タイトル:Σ(◎□◎)ハァ!?マスター:水貴透子

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/06/26 23:40

●オープニング本文


ネコタマ的に実は嫌いなものだらけなのですよ。

もうこれからの時期にわんさかと現れる奴らも嫌いなのですよ。

※※※

「却下するですよ」

猫井珠子、通称ネコタマはこれでも新人の域を出ているはずの能力者なのに実力は新人以下という痛い子である。

「‥‥何が却下なのですか」

女性オペレーターが呆れたようにネコタマに言葉を投げかけた。

事の始まりは「ネコタマにでも出来そうな依頼を下さい」とまるで幼稚園児のお使いのような口調でオペレーターに話しかけたことだった。

これならどうでしょうか、とオペレーターが差し出したのは――‥‥。

「却下に決まってるじゃないですか! 虫ですよ! む・し! ネコタマ的に虫以上に嫌いな奴はありますけど、それでも虫なんか嫌いなんですよ! 虫と戦うなんて冗談じゃないですよ! 哺乳類がいいです!」

実力はないくせに注文は多い奴だな、とオペレーターは心の中で呟きながら「残念ながら、今、これ以下の依頼は、ありません!」とネコタマにばしっと依頼書を投げ渡す。

「うああああ、ネコタマ的に虫なんて無理だぁぁぁ! しかも依頼書読んでただけで痒くなってきたぁぁぁ!」

本部内に響き渡るネコタマの叫び声に、本部内にいた能力者達は迷惑そうな視線を向けるのだった。

●参加者一覧

ベーオウルフ(ga3640
25歳・♂・PN
Innocence(ga8305
20歳・♀・ER
守原有希(ga8582
20歳・♂・AA
キリル・シューキン(gb2765
20歳・♂・JG
ネロ・ドゥーエ(gc5303
19歳・♂・DF
グリフィス(gc5609
20歳・♂・JG
音桐 奏(gc6293
26歳・♂・JG
ジェーン・ジェリア(gc6575
14歳・♀・AA

●リプレイ本文

―― 相変わらずのネコタマ参上 ――

「ネコタマ的に凄く嫌です! 虫なんてありえません! むしろこの世に存在していなくていいんです!」
 キメラ退治をしに行く事が決まった後でも往生際が悪いらしくネコタマはぎゃあぎゃあと騒ぎ、喚きたてている。
「この世に存在していなくていいから退治に行くんだろう」
 ベーオウルフ(ga3640)がネコタマに言葉を投げかけると「ネコタマが行くなんてありえないのですよ!」と我侭全開で言葉を返してきた。
(仕方のない奴だ‥)
 ベーオウルフは「はぁ」と小さくため息を漏らしながら、今も騒いでいるネコタマを見つめていた。
「あああ、もうネコタマ的に人生大一番の最大ピンチですよ! もう、虫なんて、虫なんか‥‥あぁぁ、痒くなってきた!」
「‥‥ガタガタ言う前に働け! この給料泥棒めが!」
 キリル・シューキン(gb2765)が拳を震わせながらネコタマに渇を入れる――が「だってネコタマ的に虫は嫌いですもん!」と反抗期の子供のように言い返してくる。
「そんなに虫が嫌いなら好きになるまでLHの人工自然の中でサバイバル訓練を受けさせてやろうかっ!? 蛇とか虫とか蜘蛛とか食いながら一週間くらい生活だ!」
「‥‥うわ、何言ってんですか。ネコタマ的にそんな所に行くわけないじゃないですか。あなた鬼ですか、悪魔ですか、魔王の申し子ですか? サタン様も吃驚ですよ」
 キリルの言葉に逆にネコタマは冷静に言葉を返してくる。しかしその冷静な口調が更にキリルの怒りを煽っている事にネコタマは気づいていない。
「まぁ、落ち着きなさい」
 守原有希(ga8582)がネコタマを片手で抑えつけて正座をさせた後、キリルの事も宥める。
(一番楽な依頼と聞いてきたんだが‥‥)
 ネロ・ドゥーエ(gc5303)がネコタマを見ながら(なるほど)と苦笑しながら納得する。
(ネコタマさんとご一緒するのは2度目になりますが‥‥前回とあまり変わってないみたいですね。今後どうなるか、観察させてもらいましょう)
 音桐 奏(gc6293)は心の中で呟く。観察者の彼にとってネコタマは興味深い対象なのだろう。
「ネコタマ様、がんばって!」
 Innocence(ga8305)がにっこりと微笑みながらネコタマに言葉を投げかける。
「今回もネコタマ様の恋の応援ですわ! ‥‥でも、虫に片思いなんて少し趣味が悪いと思いますの‥‥」
 ネコタマを哀れむような視線を投げかけながらInnocenceが呟くと「はぁ!?」とネコタマが驚いたような声で叫ぶ。
「ネコタマ的にネコタマの言葉のどこに片思い要素がありましたか!? ネコタマ虫嫌い! 好き違う! きーらーいー!」
 ネコタマが何度も嫌いを連呼するのだが「照れ屋さんですわね」とかわされてしまう。
「あはは、ネコタマおもしろーい。今日は一緒にあーそーぼー!」
 ジェーン・ジェリア(gc6575)がネコタマに言葉を投げかけると「今回はキメラ退治なんだぞ‥‥」とベーオウルフが言葉を返してくる。
「キメラ? 適当に倒しておけばいいんじゃないかな?」
「‥‥その適当に、ってやつが出来なさそうだけどな‥‥」
 ああああ、と今にも転がりそうな勢いで叫ぶネコタマを見ながらグリフィス(gc5609)が盛大なため息を吐いた。
(頼むからフレンドリーファイアだけは避けてくれよ‥‥)
 グリフィスが心の中で呟き、嫌がるネコタマを引っ張りながら能力者達は高速艇に乗り込んでキメラ退治へと出発し始めたのだった。


―― 虫キメラ退治開始 ――

 虫キメラが発生している森へと能力者達がやって来た――が、相変わらずネコタマだけは「嫌だ」だの「ありえない」だの叫んでいる。
「一緒に逃げちゃうー?」
 ジェーンが冗談半分本気半分で問いかけると「逃げちゃう!」とネコタマは本気全開で言葉を返してくる。
「お前は一体何の為に傭兵になったんだよ‥‥」
 グリフィスが呆れたように呟くと「今は何とでも言うがいいですよ! ネコタマ的に逃げれるなら何言われても平気ですよ!」と威張りながらいい、キリルの怒りボルテージが上昇していく。
「とりあえず、キリルさんが爆発する前に口を閉ざした方がいいかと思うんですけど」
 守原が苦笑しながらネコタマに言葉を投げかけると「魔王の手下めっ!」と酷い言葉が返ってくる。
(‥‥うちが爆発しそう)
 笑顔のまま、守原が心の中で呟いていた事をネコタマは知らない。
「さて、それじゃそろそろ行動を開始するか」
 森の中央まで来た所でベーオウルフが呟き、能力者達は予め立てていた班分けで行動をし始める。
 東班・守原、キリルの2人。
 南班・音桐、ベーオウルフの2人。
 西班・ジェーン、Innocenceの2人。
 北班・グリフィス、ネロ、ネコタマの3人。
(あぁ‥‥果てしなく心配だ)
 グリフィスはネコタマを見ながら心の中で呟き、気づかれぬように溜息を漏らした。
(何か‥‥俺と同じ(ダメ)人間の匂いがする)
 グリフィスと同じくネコタマと同じ班のネロが苦笑しながら心の中で呟いた。

※東班※
 守原は今回の任務の為、予め期限切れの腸詰用の血を分けてもらう為に肉屋へと寄って来ていた。
「使わずに見つかるなら、それに越したことはないんですけどね。念の為って事で」
 キメラが見つかりにくかった場合、誘引する為の血、そして普通の虫対策のために虫除けなども行っていた。
「‥‥それにしても、本当にあいつはサバイバル生活をさせた方がいいかもな」
 トランシーバーから聞こえてくるネコタマの叫び声を聞きながらキリルがため息混じりに呟く。
「同じ班の人は大変そうですねぇ、ま、まぁ‥‥こっちはこっちで確りとキメラ退治をしましょう」
 守原が言葉を返すと「そうだな」とキリルは短く言葉を返し、キメラ捜索を始める。
 夏も間近になり、暑い日が続くせいかキメラではなくても様々な虫などが飛んでいるのが視界に入る。
「おい、あれ‥‥」
 キリルが指差した方向には虫の外見はしているけれど、明らかに他の虫たちと様子が違うものが数匹存在している。
「4匹、群れで行動しているんでしょうか‥‥とりあえず開けた場所に誘導しましょう」
 守原とキリルはトランシーバーでキメラを数匹見つけたことを告げ、開けた場所を探してキメラの誘導を始めた。

※西班※
「うーん、キメラはどこかなー? さくっと見つけて、ちゃちゃっと退治してネコタマと遊びたいのにー」
 ジェーンはキメラ捜索をしながら、つまらなさそうに呟く。
「そうですわね‥‥わたくしも早くネコタマ様の恋の応援をしたいですわ」
 Innocenceが鈴のついた首輪を取り出しながら小さく呟く。
「何? それ」
「ネコタマ様用の首輪ですわ、鈴がついていて可愛いでしょう。もちろん餌のカリカリとかビニール袋にスコップも用意してますわ」
(‥‥ネコタマ、人間扱いされてないなぁ‥‥)
 うっとりとしながら言うInnocenceにかける言葉が見つからず、ジェーンはただ苦笑するしか出来なかった。
「あ、この辺って結構開けてるね――‥‥戦闘する場所に向いてるんじゃないかな?」
 2人がキメラ捜索を行っている途中で見つけたのは、戦闘に向いている開けた場所。元々は開けた場所ではなかったのだろうが、木々が倒れて他の場所よりは開けている。
「えっと西班のジェーンだよー。ちょっと開けてる場所を見つけたからここで戦闘するのがいいんじゃないかなー? うん、場所はさっき別れた場所を西にまっすぐー」
 ジェーンが他の班に連絡を入れると、西班のこの場所にキメラを誘導すると他の班から連絡が返ってきた。
「この周辺の虫さん達も探しておいた方がいいですわ、恋の相手は多い方がきっとネコタマ様も喜んでくださるでしょうし」
「あ、あはは‥‥そうだね」
 Innocenceの言葉に苦笑しつつ、2人は近隣に虫キメラがいないかを捜索し始めたのだった。

※南班※
「ちっ、ちょこまかと‥‥!」
 ベーオウルフは忌々しげに呟き、愛用の刀で横に薙ぐ。しかし攻撃対象が小さい為、思うように攻撃が当たらない。
「対象が小さい、しかも動き回っている――というのは中々厄介なものですね」
 音桐も小銃・フリージアを構えながら呟き「ですが‥‥」と言葉を付け足し、靴に装着した爪で虫キメラを攻撃する。
「やはり虫は所詮虫ですね」
 体が二つに裂かれたキメラを見て、音桐は呟く。
「当たればすぐに退治できるが、当たるまでが問題‥‥か。とりあえず残りのキメラは西の開けた場所に誘導しよう」
「そうですね、2人でするより人数が多い方が効率も良さそうですから」
 ベーオウルフの言葉に音桐は銃を構えたまま、西班の見つけた場所へと向かい始めた。

※北班※
「ああああ、痒い痒い痒いか〜ゆ〜いぃぃ!」
 腕を掻き毟りながらネコタマが叫んでいる。
「‥‥という事でネコタマ、おさらばするですよ!」
 すちゃっと手を挙げ、どさくさに紛れて逃げようとするネコタマに「待て待て待て待て」とネコタマの首根っこを掴む。
「せめて逃げるな! 共に行動した方が楽だろ?」
「そうですよ、人間苦手なものぐらいある、その克服を急ぐことはないんだから」
 グリフィスが引きとめ、ネロがネコタマを宥める。
「とりあえずキメラを探そう。君も俺もプロなんだから。何なら肩車でもしてあげようか?」
 ネロの言葉に「ネコタマ、子供じゃないですよ!」と怒ってみせるが、子供の方がまだ扱いやすいという事にネコタマは気がついていない。
(はぁ、これ以上暴走しないうちに仕事終わらせたいな‥‥)
 キメラ退治に来た――というよりも子供のお守に来たような感覚になりながら、グリフィスは心の中で呟いたのだった。


―― 戦闘開始・虫キメラ VS 能力者達 ――

 それぞれの班が森の中に散っていた虫キメラを誘導し、西班が見つけた場所で戦闘を開始する事になった。
 4つの班が誘導してきた虫キメラの数は数十匹、退治する事は簡単だが対象が小さいため、それぞれが連携をして攻撃する事になっていた。
「きゃぁぁぁぁぁ! 虫ですわ!」
 Innocenceがネコタマを突き飛ばしながら叫ぶ。
「ネコタマ様‥‥自分から向かっていくなんて凄いですわ!」
 Innocenceの言葉に(いや、あんたが突き飛ばしたよ)と残された能力者達は心の中で呟き、ネコタマの悲鳴を聞いてそれぞれ攻撃を開始する。
「そこで大人しくまとまってろ!」
 ベーオウルフは数匹で固まっているキメラに向けて攻撃を仕掛け、すぐに後ろへと下がる。ベーオウルフが退いた後、キリルがサブマシンガンを構え、キメラへと向けて射撃をする。
「猫井はこっちだ。さぁちゃちゃっと片付けようか」
 ネロが覚醒を行い、ネコタマを引きずりながら戦線に連れ出す。
「ぎゃあああ! 虫が虫が虫虫虫、無理――ッ!」
 ネロがキメラに攻撃を仕掛けた隙にネコタマが逃げ出そうとするが「おやおや、行き先を間違えてますよ、ネコタマさん。貴方はこちらです」と音桐が黒い笑顔を浮かべながらワイヤーでネコタマを捕らえる。
「ほらほら、ネコタマ! 遊ぶ為にも早くキメラ退治をしちゃおうよー」
 ネコタマよりも自由に見えたジェーンだったが、彼女はネコタマと違い、任務を放棄する事なくやるべき事はきちんとしていた。
「おい! ネコ! 何もしてないのなら、とにかく弾をばら撒け!」
 グリフィスがネコタマに向けて叫ぶと「うわあああああん」と全力で泣きながらネコタマが攻撃を仕掛ける――勿論目を瞑り、泣き叫びながらなので敵味方問答無用の攻撃だ。
「ネコタマさん! 人に向けて射撃しない! 仲間に合わせる!」
 守原が注意をするが、その注意も聞けないほどにネコタマはパニックになっていた。
「がんばって! ネコタマ様!」
 影からこっそりとInnocenceが応援するが、今の状況で応援してやる気を出されたら味方まで退治されかねない事に彼女は気がついているのだろうか。
「ばら撒けとは言ったが‥‥さすがにばら撒き過ぎだろう!」
 グリフィスは叫ぶ。
「人間、追い詰められると何をしでかすか分からないという典型的なパターンですね」
 感心したように音桐が呟く。
 その後、ネコタマの暴走を止め、能力者達は攻撃を合わせながら確実にキメラを仕留めていき、数十匹いたキメラ全てを退治する事が出来たのだった。


―― ネコタマ訓練開始 ――

 キメラ退治が終わった後、ネコタマに待っていたのはお説教タイムだった。
「確かにお前が退治したキメラもいた――‥‥だが! お前のせいでこっちも退治されかけたがな」
 キリルが静かな怒りを湛えながらネコタマへと言葉を投げかける。
「帰ったら直ぐに準備しろ。一週間たっぷりゲテモノを食えるようスケジュールを組んでやる」
「その前にちょっとだけ訓練をしましょうか」
 守原も笑顔でネコタマに言葉を投げかけるが、その額には青筋が浮いているように見えるのはきっと気のせいではない。
「い、いやですよ! 誰か助けてください!」
 ネコタマが周りを見渡しながら助けを求めるのだが、残念ながら彼女に味方というものは今、存在していない。
「‥‥目標は見据えているんだからお前のペースで強くなればいい」
 ベーオウルフが言葉を投げかけると「全然ネコタマペースじゃなく鍛えられそうです!」と慌てながらネコタマが言葉を返してくる。
「というのは俺の考えだから他の奴がお前を鍛える事を止めはしない。じっくりと鍛えてもらって来い」
「あんたは味方なのか敵なのかどっちですか!」
「ネコタマ様、訓練が終わりましたらご褒美にキャンディをあげますわ♪ 頑張ってくださいませ」
「ううう、ネコタマ、ゲテモノ嫌いですよー‥‥」
「嫌いなものは嫌いでいいと思うよ。ただ、そう言ってられない場合が必ずある。そんな時、後悔しないようにね」
 訓練という言葉に落ち込んでいるネコタマにネロが言葉を投げかける。
「‥‥まぁ、頑張って鍛えられて来るんだな。これでも飲んで頑張れ」
 グリフィスがフルーツ牛乳をネコタマに差し出す。彼は任務が成功した事は喜ばしいのだが、途中のネコタマ暴走を見て納得できない部分があり、訓練に行くのを見送る事にしていた。
「ううう、嫌だー‥‥」
「嫌いなモノ、怖いモノと向き合う事で人は強くなれるのですよ。ネコタマさん」
 音桐も爽やかな笑顔(ただし黒い)でネコタマを見送る。彼自身、多くの人間を観察してきており、誰もがそうやって強くなっていくという事を知っているからこそ言える言葉なのだろう。
「訓練かー、折角だし遊びに行っちゃおうかなー♪」
 ジェーンが呟くと「本当ですか! ネコタマだけしごかれるの嫌ですから付き合ってください!」と懇願するようにジェーンに抱きついた。

 その後、キリルと守原によって厳しく扱かれ、暫くの間、生ける屍になっているネコタマの姿が目撃されていた。

END