タイトル:週刊記者とパーティー!マスター:水貴透子

シナリオ形態: イベント
難易度: 普通
参加人数: 19 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2007/12/29 18:14

●オープニング本文


さぁ、もうすぐクリスマス! 楽しくはっちゃけるわよ!

※※※

12月23日・日曜日

世間でのクリスマスには、まだ早いけれどクイーンズ記者の中では『23日』がクリスマスになっていた。

何故なら‥‥クリスマスにはクイーンズのクリスマス特集号が出るから、早めにクリスマスを楽しんで仕事を頑張ろう! というものだ。

クリスマスから向こうはお正月のクイーンズ作成などで、とてつもなく忙しくなるからだ。

「で〜きたっ!」

クイーンズ編集室(マリの自宅)の台所にてマリの声が響く。

クリスマスパーティーの中、マリの役目は料理全般担当。

はっちゃけ台風娘のマリは意外にも料理『だけ』は大得意だったのだ。

「ふふ〜‥‥いつでも嫁にいけるわよ! カモーン! 私の王子様ーっ!」

マリがお玉を持って叫ぶが、こんな彼女についていける男性などもちろん今までに現れた事はない。

「‥‥な、何で私まで巻き込まれるの? 今年のクリスマスは彼氏と過ごすはずだったのに‥‥」

チホはツリーの飾りつけをしながら、心からの嘆きの声を呟く。

「何言ってんのよ! 彼氏と仕事仲間のどっちが大切だって言うの!?」

「‥‥ちなみにマリは?」

「彼氏と仕事だったらもちろん仕事だけど、彼氏と『仕事仲間』だったら彼氏かな」

何気に自分が矛盾している言葉を言っているのに気づいていないのか、マリはけたけたと笑って答える。

「そういえば今年のパーティーには能力者の皆も呼んでいるんでしょ? どれくらい来るの?」

チホが問いかけると「知らない」とマリが答える。

「色んな人にパーティー券を売‥‥配ったから分からないや、もしかしたら仕事の都合で来れない人もいるかもだしね」

(「‥‥あなた、パーティー券を売ったのね‥‥」)

チホはマリの言葉にツッコミを入れたかったが、そうなるとマリの攻撃が来ると判断したのか、心の中の言葉だけで留めていた。

「庭も解放しているんでしょ?」

「もっちろん、外の木に飾りつけさせたし!」

「沢山人が来るといいわね」

「そーねー♪」

そんなこんなで始まった少し早めのクリスマスパーティー‥‥皆で楽しく騒ぎましょ?

※※※

マリの自宅は初代クイーンズ仲間がお金を出し合って購入した少し大きめの家です。

現在はマリを含む6人の記者仲間が生活しています。

部屋の数は12、その中の一番大きな部屋でクリスマスパーティーを行うことになっています。

もちろん庭もあり、テーブルや椅子など出してあります。

準備しているものは‥‥

◎各種料理(和洋中揃っています)

◎ケーキ(チーズケーキ・モンブラン・チョコケーキなどケーキ各種)

◎デザート(プリン・ゼリー・ヨーグルトなど)

◎飲み物(ウイスキー・ビール・焼酎・カクテル・ジュースなど)

◎他に持ち込みもOKです。


●参加者一覧

/ 伊佐美 希明(ga0214) / 神無月 翡翠(ga0238) / クレイフェル(ga0435) / ナレイン・フェルド(ga0506) / 須佐 武流(ga1461) / 沢村 五郎(ga1749) / 大山田 敬(ga1759) / 篠原 悠(ga1826) / 麓みゆり(ga2049) / 村田シンジ(ga2146) / 国谷 真彼(ga2331) / コー(ga2931) / エマ・フリーデン(ga3078) / シエラ(ga3258) / 小鳥遊神楽(ga3319) / ファルティス(ga3559) / アッシュ・リーゲン(ga3804) / 威龍(ga3859) / キョーコ・クルック(ga4770

●リプレイ本文

●週刊記者宅へ行く。

 今回は『あの』お騒がせ記者・土浦 真里(gz0004)が主催のパーティー!
 もちろん、ただのパーティーではないのは皆さんお分かりだろう。

「マリちゃんに会うのは久しぶりなのよね〜♪ 楽しみだわ」
 玄関口まで来て、ナレイン・フェルド(ga0506)が楽しげに呟いた。
「でも、随分と集まったモンだよなぁ」
 須佐 武流(ga1461)が今回集まったメンバーを見ながら呟いた。
「ラスト・ホープに来てからは初めてのクリスマスね、いつもは家族と過ごすことが多いんだけど‥‥」
 玄関に立ててある『クイーンズ特設クリスマス会場!』と書かれた看板を見ながら麓みゆり(ga2049)も白い息を吐きながら呟いた。
「お、みゆみゆも来てくれたんだな〜! いやぁ、ホントに来てくれるなんて俺は嬉しいさ〜」
 須佐が麓に向けて話しかけると同時に「幸せなお前が憎い」と玄関からチホが出てきた。
「ぎょっ‥‥」
 チホは折角の彼氏とクリスマスデートを邪魔された事から機嫌がすこぶる悪いらしい。そして、その最初の矛先は桃色オーラを出している須佐へと向けられたのだった。
「こーら! チホ、折角来てくれた人を脅かすなっつーの!」
 すぱーん、と緑のスリッパ(よくトイレにおいてあるやつ)で叩き、マリが能力者を出迎えたのだった。
「マリ隊長! 隊員はミニスカサンタで――‥‥」
 篠原 悠(ga1826)がミニスカサンタ姿で現れた――のだが、似たような格好をマリもしていた。
「‥‥さすが隊員! 空気読んでるね! ど〜ぉ、可愛いでしょ! 私が」
 親指をビッと立てて、マリが篠原に話しかける。
「‥‥何か、犯罪的じゃないか? マリの格好」
 マリのサンタ姿を見て沢村 五郎(ga1749)が大山田 敬(ga1759)に話しかける。
「あぁ‥‥犯罪的だな」
「え? 犯罪的に可愛いって? やだなぁ! もう!」
 恐ろしいほどのプラス思考でマリは話し、彼らの言葉を最後まで聞かないうちに家の中へと入っていった。
「‥‥あの格好が許されるのは‥‥高校生くらいまでだろ」
 知らぬが仏、もしくは聞かぬが仏、マリのための言葉であった‥‥。

 それから、能力者達も家の中へと入り「クレイやん、此処たって」とマリからお呼び出しを受けたのはクレイフェル(ga0435)だった。
「何? 立ってるだけでええの?」
 クレイフェルが問いかけると「うん、翔太! 落として!」と二階にいるクイーンズ記者の翔太に向かって叫ぶ。
「‥‥‥‥落とす?」
 コー(ga2931)がマリの言葉に違和感を感じて呟くが、時既に遅しで『それ』は落とされた後であった。

 かっこーーー‥‥ん‥‥

 落とされたのは金タライ、そしてそれはクレイフェルの頭に直撃。
「よしっ! いい音したところでパーティー開始ぃ!」
 クレイフェルを除いた能力者は料理などが用意されている部屋へと案内されたのだった‥‥。
「ちょ、ちょお待ちや‥‥俺、このまんまかい」
 頭を押さえつつもクレイフェルは芸人魂を見せて歩き出したのだった。


●食べて飲んで騒げ!

「えぇと、改めて‥‥初めまして、よね? 記者のマリっす! 宜しくぅ!」
 麓、朧 幸乃(ga3078)、シエラ(ga3258)、ファルロス(ga3559)、アッシュ・リーゲン(ga3804)、キョーコ・クルック(ga4770)を見ながらにっこり営業スマイルで話しかける。
「ヨロシクな、クレイから色々と聞いてるぜ?」
 アッシュが笑いを堪えながら言葉を返した。
「ふふ、私は先に来てお手伝いをしてたけどね」
 そう、キョーコは招待されている側だと言うのに、他の能力者達より早く来て、料理の手伝いなどをしてくれていたのだ。
「ゴッドもお久しぶり〜‥‥ってこの前『助けて』もらったけどね!」
 マリが神無月 翡翠(ga0238)の背中をバシンと叩きながら話しかける。あくまで前回の勘違いは認めない方向でいるらしい。
「まったく‥‥チホさんも可哀想にね。せっかくのクリスマスを‥‥」
 チホの事情を知っているのか小鳥遊神楽(ga3319)が苦笑しながら話しかけてきた。
「だって〜、チホとは長い付き合いだもん、ね〜?」
「‥‥長い付き合いじゃなくて『長く付き合わされ』の間違いじゃないの?」
 チホは盛大なため息を吐きながら準備をする為に奥へと引っ込んでいった。
「そういや、これ、渡すのを忘れてた」
 神無月は言うと同時にマリに花束を渡す。どうやらクリスマスプレゼントのようである。
「うっそ! 私、男の人から花束貰うの初めて! ありがとね! ゴッド!」
 マリは鼻歌を歌いながら「チホ〜、貰ったから生けといて〜」と台所にいるチホに向けて叫んだ。
「でも、これだけ能力者集まってる割に狭く感じないのが凄いね」
 伊佐美 希明(ga0214)が家の中を見渡しながら呟く。
「あ、のんたん。いらっしゃい、今日は楽しんでいってね♪」
「‥‥のんたんだけは止めて‥‥ホントに」
 伊佐美が懇願するように言葉を返すと「えー‥‥じゃあ、のさみんで」と答える。あまり変わっていないような気がするのは、きっと気のせいだろう。
「マリちゃん、もうお料理いただいちゃってもいいのかしら?」
 ナレインが問いかけると「もちろん! 飲み物食べ物、揃っているから自由に食べてね」と答えた。
「じゃあ、俺も‥‥っとコレを渡すのを忘れていたな」
 村田シンジ(ga2146)がマリに『名店の菓子折り』を渡す。
「え? 貰っちゃっていいの?」
「あぁ、これはプレゼント交換って空気の物じゃないからな。偶々手に入ったんだが、俺が持ってても食いそうにないからな、皆に配るなりしてくれ」
「分かった! ありがとね、シンズィー」
 最後のあだ名を聞いただけで村田は『やらなければよかった』と思っているに違いない。
「―――って、皆待てーっっっ! 司会の俺をスルーしてパーティー始めるな! マリも金タライを落とすな!」
 叫んだのはクレイフェル。先ほどから部屋の隅にいたのだが、誰も何も話しかけなかったために今まで置物のように立っていた。
「クレイやん、金タライを落としたのは私じゃなくて翔太」
 マリが指差しながら言うと、クレイフェルは其方を勢いよく振り向く。
 しかし、そこには「やらないと給料ナシって言われたんですぅぅ」と涙目で訴える翔太の姿があった。
「原因はお前やんけ!」
 すぱこーん、と本日一回目のハリセンが炸裂した――が、マリはダブルハンド(両手)に持っていたスリッパで反撃に来たのだった。
 これより、暫く二人の戦いが始まることになったのだが、他の能力者達は気にせずに料理や飲み物を堪能し始めたのだった。
「あ! そっちの中華系は龍っちが差し入れてくれたものなんだよー!」
 マリが戦いを中断して威龍(ga3859)が差し入れてくれた中華料理を指差す。
「へぇ、手作り?」
 小鳥遊が問いかけると「あぁ」と短い言葉が返ってくる。
「こう見えても中華料理屋の息子としてガキの頃から確りと鍛えられているからな。味はそこいらの料理屋に負けない自信があるぜ」
 小鳥遊は威龍の話を聞きながらエビチリを口に入れる。確かに今まで食べた中華料理店の料理より美味しいものだった。
「しかし、威龍の料理も凄いが、他の料理も凄いな、全部手作りということは‥‥誰にでも特技の一つや二つはあるもんなんだな」
 神無月が感心したように呟いていると、スリッパが彼の頭にスパーンと飛んでくる。
「聞こえてるわよ! ゴッド!」
「そうそう、私は着替えてくるからマリちゃんの部屋を借りるわね、ええっと、何処かしら」
 ナレインがクレイフェルとバトル中のマリに話しかけると「二階の一番奥よ、名前書いてあるから」と答えた。
「しかし‥‥司会のクレイフェル、主催者のマリ‥‥どっちかが帰ってこないとパーティーは進まないんだけどな‥‥」
 ファルロスがポツリと呟くと「‥‥決着がつくまでは無理みたいですねえ」と国谷 真彼(ga2331)が苦笑気味に答えた。
「クレイはモンブランを、マリはかに玉を忘れてるなー‥‥」
 アッシュも持って来た料理&ケーキ(モンブラン)を何処で出せばいいのか悩み中である。
「かに玉ならテーブルに並べておこうか?」
 キョーコがアッシュに問いかけると「それじゃ、頼むわ」とかに玉を渡す。
「何でお前さんももてなし係してんだ? 呼ばれた側だろ」
 苦笑しながらアッシュが問いかけると「性に合わないんだよね」と答えた。
「こんな格好してるわけだし、おもてなしされてばっかりというのも、ちょっと‥‥ね」
 キョーコがかに玉を置いたテーブルの横では麓と須佐が一緒に料理を食べている。
「‥‥こんな聖なる日に幸せそうなお前が憎らしい、恨めしい」
 どーん、と追加料理を置きながらチホは須佐にだけ聞こえる低く小さい声で呟き、また奥へと引っ込んでいく。
「‥‥怒らせたら一番怖いタイプかな、うん」
 かに玉を食べながら須佐は呟く。
「どうしたの?」
 麓が須佐に問いかけると「や、何でもない」と慌てて言葉を濁したのだった。
 そして、台所に戻ったチホを宥めていたのは‥‥小鳥遊だった。
「ほら、お酒でも飲んで気を紛らわせましょ‥‥これからも何かマリさんが暴走しそうだったら、遠慮なく連絡して。一度関わった以上はマリさんを止めるのも運命だと思うし。あたしはチホさんの味方だから、安心して」
 小鳥遊の言葉が嬉しかったのかチホは「ありがとー!」と叫びながら焼酎(ロック)を一気飲みする。
(「‥‥もしかしたらチホさんとマリさんって似たり寄ったりなのかしら‥‥」)
 焼酎を一気飲みするチホを見て、そう思わずにはいられない小鳥遊だった‥‥。


●騒げ騒げ、乱闘は続くよ!

「‥‥はっ、戦いなんてしとる場合やないわ!」
 数十分戦いを続けた後で、クレイフェルが我に帰ったように叫び、マリをスパコーンとハリセンで叩きながら、能力者達がいるリビングへと向かう(と言っても5歩程度)
「あかん、俺は着替えてくるから部屋貸してな」
「いいけど、今はお姉様が使用中よ」
 マリが答えると同時に「私は終わったからどうぞ」とメイド服を着て、頭にカチューシャを着けたナレインが現れた。
「お帰りなさい、ご主人様―――なんちゃって♪」
「可愛い〜! 後で皆で写真撮ろう! クリスマス号の表紙にするから!」
「メイドさんが増えた」
 通りがかったキョーコも楽しそうに呟く。
「ふふ、一緒にドリンクサービスとかしちゃいましょうか」
 ナレインとキョーコはそう言って能力者達にドリンクサービスを始めた。
「あれ? シエラっち。どしたの?」
 窓際でジュースを飲みながら外を眺めるシエラを見つけ、マリは近寄っていく。近くに行くと分かったのだが、シエラは小さな声で歌を口ずさんでいた。
「母が教えてくれた‥‥歌です」
 彼女もクリスマスだという事でサンタの格好をしているが、チホに聞いた話によると彼女の友人が今回のパーティーに行くようにと手配したのだとか‥‥。
 もちろんサンタの格好も友人達が着せたのだろう。
「そうなんだ、綺麗な歌ね。そういえば玄関口においてあったダンボール、シエラっちがくれたんでしょう? ありがとね」
 玄関口のダンボール、それは冬野菜が沢山入ったもの。小さな文字で名前とメッセージが書いてあった。
「クイーンズの皆って肉とか魚とか好きだから、中々野菜を食べる機会がないのよね。だから凄く嬉しい、早速明日のご飯から使わせてもらうね♪」
 にっこりとマリが笑って話しかけると「‥‥いえ、お気になさらず」と呟くような返事が返ってきた。
 その時、着替え終わったクレイフェルが「とーう!」と叫びながら帰って来た。彼の格好、タキシードにトナカイ角のカチューシャ。凄く似合っている。
「今宵もやってきましたっ! プレゼント交換の時間やで〜!」
 クレイやんサンタは大きな白い布の中にそれぞれが用意したプレゼントを詰め込んでいく。
「‥‥‥‥何か、不自然なほどに大きいな」
 神無月が呟くと「私の気持ちがぎっしり詰まってるよ♪」と悪戯っぽく笑う。
「ちょい待った! のさみんも一緒に騒ごうよ〜!」
 マリが「おいでおいで」と招きながら伊佐美を呼ぶ。馬鹿騒ぎにも積極的に参加しない伊佐美をマリは見ていた。
「ちょい待っててね」
 マリは能力者達に言い残して、伊佐美のところへと向かう。
「どしたの? もしかして‥‥楽しくなかった、とか?」
「ううん‥‥少し、ウチに居た時のことを思い出してさ」
 窓から空を眺めながら伊佐美は呟くように話し始める。
「‥‥ウチね。末っ子で貧乏だったからさ、服とか兄貴のお下がりだったんだ。でもクリスマスに父さんが服を買ってきてくれてね‥‥ふふ、あの武道一筋の親父が、どういう顔で選んでくれたのか、今思うと可笑しいな‥‥」
 楽しかった、と悲しそうに微笑む伊佐美にマリはかける言葉が見つからない。
「‥‥帰るんだ、必ず」
「そうだね、いつか帰れるよ。だってのさみんがこんなに家族の事想ってるんだもん、絶対に帰れる」
 マリの言葉に伊佐美はきょとんとした顔を見せ「‥‥ありがとう」とプレゼント交換の場所へと一緒に歩き出した。
「さぁ! 皆、袋の中からプレゼントを選んでや〜」
 クレイフェルが「何が出るかな♪ 何が出るかな♪」と歌いながら皆がプレゼントを引いていくのを見ていた‥‥途中で鳩が飛び出したりなどもしていたけれど。
「‥‥これは‥‥」
 伊佐美がプレゼントを引くと、出たのは『ナレインから♪』と書かれたもの。中身はフルーツ系の甘い香りのする香水と紫のマニキュア、箱には赤いリボンが結ばれていて可愛らしいものだった。
「へぇ、甘い香りとかのさみんに合いそうだね♪」
「ありがとう」
 伊佐美は笑って箱を大事そうに抱きしめる。
「ちょ! 俺、危険物とか書いてあるもんひいたんだけど!」
 須佐が黄色い紙に『危険物♪』と書かれた箱を掲げる。
「あ、それは俺からだ」
 神無月が呟き、須佐は箱を開けてみる。すると中身は凝った細工のワイングラスのペアセットだった。
「おおぉっと! 実用性あるやんな!」
 クレイフェルが麓を見ながら「憎いね、このやろう」と肘でつついていた。
「私は‥‥クレイフェルさんからのプレゼントみたいですね」
 麓はクレイフェルからのプレゼント『ブランデーケーキとクマのぬいぐるみのセット』だった。
「ありがとうございます、クレイフェルさん」
「俺のは――須佐からのみたいだな」
 村田は須佐からのプレゼントをあける。すると『ロボット変形型のMP3プレイヤーとヘッドホン』のセットだった。
「凄いな‥‥」
「ちゃんと音も出るんだぜ」
 ロボット変形のプレイヤーなんて見た事がないため「いいなー‥‥」とマリも目を輝かせながらジッと見ている。
「俺は‥‥マリから? 凄い大きいんだけど‥‥」
 コーが呟き、箱を開けると中には一枚の紙が―――『マリちゃんの気持ち♪ メリークリスマス』と書かれたものだけが入っていた。
(「‥‥どうしよう、これは『わあい!』とか言った方がいいんでしょうか。それとも『何でやねん』とツッコミを入れるべき?」)
 心の中でコーは葛藤を繰り返していた。
「こ、コっち、冗談だからツッコミ入れていいんだよ? ちなみに本当のプレゼントはこれ」
 マリが焦りながら渡したのはチョーカー、いつも彼女が身につけているものと似ているデザインのものだった。
「あと、クイーンズのバックナンバー全部、かな」
 どさっ、と目の前に出されたクイーンズのバックナンバーにコーは「おお‥‥」と呟いた後で「ありがとうございます」と丁寧に頭を下げた。
「あたしは沢村からみたいだね」
 キョーコは『ライアシューズ』と『エリシオン』を見せて、沢村に礼を言った。
「うちはー‥‥簡単でウマい、初心者にも安心のレシピ5選、アッシュさんからのやわ」
「おう、自作のだけどな、ちょっとしたコツとか隠し味とか書いてあるからさ」
「ありがとーう!」
 言いながらアッシュも袋の中へと手をいれ、大きな箱を取る。
「‥‥中身は‥‥屋台の永久会員権?」
「うちのプレゼント!」
 さすがはクイーンズ隊員、やり方がマリそっくりである。
「俺のは‥‥演歌CD!」
 大山田が叫ぶ、演歌が好きなのだろうか? ちなみにプレゼント主のファルロスは現在企み中のために席を外していた。
「‥‥私は、ぬいぐるみ‥‥です」
 シエラがひいたのは可愛らしいぬいぐるみ、贈り主はキョーコであった。
「あ‥‥あたしに可愛らしいのが似合わないってのは分かってるけどさ」
 顔を赤らめながら答えるキョーコだったが、シエラは「嬉しいです‥‥ありがとうございます」と丁寧に頭を下げて礼を言った。
「次は俺やなー」
 クレイフェルが袋の中に手をいれ、プレゼントを引くと小箱だった。
「ええと、何々、中華料理一食分の引換券?」
 クレイフェルが読み上げると「当選おめでとさん」と威龍が話しかけてきた。
「‥‥と言うわけで俺が手ずからプロ級の腕を振るわせてもらうぜ、むさい男の料理だが、味は今日の差し入れで保証済みだから安心してくれ」
「サンキューな」
「次は私ね、ええと、これは‥‥こねこのぬいぐるみ、かしら。コーさん、ありがとうございます」
 朧がぺこりと頭を下げてコーに礼を言う。
 続いて小鳥遊もプレゼントを引いたが、これは朧が用意したハンドクリームだった。
「日々の鍛錬などでも手は荒れてしまうでしょうから‥‥寒い季節にはぜひ」
「ありがとう、ぜひ使わせてもらうわね」
 小鳥遊はハンドクリームをバッグに直しながら朧に礼を言ったのだった。
「次は俺みたいだな――小鳥遊からのプレゼントで『ハグ一回券』とな」
 威龍が呟くと同時に男性陣の空気が変わる、きっと羨ましいのだろう。
「金欠でね、ちょっとそういうものになっちゃったけど」
 小鳥遊が苦笑しながら呟くと「ありがたく貰っておく」とポケットにハグ券を直したのだった。
「こ、これは――‥‥」
 続いて国谷がひいたのだが、凄い偶然が起きたのだった。
「これは‥‥僕に僕からのプレゼントだね、こんな偶然が‥‥」
 ちなみに彼が用意したのは時差式ハリセンというもので、叩いても無音、しかも一秒ほど経ったころに大きな音が出るという代物だ。
「国やん! それ欲しい! 欲しい!」
 マリがしゅぱっと手をあげ叫ぶと「そうだね、これはあげるよ」と苦笑しながらマリに時差式ハリセンを渡した。
「おい、シュークリーム食べないか?」
 ファルロスが人数分のシュークリームを持ってきながら言う。
「賛成!」
 篠原が率先して手を挙げたが、何故かマリだけは引きつった笑顔を見せていた。
 そして、人数分のシュークリームが行き渡ったのを確認すると、ファルロスはにやりと不敵な笑みを浮かべながらシュークリームを口の中に入れた。

〜〜暫くお待ち下さい〜〜

「な、何なの!? これ、げほっ、カライというよりツライよ!」
 一番に文句を言ったのはキョーコだった。その隣では朧と麓が蹲って震えている。
「何で80%の確率シュークリームがぶっちぎり100%になってるんだよ!?」
 ファルロスもジュースを一気に飲みながら涙目で叫ぶ。
「え、えへ。実は、それ‥‥私だったりするかなぁなんて?」
 頭を掻きながら呟くのはマリ、その手にはまだシュークリームが持たれている状態だった。
「ここは‥‥食べてもらわないとね」
 伊佐美が呟きながらマリに一歩近寄る。
「そうだね、ここは仲間外れはいけないから食べるべきだと僕も思うね」
 国谷も眼鏡を妖しく光らせながらマリに詰め寄る。
「マリ隊長! 目標をマリ隊長にロックオンしました! 指示をどうぞ!」
「のっち隊員!? 隊長を裏切るの!? そんな隊員を持った覚えはないわよ!」
「安心してください、今だけですから」
 そう言って篠原はマリをガシッと捕まえる。
「そうだな、死にはしないから安心しろ」
 神無月がシュークリームを持ち、マリの口元に近づけながら意地の悪い笑みを浮かべる。

〜〜再び、暫くお待ち下さい〜〜

「‥‥‥‥‥っ、つ、つ、ツライ‥‥」
 床に突っ伏し、ごろごろと転がりまわるマリを見て、普段彼女に苛められている面々は少しだけスッとしたのだとか、しないとか‥‥。


●騒ぎも終盤! 歌って踊って、飲んじゃえ!

 シュークリーム騒ぎから少しの時間が経った頃、皆の口の中も漸く普通に戻りつつあった。
 そして、沢村と大山田がマリが作った簡易ステージの上で今は歌を披露している。歌う前は「ちゃんと覚えてんのか?」と大山田が沢村に話しかけていたが「当たり前だろ」と言葉を返した。
 用意したカウボーイハットを深く被り、顔を隠しながら歌を歌う。最初の歌は大山田と沢村が学生の頃に学園祭で歌ったという歌、続いてクリスマスソングも歌い始める。
 クリスマスソングの方は大山田が「せっかくのクリスマスだし、歌おうぜ」と呟いた事で歌い始めたのだった。
 どちらの曲も二人にとっては思い出深いもののようだ。
「お疲れ様っ、うちの屋台でのたこ焼きだよ。食べてね」
 にっこりと笑顔でたこ焼きを差し出す篠原、ちなみに五箱あるのだが、どの箱の中にも『わさび玉』『ハバネロ玉』『からし玉』が搭載されている。
「うちも一個食べてから演奏に行こ―――ぐはぁっ!」
 食べると同時に篠原はガクリと膝を折る、その姿はまるでキメラとの激戦の後のようだ。
「のっち隊員! どうしたの――って食べたのね、ハバネロ玉を‥‥」
 マリがオーバーなリアクションで対応すると「‥‥グッジョブ、うち!」と呟き、口の中の辛さを我慢しながらアンプ内臓ギターを持ち、大山田とのセッションに向かう。
 大山田と篠原がセッションを始めた時、部屋の隅で朧がフルートを吹き始める。
 ギターとフルート、一見すると合わない感じがするがギターの激しさとフルートの静けさがちょうど良い感じになっていた。
「お姉様、一緒に歌お」
 マリがナレインの腕を引っ張りながらステージに連れて行く。
「あんまり上手じゃないんだけど‥‥マリちゃんと一緒なら、大丈夫かな?」
「シエラっち! 次はシエラっちの歌を聞かせてね♪」
 ステージ上からマリが叫ぶと、シエラは少し遠慮がちに「‥‥頑張ります」と答えた。
「そしてー! 二人の後ろでバックダンサーするのはー‥‥たけるん!」
 マリが紹介すると、勢いよくステージに須佐があがる。
「じゃあ、始めるよー!」
 篠原が叫ぶと同時に音楽が激しくなり、ナレインとマリが歌い始める。最初はナレインも控えめに歌っていたが、お酒も入っている事もあり、歌い続けるうちにマリの腕を取って踊り始める始末。
「みんなでわいわいするのって楽しいわよね♪」
 踊るナレインとマリを見ながら、他の能力者は食べ物をつまんだり、お酒やジュースを飲んだりしている。
「いつも(マリ相手に)お疲れさん。これからも頑張ってな」
 踊る須佐を見ながら、クレイフェルはクイーンズメンバーにボールペンを渡す。ローズウッド製の軸には『dum spirospero』の文字が描かれていた。
「ありがとう」
 チホはボールペンを受け取り「記者には必需品だものね、ありがとう」と笑顔で答えた。
「あーーーっ! クレイやんがチホに何かプレゼントしてるーっ! 私にはーっ!?」
 歌いながらマリが叫ぶと「ちゃんとマリにもあるわ!」と耳を塞ぎながら答えた。
 ちなみにクレイフェルからマリに贈られた物は耐水ペーパーの丈夫そうなメモ。
「色気も何もないけどな、実用性第一ってことで」
 ステージから降りてきたマリに渡すと、マリはメモを暫く見つめたままだった。
「ありがとう、クレイやん! 大切に使わせてもらうね」
 そう言ってマリはいつも持ち歩いている革製のバッグに直した。
「マリさん、もう少しチホさん達を労ってあげたら? マリさんが自由に動き回れるのもチホさん達のバックアップがあってのこそだと思うし」
 小鳥遊も言葉に「もちろん♪」といって一枚の封筒を取り出した。
「チホたちにはお正月から一週間くらい休みを取ってもらって、温泉にでも行ってもらうつもり。この温泉のチケット手配するの結構苦労したのよねぇ」
 ため息混じりに言うマリに小鳥遊は少し驚いた。いつも迷惑をかけるのを何も考えない人だと思っていたのだから‥‥。
「そういえば‥‥クイーンズの未発行雑誌とかあったら読ませてもらいたいんですけど‥‥」
 麓がマリに問いかけると「あ、私の部屋の隣がバックナンバーとか未発行記事とか散乱してるから見ていいよ」と答えた。
「みゆみゆが行くなら俺も行く、折角誘ったのに一緒にいなきゃ意味が‥‥クイーンズに俺の記事載ってるのあったよなっ?」
 須佐が問いかけると「B棚の右から二番目の雑誌がたけるんの記事よ」と答えた。
「さぁっ! まだまだパーティーは続くわよぅ!」
 マリが元気よく手をあげると「元気よねぇ」とチホがため息混じりに呟く。
「まあまあ、あの元気さがあってのマリ君だからね」
 国谷がチホを宥めるように話しかけると「まぁ、そうなんですけどね」とチホは諦めたように呟く。
「一番苦労してるのはチホ君みたいだから結構ストレス溜まってるんじゃないの?」
 国谷が問いかけると「そうなんだけど、昔よりはマシかな」とチホは答える。
「昔?」
「うん、お兄さんが亡くなった頃の話。今のマリからは考えられないだろうけど、何も食べず、眠らずの日が何日も続いたのよ」
 チホの言葉に騒ぎ立てるマリを見て「今からは考えられないね」と苦笑気味に答える。
「うん、そうでしょ。マリってお兄ちゃんっ子だったから‥‥目なんかも死んだ魚みたいな感じでね、それと比べると今の方が断然マシ」
「ちょっとぉ、何話してるのよ〜」
 マリが国谷とチホの二人に話しかけると「敏腕美人記者さんの話を聞いていたところだよ」とにっこりと国谷が答える。
 それを見てチホは『うまい』と思ったのだとか‥‥。
「以前の雑誌とかを見せてもらったんだけど、記事のまとまりもあるし、写真も臨場感のあるものが撮れている」
「ふふ、おだてても何もでないわよ」
 そう言いながらもニヤけているところを見ると嬉しいのだろう。
「あ、コっち。そのゼリーはオススメなのよ♪」
 コーがデザートのゼリーを取っているのを見て、マリが話しかける。
「杏のお酒で作ったゼリーなの、少し甘いんだけど、大丈夫?」
「えぇ、大丈夫‥‥かな」
「このお酒とよく合うんだから、一緒に飲もうぜ!」
 マリがカクテルを取り、コーと一緒に飲もうとしていると‥‥篠原と伊佐美がそれを止める。
「ほらほら、子供もいるし、お酒は控えて控えて」
 伊佐美がカクテルをマリから取り上げながら、やんわりと説得をする。
「マリ隊長! それだけはアカン! 色々と大変な事になってまうよ? 嫁の貰い手とか‥‥」
 最後の言葉はボソリと言われたが、マリが聞き逃すはずもない。
「あ〜ら〜、のっち隊員? 嫁が‥‥なんだって? 私はこんなに魅力的なんだもの! いつかは素敵な王子様が白馬に乗って現れるのよ!」
 高笑いをするマリに「白馬に乗ってるやつがいいのか?」と沢村と大山田が問いかけてくる。
「や、本当に白馬に乗ってたらドン引きだけどね。白いかぼちゃパンツはいて? 無理無理! そんな王子様は却下!」
 けたけたと笑うマリはとても楽しそうだ。きっと、この日を楽しみにしていたのだろう。
 ちなみにその後ろではキョーコがクレイフェル目掛けてシャンパンを開けようとしている。
「ちょっ。何するねん! 狙い撃ちか!」
「ヤダナァ、アタシガ親友ノくれいふぇるヲ狙撃スルワケナイジャナイカー」
「思いっきり片言やねんけど‥‥」
 ちっ、と舌打ちをしながら残念そうに呟くキョーコだったが「オープーン!」とマリがスポーンとシャンパンを開ける。栓の向かう先、それはクレイフェル――、しかし実際は頬を掠めた程度で済んだのだが。
「はいはい、ケンカもそこまで! クレイと俺の傑作特大モンブランで機嫌を直せ」
 アッシュがクレイフェルと共同で作ったモンブランを持ってくる。モンブラン好きの麓は大喜びして、マリもその巨大さに喜んだのだった。


●楽しい時間はすぐ終わって‥‥。

「そろそろ、帰らなきゃな‥‥楽しい時間はすぐ終わるな‥‥」
 神無月が時計を見ながら呟き、片づけを手伝う。
 他の能力者達も片付けをする為に動き出す中、マリとクレイフェルは動くことが出来なかった。
 マリによってお酒を無理矢理飲まされ、そしてマリも終いには飲み始め、それはそれは凄い騒ぎになってしまったからである。
「全く‥‥下戸なのに、何をやっているんだか‥‥」
 キョーコがハリセンで仰ぎながら呆れて呟く。ちなみにハリセンで仰ぐたびにバシンバシンとクレイフェルの頬に当たっているのには気がついていない――というか気がつかないフリをしている。
「今日は本当に楽しかった! マリ隊長にこれからも楽しいこといっぱいしようねって伝えてね」
 マリがへばっているので篠原はチホに伝言を頼んだ。その後ろでは「イイ感じに壊れてんねー‥‥」とアッシュが楽しそうに呟く。
「へぇ、今日は夜空が綺麗だな、星がよく見える」
 ファルロスが玄関を開けて、空を仰ぐと星がきらきらと瞬いていた‥‥。


 後日、クリスマス特集号で『スクープ!』と書かれていたのは‥‥。
 クレイフェルの金タライ直撃シーン、そして須佐と麓の桃色オーラ、そして最後にアカペラで歌を歌ったシエラの記事が大きく取り上げられていた。

 クイーンズ記者・土浦 真里主催のパーティーは大成功でした!
 いつもお世話になっている(している)能力者達の素顔が見えたような気がしました♪
 さてさて、もう少ししたらお正月の飲み会の準備を始めたいと思いまーす。
 マリちゃんでした♪



END