ユーリも頑張るからね！

次の任務の時は必ずユーリも一緒についていくから、
楽しい任務にしようね。

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ユリエス・ヤン・フォルティシア
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※※※

従姉妹であるユーリからの手紙を読み、
キルメリア・シュプール（gz0278）はわなわなと怒りと恐怖に震えていた。

（あ、あいつ‥‥絶対に私を怪我させるためだけに来るつもりね）

キリーの苦しむ顔が唯一の幸せ、と言っても過言ではないくらいに性格の捻じ曲がった従姉妹、ユーリ。

（これは私の手には負えないわ。むしろ他の奴に押し付けないと私の身が危ないわ）

そう直感したキリーはどうやってユーリの標的を他の能力者に向けようかと全身全力で考え始めるのだった。

●参加者一覧

●リプレイ本文

――　どうなっても厄介事にしか思えない任務　――

「いい？　アイツから私を守りなさいよ？　むしろ自分を犠牲にする勢いで私を守りなさい」
　キルメリア・シュプール（gz0278）は腰に手を当て、ユーリをこそっと指差し、どこまでも偉そうに能力者達へと言葉を投げかける。
（はわわ、キリーさんだけでも大変なのに、ユーリさんまで付いてくるなんて‥‥そんなオマケいらないのですぅ）
　がたがたと震え、心の中で切実な叫びをあげているのは土方伊織（ga4771）だった。それもそうだろう、ほとんどの八つ当たりは彼に来るのだから。
「やぁ、キリー久しぶり〜‥‥そしてご機嫌ナナメかな？」
　神咲　刹那（gb5472）がキリーの背後から抱き着きながら挨拶をする。
「‥‥あのね、いきなり後ろから抱き着かれて不機嫌にならない奴がいたら見てみたいわよね？　っていうかその前に私、すこぶる機嫌悪いの。それに拍車をかけてくれてありがとう、このどへたれが！」
　言い終わると同時にキリーの肘打ちが神咲にヒットする。神咲は腹を押さえながら「相変わらずだなぁ」と言葉を付けたし、視線をふと前に移す。
　そこには『セクハラ、ダメ絶対』という黒いオーラを漂わせる仮染　勇輝（gb1239）と「何をしてるのにゃああああ！」と叫びまくる白虎（ga9191）の姿があった。
「あはは、冗談だってば――ん？　えっと、キリーのお友達、かな？」
　神咲がユーリを見ながら問いかけると「キリーちゃんの従姉妹、ユーリです」と満面の笑顔で言葉を返す。
「ゲエー！　お前はユーリ！！　お、お前もいたのか‥‥そうか、そのせいで今回の依頼は悪寒がしまくりだったんだな」
　ガル・ゼーガイア（gc1478）がユーリを指差しながら叫ぶ。
「人を指差しちゃダメなんだよ？　その指‥‥折るよ？」
　にっこりと笑顔、しかし明らかに黒笑顔で言葉を返されてガルは慌てて手を引っ込める。
（なんだかなぁ‥‥。これだけ怪我しても大丈夫だって証明しようとするユーリちゃんもユーリちゃんだけど、それを人に被せようとするキリーちゃんも、アレだよね）
　春夏秋冬　立花（gc3009）が苦笑しながらキリーとユーリを交互に見比べる。
「あはは、さすがキリーちゃんの従姉妹だよね♪　楽しい人みたいだね」
　ララ・フォン・ランケ（gc4166）が苦笑しながら小さな声で呟く。
「いい？　あいつから絶対に守りなさいよ。あいつは隙あれば私の命を狙ってくるんだから」
「おやおや、キルメリアさんが何かに怯えるだなんて、珍しい事もあるものですねぇ」
　立花　零次（gc6227）がキリーに言葉を投げかけると「うるさいわよ！」とアッパーを食らってしまう。
「（キリーお姉ちゃんが）やられる前にやるまでの事だにゃ」
　キリー護衛に意欲を見せる白虎だったが「白虎さん、心の声がだだ漏れです」と仮染から静かにツッコミを入れられてしまう。
「ねぇ、本当についてくるの？」
　神咲がユーリに問いかけると「もちろん♪　隙あればキリーちゃんを‥‥じゃなくて、キリーちゃんの怪我具合を叔母様に教える‥‥じゃなくて、とりあえずそういう事なんだから」と再び満面の笑みで言葉を返した。
（‥‥うん、もの凄い事を考えてる事だけは分かった。そして纏めるのが面倒で適当に纏めた事も分かった）
　苦笑しながら神咲は心の中で呟き「でも、普通の人にはかなり危険だからおすすめしないよ？　結構歩くかもしれないし‥‥」とユーリを置いていこう作戦を決行するのだが、その作戦は「別に構わないの」というユーリの言葉によってガラガラと崩されてしまった事は言うまでもない。
「ユーリ！　俺がいる限りもやしには指一本触れさせねーぜ！　触れたければ真人間になれ！　これは挑戦状ｄ「却下」最後まで言わせろぉぉぉぉ！」
　ガルがユーリに挑戦状を叩きつけようとしたのだが、それはあっけなく却下されてしまう。
「ユーリちゃん、きっと私たちは仲良くなれると思います」
　だから仲良くしてね、と春夏秋冬が言葉を続けようとした時「日本人はないむねなの？　それとも貴女がないむねなの？」とユーリが言葉を返す。
「‥‥ふぅ」
　その言葉を聞いた春夏秋冬は一度大きくため息を吐いた後「殴ってやるー！　一発殴らせてー！」と暴走を始めてしまう。
「お、落ち着いて下さい！　ってララさん！　写真なんて撮ってないで止めて下さい！」
「え？　だってこんな面白そうなハプニング、写真に撮るしかないでしょ？」
　すちゃっとカメラを構え、止める気配ゼロなララは春夏秋冬が荒れる様を写真に収めている。
「ユーリさん。世の中には黙っていた方がいいという事もあるんですよ」
　フォローしようと仮染が言葉を挟むが‥‥「貴様も私をないむね扱いかー！」と春夏秋冬の怒りゲージは上昇していくばかりだ。
「と、とりあえずキメラ退治に行くにゃー！」
　何故かカオスを振りまくはずの白虎がフォローに回る、こんな事があってもいいのかと彼は心の中で呟きながら能力者達と共にキメラ退治へと出発したのだった。


――　キメラは空気だけど任務なんです　――

（はわわ、今回のキメラさん‥‥わんこなのです。すっごく戦いたくないのですけどー）
　土方は今回のキメラが犬という事を知り、憂鬱な気分になっていたのだが、それよりも戦闘中にユーリが何かしでかさないかという事、それが土方の気分を最大限に低下させていた。
「よし、こうなれば（キリーお姉ちゃんに）普段やろうと思っても出来ない事を存分にやってやるわ！」
　くわっと気合い十分で叫ぶ白虎だが、言うまでもなく心の中で呟いた声がだだ漏れである。
「これならユーリも手出しできねぇだろう！」
　ガルはキリーにぴったりとくっついており、ユーリが何かしようとしたらすぐに対処できるようにしていた‥‥のだが。
「キメラから守るよりもすげー恐怖を‥‥「うん、まず私があんたにぴったりくっつかれて恐怖を味わってるからね、このヘタレＭＡＸが！」ぐふぉ‥‥」
　ガルに対してキリーが手加減無しの肘打ちを食らわし、ガルは膝をついてその場に蹲る――そして、言わずとも知れたメンバーによって粛清されたのだった。
「もう、キリーちゃんがあんな大怪我しても大丈夫だって叔母様に分からせたいのに、怪我をさせるタイミングがないなんて‥‥」
　盛大なため息を吐きながらユーリが呟くが「ユーリさん」と立花が言葉を投げかける。
「キルメリアさんに怪我をさせたら、あなたにも同じ傷をつけますよ？」
　にっこりと、だが何処となく黒い笑顔を浮かべながら立花が呟く。
「大丈夫よ、その時はユーリ以外に怪我させれば問題ないもの」
　ユーリの言葉に（問題大ありです）と立花は心の中でツッコミを入れる。
「んー、それにしてもキメラはいないねぇ。普通の人に探索は大変かな？」
　神咲がユーリに言葉を投げかけると「大丈夫よ、ユーリってば普段鍛えてるから」と笑顔で言葉を返してくる。
（‥‥そう来たか。キメラが居そうにない所から捜索して、ユーリを疲れさせようって作戦だったんだけど、見事に失敗してる感じだよね）
　はぁ、と神咲は小さなため息を漏らす。
「ねぇ、ちなみにあそこにキメラいるよね。何か可哀想だから気づいてあげようよ」
　ララが視線を向けた先には大きな犬の姿をしたキメラの姿があった。明らかに能力者＆同行者が濃いせいか、キメラそのものが空気である。
「は、はわわ‥‥哀れなくらいに空気ーなキメラなのですぅ」
「ま、まぁ‥‥とりあえずさっさと倒しちゃおう♪」
　ララが呟き、能力者達はそれぞれ戦闘態勢を取る。
「‥‥うーん、キメラは怖いけどキリーちゃんが大怪我しそうなキメラには見えないなぁ」
　ぼそぼそと物騒な事を呟くユーリの言葉を聞き、目の前のキメラよりもユーリを警戒しなくては、と能力者達は心の中で思っていた。
「ゆ、ユーリさん。キリーさんは２人の男に言い寄られて苦しんでるのです、それをじっくりと見学するといいのですよ」
　あんまり意味はないだろう、そう思いながらも土方はユーリの標的を変える事が出来ればと思い、声をかける。
「とりあえず、しっかり退治してくるから後方の警戒（むしろユーリ警戒）は頼むよ」
　神咲は言葉を残し、武器を構えながらキメラへと向かって駆け出す。
「ふん、キメラは私をないむね呼ばわりしない分、ユーリちゃんより害はないんだから！」
　春夏秋冬は呟きながら、スキルを使用してキメラとの距離を詰め、機械刀で攻撃を繰り出す。
「うんうん、戦闘中より戦闘後の方がハプニング満載っぽいもんね」
　ララも賛同して、機械剣βを構えてキメラへと斬りつける。
「離れて下さい」
　立花が呟き、キメラがユーリやキリーの方へ行かないようにキメラを牽制するように矢を放つ。
「こっちは困るので、あっち行って下さいですー」
　土方は旋棍を構え、キメラに攻撃を仕掛けながら呟く。
「キリーさん、もう少し後ろに下がっていた方がいいかも‥‥」
「ユーリ、お前も後ろに下が――‥‥」
　仮染とガルが呟いた瞬間、バナナの皮につるりと滑って派手に転んでしまう。
「「こんな所にバナナの皮仕掛けたの誰！？」」
　それぞれ打ちつけた所を擦りながら大きな声で叫ぶが「てへ、ボクにゃー、ごめんね？」と可愛らしく謝る白虎の姿があった。
　ちなみに白虎はユーリ対策としてバナナの皮を撒いていたのだが、何故かそれはユーリではなく仲間（と書いてライバルと読む）に効果を与えてしまっていた。
「ねぇ、ユーリつまんない」
　盛大なため息を吐きながらユーリが呟く。ユーリ達の前ではキメラと能力者達の命をかけた戦いが行われているにも関わらず。
（うーん、凄い‥‥のかな？　命がけで戦ってる人を目の前にして『つまんない』なんて言えるなんて‥‥うん、やっぱりキリーの従姉妹だね）
　苦笑しながら神咲がキメラへと攻撃を行う。神咲の攻撃が終わった後、立花が矢を放って動きを止める。
　その隙を見逃す事なく、ララと春夏秋冬が合わせて攻撃を行い、犬キメラ――又の名を空気キメラを無事に退治する事が出来たのだった。


――　誕生日と彼氏候補？　――

「そういえば、さっきつまらないって言ってたけど面白い事を教えてあげるね。実はキリーちゃんには彼氏候補が３人いるんですよ」
　春夏秋冬がユーリにぼそっと教えてあげると「えぇ！　キリーちゃんってモテるの！？　あの性格でモテるの！？」と大げさに驚くユーリの姿があった。
「まぁ、腹黒、かっこつけ、ドＭの三択なんですけどね」
「今、ドＭって言った奴前に出ろ！」
「俺はＭじゃねぇ！」
　何故か『ドＭ』に対して仮染、ガルの２人が過剰反応を見せる。恐らく春夏秋冬が言ったドＭとはガルの事であり、仮染の事ではなかった‥‥筈だ。
「あれ？　何でドＭが２人もいるの」
　春夏秋冬は苦笑しながら言葉を返し「あ！」と思い出したように荷物の中からキャンディーセットを取り出してキリーへと渡す。
「お誕生日おめでとう！」
「え‥‥私に？」
　キリーはまさか誕生日プレゼントを貰えるなんて思っていなかったのか、目を瞬かせながらプレゼントと春夏秋冬を交互に見比べている。
「はっ、ぼ、ボクだってー！」
　白虎も慌ててプレゼントに用意していた百合の花とケーキを渡す。ちなみにここで「え、どこに隠し持っていたの？」とツッコミを入れてはいけない。大人の事情である。
「あぁ、これは俺からですよ」
　仮染も防寒手袋と手編みの蒼いマフラーを渡す。
「あ、これ！　ふわふわクッション！」
　ララもふわふわクッションをキリーに渡す。
「俺からは‥‥こんな物しかありませんが、宜しければどうぞ」
　立花がキリーにデビルウィング、ユーリにエンジェルウィングを渡す。立花はどちらがいいかとキリーに選ばせたのだが、何故かキリーはデビルウィングを選んでいた。
「お、俺も！」
　ガルも慌てて荷物からプレゼントを渡す――――ブルマ（赤）を。
「‥‥ドＭさん、１つ聞いていいかしら？　何故にブルマ。何故に赤。何故にブルマ」
　とりあえず何故ブルマなのかという事は大事な事なのだろう、キリーは２回呟いた。ガルが渡したプレゼントを見て、他の能力者達は口を揃えて呟いた。
「凄いね、ガル君。一気に私達が渡した物が霞んじゃうくらいにインパクトのある物を渡したんだから、マネできないなー」
（はわわ、こ、この雰囲気の中では言えないですぅ。ぷ、プレゼントを用意してないなんて絶対に言えないですぅー、死亡フラグが立っちゃうのですー）
　土方はがたがたと震えながら心の中で呟き（とりあえず、ブルマで話題をそらしてほしいのですぅー）とひそかにガルを生贄に捧げている土方の姿が見受けられた。
「こ、こうなれば総帥のカオスとユーリの心の闇！　どっちが上かを決めるのにゃ！」
「わぁ、総帥ったら自分を犠牲にしてキリーちゃんを守るんですね、分かります」
　白虎がビシッとユーリを指差しながら叫ぶが、ララにからかわれ、指した指はユーリによってギュウウウウと強く握られてしまい、廃村に白虎の悲鳴が響き渡る。
「人を指差しちゃダメだって言ったでしょ？　千切っちゃうよ？　大体何でユーリがしようとする事をみんな邪魔するの？　ユーリはキリーちゃんを怪我させたいの！」
　最後の最後ではっきり言い切ったユーリを見て（うわぁ‥‥）とドン引きする。
「大体、何でキリーちゃんばっかりプレゼント貰ってるの？　ユーリの分は！」
「え、キリーちゃんはこの前誕生日だったからだよ？　ちなみにユーリちゃんの誕生日は？」
「３月」
「まだまだじゃん」
「何で誕生日は年に１回なの！？　ユーリ、理不尽だと思う！」
　とりあえず何かにケチをつけたいユーリこそが理不尽だという事に彼女は気が付いていない。
「と、とりあえずケーキはあるから‥‥」
　仮染が宥めながらユーリにケーキを渡すと「勇輝！　あんたどっちの味方なのよ！」といきなり板挟みにされてしまう。
「場を収めようと頑張ったのに、今度はキリーの機嫌を損ねちゃったみたいだねぇ」
　神咲が苦笑しながら呟く。
「‥‥‥‥」
　白虎が拳を強く握りしめ、怒りに身を震わせている。
「ちくしょう！　何なんだにゃー！　一番可哀想なのはキリーお姉ちゃんと一日しか誕生日違わないのに祝われないボク！　ボクが筆頭可哀想キングなのにゃ！」
　ぷっつんとキレてしまった白虎が叫ぶと、それまで騒がしかった能力者やユーリがぴたりと言葉を止め「あぁ、確かに‥‥」と憐みたっぷりの視線を送られる羽目になった。

　とりあえず、ユーリの魔の手からキリーを守る事は成功したのだが、色んな意味で傷を負う能力者が数名いたという事は伏せておこう。

ＥＮＤ