●リプレイ本文
―― 雪女を退治する為に ――
「雪女、ですか‥‥。場所が雪山なので遭難や不慮のアクシデントへの対応をし易くする為にも今回は纏まって行動した方が良さそうですね」
篠崎 公司(
ga2413)が資料を見ながら呟く。
「そうですね。それにしても雪山に雪女なんて、バグアもセンスがあるのかないのか判らないチョイスをしますね」
まぁ、私としては倒すだけですけど――と乾 幸香(
ga8460)は言葉を付け足しながら公司に言葉を返した。
「‥‥雪女‥‥時期的には間違っていないけど、ちょっと気が早い感じもするわね。何にせよ、早めに終わらせましょう‥‥」
紅 アリカ(
ga8708)も資料を見ながらポツリと言葉を漏らしたのだった。
(う〜ん、やっぱり雪山に鎧はキツいかな‥‥)
篠崎 宗也(
gb3875)は心の中で呟く。宗也は黒鎧ベリアルを装備して任務に赴くつもりなのだが、やはり場所が雪山という事もあり、多少の不安が残っているのだろう。
「‥‥雪女‥‥やっぱり美人だったりするんでしょうね‥‥」
水無月 春奈(
gb4000)はポツリと呟く。彼女は普段とは違い、AU−KVではなく白い鎧――セラフィックアーマーを装備して今回の任務に挑むことにしていた。ひらひらと舞うヒーローマントが女騎士を連想させ、神秘的な印象を周りに与えていた。
「‥‥美人で、しかも爆乳だったりすると‥‥容赦なく殺れるのですが‥‥」
ふ、と物騒な言葉を付け足しながら水無月は薄く笑む。何故かその言葉に私怨が含まれていそうな気がするのは、きっと気のせいだと思いたい。
「‥‥‥‥」
シルヴァ・E・ルイス(
gb4503)は首にかけていたライトハート・ペンダントをベストのポケットにしまいこみながら小さく息を吐いた。
「そうそう、出発前に皆さんに言わなくてはいけない事があるんです」
番場論子(
gb4628)はにっこりと笑みながら他の能力者達に言葉を投げかける。
「実はわたしの覚醒時は『雪女』の様相と似通ったものになるのですが、相手を間違わないで下さいね」
にっこりと微笑みながら言葉を付け足す。彼女の覚醒状態は雪を思わせる白髪となるため、今回の雪女と間違われて攻撃されやしないかと少しの不安があった。
「大丈夫だよ、いくら何でも仲間とキメラを間違うはずがないって!」
フローラ・シュトリエ(
gb6204)は苦笑しながら番場に言葉を返す。
「ならいいんですけど、今回の任務を受けてからちょっとだけ不安になったので」
番場も苦笑しながら言葉を返した。
「それじゃ、そろそろ出発するー? 場所が雪山となると、しっかり準備していかないとねー」
フローラの言葉に能力者達は首を縦に振り、それぞれ準備を終えてから高速艇に乗り込み、雪女が待つ雪山へと出発したのだった。
―― 雪山での捜索 ――
「目撃された地点はここと――、ここもですね」
公司が用意された地図にキメラが目撃された箇所へと印をつけていく。
「中腹付近での目撃情報が多いので、この辺まで来たら警戒を強めないといけませんね」
公司の言葉に「そうですね、この辺で遭遇する可能性が高そうですし」と乾も言葉を返した。
最初に公司が言った通り、今回の能力者達は纏まって行動する作戦を立てていた。
「うぅ〜、やっぱ寒ぃ‥‥」
宗也は身体を震わせながら小さく呟く。
「確かに‥‥多少は寒いですが、キメラを退治するまでの我慢、と言うことですね」
水無月は苦笑して宗也に言葉を返す。
「そ、そうだな! これくらいの寒さじゃ俺は倒れねぇぜ! ファイト俺!」
宗也は自分を励ましながら寒さに耐え、キメラ捜索を続ける。
「‥‥ふぅ‥‥」
シルヴァは白い息を吐きながらキメラが居ないかを確認する為、きょろきょろと見渡す。各地で起きる大規模なものを除けば今回の任務は久々な筈だが、気負いなどは全く感じさせることはなかった。
「‥‥いない、か」
雪も降っており、視界が悪い中での捜索はやや能力者達にとって不利であるようで、中々キメラを見つける事が出来ない。
「この辺が最初に目撃があった場所ですよね」
番場がぴたりと足を止めながら呟く。それにつられるように他の能力者達も足を止め、周りを見渡した。
「そういえば、確か毒性の爪を持っているとか資料にあったな」
宗也が思い出したように呟くと「そうだったね。毒はなるべく受けたくないよねー」とフローラが言葉を返す。
「立ちくらみ、眩暈、嘔吐の症状が出たといっていましたね」
乾も呟くと「戦闘中にそんなものを受けたら‥‥多少じゃない影響が出そうですね」と水無月が言葉を返す。
しかし、能力者達も何の対策を講じることなく任務にやってきたわけではない。全員ではないけれど、何名かの能力者は『キュア』のスキルを用意してやってきている為、毒を受けたとしても万が一の状況に陥ることはほとんどないだろう。
「‥‥あれは‥‥」
シルヴァが険しい表情をして、前方を見る。
「え?」
他の能力者達も見ると、雪に紛れて『何か』が立っているのが見えた。
「写真の通りの人、雪女――ですね」
乾も厳しい視線で雪女がいる方向を見て呟き、能力者達はそれぞれ戦闘準備を行ったのだった。
―― 雪山での戦闘・雪女 VS 能力者 ――
キメラはひらりと舞うように走ってきながら能力者達へと攻撃を仕掛けてくる。
「‥‥くっ」
シルヴァはキメラの爪を月詠で受け止めるけれど、反対の爪で肩をざしゅと鈍い音をたてながら切りつけられてしまう。
「ぐ‥‥ぅ‥‥」
がくりと膝をつきながらシルヴァが苦しそうな表情を見せる。恐らくキメラの持つ毒の症状が出てしまっているのだろう。
再びキメラが攻撃を仕掛けようとした時、ひゅん、と矢がキメラの腕を貫く。
「今のうちに治療を!」
公司が叫び、乾がキュアを使用してシルヴァのバッドステータスを回復する。
「‥‥すまない」
「いいえ、こういう時はお互い様ですよ。さ、早くキメラを退治してしまいましょう」
乾が言葉を返し、シルヴァ、乾、両名が戦闘態勢を再び取る。
「考えてみると、雪山の寒さだけでも結構なハンディになりますよね」
乾がため息混じりに呟く。彼女自身、わかっていたのだろう。いかに防寒具を着込んでいくとはいえ、今回の戦いが厳しいものになるかもしれないという事に。
「‥‥毒性の爪、確かに厄介ね‥‥でも」
紅はちらりとキメラの爪を見ながら「それさえ破壊できれば‥‥!」と言葉を付け足す。毒性の爪を持っているからこそ、余計にキメラの厄介さが際立っているのだ。
「ここまで寒い思いをして来てやったんだ! 大人しくぶっ殺されやがれ!」
宗也はコンユンクシオを大きく振り回しながら叫び、キメラへと斬りかかる。その攻撃にあわせて乾も竜斬斧・ベオウルフでキメラへと攻撃を仕掛ける。同時に攻撃された事により、キメラは宗也に目標を定め、攻撃を仕掛けた。
「ぐっ‥‥わりぃ、解毒‥‥頼むぜ」
がくりと膝を折りながら宗也が呟くと、紅が宗也にキュアを使用する。その間に乾はキメラへと攻撃を仕掛けており、キメラからの追撃はなかった。
「‥‥大丈夫ですか?」
「あぁ、さんきゅ」
紅に礼の言葉を言いながら宗也は再びコンユンクシオを手に取る。
「そんなに余裕綽々な態度でいいんですか?」
水無月は呟きながらキメラの右手に攻撃を仕掛けた。彼女の剣――天剣・ラジエルでの攻撃がキメラの右手の爪を砕き、残る毒爪は左手のみになっていた。
「ふむ、確かに美人ではありますが‥‥とても残念な胸をされているんですね」
ふ、とあざ笑うように微笑み、再びキメラへと攻撃を仕掛けて後ろへと下がった。
「‥‥‥‥この白い世界にお前は不必要だ。消えろ」
シルヴァは呟き、スキルを使用しながらキメラに攻撃を仕掛けた。
「行きますよ!」
番場は呟きながらイアリスを片手にキメラへと攻撃を仕掛ける。キメラは残った左爪で攻撃を仕掛けようとしたけれど、番場は後ろに下がって爪の攻撃を避ける。
「怪我をしたら言ってね、すぐに治療するから」
フローラは能力者達に声をかけながら、スキルを使用してキメラの防御力を低下させた。スキルを使用した後は、エネルギーガンで後方から攻撃を仕掛ける。
公司もフローラの攻撃の後に矢を放ち、キメラの足止めを行う。
「行きます!」
乾は叫び、矢によってふらりとしているキメラに向かって攻撃を仕掛ける。
「そういえば、実戦でベオウルフを振るうのは初めてですね。小手先の技に頼らなくて、全力で叩き潰すというのも、私にあっているのかもしれません」
攻撃を終えた後、乾は小さく呟く。
「‥‥これ以上は無意味‥‥大人しく倒れなさい」
紅はポツリと呟きながら、名刀・羅刹で攻撃を仕掛ける。
「さぁて‥‥一気に片をつけさせてもらいますよ‥‥神の炎、その身に受けなさい」
水無月は呟くと、容赦なくキメラへと斬りかかる。
「ならば、わたしは神の正義を受けなさい、といいましょうか」
番場はランス・ザドキエルに武器を持ち変えて、水無月の攻撃にあわせて一気にキメラを貫く。
その攻撃でキメラは地面へと倒れ、白い雪の上に真っ赤な血がじわりとしみこんでいったのだった。
―― キメラを退治した後 ――
「うーーー!! 寒い寒い!! たまには場所を選んでほしいぜ! 早く暖炉に当たりてぇ!!」
宗也は寒さを誤魔化すかのように大きな声で叫ぶ。彼がそういうのも仕方がないのかもしれない。キメラを退治した後、更に寒さは酷くなり、能力者達を更に寒さへと誘っているのだから。
「‥‥さすがに冷えるわね‥‥早く帰って温かいものでも食べたいわね」
紅も肩を竦めながら小さく呟く。
「確かに‥‥こんな場所での戦闘は、少し遠慮していただきたいですね」
公司も苦笑しながら呟く。
「今回はキュアがあって助かりましたね。戦うだけが能じゃないですからね、このスキルにはこれからも助けられそうですね」
乾が呟くと「確かにそうだなぁ」と宗也も言葉を返した。
「雪山、遊びで来るのは楽しそうなんですけどね‥‥のんびり出来るようになったら、スキーを覚えるのもいいかもしれません」
水無月が呟く。今は戦いなどでそういう暇はないだろうけれど、いつか平和になったら――その日を思い浮かべて水無月は優しく微笑んだ。
「とりあえず、早く帰って暖まりませんか?」
苦笑しながら番場が呟くと「そうですね、早く帰りましょう」とフローラも言葉を返した。
その後、能力者達の後ろを歩きながらシルヴァははらはらと降る雪を見ていた。
「白い、な‥‥なぁ、雪は‥‥覆い隠してくれるのかい‥‥?」
シルヴァは誰に問うでもなく呟く――もちろん誰からの言葉が返ってくるわけでもない。シルヴァは小さく微笑みながら少し先になってしまった能力者達を追いかけるため、足早に歩き出した。
(‥‥雪を見たことはないわけでもないのにな)
ふ、と笑みながらシルヴァは心の中で呟く。
その後、能力者達はLHへと帰還して、オペレーター訓練生の室生 舞(gz0140)に報告書を渡した。
「えっと、お疲れ様でした。風邪を引かないように暖まってくださいね」
いまだ寒そうにしている能力者達を見ながら、舞が苦笑して言葉を投げかけ、能力者達を見送ったのだった。
END