タイトル:週刊記者VS週間記者マスター:水貴透子

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/06/27 00:08

●オープニング本文


はぁぁぁぁぁ‥‥。

せっかく久々の取材だっていうのに、何でマリちゃんってば閉じ込められてんの!?

※※※

「取材に行ってきます!」

動きやすい服装に着替え、取材道具一式を詰めたバッグを抱えて土浦 真里(gz0004)は例の如く取材に向かおうとした――‥‥のだが。

「待ちなさい。マリ、果てしなく待ちなさい」

玄関に立ちはだかるのはマリと最も付き合いの長い同じく週刊個人雑誌クイーンズの記者、チホだった。

「何よ、チホのくせに玄関で仁王立ちなんて。チホのくせに」

「二回も同じ事を言わなくてよろしい――っていうか私のくせにって何よ、私のくせにって」

「自分でも二回同じ事言ってんじゃん」

お互いに笑顔で言葉を交わしてはいるけれど、その間に火花が飛び散るような雰囲気だった。

「取材には行かないで。マリが無茶するたびに能力者に頭下げてんのは私なのよ!?
 その辺を理解して――‥‥って何で人が話してる隙に靴を履いてんの!」

「ちっ、チホのくせに気がついたか」

マリが舌打ち混じりに呟くと「気がつくでしょう! 普通に!」とチホが息切れをするほどに勢いよく言葉を返してくる。

「マリは大人しく雑務でもしてて! 必要な資料があれば取り寄せるから! 分かった!?」

チホは叫びながらマリを部屋へと押し込め、能力者へと電話をかけたのだった。

「またキメラ退治についていくつもりだったのね‥‥」

マリのバッグから取り出した資料を見て、チホは盛大なため息を吐いたのだった。

●参加者一覧

シュブニグラス(ga9903
28歳・♀・ER
月城 紗夜(gb6417
19歳・♀・HD
ファティマ・クルスーム(gb8622
21歳・♀・SN
白峰 琉(gc4999
25歳・♂・HG
ジュナス・フォリッド(gc5583
19歳・♂・SF
立花 零次(gc6227
20歳・♂・AA
常木 明(gc6409
21歳・♀・JG
アリーチェ・ガスコ(gc7453
17歳・♀・DG

●リプレイ本文

―― 週刊記者に巻き込まれた能力者達 ――

「今回はうちのマリが迷惑をおかけして本当に申し訳ございません」
 依頼開始早々に盛大なため息と共に能力者達に謝罪をするのは、土浦 真里(gz0004)の代わりに必要機材を渡しに来たチホだった。
「有名人の取材とか‥‥そういう方面には興味ないのかしら‥‥あの娘」
 シュブニグラス(ga9903)が苦笑しながら呟く。
「いや、それはそれでこっちの胃が痛むから興味を持って欲しくないかも‥‥」
 シュブニグラスの言葉に胃の辺りを押さえながらチホが言葉を返す。
「わざわざ持って来てもらってすまないな」
 月城 紗夜(gb6417)がチホの持ってきた物を受け取りながら呟く。
「いいえ、こっちこそ本当にもうマリの我侭を聞いてもらって申し訳ないというか‥‥もう既に申し訳なさを飛び越えているというか‥‥」
「キメラを記事に‥‥動機はどうであれ雑誌で読みたいという方はいるでしょうし‥‥こちらも仕事なんでやりますが‥‥」
 人型となると複雑な心境ですね、と白峰 琉(gc4999)がポツリと言葉を付け足した。その『複雑』という言葉が退治する側の立場としてなのか、それとも記事になった後、読む側としての立場としてなのか、どちらとも取れる言葉だった。
(人型のキメラね‥‥うん、楽しみだ)
 複雑そうな表情を見せた白峰とは違い、常木 明(gc6409)が言葉通り、少しだけ楽しそうな表情を浮かべていた。彼女は訓練以外で人型と戦う機会が少なかった為、楽しみという気持ちがあったのだろう。
「場所は廃村‥‥暗闇に紛れていようと、やってみせる」
 ジュナス・フォリッド(gc5583)は資料を見ながら小さな声で呟く。
「夜‥‥そういえば夜戦は初めてになるかな」
 ポツリと思い出したように呟くのは立花 零次(gc6227)だった。廃村と言う事で、光源なども期待は出来ず、自分で光源を準備出来る能力者はそれぞれに持参しており、普通にキメラ退治をするだけならば困る事はなさそうだった。
「それにしても、キメラの記事‥‥ですか。世の中には色々な方がいらっしゃるのですね」
 アリーチェ・ガスコ(gc7453)が苦笑しながらチホに言葉を投げかけると「いつの間にかこんな風になってたのよね」とチホは遠い目をしながら言葉を返した。
「何か要望などはあるか? こちらも命がけだから絶対に要望通りに出来るとは言い切れないけど‥‥」
 ファティマ・クルスーム(gb8622)がチホに言葉を投げかける。彼女は今回が初任務ではあるが元々が少年兵という事もあり敵と戦うという事に緊張や躊躇いは見られない。
 たとえ相手が今回のように子供の姿をしていてもきっと動じる事はないのだろう。
「そういえば私、カメラ使った事ないのよね。教えてチホちゃん」
 シュブニグラスがカメラを手に取りながらチホにカメラの使い方を教えてもらう。
 一方月城は。
「本当ならば我もカメラを持った方がいいんだろうが、我は機械音痴でな。カメラなど機械は近づくと壊れるんだ――という事で他の皆に任せる」
 それは凄い機械音痴だ、と能力者達は心の中で呟く。
「それではそろそろ出発しましょうか」
 立花は呟き、能力者達はチホと別れ、高速艇に乗り込んで目的地へと出発し始めたのだった。


―― 週刊記者からの難題を叶える為に ――

 今回、能力者達は捜索時に班を分ける事はせず、皆で固まって行動する作戦を立てていた。
「今回のキメラ、夜行性なのかしら? それとも夜の廃村の雰囲気重視とか‥‥」
 シュブニグラスは苦笑しながら暗がりを少しでも緩和する為にランタンで足元を照らす。
 夜だという事に加え、足元は雑草などが生い茂っており、少し――‥‥いや、かなり足場も悪ければ視界も悪い。
「この辺は雑草が凄いな‥‥だが、向こう側よりはマシな方か」
 月城が少し先を見てきたらしくため息混じりに呟く。彼女が見てきた場所は家などがあった場所でもあり、瓦礫が至る所に散乱していた。
「素早く片付けよう、仕事は速い方がいい」
 ファティマが短く呟く。
「この辺の写真も撮っておきましょうか。どんな現場だったかマリさんも見たいはずですから」
 白峰は持っていたランタンを手ごろな場所に置き、カメラを構えて写真を撮り始める。
「この荒れ具合を見ると、廃村になった原因はやはりキメラでしょうか」
 家は意図的に壊されたような物もあり、自然に廃れていったような感じは全く見受けられなかった。
「えーと、キメラ、キメラ‥‥わっ!」
 立花が懐中電灯で周囲を照らしながらキメラ捜索を行っているのだが、雑草に足をとられて躓いてしまう。
「やはり暗いせいか、足元がよく見えませんね」
 立花が呟くと「そうですね、戦闘時にも気をつけないといけませんね」とアリーチェが言葉を返してくる。
 アリーチェはAU−KVのライトを点灯させて周りの警戒を行っていた。
「この時期ですからね。キメラそのものより、軽く怪談テイストなものの方がウケると思います。雰囲気、ありますし。例えばあの辺、ホラ、血の染みみたいなの。あれ、写せば心霊写真とか撮れたりして」
 アリーチェが楽しそうに笑いながら呟く。確かに彼女が指した方向には古く錆びた看板があり、遠めから見れば錆が血の染みに見えない事もなかった。
「それなら写真撮る?」
 ジュナスがアリーチェにカメラを渡そうとすると「いいえ、結構です」とにっこりと微笑みながらアリーチェが言葉を返した。
「私は嫌ですよ、撮るのなんて。そういうのやって、祟られるの、嫌ですし。でもジュナスさんがするというのであれば、私は止めませんよ」
「いや、俺も祟られたくないから止めとく」
「‥‥意気地なし」
 ジュナスが断った後、彼の後ろでボソッと月城が呟き「えぇっ!?」と叫びながらジュナスが振り返るが、そこにはそ知らぬ顔をした月城の姿があった。
「キメラを発見した時には照明銃を使うね、合図するから見逃さないようにしてね」
 常木が他の能力者達に言葉を投げかける。
「ん? 何か動いた‥‥?」
 立花が小さく呟き、常木が最初に動き「使うよ! 気をつけて!」とキメラに向けて照明銃を使用する。
 能力者達は予め常木から言われており、それぞれ光を回避したのでなんともなかったけれど、不意をつかれたキメラは至近距離からの眩しさで目が眩んでしまっていた。
 その間に能力者達は攻撃、そして記事のためのネタを掴むためにそれぞれ行動を開始したのだった。


―― 戦闘開始・キメラVS能力者達 ――

「ちょ、ちょっと‥‥このキメラ、雑誌向けじゃないわよ!?」
 資料にもあったけれど、能力者達の前に立っているのは小学生くらいの少年だったからだ。明らかに能力者達に敵意を向けているところを見れば、間違いなくキメラなのだろうけれど‥‥シュブニグラスの言う通り、果たしてこのキメラを退治する所を雑誌にしてもいいのだろうかと迷う能力者もいた。
「‥‥‥‥子供か、何を期待して作ったのかは知らんが」
 ファティマは冷めた視線をキメラへと向ける。彼女にはキメラと同じ年頃の義弟がいる。
 だが、その事で動じる気配は全く見られず小銃・Gloriaをキメラへと向けていた。
「早速現れましたね‥‥では、成仏させてあげるとしましょうか」
 アリーチェは目の前のキメラがまるで幽霊であるかのように呟き、小さく笑みを漏らした後、キメラへと向けて駆け出す。
「こういう時、特派員は見た! ‥‥とでも言えばいいんだろうか? まぁ、気にしなくてもいいかな」
 アリーチェはキメラへと攻撃を仕掛けながら言葉を付け足した。
「‥‥ちょっと疑問は残るけど、外見に騙されるなという注意喚起にもなるのかしら、こういうのって‥‥」
 シュブニグラスは呟きながら、キメラと能力者達が戦っている姿を写真に収めたり、キメラがどのような攻撃をしてくるかなどメモを取ったりしていた。
「とりあえず、この辺に遮蔽物がないのはツイているのかな」
 地面に置いてあるランタンを見ながら月城が呟く。
「紗夜さん、援護は任せてください!」
「ミスったら、全力ダッシュ1キロな」
 月城はジュナスに言葉を残して、そのままキメラへと向かって走り出す。
「は? え、えぇ!?」
 残されたジュナスはずしりと圧し掛かるプレッシャーと戦いながら援護を行うのだが、緊張している時には普段は出来る事が出来なくなるというもので、ジュナスの攻撃はひらりと避けられてしまう。
「し、しまった‥‥」
 だが、避けた所に月城が攻撃を繰り出し、結果オーライの形となり、ジュナスがほっとしたのも束の間――‥‥「全力ダッシュ、楽しみだな」とにやりとしながら月城がジュナスに言葉を投げかけたのだった。
「そ、それは仕方ないっていうか、暗いからっていうか‥‥あぁ、俺の話を聞いて!」
 泣きそうな声をしながらジュナスが叫ぶ。
「隙あり、ですね!」
 月城の攻撃を受け、倒れたキメラに向かって立花が蛍光塗料スプレーで塗料をつける。
「オーケイ、これでさっきよりは見やすいかな‥‥っと!」
 常木がスキルを使用し、キメラへと攻撃を繰り出しながら呟く。
「照明銃を使用する!」
 ファティマが能力者達に聞こえるように大きな声で叫んだ後、2回目となる照明銃がキメラへと撃ちつけられる。
「可哀想だとは思いますが‥‥このまま見逃すわけにはいきません」
 白峰は呟き、スキルを使用してキメラに射撃を行う。
「ちぇ、刻む趣味はないんだけどなぁ‥‥仕方ないか」
 常木は不満そうに呟きながら、キメラの機動力を削ぐために手足を重点的に狙って攻撃を行う。記事のことがなければ、とっくにキメラを退治できているであろう。
 それほどに能力者達とキメラの戦力の差が出ていた。だけどマリの記事の為にのらりくらりとした戦闘をせざるを得ず、マリを知る能力者はマリがいてもいなくても足は引っ張るのね、と心の中で思っていたとか。
「戦闘でこんなにカメラを意識しなくてはならないとはな‥‥厄介なものだ」
 小さくため息を吐きながら小銃・Gloriaでファティマが攻撃を仕掛ける。
「こんなに追い詰めるような戦い方は好みではないのですけどね」
 カッツォッ・トゥナーレッ!、と叫びながらアリーチェがキメラへと攻撃を仕掛け、追撃するかのように「ボラーレ・ヴィーア!」とスキルを使用しながら攻撃を再び繰り出した。
「せめて安らかに‥‥斬りたかったんだけどな。恨むならば傷つけるだけの存在になった自分を恨んでくれ、俺達が引導を渡してやるから!」
 ジュナスが機械剣・ウリエルで攻撃を仕掛ける。
「皆の武器を強化するわ、これで決めてちょうだい」
 シュブニグラスが能力者達に言葉を投げかけ、ファティマが照明銃を使用し、キメラの目が眩んで動けない隙にシュブニグラスがスキルを使用して能力者達の武器の強化、そしてキメラの防御力を低下させた。
 最初に月城が動き『正』の字を描くように攻撃を行う。キメラは全ての攻撃を避けきることが出来ず、月城の攻撃を受けた後、しりもちをつくような形で倒れこんでしまう。
「そんな姿で惑わせるとでも思ったのか――‥‥もし、そうなら作ったバグアは相当甘い考えを持つらしい」
 ファティマは呟きながら、キメラの足を狙って銃で狙い撃つ。
「‥‥逃がすはずがないでしょう」
 足を引きずり、逃げようとしたキメラを牽制するように白峰がスキルを使用しながら射撃を行う。
「そろそろお終いにするよ!」
 常木がスキルを使用しながらキメラを攻撃し「ん〜、トランスアキシャル面、切断、下がってよし」とにぃと笑みを浮かべながら言葉を付け足した。
「‥‥静かにお眠りなさい、アリベデルチ」
 アリーチェが呟き、攻撃を仕掛け――子供の姿をしたキメラは完全に動かなくなったのだった。


―― 戦闘終了 ――

 キメラ退治が終わった後、能力者達は現場の写真や何か記事に使えるものがないか調べる為に廃村の中を歩き回っていた。
「ICレコーダーを幾つか持って来ていたので、記者さんに渡そうと思ってます。さっき見てみたんですけど、運よく壊れてなかったので」
 白峰が呟くと「きっとマリちゃんが喜ぶわ」とシュブニグラスが言葉を返した。
「いくら雰囲気がソレっぽくても、何もないと思うけどさ」
 ジュナスは苦笑しながら廃村の中を歩き回る。
「それにしても、記者って大変なんですねぇ。戦ってる方が楽そうですよ」
 立花が呟くと「同感だ」と月城が言葉を返してくる。
「とりあえずー、思ったこと感じたことを纏めて渡しておくかな」
 常木が倒れて動かなくなったキメラの様子などを撮影して、メモを取りながら呟く。

 その後、能力者達は廃村の様子をじっくりとカメラやメモに収めた後、本部へと帰還していった。
「今回は本当にごめんなさい」
 本部に行くとチホが待っていて、能力者達からカメラやメモなどを受け取る。
「原稿料は高いぞ?」
 ファティマが不敵に微笑みながら呟き「冗談だ」と言葉を付け足す。
「一々気が散る戦いだったんだ。つまらんものだったら許さん」
 月城が呟くと「伝えておくわ、責任はうちの編集長にお願いね」とチホも苦笑しながら言葉を返してきた。
「ま、俺達は記事にされようがされまいが、これからもやる事は変わらないけどな」
 ジュナスが呟きながら自分が集めたメモや資料などをチホに渡した。
「出来上がったら、売り出す前に送るからね」
 チホは言葉を残し、編集室へと戻っていった。

 それから数日後、能力者達の所に刷り上ったばかりの雑誌が届き、一緒にマリからのお礼状も入っていたのだった。


END