●リプレイ本文
―― やる気だけは人一倍・それがネコタマ ――
「今日こそネコタマ的に頑張って能力者なんだって胸を張れる結果を出しますよ!」
ぐぐ、とネコタマは拳を強く握り締めながら決意を大きな声で叫んだ。
「胸を張れる能力者‥‥ねぇ」
ベーオウルフ(
ga3640)は(能力者は胸を張れる肩書きじゃないと思うんだけどな‥‥)と心の中で言葉を付け足した。
(まぁ、この辺は個人の考え方次第だから‥‥猫井がそうなりたいと思うのであれば、それはそれで正しいんだろうけどな)
ベーオウルフはキメラ退治に意欲を見せているネコタマを見て、空回りしなければいいけど、と苦笑したのだった。
(あの人がネコタマ様‥‥)
王 憐華(
ga4039)は「えっと、ネコイタマg「猫井珠子ですが!」‥‥ネコタマ様、私は王 憐華と申します。今回は宜しくお願いしますね」と王は丁寧に頭を下げながらネコタマ、そして他の能力者達にも挨拶を行う。
「ネコタマ様は『敵を倒す能力者』になりたいのですか? それとも『誰かの役に立つ能力者』になりたいのですか?」
ちなみに私は夫を愛する能力者ですよ、と首を傾げ、可愛い表情で言葉を付け足した。
「ネコタマがなりたいのは‥‥敵を退治する能力者です! ネコタマ、不器用なので人の役に立ちたいと思っても‥‥きっと、出来ないのですよ」
「そうですか‥‥頑張りましょうね」
王がネコタマを元気付けるように呟くと「はいですよ!」とネコタマも元気よく言葉を返したのだった。
(うんうん、元気キャラが自信失ったって、ろくな事になんねーぞ! ここはドーンと先輩の私が励ましちゃるのです!)
如月・菫(
gb1886)は拳をぐっと握り締めながら心の中で呟く。
「‥‥相変わらず騒がしいな‥‥でも、給料泥棒やめたいと思った時点で一歩前進か」
キリル・シューキン(
gb2765)はネコタマを見ながらため息混じりに呟く。
「では、私も出来る限りの事は協力しよう。元スナイパーとしてこんな不甲斐ないのは放置できん」
キリルの言葉に「ネコタマ、今日限りで不甲斐ない卒業ですよ!」と言葉を返す。
しかし、そう叫ぶネコタマの言葉を聞いてキリルは(本当に大丈夫か‥‥?)と心配になるキリルの姿があった。
(楽な仕事ならいいんだがな‥‥別な意味で大変な任務になりそうだ)
赤月 腕(
gc2839)は心の中で呟き、ネコタマを一瞥してため息を吐いた。
「何食べてるですか、桜餅ですね? 桜餅じゃないですか、ネコタマ大好きですよ!」
ネコタマがきらきらとしら表情で赤月に問いかけると、赤月は無言で桜餅をネコタマに差し出す。
「ありがとうですよ! ネコタマ何も言ってないのに優しいですねっ」
(‥‥視線が寄越せと言ってた)
心の中で赤月はツッコミを入れ、リスのように桜餅を食べるネコタマを見ていたのだった。
「ネコタマさん、イスネグです。今日はよろしくね」
イスネグ・サエレ(
gc4810)がネコタマに挨拶をすると「はい、どうぞ宜しくですよ」とネコタマも言葉を返す。
(話には聞いてましたが予想以上みたいですね。ネコタマさんは。このまま放置するのも面白そうですが、ここはひとつ頑張ってもらいましょうか)
音桐 奏(
gc6293)が心の中で呟く。
「はじめまして、ネコタマさん。私は音桐 奏といいます。宜しくお願いしますね」
音桐が挨拶をすると「おおう、こっちこそ宜しくなのですよ! ネコタマ頑張りますから!」とガッツポーズを取って言葉を返した。
「ネコタマ的にみんなに迷惑かけると思いますけど、ごめんなさいですよ」
「うちもお世辞にも慣れてるとは言いがたいですし、足を引っ張る事もあるかもしれへんけど、精一杯行動させてもらいますわ」
皆さん、よろしゅうお願いしますわ――と言葉を付け足しながら月見里 由香里(
gc6651)がネコタマをはじめ、能力者達に挨拶をする。
「それじゃ、ずばっと自信をつけられるように、ちゃちゃっとキメラ退治してしまいましょう!」
如月が能力者達に言葉を投げかけ、今回の目的であるキメラ退治を行う為に高速艇へと乗り込んで、目的地へと出発し始めたのだった。
―― 目的地到着、キメラを探そう ――
(9人の能力者でキメラを、か‥‥)
ベーオウルフは資料を見ながら心の中で呟いていた。資料を見る限り、キメラの数は1匹であり、それに対して9人もの能力者が退治する為に赴く。
(こういうのは主義に反するというか、なんというか‥‥あまり好きじゃないんだけどな)
仕方がないといえば仕方がない事なのだが、それだけで納得できる彼でもなかった。
「ネコタマさん、まずは敵を怖がらない事と慌てない事です。一緒にいる仲間を信じて戦いましょう」
王の言葉に「怖がらない事、慌てない事‥‥どっちもネコタマ的に難しいですね」と真剣な表情でネコタマが言葉を返した。
「スナイパーって名前に惑わされるのはアレだぜ。スナイパーは超機械の扱いにも長けてるから、こっちを使ってみるのも悪くないのです」
言いながら如月は超機械ビスクドールをネコタマに渡す。
「銃がいいならこれでも使え。私のお古だけど、そこそこ強いからな」
超機械を渡した後、小銃S−01も如月は渡した。
「あー‥‥あと経験積んだらイェーガーとかになってしまえば、強くなれるからな」
如月の言葉に「へぇ、そうなんですか!」とネコタマはメモをしながら言葉を返す。
「確かにそれもいいが、コーシェチカにはアサルトライフルとか射程の長い武器がいいかもしれん。後は‥‥そうだな、スナイパーならこいつとか」
キリルは呟きながら機械剣αを抜く。超機械の一種を勧めるという事は如月と同じ意見でキリルもネコタマに勧めているのだろう。
「まぁ、でも今回は強そうな人も多いから、ゆっくり勉強するのがいいと思うよ。焦っても結果はついてこないからね」
イスネグの言葉に「確かに、一理あるな」と赤月が人口声帯を打ちながら呟く。
「私ももっとお役に立てればいいんですけど‥‥この状態じゃ、戦闘に積極的には参加できませんからね‥‥」
小さくため息を吐きながら音桐が呟く。彼は先日の依頼で重体になっていたため、今回は積極的な戦闘は控える事にしたのだ。
「無理はダメですよ! 音桐さんの分までネコタマがんばりますから!」
「その調子や、さて‥‥キメラはんはどこにおるんかな」
能力者達は高速艇を降りて、月見里が周りを見渡しながらキメラ捜索を行う。
今回は広い空き地にキメラが出現したと資料には書かれており、資料通りならばキメラ捜索に関しては苦労なく探せる事になるはずなのだが‥‥。
「あれ、ですかね」
イスネグが指差した方向には資料にある特徴を持った白い犬が存在している。
「他にそれらしき対象もいませんし、きっとあれでしょうね‥‥明らかにこっちを敵視して、今にも襲い掛かって――来ましたね」
音桐が呟き、襲い掛かってくるキメラを迎え撃つ為に能力者はそれぞれ武器を手にしたのだった。
―― 戦闘開始・能力者 VS キメラ ――
「‥‥この程度のキメラか」
ベーオウルフはキメラの攻撃を避けながら小さく呟く。だがもちろん油断はしておらず、すぐに攻撃に移れるような体勢でキメラの攻撃を避けていた。
「はっ、私の攻撃を喰らいやがれですよ!」
如月はスキルを使用しながらキメラに攻撃を仕掛けた――そこまでは良かった。
(ふはは、私のかっこよさも倍増ですよ!)
しかし、その代償として如月の煉力はゼロになってしまい、この後の戦闘は全く出来ないといっても過言ではない状況になった。
「‥‥出落ち、乙!」
如月はびしっとポーズを決めた後、後方に回り、持ってきたリンゴを食べながら「よし、あとは他にキメラがいないか警戒に勤める」と呟いたのだった。
「あわわわわ、如月さんが戦闘不能ですよ! ネコタマ的にどうすればいいですか!」
「‥‥コーシェチカ、落ち着け。別な意味の戦闘不能に聞こえる。それとパニックになる癖を押さえ込め。弾がぶれるぞ――ってぶれてるじゃないか」
盛大なため息を吐きながらキリルがネコタマに指導するのだが、キリルは心の中でこれほど教え甲斐のない奴もいないと毒づいていた。
「‥‥昔から犬に噛まれるのは慣れているが、今回は遠慮させてもらう」
赤月は小さく呟きながら愛用の緋刀を構え、スキルを使用してキメラとの距離を詰めた後に大きな一撃を食らわす。
「‥‥ふむ」
今回、赤月が任務に参加した理由の一つとしてフェンサーの動きの確認というものがある。
「ね、ネコタマ的にやっぱり次から頑張ろ「おやおや、どこに行くんですか?」やっぱりがんばりますぅぅ!」
キメラと対峙して恐怖の方が打ち勝ってしまったのか、逃げ出そうとするがブラックなスマイルを貼り付けた音桐に話しかけられ、涙目で戦線へと戻る。
「大丈夫です。あなたには仲間がいます。共に戦えば必ず勝てます」
「で、でも‥‥」
「焦ってはいけません。敵の動きを観察し、隙を見せる一瞬を狙い撃つのです。スナイパーはその一瞬を狙い撃つことで真価を発揮するのです」
「うちが呪歌でキメラの動きを止めます、その後からは皆さんの仕事やで」
月見里が呪歌を使用し始め、ランク3まで到達してしまい、キメラの動きがぴたりと止まる。
「大丈夫。強化は終わってるよ」
イスネグがネコタマ、そして他の能力者達に向けて言葉を投げかける。他の能力者達がキメラの足止め、そして月見里が麻痺させた時にイスネグはスキルを使用して、能力者達の武器を強化していた。
「さぁ、ネコタマ様‥‥GOです!!」
王も後押しするように強化をしようして、ネコタマにキメラを狙い撃つように指示をする。
既に他の能力者達によってキメラ自体が弱らせているが、自信をつけたいというネコタマにトドメを任せ、キメラを退治したという事実から自信をつけさせようと王、そして他の能力者達も考えていたのだ。
「が、頑張るですよ!」
ネコタマは如月から譲り受けた小銃S−01を構え、キメラへと狙いを定め、銃を撃ち、無事にキメラを退治する事が出来たのだった。
―― ネコタマ的に成長した? 成長していない? ――
「はぁぁぁ、もう心臓がドッキンドッキンバックバクですよ!」
キメラとの戦闘が終わった後、ネコタマがその場に座り込みながら叫んだ。
「どんな表現だ、それは‥‥それより、行きにも聞いた奴がいたが‥‥どんな能力者になりたいんだ? 戦闘する前と一緒か?」
ベーオウルフが問いかけると「んー」とネコタマは首を傾げながら考え込み、立ち上がりながら言葉を返す。
「ネコタマ的に、自分がやれる事を頑張れる能力者になりたいですよ。無理をして足を引っ張るわけにはいかないですし、だからと言ってみんなの支援が出来るほど経験豊かでもないですし! とりあえずやれる事をやる、それがネコタマ流傭兵術ですよ!」
ネコタマの言葉に「そうか‥‥その言葉、忘れるなよ」と呟き、軽くネコタマの頭を撫でたのだった。
「ネコタマ様、お疲れ様でした♪」
「でも、今日はネコタマ何もしてないですよ。トドメも皆がお膳立てしてくれたからですし」
「気にする事はありません、今日がダメでも自信は日々の努力ですから、これから頑張っていきましょう♪」
王の言葉に「‥‥うん、そうだね! ネコタマ頑張る!」と首を大きく振ってネコタマは言葉を返した。
「大丈夫! 私も強くなったんだから、だから大丈夫!」
出落ちした如月がネコタマの肩をぽんと叩きながら言葉を投げかける。
「‥‥何か、如月さんってネコタマと同じ属性っぽいですよ」
それはどういう意味だ、と如月は問いたかったがあえて問う事はしなかった。
「‥‥‥‥詰めが甘い、と言いたい所だが、まあよくやったと言っておこう」
キリルがネコタマに言葉を投げかけ「あまりにも情けない時は、一度三途の川を見せてやろうと思ったがな」と言葉をつけたし、ネコタマは引きつった表情でキリルから一歩後ずさった。
「ねぇ、ネコタマさん。もし迷ったり悩んだりしたら、もう一度初心に返って何故自分がこの道を選んだのかよく考えるといいよ」
「自分が何で選んだか‥‥私はあんまり思い出したくないけど」
(‥‥コーシェチカ?)
いつも自分の事を『ネコタマ』と呼ぶ彼女が『私』と言ったことに関してキリルは少しだけ驚きを見せていた。
「でも、アドバイスありがとうなのですよ。迷うのはダメですもんね」
「迷う事自体は別にいいんじゃないかな。でもその間にも時間は経ち、そのうち否応なく無慈悲な現実を打ち付けられる‥‥そうして人は後悔するんだ」
あの時ああしてればよかったってね、とイスネグが言葉を付け足す。
「イスネグさん」
「自分にもっと力があればよかったってね‥‥過去には戻れないのに‥‥まぁ守りたかった者を守れなかったダメな傭兵の独り言でした」
はは、と寂しそうに笑ってみせるイスネグに「ダメなんかじゃないですよ」とネコタマが言葉を返す。
「同じ気持ち‥‥私にも分かるから、だからありがとうですよ」
ネコタマの言葉を聞いてイスネグは最後の言葉を飲み込んだ。最後に『あなたはこうならないようにね』と言うはずだったのだが‥‥恐らく既に彼女は何かを亡くしているのだろう、大事な何かを。
「‥‥そういえば、最後のネコタマさん、かっこよかったですよ」
話を変えるように音桐がネコタマに言葉を投げかけると「そ、そうですか!? ネコタマ的にかっこよかったですか!?」と表情を明るくしながら言葉を返してきた。
「あんまり悩む事はありまへん。うちでも傭兵が勤まっとるんですし、ネコタマさんももう少し周りを見て、仲間を信じて落ち着けば何とかなるかもしれまへんえ」
月見里の言葉に「よし、ネコタマがんばる」と言葉を返した。
「まぁ、これでも食べながら今日の反省点でも考えればいい」
赤月が草餅(トラップ入り)をネコタマ、そして他の能力者にも差し出しながら呟く。
もちろん、このトラップ草餅に引っかかったのは――ネコタマであり、高速艇の中で赤月を追い掛け回すネコタマの姿があった。
END