●リプレイ本文
―― ネコタマ出動 ――
「タマゴ、少しは上達したか?」
ベーオウルフ(
ga3640)は猫井珠子に言葉を投げかけるが「上達しすぎてもう休みたいくらいですよ!」とネコタマは言葉を返した。
「ネコタマは失恋したばかりなのですよ! もっと敬うべきです、もっと慰めるべきです」
何で敬わなくちゃいけないんだ、ベーオウルフはそんな言葉を飲み込んで「失恋って‥‥猫じゃないか」とため息混じりに言葉を返した。
「ネコタマ様、新しい恋で元気を出しませんといけませんわ?」
Innocence(
ga8305)はネコタマをなでなでしながら、にっこりと言葉を投げかける。
「げ! ね、ネコタマはちょっとアナタ苦手ですよ!」
ネコタマとしては、前回全く自分が人間扱いされなかった事で彼女に対して少しばかり苦手意識が出来ていた。
「飼い主としましては、ネコタマ様の恋を応援しませんと‥‥!」
Innocenceの言葉に「だからネコタマは猫じゃないですってば! あいむひゅーまん!」とぎゃあぎゃあと喧しく言葉を返すのだが、既に自分の世界に入っているInnocenceにネコタマの言葉は届いていなかった。
「‥‥相変わらずだな、コーシェチカ」
キリル・シューキン(
gb2765)が言葉を投げかける。
「‥‥ネコタマ、もう帰りたいです。寝ていたいです」
「‥‥寝込むなら寝込んでみろ‥‥ただし、その時は布団ごとふん縛ってシベリアの永久凍土の下に埋めてやる‥‥っ!」
「ぎゃあああ、人殺しぃぃぃ!!」
キリルは出発を嫌がるネコタマにチョークスリーパーを食らわしながら言葉をつけたし「ギブギブギブ!!」とネコタマは壁をばんばんと叩き始める。
「まぁまぁ、そこら辺にしたり。折角一緒の任務になるんや、今回は宜しゅうな」
荒神 桜花(
gb6569)が苦笑しながら仲裁に入る。
(‥‥まだ出発していない時点でこれですから、現地に到着したら逃げ出す可能性もありますね‥‥)
真上銀斗(
gb8516)はネコタマを見ながら苦笑する。
(‥‥まぁ、逃げないように見守りますか。新人さんのフォローをしたかったので、利益ばかりで嬉しい限りです)
真上は小さくため息を吐きながら心の中で呟く。フォロー好きな彼としては、フォローが多々必要なネコタマを見て少しだけ嬉しくなったのだろう。
「‥‥猫に‥‥失恋‥‥? ‥‥猫は‥‥船乗りと同じ‥‥港の数だけ‥‥愛人がいる‥‥というのが‥‥姉の言葉です‥‥」
だから愛人の所を巡っているのでは? と小さな声で呟く九条・葎(
gb9396)の言葉に「いやああああ、リアルすぎるからあああ!」とネコタマは発狂したように叫ぶ。
「ふーん、あなたがねこたまさんでありますか」
じろじろとネコタマをガン見しながら呟くのは美空・桃2(
gb9509)だった。
「ねこたまさんはこんなのが良いのでありますか? ふーんへーんほーん?」
小馬鹿にしたような視線と口調で資料にあるキメラとネコタマとを交互に見る。
「でも知ってるでありますか? キメラとは結婚できないのでありま――「バカ!」――ぐ、ぐ‥‥」
会話の途中でネコタマのチョップが美空の頭に直撃する。どうやら自分でも馬鹿だという事は理解しているらしく、それを他人に指摘されたのが気に入らなかったのだろう。
「ちょ、ちょっと落ち着こうよ? あ、新しい恋を見つけよう! 大体キメラなんかに恋したらDVが激しそうだよ? だから止めとこうよ、ね?」
ホープ(
gc5231)はシャーッと威嚇するネコタマを宥めながら言葉を投げかける。
「とりあえず、タマゴが逃げないうちにさっさと出発しよう」
ベーオウルフが呟き、能力者達はキメラを退治すべくLHを出発していったのだった。
―― キメラを探して ――
「‥‥住人の避難などは終わっているようだな」
現地に到着した後、キリルが周りを見渡しながら呟く。まだ昼間だというのに、街全体がひっそりとしており、人の気配はまるで感じられなかった。
「ネコタマ様♪ 恋のお相手に手紙を書いてみてはいかがでしょう? いきなり告白ですとお相手もびっくりですもの」
「いやいやいやいや、ネコタマ的にはキメラに似たにゃんこラブなだけであって、にゃんこに似たキメララブじゃないのですけど! しかも何で首輪なんか持ってきてるですか!」
Innocenceの持っている首輪を見て「ネコタマ様にすっごく似合うと思いまして♪」と悪びれた様子もなく言葉を返す。彼女の中ではどうあってもネコタマを人間にさせないつもりらしい。
「だーかーらー!! ネコタマは人間! あなた宇宙人ですかっ、まったく話がかみ合いませんっ!」
「落ち着け、そして黙れ」
キリルが軽くネコタマの頭を叩きながら宥める。
「自分を主張するならば、こんな所ではなく戦闘中に主張してみせるんだな」
「いやいやいやいや、今のはネコタマの人権がっ!!!」
ネコタマが抗議しようとしたけれど、それは聞き入れてもらえる事はなかった。
「‥‥こうなったらもう、逃げ「逃げてはいけませんよ?」」
ネコタマが逃げようかと思った瞬間、背後から真上に言葉をかけられる。
「‥‥とにかく‥‥集中‥‥してほしい‥‥」
九条にもツッコミを入れられ、ネコタマはしょんぼりとしながらとぼとぼと歩き出す。
「ねこたまさんも腐っても人類の守護者である能力「腐ってない!」者でありますから、ちょっとは自覚をもってですね‥‥」
美空が淡々と説教を行い、ネコタマが抗議したのだがそれはスルーして美空は説教を続ける。
「‥‥ちょっと待って、何か今――あの辺で動かなかった?」
ホープが視線を移した先には空き地。雑草が茫々と伸びており、遮蔽物なども存在するが、確かにホープは何かが動くのを見ていた。
「‥‥?! キメラであります!」
美空が叫び、エネルギーガンを構える。それと同時に他の能力者達も武器を構え、戦闘態勢を取ったのだった。
―― 戦闘開始・キメラ VS 能力者 ――
「ぎゃあああああ! 写真ではちょっと可愛いかもって思ったけど、やっぱり実物はいらないいい!」
キメラが現れた後、ぎゃあぎゃあと騒ぎながらパニックになるネコタマを見て、能力者達は呆れからくるため息を盛大に吐いた。
「ふむ、全く成長が見られんな」
技術ではなく精神面で、と言葉を付け足しながらベーオウルフが呟く。
「ネコタマさん♪ 今こそ告白するときですの! えいっ‥‥!」
Innocenceはネコタマをキメラの方向へドンッと勢いよく突き飛ばし、他の能力者たちは「はぁっ!?」と驚きで目を見開いている。
「ぎゃあああ。食べられるー!!」
キメラの爪がネコタマの頬をかすめ、再び攻撃を仕掛けようとした時、真上がアサルトライフルでキメラを攻撃し、ネコタマに攻撃が行く事はなかった。
「すぐに後ろに下がって!」
ホープがキメラとネコタマの間に割って入り、キメラへと攻撃を仕掛けながらネコタマに下がるよう指示をする。
「あんた、何してんの。相手はキメラやで!?」
荒神がInnocenceに言葉を投げかけると「大丈夫ですわ」と彼女はにっこりと笑って言葉を返す。
「怪我をしましてもきちんと治しますわ。もちろん皆様も」
いたいのいたいのとんでけ〜、とジェスチャーをしながら言葉を返し「怪我ですまんかったら、どうしてたんや‥‥」と言葉を返した。
「うぅ、死ぬかと思った‥‥」
「コーシェチカ! ガタガタ言う前にとっとと走って撃て! もし民間人がここにいて、食い殺されてたらどうするんだ!」
「ちょっと待つですよ! 今、ネコタマ食べられかけましたけど!」
「ダバイ! コーシェチカダバイ!」
ダバイ(急げ)を繰り返すキリルだったが、残念な事にネコタマは理解出来ていないが、とりあえず撃たなくちゃ怒られる、という事だけは伝わっているようだ。
「‥‥ここで‥‥倒れて‥‥」
九条はスキルを使用しながらキメラの防御力を低下させる。その時、ベーオウルフが「‥‥少し試すか」と小さく呟き、武器ではなく体術での攻撃をキメラへと行った。
彼の試したかったこと、それは武器なしでどの程度の影響を与えられるのかという事。
「くっ‥‥!」
キメラに攻撃を繰り出すがFFに遮られ、大した影響は期待できていない。
「‥‥この程度か。これでは全く影響はないという方が近いな」
ベーオウルフは武器を持ち、キメラに攻撃を仕掛けて後ろへと下がった。
「コーシェチカァッ!」
「ちゃ、ちゃんと戦ってますよぅ!!」
キリルに叱咤されながらも攻撃を行うのだが、大した役には立てていない。
「おらおらおらおらぁ!!」
射撃が止んだ後、荒神が二刀小太刀・永劫回帰を構えながらキメラへと攻撃を繰り出す。
「避けてください」
真上が荒神に言葉を投げかけ、荒神がその場から一旦離れる。それと同時に真上からの射撃がキメラにヒットし、地面に倒れた所でベーオウルフと荒神が再び攻撃へと入る。
「‥‥いきます‥‥」
九条は呟き、機械本・ダンタリオンで攻撃を行う。九条が下がるとホープが釘バットと傭兵刀を握り締め、キメラへと攻撃を入れる。
「みなさん、とどめに入るのであります」
美空がスキルを使用しながら能力者達の武器を強化し、九条がキメラの防御力を低下させる。
「いくよ!」
ホープが叫び、他の能力者達も一斉に攻撃を仕掛け、狼型のキメラを退治する事が出来たのだった。
―― 戦闘終了後 ――
「もうあんな事はネコタマ的にやめてほしいのですけど!」
ネコタマがInnocenceに言葉を投げかけると「あらあら、怒っては恋のお相手もびっくりしてしまいますよ」と全く悪いとは思っていない様子だった。
「そうそう、あのキメラさんが嫌だったのなら、本命の黒ネコさん探しをしますか? わたくし、マタタビを持ってますので一緒にお探ししますわよ」
「‥‥野良猫は‥‥放浪と浮気が‥‥甲斐性‥‥きっと他所で‥‥甲斐性を発揮してます‥‥」
九条がポツリと呟いた言葉に「だからそれリアルすぎるから!」とネコタマはびしっと人差し指を指しながらツッコミを入れた。
「‥‥どうせなら戦闘にそれだけの熱意を注いでほしいであります」
美空は辛辣な言葉を言うけれど、自分の中にはない純粋というか無邪気さに眩しいものを感じて色々と世話を焼いてしまうのだ。
「‥‥コーシェチカ」
ごごごご、という効果音がぴったりなキリルはネコタマの背後に立ち、黒いオーラを全開にしている。
「あ、ネコタマ的に今回は頑張ったですけど、どう‥‥で、した‥‥か?」
最初はネコタマも『私がんばった! 褒めて!』な感じで振り向いたけれどキリルの表情を見て、まるで石のように固まってしまう。
「‥‥補習だ! LHに帰ったら覚悟しろっ! 二度と泣いたり笑ったり出来ないようにしてやる‥‥っ!」
「えええ! 何それ! 何でネコタマがんばったのに拷問受けなくちゃいけないですか!」
理不尽だ、横暴だ、などと喚きたてているが「‥‥何なら、LHに帰るまでもなく、この場所でしてやってもいいが‥‥っ」とキリルは低い声で言葉を返し、ネコタマは恐怖で何度も目を瞬かせていた。
「‥‥お前のその無邪気さは本当に羨ましいな」
ベーオウルフも苦笑しながらキリルと話すネコタマを見て小さく呟いた。その呟きは本当に小さくて、他の能力者達の耳に入ることはなかった。
「ま、こんな所やろね。いい汗かけたわ」
荒神は倒れたキメラを見ながら大きく息を吐く。
「高速艇に帰る前に、他にもキメラが潜んでいないかを確認しながら歩きましょう。万が一、伏兵が潜んでいたら大変ですからね」
真上の言葉に「そうだな、確実に1匹だけだった、という保障もないからな」と言葉を返し、ベーオウルフも真上の提案に賛同した。
「私も賛成! ちゃんと確認までしてこそ仕事だもんね。念入りに確認しておいた方がいいと思うし」
ホープも言葉を返し、能力者達は街の中を歩き回って、残存しているキメラが居ないかを確認して回る。
そして、残存しているキメラがいない事を確認すると高速艇へと乗り込み、本部に報告する為にLHへと帰還していったのだった。
その後、キリルにみっちりと訓練をさせられるネコタマの姿が本部の外で見受けられたとか‥‥。
END