タイトル:少年の持つ赤い刃マスター:水貴透子

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/09/14 00:27

●オープニング本文


最近、自分が怖くなった。

いつの間にか大人になってて、いつの間にか能力者になってて。

――‥‥いつの間にか、戦う事にも慣れて来てる自分が、怖い。

※※※

今日も任務でキメラを退治した。

最初は怖くて仕方なかったキメラ退治だけど、ここ最近は慣れてきたみたいで、
最初みたいに怖くなる事はなくなった。

「‥‥血でべとべとだ」

武器を持つ手を見てみれば、キメラの血と自分の血で汚れていて、
その血を乱暴に洋服で拭った。

(いつまで戦えばいいのかなぁ‥‥)

最初は戦えない人を守れるヒーローにでもなった気分で楽しかった。

でも、最近は怖くて仕方がない。

いつ自分が死んでしまうか、友達になった人もいつ俺の前からいなくなるのかわからないから。

難しいことはよくわからないけど、命をかけて戦ってるんだから、
絶対に次も会えるって保障はまったくないんだってことに気付いちゃったから。

(どうしよう、俺ってば最近嫌な奴になってる‥‥)

拳を強く握りしめながら、七海 鉄太(gz0263)は瞳をぎゅっと閉じる。

(誰かを助けたいのに、自分が死んじゃうなら、無理して助けなくてもいいって、思ってきてる)

(前は戦いで血を見るのも怖かったのに、慣れてきて、ほかの人を見捨てれるような嫌な奴になってきちゃってるよ‥‥)

どうしよう、鉄太は次の任務資料を見ながら小さく言葉を付け足したのだった。

●参加者一覧

佐竹 優理(ga4607
31歳・♂・GD
アリエイル(ga8923
21歳・♀・AA
雪代 蛍(gb3625
15歳・♀・ER
水無月 蒼依(gb4278
13歳・♀・PN
ブロント・アルフォード(gb5351
20歳・♂・PN
美具・ザム・ツバイ(gc0857
18歳・♀・GD
シクル・ハーツ(gc1986
19歳・♀・PN
蒼 零奈(gc6291
19歳・♀・PN

●リプレイ本文

―― キメラ退治の為に集まった能力者達 ――

「はぁ‥‥」
 七海 鉄太(gz0263)は小さくため息を吐く。
「七海くーん! 久しぶりー!」
 遠くから呼ばれ、鉄太が視線を声の方に向けると佐竹 優理(ga4607)が手を振りながら声をかけてくれていた。
「あれ、あの人って確か最初に会った人だ」
 鉄太が言葉を返そうとすると「私の事覚え‥‥あ、同姓同名の別人かぁ‥‥いやぁ、失敬失敬」と頭を掻き、苦笑しながら佐竹が言葉を付け足した。
「別人じゃないよ! 俺、鉄太だし!」
 慌てて否定する鉄太だったが、佐竹が会った『鉄太』はまだ髪も染めておらず、外見がチャラ男ではなかった頃の姿。
 はっきり言って佐竹にとっては冗談にしか思えない程の変貌っぷりだった。
「今回は宜しくお願いします、今回の任務は住人の避難は済んでいるようなので、戦闘に支障は無さそうですが‥‥」
 アリエイル(ga8923)は挨拶をしながら、今回の任務についての資料を見て、そして鉄太をちらりと見た。元気に振る舞っているように見えるけれど、普段の鉄太とどこか違う、そんな事をアリエイルは考えていた。
 そして、一番鉄太の変化に気が付いているのは鉄太の彼女でもある雪代 蛍(gb3625)だった。
(どうしたんだろう‥‥もしかして、悩んでるの? でも、だったら何で何も話してくれないの‥‥?)
 雪代は心の中で呟きながら、元気に振る舞おうとする鉄太を見ながら心が痛むのを感じていた。
「お久しぶりです、鉄太さま――‥‥? お加減がよろしくないようですが‥‥?」
 水無月 蒼依(gb4278)が鉄太に言葉を投げかける。雪代同様、水無月も鉄太と関係が短いわけではない。だからこそ気づけたのだろう。
「‥‥え? そ、そんな事ないって! 俺ってばいつも元気だしっ!」
「‥‥そう、ですか?」
 納得できないような言葉で水無月が言葉を返したのだが、鉄太はそれ以上言葉を返す事はしなかった。
「‥‥‥‥」
 そんな鉄太の様子をブロント・アルフォード(gb5351)はジッと見つめ、戦いに躊躇いを持っているような鉄太に若干の苛立ちを感じていた。
「さて、美具もこの身に何が出来るのか知らねばならぬのじゃよ」
 美具・ザム・ツバイ(gc0857)がため息交じりに呟く。
 美具は転職を行ったばかりのようで、この職で何が出来るかを見極めるのが今回の任務に参加した理由らしい。
「避難済みのはずの町に子供が1人、しかも凶器持ちなんだ‥‥驚いちゃうほどわかりやすいね」
 シクル・ハーツ(gc1986)が資料を見ながら小さく呟く。
「‥‥ん? どうしたの? 七海くん」
 資料を見ながら浮かない表情を見せる鉄太にシクルが問いかけると「‥‥ううん、子供の姿、してるんだなぁって」と小さな声で呟いた。
「子供型のキメラねぇ‥‥ま、あたしには関係ないね、ただぶっ潰すだけだよ」
 刃霧零奈(gc6291)が呟くと「人型、なのに戦うのが怖くないの?」と鉄太がポツリと呟く。恐らくその言葉は鉄太自身も無意識に呟いた言葉なのだろう。
「え?」
「あ、な、何でもないんだ。何でもない」
 刃霧が聞き返すと、鉄太は慌てて言葉を誤魔化す。
(ふむ‥‥)
 鉄太の呟きを聞いていた佐竹は小さく心の中で呟き、鉄太が悩んでいる内容についてもある程度の予想がついていた。
 だけど、佐竹はその悩みを『鉄太が能力者として立派に戦ってきた事実』として考えていた。
「そろそろ出発しましょうか、暗くなってしまうとこちらが不利になってしまうかもしれませんし‥‥」
 アリエイルが呟き、能力者達は高速艇に乗り込んでキメラが現れた町へと向かって出発していったのだった。


―― キメラ捜索 ――

「なるべく固まって動こうね〜」
 目的地に到着し、佐竹が先頭に立ちながら能力者達に言葉を投げかける。
「能力限定解除‥‥さて、早めに見つけて早期決着させなければ」
 アリエイルも覚醒を行いながら呟く。
「‥‥ねぇ、戦う事が‥‥怖くないの?」
 鉄太が水無月に問いかけると「‥‥敵と戦う事は怖いです」と水無月は瞳を伏せながら鉄太の質問に返し、言葉を続ける。
「事態を打開する方法がそれしかなければ、怖くても助けます。打開できなくなるなら助けません――とは言いますけど、そういう時は何も考えずに勝手に体が動いてしまうものですからね」
 苦笑しながら呟く水無月の言葉を「‥‥そっか」と鉄太は複雑そうな表情で言葉を返していた。
「お前は何の為に能力者になったんだ?」
 ブロントが鉄太に言葉を投げかけると「‥‥え」と鉄太は言葉に詰まってしまう。
「まさか遊び半分で能力者になったわけではないだろう」
「‥‥それは‥‥」
 ブロントの言葉に鉄太は返す言葉が見つからなかった。鉄太自身、最初はまるでアニメの中のヒーローにでもなったような気分だったから。
 だからブロントの言う『遊び半分で』という言葉を否定する事が出来なかったのだ。
「でも、俺‥‥怖いんだ」
 拳をぎゅっと握りしめながら鉄太が震える声で呟く。
「誰だって最初はそうだ、私もな。でも、怖がる事は悪い事じゃない。恐怖心は生きたいという願望の表れだ。生き残りたいから、自分の命を狙う相手を怖いと思い、必死に生き残る術を探すんだ」
 覚醒を行い、口調の変わったシクルが鉄太に言葉を投げかける。
「シクルさんの言う通りだよ。もし戸惑ってるなら今回は見てるだけでいいよ。曖昧な心構えだと死んじゃうからね」
 シクルの言葉の後、刃霧が呟くと鉄太はしょんぼりとした表情で俯いてしまう。
「あー、別に怒ったとかそういうんじゃないからね?」
 苦笑しながら刃霧が言葉を付け足すと「うん、わかってる」と鉄太が言葉を返すのだが、やはり怒られた、もしくは役立たずと思われている、と考えてしまっているのだろう。
(鉄太‥‥)
 雪代は鉄太に何か言葉をかけようと考えていたが、何を話せばいいのか上手く考えがまとまらず、結局言葉をかける事は出来なかった。
(駄目‥‥今回はキメラ退治なんだし、集中しなくちゃ‥‥)
 雪代は手を強く握りしめながら、まずは目的であるキメラを退治する事に集中する事にした。
 能力者達は固まって捜索行動を行い、キメラから奇襲をかけられないようにとそれぞれが警戒をしながらシンと静まり返った町の中を歩いていく。
 その時、先頭を歩いていた佐竹がピタリと歩みを止める。
「どうし――‥‥」
 美具が佐竹に言葉を投げかけようとして、途中で言葉を止める。なぜ佐竹が歩みを止めたのか、能力者達の前方に立つ少年を見て分かったからだろう。
 しかし、いくら武器を持っているからといってはっきりキメラと断定するわけにはいかない。恐らく可能性としては低いだろうが、もしかしたら一般人、能力者という可能性も捨て切れる筈がないのだから。
「私達はキメラ退治に来た能力者なんだけどー、キミは‥‥ッ!」
 佐竹がゆっくりと近づき、警戒をしながらも少年に話しかける――が、佐竹が攻撃出来る距離に入るとすぐに少年は佐竹に向かって斬りかかってくる。警戒をしていたおかげで佐竹もすぐに月詠で少年の攻撃を受け止める。
「予想通りというか、やっぱりというか、キメラで間違いないのかな」
 佐竹が苦笑しながら呟き、能力者達はそれぞれ攻撃態勢を取り始める。


―― 戦闘開始・能力者 VS キメラ ――

「子供の姿か‥‥だが敵は敵だ‥‥仕掛けるぞ!」
 ブロントが呟き、獅子牡丹と雲隠の二刀流でキメラへと攻撃を仕掛ける。
「子供の姿をすれば油断するとでも思った?」
 甘いよ、言葉を付け足しながら刃霧はキメラへと拳を叩きこむ。
「‥‥鉄太? どうしたの? 倒さないと‥‥」
 雪代が鉄太に向けて言葉を投げかけるが、鉄太から反応はない。聞いていないというよりも『聞こえていない』と言った方が正しいのかもしれない。
「鉄太!」
 雪代が叫び、鉄太を強く突き飛ばす。そして雪代は鉄太の代わりに腕をざっくりと斬られてしまい、服の袖が赤く染まる。
「ほ、蛍‥‥」
「何で、ぼーっとしてるの‥‥こんな時に‥‥」
 腕を押えながら雪代が言葉を投げかけ、負傷しながらも武器を手に持つ。
「七海くん、しっかりして。油断や躊躇いは命取りになるよ」
 佐竹が言葉を投げかけながら、スキルを使用してキメラへと攻撃を仕掛け、鉄太達からキメラを遠ざける。
「子供姿のキメラ‥‥なんか最近、多く出会うような気がします」
 アリエイルは呟きながら愛用の槍を構え「その刃ごと‥‥打ち砕きます! 煌めけ‥‥一閃!」と言葉を付け足しながらキメラへと攻撃を仕掛ける。
「私も仕掛けます、援護をよろしくお願いしますね」
 水無月も言葉を残し、菫と乙女桜を持ちながらキメラへと向かって駆け出す。水無月が攻撃をしやすいようにと美具はキメラの注意をひきつける。
 そしてキメラの攻撃を防御しながら水無月が攻撃しやすい位置までキメラを引きだす。
「貫け」
 シクルが凛とした声で短く呟き、矢を放つ。彼女が放った矢はキメラが武器を持っている手を貫き、キメラは武器をがらんと地面に落としてしまう。
「ほら、さっさと素直にくたばっちゃいなさいっ!」
 隙を見せたキメラに対し、刃霧は勢いよく地面を蹴り、キメラとの距離を詰めた後にスキルを使用しながらの強力な攻撃をキメラへとお見舞いする。
 武器を失ったキメラは手と足で何とか攻撃を仕掛けようとするが、ブロントはそれを軽く避ける。
「その程度の腕で、俺が倒せるとは思わない事だ‥‥喰らえッ!」
 ブロントはスキルを使用しながらキメラへと攻撃を繰り出す。
(本当なら美具もキメラを一寸殺しの五分刻みにしたい心境ではあるが、姉妹一の大人である美具は自重するとしよう)
 どうやら失恋直後の美具としてはキメラを滅多切りにしたいらしいが、今回の能力者達を見て自分がそこまで前衛に出る事はないだろうと判断していた。
「よくも蛍を‥‥」
 鉄太は怒りに身を任せて、キメラへと斬りかかる。この時の鉄太は無謀な突っ込み方をしてしまい、他の能力者達のサポートがなければ逆にキメラにやられていたかもしれない。
 その後、能力者達はそれぞれ攻撃を合わせてキメラを無事に退治する事が出来たのだった。


―― そして、キメラ退治後 ――

「恐らく色々と考えてはいるんだろう。だが、今のお前は能力者だ。考え込むより先に、戦え」
 戦闘中の鉄太の様子を見て、ブロントが咎めるように鉄太に言葉を投げかける。その言葉を聞いた鉄太は申し訳なさそうに「‥‥ごめんなさい」と小さな声で謝った。
 そして、鉄太は自分が抱えていた悩みを、今回一緒の能力者達に漏らした。
「能力者である以上、俺たちは戦うだけだ。傷を負うのが嫌なら、強くなれ‥‥」
 鉄太の話を聞いた後、ブロントがぶっきらぼうに言葉を返した。
「別にそういう風に悩むのもいいんじゃない? それが今の七海くんなんだから」
 佐竹は今の鉄太の考えを否定せず、肯定する事で鉄太が前へ進めるようにと言葉を返した。
「‥‥私には、能力者になる前の記憶がありません。でも私は‥‥守れるものを守っていきたい‥‥そのための力が‥‥私達能力者には備わっているのですから‥‥」
 しかし、とアリエイルは言葉を続ける。
「‥‥自分の命も大切です。自分が死んでしまったら‥‥守れるものも守れなくなってしまいますから‥‥うまく言葉にできませんが、1人で悩むのは良くないですよ?」
 アリエイルはちらりと雪代を見ながら呟いた。
「でも、いつまで戦えばいいのかな‥‥」
 鉄太の言葉に「当面は、バグアがいなくなるまでの我慢、ですかね‥‥そうなったらゆっくりと休んでもいいと思いますし」と水無月が言葉を返してきた。
「美具たちは剣なき民草に代わって戦うのが使命じゃが、戦いたくないなら別の道を探すのも大事じゃぞ、目的もなく戦う事ほど無為な事はないのじゃからのう」
 美具の言葉に「目的‥‥」と鉄太がポツリと呟く。
「七海くん、すべてを1人でやろうなんて思わなくていいんだよ? 今は私達がいる。1人で何もかも解決する必要はないんだから」
 シクルが鉄太を見つめ、微笑みながら声をかける。
「でも、今の気持ちを持ち続ける事は大切だと思う。これから先、七海くんが強くなっても怖がる気持ちは忘れちゃだめだからね」
 シクルが呟くと「あたしの場合は、さ‥‥」と刃霧がポツリと呟き始める。
「キメラやバグアはいつか人に害を及ぼす存在。そいつら見逃してさ、自分の近しい人が殺されたら‥‥あたしは死んでも死にきれないくらい後悔しちゃうと思うんだ。だからあたしはどんな敵でも躊躇いなく討つよ。両親を目の前で殺される‥‥なーんて経験しない方がいいじゃん♪ あれは結構トラウマ級だしね、にはは♪」
 刃霧は笑顔で鉄太に言葉を投げかけるが、彼女が笑顔でそれを言えるという事は彼女にも辛い出来事があり、それを耐え克服したからなのだろうと思う。笑って言えるだけの強さが刃霧にはあったのだろう。
「鉄太‥‥悩んでるならどうして話してくれないの? あたしは彼女なのに‥‥みんなだって、思ってるはずなんだよ、死にたくないって」
 雪代が俯きながら鉄太へと言葉を投げかける。
「あたしだって、怖いよ? 鉄太を好きになればなるほど‥‥あたしが死んじゃったらって思うと‥‥切なくて辛くて‥‥でも、諦めないでよ。あたしのお父さんとお母さんを見捨てた奴らみたいじゃない‥‥」
 雪代が涙をこぼしながら呟く。
「でも、あたし怖いよ‥‥鉄太に出会った時にはもう何も感じなくなっちゃってるんだから‥‥」
 雪代が泣き崩れる姿を見て、鉄太は1つの目的を考え付いていた。
「みんな、俺ってば我儘でだらしなくて、情けなくて‥‥ごめんなさい。これからも俺ってば悩んだりすると思うけど‥‥でも、蛍を守りたいって思うから、これから戦う事に関して今日みたいにならないようにする」
 ごめんなさい、それと――ありがとう、と鉄太は頭を下げながら能力者達へと言葉を投げかける。
 鉄太は今回の能力者達に厳しい事を言われたり、慰められたりされたが――結果として、鉄太を一歩前に進める事が出来たのではないだろうか。
 任務に来る前と任務を遂行した後、鉄太の表情は別人のように変わっていたのだから。
(これなら、大丈夫かもしれないな)
 ブロントは鉄太を見ながら心の中で呟く。

 そして、能力者達は今回の任務の報告を行う為にLHへと帰還していくのだった。


END