タイトル:翼あるモノマスター:水貴透子

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/09/28 23:15

●オープニング本文


その鳥は襲う。

視界に入るすべてのものを。

※※※

「ずいぶんと大きな鳥ねぇ」

任務の資料を見ながら女性能力者が小さな声で呟く。

「この森、結構広いんじゃない?」

資料に挟まれている地図を見ながら、女性能力者が言葉を付け足す。

「あぁ‥‥この森の近くに町があって、そこ出身の能力者がいるんだけどさ。
 結構、森そのものが広いみたいだな」

同じく資料を見ていた男性能力者が言葉を返すと「え?」と女性能力者が聞き返す。

「町が近いって‥‥キメラに襲われる心配はないの?」

女性能力者が問いかけると「その心配はないみたいだよ」と男性能力者が言葉を返す。

「近いって言っても、そこまで近いってことじゃないみたいだから」

「そう‥‥ならいいんだけど‥‥町が近いなら戦い方を考えなくちゃいけないところでしょ」

「だよな。でも、そういう心配はないみたいだから大丈夫なんじゃね」

男性能力者が言葉を返すと「問題点はキメラ捜索、かしらね」と女性能力者が言葉を返した。

●参加者一覧

レヴィア ストレイカー(ga5340
18歳・♀・JG
フローラ・シュトリエ(gb6204
18歳・♀・PN
空言 凛(gc4106
20歳・♀・AA
滝沢タキトゥス(gc4659
23歳・♂・GD
イスネグ・サエレ(gc4810
20歳・♂・ER
リズレット・B・九道(gc4816
16歳・♀・JG
トゥリム(gc6022
13歳・♀・JG
柊 美月(gc7930
16歳・♀・FC

●リプレイ本文

―― キメラ退治に向かう能力者達 ――

 今回、能力者達に課せられた任務は巨大な鳥型キメラの退治任務だった。
(近い、という距離じゃないにしても町の住人に被害が出る前に仕留めたいですね)
 レヴィア ストレイカー(ga5340)は資料を見ながら心の中で呟く。
「これが目撃者からの話をまとめたメモだよ」
 フローラ・シュトリエ(gb6204)はあらかじめ目撃者に連絡を取っており、キメラがよく目撃された場所、動きについての情報をまとめていた。
「ふぅん‥‥まぁ、でも結構デカい鳥みたいだし、これだけの能力者がいれば難しい任務でもないだろ」
 空言 凛(gc4106)は資料とメモを交互に見ながら呟く。
「でも場所は少しだけ厄介かもしれないね」
 滝沢タキトゥス(gc4659)が地図を見ながら呟いた。
「厄介?」
 空言が聞き返すように問いかけると「広さの面でもそうだけど、森ってのはゲリラ戦ではうってつけな場所だ、気を付けないと」と滝沢が言葉を返す。
「‥‥‥‥大きな鳥か」
 ポツリと言葉を漏らすのはイスネグ・サエレ(gc4810)だった。彼は資料に書かれているキメラの外見などを見ながら(‥‥ヤキトリ何人分かなぁ)と心の中で言葉を付け足していた。
(ヤキトリにはビールが合う気がするけど‥‥流石にマズいか)
 イスネグは小さくため息を吐きながら(今回はヤキトリだけで我慢しておこう)と心の中で呟いたのだった。
「‥‥‥‥」
 黙ったまま資料とにらめっこをしているのはリズレット・B・九道(gc4816)だった。
(‥‥今回の標的は恐らく空から来るのでしょう‥‥地上の警戒を弱めるつもりはありませんが、空への警戒を重点的にしておけば‥‥)
 リズレットは心の中で呟きながら、キメラがどこから来るのかを予想する。
「今回のキメラは鳥なんですね‥‥キメラを見ると餌付けで翻弄したくなっちゃいますね」
 トゥリム(gc6022)は資料を見ながらポツリと呟く。しかしトゥリムの餌付け戦績はあまり良くなく、餌付けは最後の手段にしようと考えていた。
「私にとっては初めての依頼です〜、大きな鳥さん? どんなのかな〜?」
 柊 美月(gc7930)が少し楽しげに資料を見つめながら呟く。初めての任務、という割りには緊張しているというよりも、どこか楽しそうに見えるのは気のせいだろうか。
「まぁ、とりあえず油断せずに慎重にいけば大丈夫なんじゃないかな? 暗くなると森の中でも動きにくくなるし、そろそろ出発した方がいいかな?」
 フローラが呟き、能力者達は高速艇に乗り込み、キメラが闊歩している森へと出発し始めたのだった。


―― 鬱蒼とする森の中で ――

 今回、能力者達は班を分けず、あまり離れない程度で一緒に行動をする作戦を取っていた。
「資料で見てはいたけどさ、広い森だな‥‥何もこんな所に潜んでなくてもいいんじゃないか? ったく、探す方の身にもなってくれよな‥‥」
 はぁ、とため息混じりに呟いたのは囮役として先行している空言だった。
「鳥公ー! さっさと出てこねぇと焼き鳥にして食っちまうぞ!」
 口元に手を当てながら空言は大きな声で叫ぶ。そしてその後に「まぁ、出てきても焼き鳥にして食っちまうけどな!」と笑いながら言葉を付け足した。
 そして、空言から少し離れた場所には他の能力者達がそれぞれキメラ捜索を行っていた。
「この少し先には開けた場所があります、その辺りなら誘き出すには良いかもしれませんね」
 レヴィアは地図と森とを交互に見ながら呟く。
「そうだね、そこに誘き出せればこっちも嬉しいんだけど‥‥とにかくキメラはどこにいるのかな‥‥? 音はしないから近くにはいないんだろうけど‥‥音もなく近づいてくる可能性もあるから、油断はできないわねー」
 フローラが呟く。彼女はキメラが現れたらすぐに迎撃できるようにと常に警戒をしているのだが、肝心のキメラの姿がなく小さくため息を吐いた。
「そういえばリズレット、あんたも一緒なんだな。あんたがいると心強いぞ、今回もよろしくな」
 覚醒を行っている滝沢がリズレットに言葉を投げかける。彼とリズレットは依頼などで何回もあっており、ちょっとした知り合いのようだ。
「‥‥私の方こそ、よろしくお願いしま――‥‥」
 リズレットが言葉を返しかけた時、ばさばさ、と羽ばたきの音が聞こえ、能力者達の間に緊張が走る。
「だいじょ‥‥」
 初任務である柊を落ち着かせようとイスネグが話しかけるのだが「キメラですか? 今の音ってキメラですよね!?」と携帯を取り出しており、写真を撮ろうとしている。
(意外と緊張とかないのかな? これなら心配いらないかも)
 イスネグは苦笑しながら心の中で呟き、負傷した能力者を治療できるように態勢を整えたのだった。
「‥‥最後の手段を使わずにキメラを発見できたのは幸いなのか、それとも悲しむべきなのでしょうか」
 うーん、と唸りながらトゥリムが小さく呟く。
「あ、ちくしょう! あっちに行きやがった!」
 キメラは能力者達に気づいていないのか、上空を飛んでいるだけで降りてくる様子も攻撃を仕掛けてくる様子もない。
「でもちょうどいいのかもな、向こうは開けた場所みたいだし」
 空言は付けたし「先に行ってる」と他の能力者達に言葉を残して先に行ってしまう。
「自分たちも急ぎましょう」
 レヴィアが呟き、能力者たちも空言の後を追いかけるのだった。


―― 戦闘開始・能力者 VS キメラ ――

 最初に決めていた、開けている場所――運良くもキメラはその場所の上空にいた。
「さて、派手さはないですが花火の弾幕ですよ!」
 レヴィアは叫びながらM−121ガトリング砲をキメラがこちらに気づくようにと撃ち始める。
 そこでキメラは能力者たちに気づいたのか、羽を飛ばして能力者たちを攻撃してきた。ダメージとしては微々たるものだが、塵も積もれば山となる、という言葉もある。
 このまま上空からの攻撃ばかりされていたら、能力者たちのダメージも大きくなるばかりだ。
「羽飛ばすとか、ある意味捨て身な攻撃だな。つーか、このままだと全部抜けんじゃねぇか?」
 下準備が楽そうでいいけどな、と言葉を付け足しながら空言がキメラを強く見据える。
「わぁ、あれがキメラなんですね! 写真に撮って友達に自慢しなきゃ!」
 ぱしゃぱしゃと柊は写真を撮りながら少しはしゃいでいる様子もあるが、ある程度写真を撮って落ち着いたのだろう。SMG・ターミネーターをキメラへと向ける。
「下手な鉄砲も数撃てば当たりますよね? というか当たらないと困っちゃいます〜」
 キメラが地面に向かって降りてくる所を狙って柊は発砲を開始する。
 そして柊と同じく攻撃を仕掛けたのはリズレットだった。彼女の武器は射程の長い武器で地面に設置しないと使えないという制約もあった。
 だがガンケースを用いて傾斜を作り、銃口を上に向ける工夫をする事でその制約を打ち破り、キメラに攻撃する事が出来たのだ。
「‥‥大きいだけで、私たちを脅かす事が出来るとでも‥‥?」
 ふ、と冷たい笑みを浮かべながらリズレットが攻撃を行う。
「我が物顔で飛び回るのはそろそろ終わりにしてもらうわよ」
 銃撃を受け、地面に落ちてきたキメラに向かってフローラが言葉をなげかけ、翼を重点的に狙って攻撃を仕掛けた。
「例えどんなに大きなキメラだろうと、空を飛んでいようと、動きさえ止めてしまえばね」
 片方の翼を狙って攻撃を受けたキメラは、飛ぶ事も出来なくなり、よろめきながら能力者達へと攻撃を仕掛ける。
「そうそう、やっぱりそうやって地に足つけて向かってこなくちゃな――でも、突っ込んでくるのはいいけどちょっと直線的すぎるぜ」
 ストレートに向かってくるキメラに言葉を吐き捨て、空言はスキルを使用しながらキメラへと攻撃を仕掛ける。
「翼を失った鳥、か。翼をやられると、まともに動けないだろう?」
 滝沢が呟き、ホーリーベルを構えてキメラへとカウンター攻撃を行う。
「迂闊に近寄ると‥‥怪我するぞ!!」
 滝沢は再び攻撃を仕掛けながらキメラへと言葉を投げかけるのだが、その言葉をキメラが理解できているはずもなく、血を流しながらキメラは尚も能力者達へと攻撃を仕掛ける。
「何かあったら治療は任せて! だから思う存分戦って大丈夫だからね」
 イスネグが他の能力者たちへと言葉を投げかける。彼自身も柊を庇って負傷しているのだが、前衛で戦っている能力者ほどの負傷はない。
「大丈夫?」
 柊の傷を治療しながらイスネグが問いかけると「はい、私は大丈夫です」と柊も言葉を返す。
「今回はせっかくタンドリーチキンを持ってきたのに‥‥使う事が出来なかった。せっかく5つも用意してきたのに」
 トゥリムが恨めしそうに呟き、言葉と同じように恨めしそうにキメラを見据えながらクルメタルP−56で射撃を行う。
 翼を失ったキメラが、8人もの能力者たちに適うはずもない。
「‥‥都合が悪くなったら逃げる? そんな事が許されるとでも‥‥?」
 足を引きずりながら逃げようとしているキメラに気づき、リズレットが冷たく吐き捨てる――と同時にアンチマテリアルライフルG−141で再び射撃を行う。
 そしてその射撃に合わせるように滝沢がキメラとの距離を詰め、ホーリーベルで斬り伏せた。
「大丈夫、キミの死は無駄にはならないですよ。ちゃんと僕たちのお腹を満たしてくれるんだから」
 にっこりと微笑みながらトゥリムが呟き、能力者たちはそれぞれ攻撃をしかけてキメラを無事に退治する事が出来たのだった。


―― 戦闘でお腹すきました、いただきます? ――

 キメラを退治した後、トゥリムがキメラの死体を精肉店に持って行って食べられるようにしてもらおうと言いだし、能力者たちは近くの町まで来ていた。
「まさか本当に肉屋に持っていくなんてな‥‥まぁ、それが一番確実なんだけどさ」
 苦笑しながら空言が呟く。
「これをさばいて食べれるようにできませんか?」
「は?」
 肉屋の店員はトゥリムが指差した先にある『それ』を見て固まった。細々と精肉店を営んでいるその店の店員はまさかキメラの肉を捌く事になるなんて思いもしなかっただろう。
「驚いているわね、うん‥‥普通に驚くわよね」
 店員の様子を見てフローラが苦笑しながら呟く。
「本当に食べるつもりなんですかね‥‥」
 滝沢も引きつった笑顔で呟く、彼は以前キメラを食べて酷い目にあったらしく、今回キメラを調理する事に反対はしなかったけれど、食べるつもりは一切ないらしい。
 その後、キメラ肉を捌いてもらった能力者たちはそれを食べるべく調理場を借りて料理をしていた。
「トゥリム殿は言ってましたが‥‥本当に大丈夫なんでしょうか‥‥」
 レヴィアが目の前に出された焼き鳥を見て苦笑しながら呟いた。
「見た目は美味しそう‥‥でもキメラ、うーん‥‥」
 レヴィアは意を決して焼き鳥を口にする。その時の感想は『少し肉が硬いけどいける♪』だったという。
「私の分も食べていいわよ‥‥私、キメラを食べるつもりはないから」
 苦笑しながらフローラが自分の分の焼き鳥をレヴィアに差し出す。
「キメラも捌いちまえばフツーの肉だな‥‥見た目は」
 空言は他の能力者たちが焼き鳥を食べている間、おかわり用の焼き鳥にこっそりと唐辛子を塗りたくる。
 しかし塗りすぎてあからさまに不自然な色になったそれは巡り巡って自分自身に来るという事を今の彼女は知る由もない。
「これってアレですかね、美味しく焼けました、的な――」
 苦笑しながらイスネグが呟く。
「うん、意外と今回の肉は美味しかったですね。こういうキメラ退治ならまたやりたいものです」
 トゥリムはキメラ肉に満足しているのか、ぱくぱくと食べながら呟く。
「わぁ、美味しいですね! あ、紅茶の用意もしてあるので皆さん飲んでくださいね」
 柊が焼き鳥を食べながら他の能力者たちに言葉を投げかける。
 ある意味では柊はとても貴重な体験をしたのかもしれない、初任務でキメラ肉を食べる事になるなんて、滅多にないのだから。
 その後、調理場をちゃんと片づけてお礼を言った後に能力者たちは本部へと帰還していったのだが、精肉店の店員からは「キメラよりもキメラを食べる能力者たちが怖かった」と思われている事に彼らは気づく事はなかったのだった。


END