タイトル:紅に立つ双頭の龍マスター:水貴透子

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/02/28 23:41

●オープニング本文


燃え盛る街の中で、住人達は確かに見ていた。

二つの頭を持つ龍の姿を。

※※※

それは緊急要請された依頼だった。

広くもないけれど、狭くもない街でキメラが現れ、能力者達に退治して欲しいと住人達が言ってきたのだ。

避難そのものは完了したが、避難の際に死者も多数出るという惨事になってしまった。

「‥‥建物は倒壊しており、恐らく街は原型を留めてはいないと思われます」

オペレーターの言葉に能力者達は無言で資料に視線を落とす。

対象のキメラは伝説上に出てくるような双頭の龍。

「‥‥結構大きいわね。人間の5倍はあるんじゃない? この大きさ」

「そうですね‥‥ですが、その分――というわけではありませんが動きそのものは鈍いとの事です」

「動きが鈍いのに死者が出たの?」

女性能力者がオペレーターに言葉を返すと「‥‥運悪くキメラの進行方向にいた、としかいいようがありません」と表情を曇らせながら言葉を返した。

「まぁ、どちらにせよ、油断大敵かしらね」

「そうですね。何があるとも分かりませんし‥‥街は火の海との事ですから」

「その火はキメラが?」

「いいえ、それは判っていないんです‥‥だから現地で皆様が確認して動くしか――」

オペレーターの言葉に女性能力者は盛大なため息を吐きながら再び資料に視線を落としたのだった。

●参加者一覧

ドクター・ウェスト(ga0241
40歳・♂・ER
カララク(gb1394
26歳・♂・JG
周太郎(gb5584
23歳・♂・PN
セラ(gc2672
10歳・♀・GD
悠夜(gc2930
18歳・♂・AA
イヴァン・レオーノフ(gc6358
29歳・♂・GP
メルセス・アン(gc6380
27歳・♀・CA
常木 明(gc6409
21歳・♀・JG

●リプレイ本文

―― 龍退治に向かう能力者達 ――

「けっひゃっひゃ、我輩はドクター・ウェスト(ga0241)だ〜」
 独特な笑い声と共に挨拶をしたのは私設研究グループの所長であるウェストだった。
「今回のキメラは双頭の龍か‥‥何であれ、好きに暴れさせておく訳にはいかないな」
 カララク(gb1394)も資料に視線を落としながら呟く。
 今回の任務、それは双頭の龍を外見に持つキメラを退治すること。街は火の海で、ほぼ壊滅に近い状態らしいが住人の避難は完了していると資料には書いてあった。
「龍‥‥? お前など、ただの蜥蜴だ」
 周太郎(gb5584)が資料に添付されているキメラのデータを見ながら小さく呟く。
「周太郎‥‥」
 冷たく呟く周太郎をカララクは心配そうに見つめた。カララクは最近周太郎が荒れ気味である事を気にかけており、心配しているのだろう。
「迷トリオメンバーアイリス参上! 笑顔が欲しければセラ(gc2672)に頼んでくれ!」
 セラ――いや、今は彼女の別人格であるアイリスが叫びながら挨拶をする。
「今回は迷トリオメンバーの悠夜(gc2930)さんも一緒か‥‥トリオの名に恥じないように頑張ろうではないか」
 アイリスがしみじみ呟くと「迷トリオメンバーの悠夜参上! 今回は1人不在だが、セラと2人だけでも迷トリオは不滅だぜ!」とポーズと共に悠夜も叫ぶ。
 そして「龍か、今回のキメラは龍なんだな!? 龍といったらドラゴン!」と悠夜は何故かキメラが龍である事を知り、テンションがあがっていく一方だ。
「落ち着きたまえよ、悠夜さん。龍がドラゴンなのは当たり前じゃないか」
 アイリスのツッコミも軽くスルーしながら「ドラゴンといったら化け物! 化け物といったら退治!」と当たり前の法則を並び立てている。
「一体、その法則の先には何があるんだろうね」
「要するに、RPG的な展開があるわけだ!」
 拳を強く握り締めながら「頑張るぜ、これは宣伝にもなる!」と任務への意気込みを見せている。
「‥‥龍、か。まぁ敵が誰であれ殲滅するだけだが」
 イヴァン・レオーノフ(gc6358)が小さく呟く。彼は敵ならばただ殺すだけ。それ以上でもそれ以下でもないと考えていた。
(‥‥敵を退治できるのであれば、たとえ血に塗れようが傷を負おうが、気にはならないな)
 イヴァンは心の中で呟いた。
「今回は宜しく頼むよ」
 メルセス・アン(gc6380)が知人であるカララク、周太郎、メルセスを含んだ能力者達全員に挨拶をする。
「さて、今回は厄介そうな相手だが‥‥気をつけていきたいね」
 メルセスが呟くと「そうだねー」と常木 明(gc6409)が間延びした口調で言葉を返した。
(お友達と一緒にお仕事して、少しでも助けになったらっておもーう‥‥って、まだ助けられる方を卒業できないなーって感じだけどー)
 常木は心の中で呟きながら「あちきはあちきの出来る事を頑張るよー」と小さく呟き、今回の任務で少しでも友達の助けになれればいいな、と付け足したのだった。
「さて、それじゃそろそろ行くかねー?」
 ウェストが呟くと「そうだね、こうしている間にも被害が広がっていくだろうしね」とアイリスが言葉を返し、能力者達は高速艇に乗り込んで目的地へと出発していったのだった。


―― 燃え盛る炎の街で ――

 今回の能力者の数は8名。
 そして能力者達は班を2つに分けて、それぞれで役割を分担する作戦を立てていた。
 A班・カララク、周太郎、常木、メルセスの4名。
 B班・ウェスト、イヴァン、セラ、悠夜の4名。
 カララク達のA班はキメラ捜索や誘き寄せなどの役割を持ち、ウェスト達のB班は戦闘場所となる広い場所の確保、そしてA班が誘導してくるであろうキメラの待ちうけの役割を持っていた。
「何かあったら連絡を取り合うという事で。其方も場所の確保次第連絡を頼む」
 カララクがウェスト達B班に言葉を投げかけ、キメラ捜索へと向かい作戦を開始したのだった。

※A班※
「酷い有様だな‥‥聞いてはいたが‥‥」
 予め用意された地図を見ながらカララクはため息混じりに呟く。元々は家が建っていたであろう場所も今では見るも無残な姿となっている。
「確かに‥‥こんな場所では戦うにも戦えん」
 周太郎は街を見渡しながら呟く。瓦礫や炎が所狭しと蔓延っていてこの状況で戦うのはキメラを有利にするだけだと周太郎は考える。
「あちきは探査の眼を使うねー、やっぱさー、キメラが火を吐くのかなー?」
 常木がスキルを使用しながら他の3名の能力者達に言葉を投げかける。キメラが火を吐くか吐かないかで能力者達の戦い方も変わってくるため、やはり気になるのだろう。
「どうだろう‥‥しかし地獄の釜が開く、というのはこういう事を言うのか?」
 メルセスは耐火服に身を包みながら小さく呟く。周りの景色は地獄と呼ぶに相応しい凄惨な状況であり、この火災などの原因を作ったのは龍の姿を持つキメラ。
(‥‥この炎がキメラによって吐かれた、吐かれてないにしろ――キメラが現れた事で街は悲惨な火事に見舞われた。まさに地獄からの使いと呼べような)
 メルセスは考えるように黙り込み、心の中で呟く。
「どうかしたのか?」
 考え込んでいるメルセスにカララクが問いかけると「いや、何でもないよ」とメルセスは言葉を返す。
 それでも心配なのか、カララクと周太郎はじぃっとメルセスを見る。
「いや、二人には迷惑をかけるな――と思ってね」
 カララクと周太郎がメルセスと常木のサポートをする為に動いてくれる事を知っているのか、メルセスが穏やかに笑みながら呟く。
「もしかしてあれかなー? っていうかー、あれしかないよねー」
 常木が苦笑しながら前方を指差す。そこには資料にある通り、人間の5倍ほどの大きさのキメラが歩いている姿があった。
「‥‥あれが龍? 笑わせてくれる‥‥」
 周太郎がポツリと呟く。
「此方A班、キメラを確認した。そっちの状況は?」
 カララクがトランシーバーを使って、B班に問いかけると戦闘に適した広い場所を見つけているとの事。
「了解。それじゃ場所は――あぁ、わかった。今から誘導する」
 カララクは通信を切ると「この先にある広場だそうだ」と能力者達に告げた。
「確か空き地っぽい場所だったよねー?」
 常木が地図と街の簡易図を見ながら呟く。
「ふふ、さぁ早く誘導してしまおう。こいつを使う時を楽しみにしていたのだ」
 メルセスはガトリングシールドを見ながら呟き、A班はキメラを退治すべくB班が見つけた広場へと誘導を開始したのだった。

※B班※
 一方、その頃――まだB班が広場を見つけていない時まで遡る――‥‥。
「犠牲者も出ていると資料にはあるね〜」
 ウェストが資料を見ながら呟く。キメラによる攻撃で死亡者まで出ている今回の事件。
「‥‥コノ辺り一帯の動植物もダメだろう」
 燃えて何の植物だったのか分からない状態になっているもの、燃え盛る街に戸惑ったのか動物の死んでいる姿も多々見られた。
「可哀想に。こんな死に方をする為に生まれてきた命じゃないだろうに」
 アイリスはため息混じりに呟く。
「耐火服のおかげだろうね、行動に支障はないよ」
 アイリスが呟き「ありがとう、ドクター」と言葉を投げかける。
「そ、そうだな‥‥全く支障はない‥‥そうさ、この熱さは俺のやる気から滲み出ている熱さなんだ。炎のせいじゃない、俺のやる気が熱くさせているんだ」
 悠夜がぶつぶつと呟くが「大丈夫かね〜?」とウェストが苦笑気味に言葉を投げかける。悠夜は炎対策をしていない為、熱気をまともに浴びているのだろう。
「あまり無理をしない方がいいかもしれない」
 イヴァンが悠夜に言葉を投げかけると「大丈夫! こんな熱さにやられるほど俺はヤワじゃないから!」と言葉を返すのだが、既にやられそうであるのは気のせいだろうか。
「地図上ではこの付近に広場があったね〜。此方の目的に適した場所であると良いのだが〜」
 ウェストが呟き、能力者達は炎に撒かれぬよう気をつけながら進んでいく。
「この辺は、街の奥手部分になるせいか火の勢いもほとんど無いね」
 アイリスが周りを見渡しながら呟く。確かに街中に比べればほとんど火の手が無い。
「そういえば、この辺は地面に爪あとなどは残されているのにほとんど火の手が無いような‥‥」
 イヴァンが呟くと「もしかしたら、あの炎はキメラだけの仕業じゃないのかもしれないね〜」とウェストが言葉を返した。
 そこにA班から連絡が来て、キメラを発見したとの事。B班の能力者達も広場を見つけて確保していることを告げる。
「これからこっちに来るらしいな。迎え撃とうぜ!」
 悠夜が呟き、他の3人の能力者達も首を縦に振ったのだった。


―― 戦闘開始・能力者 VS 双頭の龍 ――

 能力者達が合流するまでに10分ほどが経過し、その間にB班の能力者達は準備を整え、A班とキメラがきたら直ぐに戦闘が出来るようにしていた。
「お前など龍とは呼ばない‥‥竜はもっと、気高いものだ」
 周太郎は小さく呟き、爆発か何かで飛び散ってきたのであろう瓦礫を上手く使いながらキメラへと近寄り、力を込めてキメラの首を刺す。
「さぁドラゴン退治だ‥‥ジークフリートでも目指してみるかい?」
 く、とアイリスは冷笑した後にキメラから攻撃されやすい場所へと移動をした。能力者の何人かはキメラに近寄って攻撃をする方法を取ることになっていた。
 アイリスの無謀とも呼べるその行動は囮になる為であり、キメラの注意を自らに引き付ける事で他の能力者達が無事にキメラを退治する事を願っていた。
 キメラは強く息を吸い込むと、激しい炎を能力者達に向けて吐き出す。
「‥‥っ! やはり炎の攻撃を持っていたかね〜」
 ウェストが眉間に皺を寄せながら小さく呟いた。
「アチチチッ! 制服が燃える、燃える!? 燃えるのは夜の営みだけでいいっつーの!」
 悠夜がぴょんぴょんと跳ねながら叫ぶが、冗談(?)を言う元気があるのだからまだ余裕があるようだ。
「落ち着きたまえよ、悠夜さん」
 アイリスが呆れたように呟き「まだ燃えていないだろう」と冷静にツッコミを入れる。
「っていうかー、近くで見ると迫力あるねー」
 常木は呟きながら他の能力者と連携を取るようにキメラへと攻撃をしていく。
「ふふ、さぁ――これを受けた感想を聞かせてくれ!」
 メルセスは不敵に笑むと、ガトリングシールドを使ってキメラを狙い撃つ。
「ついでにこれも全弾くれてやる。避けてくれるなよ‥‥?」
 カララクは呟きながら『貫通弾』を装填した拳銃・ラグエルを構え、スキルを使用しながらキメラを狙い撃つ。一発は避けられてしまったけれど、他の4発は命中し、キメラは大きく叫びながら地面にドスンと地響きと共に倒れた。
「‥‥じゃあな」
 倒れた隙を見逃すことなく、周太郎がスキルを使用しながらキメラの首を1つ裂いた。
「どちらか一方の首を落とせば、更に戦いやすくなる」
 独り言のようにイヴァンが呟き、周太郎が裂いた首の所にマチェットを突き刺し、首を落とした。
 イヴァンの顔に返り血が飛び散るが、彼はそれを乱暴に拭い「あと、1つ」ともう1つの首を見ながら呟いた。
(ほぅ‥‥覚醒紋章もそうだが、エミタの別次元のエネルギーで他人格や発光現象を起こしているのかね?)
 ウェストはスキルを使用しながら、能力者達の武器を強化したり、傷の酷い能力者の治療を行いつつ、キメラではなく能力者の観察を行っていた。
 しかし、キメラはよろめきながらも立ち上がり、アイリスへと向かって炎を吐き出した。
「くっ‥‥」
 アイリスは盾を構え、炎に耐える。首を1つ落とされたキメラはずっと炎を吐き続ける事も出来ず、能力者達の攻撃によって再び地面へと倒される。
「RPG的にはこういうドラゴン系を退治すればレベルアップするはず‥‥!!」
 悠夜は呟きながらスキルを使用してキメラへと攻撃を仕掛ける。その攻撃にあわせてカララクも射撃を行い、イヴァンも再びナイフを構えてキメラへと向かって攻撃を仕掛け、街をほぼ壊滅状態にしたであろうキメラを退治する事が出来たのだった。

―― キメラ退治終了後 ――

 キメラを無事に退治できた能力者達は、1つの疑問があった。
 それは果たしてキメラ1体で街を火の海にする事が出来るのか、と言うこと。
「これで終わり‥‥か?」
 カララクが呟く。結局能力者達は街の中を手分けして見回ってから帰還する事にした。
「せっかく退治したのにー、裏ボスがいましたー‥‥じゃ洒落にならないもんねー」
 常木が苦笑しながら呟き「その前に! 手当て手当て!」と救急セットを取り出して怪我をしている能力者達の手当てを行っていく。
 同じく、ウェストもスキルを使用しながら能力者の治療を行っていく。
「大丈夫かね〜」
「大丈夫。この熱さは俺の熱いソウルから‥‥」
「落ち着きたまえよ」
 何度目かになるセリフを言いながらアイリスが悠夜の言葉を遮った。
「周太郎、カララク、2人のおかげで私と常木も助かった、感謝を」
 メルセスが2人に言葉を投げかける。そう、2人は表立って行動はしていないけれど常木とメルセスをフォローするように動いていた。
「そうそう、おかげで凄く助かっちゃったよー。本当はあちきもちゃんと手伝えればよかったんだけどー」
 常木が呟くと「‥‥ちゃんとやっていた」と周太郎が短く言葉を返した。その言葉に常木は嬉しそうに「ありがとー」と笑顔で言葉を返したのだった。
「とりあえず、治療が終わったら警戒を。考えすぎであって欲しいが、万が一まだ敵がいるようなら戦闘になるのだから」
 イヴァンの言葉に能力者達の表情が再び緊張に包まれる。
「おっと、キメラの細胞サンプルの採取をさせてもらおうかね〜」
 ウェストは研究の為か、キメラの細胞サンプルを採取して持ち帰ることにした。

 そして、その後能力者達は手分けをして街の中を見回ったのだが怪しい気配は全く感じられなかった。
 予想としては街中に炎が撒かれたことが原因となって、ガス爆発なども起き、被害が拡大したのだろうという事になった。
 その事を報告する為に能力者達は高速艇に乗り込んで、LHへと帰還していったのだった。


END