●リプレイ本文
―― モテない男 ――
「俺のばら色ライフ、彼女とのキャッキャウフフ生活‥‥!」
今回の能力者達と同行して任務を行うファイター・ジェイル、既に目が血走っており、怪しさ満点の男性だった。
(なんか、すごく他人事じゃねぇなぁ。俺もモテないから気持ちはすごぉく分かる。何でだろうな?)
リュウセイ(
ga8181)はジェイルを見ながら苦笑して心の中で呟く。
(いや、俺はあそこまで見境なくはない‥‥よな?)
美人ギャルゥゥ、と叫び出すジェイルを見て多少引き気味にリュウセイは心の中で言葉を付け足した。
「俺も23歳=彼女いない暦だが‥‥あそこまで酷かねぇぞ!?」
魔宗・琢磨(
ga8475)はジェイルの焦りっぷりに周りの能力者達に言葉を投げかける。
「キミは彼女が欲しくないのか!」
くわっとジェイルは目を見開きながら魔宗に言葉を投げかける。
「‥‥そりゃ、欲しいっちゃ欲しいッスよ? うん‥‥」
「キミに足りないもの! それは執念なんだぞ!」
ジェイルが魔宗に力説するが(あんたは執念ありすぎだよ‥‥)と魔宗は心の中で言葉を返した。
「初めましてなの。ファリスはファリスと言うの。宜しくお願いしますなの」
ファリス(
gb9339)はぺこりと頭を下げながら能力者達に挨拶を行う。
「あ、宜しくお願いします〜。受付で叫んでいた方もいらっしゃいますね〜。何かあったんでしょうか〜」
八尾師 命(
gb9785)も挨拶をすると「び、美少女!」とジェイルがそわそわとし始める。
「ジェイル様、皆様、今回は宜しくお願いしますね」
二条 更紗(
gb1862)がにっこりと微笑みながら挨拶をすると「ど、どうしよう! リュウセイ君!」とジェイルがそわそわそわそわとウザすぎる行動をとり始める。
「ど、どうしたんだ‥‥?」
「今回の任務、美少女が多いよ!? 鼻血モンだよ!?」
しらねぇよ、と思わずツッコミを入れたかったがリュウセイはグッと堪えてその言葉を飲み込んだ。
「そうか、ジェイルさんは彼女が欲しい‥‥か。よし、ジェイルさんに俺のヒーロー魂を叩き込んでやるぞ!」
「え、いや俺は別にヒーローになりたいわけじゃなくて‥‥」
「破暁戦士ゴッドサンライトの名にかけて、絶対新しいヒーローを誕生させるぞ!」
「だから俺はヒーローじゃなくて彼女が‥‥」
ジェイルの言葉など耳に入っていないのか、陽山 神樹(
gb8858)は『ヒーローを誕生させる』という事に燃えていた。
「そ、そうだ‥‥キミは紹介してくれる女の子とかいないのか? 可愛くて優しい感じの女の子!」
「女の子、ですか〜? 傭兵のー妹がー、一人おりますがー」
ラルス・フェルセン(
ga5133)がまのびした口調で言葉を返すと「妹!? 万歳、俺のばら色ライフに光が見えてきたァァァ!」とジェイルはガッツポーズで叫ぶ。
「ではー、お仕事をーしっかり、済ませたらー、紹介しましょうかー」
ラルスの言葉に「俺頑張る! 女の子の為に頑張る!」とジェイルは叫び、仕事への意気込みを見せる。
((俺もモテない派だけど、アレと一緒にされたくはないなぁ‥‥))
リュウセイと魔宗は苦笑しながら乾いた笑いしか出なかった。
「まぁ‥‥とりあえずはキメラを倒しに行きましょう」
アリエイル(
ga8923)が呟き、能力者達は本来の目的であるキメラ退治に出発したのだった。
―― キメラの徘徊する廃墟 ――
「さぁ♪ 俺のばら色ライフの為に♪ キメラ退治がんばるぞぅ♪」
キメラが徘徊する廃墟にやってきた能力者達なのだが‥‥既に精神的苦痛を受けているという事にジェイル本人は気がついていない。
(‥‥うるさいけど、面白い兄様なの)
ファリスが心の中で思った瞬間だった――「10歳でこんなに可愛いんだから5年後や6年後にはもっと可愛いはずだよね! その時は俺とばら色ライフを!」とジェイルがくるくると妙な動きと共にファリスに言葉を投げかけてきた。
「‥‥」
その瞬間、ファリスはまるで性犯罪者でも見るかのような冷たい目でジェイルを見るのだがジェイル本人は「照れてるのか、可愛いなぁ!」とファリスの行動を物凄い方向で勘違いしている。
「‥‥女の敵なの!」
「このバカ野郎が――――ッ! ヒーローが犯罪行為をするな――ッ!」
「テメこら! それ以上はセクハラだッ! てかそれ以上やったら命がねぇぞ!」
ファリスがグーパンチの連打、陽山が鳩尾を殴り、ジェイルは「うごぁ‥‥」と派手に吹っ飛んで地面へと倒れこんだ。
ちなみにジェイルと一緒に吹っ飛んだのは魔宗。ここで勘違いしてはいけない。魔宗は決してセクハラをしようとしたわけではない。ジェイルを止めようとして、タイミング悪く一緒に吹き飛ばされただけなのである。
「な、何で俺まで‥‥お、俺はロリコンじゃねぇ‥‥ゲフッ」
「何が何だか分からない状況になってますねぇ‥‥敵は果たしてキメラなのか、それとも味方なのか‥‥」
二条は倒れるジェイルと魔宗を見ながら小さく呟く。
「あ、あの〜、そろそろちゃんとキメラ捜索をした方がいいんじゃないでしょうか〜」
八尾師が呟くと「確かに。この騒ぎを聞きつけてキメラが不意打ちを仕掛けてくる可能性もありますからね」とアリエイルが言葉を返した。
「あんまりー遊んでないでー、お仕事しないとー妹を紹介しませんよー?」
ラルスの言葉に「そ、それは大変じゃないか!」とジェイルは勢いよく起き上がり「キメラどこだキメラどこだー!」と叫び始める。
「何か‥‥何をしても迷惑な奴だな、アイツ」
陽山が呟き、能力者達は暴走するジェイルを横目にキメラ捜索を再開し始めたのだった。
「そういえば、ジェイル様はどういった女性が好みですか?」
キメラ捜索をする中、二条がジェイルに問いかけると「‥‥それは、キミのような女性さ」と言葉を返す。
(うわ、ウザ‥‥)
誰の心の声かは分からないけれど、恐らくこの場に居る能力者達は似たような言葉を心の中で呟いているはずだ。
「節操のない口説きは単にウザいだけですよ、ジェイル様」
「いや、俺は節操がないんじゃない。女の子が好きなだけなんだ」
「それを世の中じゃ節操がないって言うんだよ‥‥」
ジェイルが自信満々に言う言葉に対してリュウセイが頭を抱えながら言葉を返す。
「女性も第一印象を重視しますので見た目は重要です。今のままでもいいんですが、更に良くする為――避けて!」
二条が表情を険しくしながらジェイルを突き飛ばす。言い寄られて「やめてよ!」みたいな図になってしまっているが、ジェイルを突き飛ばしたのはキメラが攻撃しかけてくるのを感じたからである。
「とりあえず、さっきのお話はキメラを退治してからにしましょう」
二条が呟き、能力者達も武器を構え、キメラ退治に備え始めるのだった。
―― キメラとの戦闘・敵はキメラだけにあらず ――
「女性型のキメラですか‥‥ジェイルさん、彼女なんてどうですか?」
アリエイルが冗談交じりにジェイルへと言葉を投げかけるのだが‥‥。
「‥‥‥‥」
「‥‥なぁ、ジェイルさんよ。もしかして‥‥アレも許容範囲か?」
アリエイルの言葉に無言で言葉を返さないジェイルが心配になり、魔宗が恐る恐る問いかけると「‥‥彼女こそ運命の人なのかもしれない!」ともはや狂っているとしか言いようのない行動をし始める。
「バカか、お前は――ッ!」
魔宗がとめるのも聞かず「へーい、彼女! 俺と一緒にお茶ゲッフゥ!」とナンパを仕掛け、攻撃されるという能力者の恥でしかない行動ばかりジェイルは行う。
「怪物女に用はない! というか、ジェイルは見境なくナンパをするな!」
リュウセイが再びジェイルに攻撃を仕掛けようとしたキメラを防ぎながら叫ぶ。
「な、なんというツンデレ‥‥「あれはツンデレじゃねぇだろ!」」
「少し‥‥戦闘に集中して下さい‥‥巻き添えになっても、知りませんよ!」
アリエイルはセリアティスを振るい、キメラに攻撃を仕掛けながらジェイルに言葉を投げかける。
「あなたが現れなければ、ファリスもこんなに嫌な思いをしなくて済んだの。あなたのせいなの!」
ファリスはジェイルによって与えられたストレスをキメラで発散するかのように一切の躊躇いも手加減もなく攻撃を行った。
キメラはラルスに向かって攻撃を仕掛けたのだが、ラルスは簡単にそれを避ける。
「その程度の攻撃、見切るのは容易いですよ」
呟いた後、ラルスはキメラの背後を取り、エネルギーガンで攻撃を仕掛ける。その際、キメラも避けようとしたけれど前方からリュウセイが攻撃を仕掛け、2人の攻撃を避ける事が出来なかった。
「必殺、流星刃・壱式っ!」
リュウセイは自らの必殺技をキメラに繰り出す。
「心底嫌なんだがな‥‥女性に銃向けるってのはよっ!」
魔宗は真デヴァステイターをキメラに向け、スキルを使用しながら射撃を行う。
「この導きの天使、アリエイルがあなたを死の国に導きます!」
アリエイルはキメラに攻撃を繰り出し、キメラへ強烈な一撃をお見舞いする。
「委細構わず、突貫、刺し、穿ち、貫け!」
アリエイルの攻撃を受けた後、キメラがぐらりとよろめいた所を狙って二条も攻撃を行う。
「これは‥‥チャンスかな〜?」
八尾師は呟きながらスキルを使用して、キメラの防御力を低下させる。
「最後は俺に任せろ! ぶっ飛べ! サンライトブーストキック!!」
陽山の行った攻撃がトドメとなり、キメラはがらんと両手に持っていた剣を落とし、そのまま地面に倒れて起き上がる事はなかったのだった。
―― 少女・BでLな展開に期待す ――
「そういえば、一体何なんだ? キメラとの戦闘前に言ってたじゃないか!」
ジェイルが二条に詰め寄ると、彼女はにっこりと笑って「メイクをしましょう」と告げた。
「は?」
「大丈夫です、悪いようにはしません。気に入っていただけましたら方法は後で教えますので」
「え、女の子は好きだけど! 自分が女になりたいわけじゃないんだよ!」
「そういえばー、最近はー、男の娘がーモテるそう、ですからー」
ぎゃあぎゃあと騒ぎ「嫌だ」と言っていたジェイルだったが、ラルスの言葉を聞いて「‥‥なんですと?」とぴたりと抵抗を止める。
「あわわ、私も手伝いますよー」
八尾師も手伝い二条と八尾師による『ジェイル☆女装作戦』が開始されてしまう。
※ 数十分後 ※
「‥‥‥‥‥‥」
ジェイルのメイク姿を見て、能力者達は終始無言である。
それもそうだろう、女の子のような顔立ちならともかく、ジェイルはどちらかといえば体育会系に気持ち分だけ爽やかさをプラスしたような顔立ち。
どんなにメイクをしても『男の娘』にはなれないのだから。
「あ、あ、あ、う、うわあああああん‥‥コレじゃ変態じゃないかああああ!」
「お前もつらいな‥‥けど、俺には止められなかった。これもまぁ、経験として明日から無闇にナンパするのだけは止めようぜ? モテなくっても積み重ねてから告白するのが一番いいんだよ‥‥かっこよくたって顔だけで寄ってきたらきっと長続きしないだろうよ」
リュウセイがジェイルの肩をぽんと叩きながら言葉を投げかけるが「それじゃ俺の顔が悪いみたいじゃないかあああああ!」と再び大音量で泣き叫びだす。
「ま、まぁ‥‥でもがっつく姿ばかり見せてたら、逆に近寄りがたい雰囲気を出しちまうぜ」
魔宗が笑いを堪えながら呟く。
「そうだ! 妹! 妹を紹介してくれよおおお!」
「聞いちゃいねぇな、お前‥‥」
泣きながらラルスの方に駆け寄るジェイルを見て魔宗はイラッとした気持ちがたまっていくのを感じる。
「妹を紹介ー、するんでしたねー。今二十歳でー『旦那さん』と一緒にー仲良く暮らしてるんですよー」
ラルスの言葉にジェイルだけはなく、他の能力者達も固まっている。
『旦那さん』
『旦那さん』
『旦那さん』
恐らくジェイルの頭の中にはこの言葉がエンドレスリピートされていることだろう。
「も、もしかして‥‥本当に『紹介』するだけだったんじゃ‥‥」
「恐らく〜、紹介の意味がお互いに違ったんじゃないかと〜」
陽山と八尾師は小さな声で話す。
「と、とりあえずこんな事もあるさ‥‥な、今日は色々語り合おうぜ! な!」
リュウセイが最大限に慰めるのだがジェイルはショックが大きすぎるのか「お、おおう‥‥」と覇気のない返事をする。
「ジェイルさん! ヒーローになればモテモテ間違いなしだぞ!」
「‥‥まず、ヒーローのキミに彼女がいるのか聞かせてもらいたいね」
「そ、それは‥‥」
「なぁ、魔宗君! 俺に女の子の紹介――いや、止めておこう。無駄な事を聞いたよね」
「うおおおい! テメこら! どういう意味だ、それは! 絶望の俺に更なる絶望を与えるんじゃねぇよ!」
ぎゃあぎゃあと騒いでいると「あのー」とアリエイルがジェイルに言葉を投げかける。
「先ほども仰ってましたが、あまり多くの人にお付き合いしてくれと頼むのは逆効果と思いますよ‥‥よくはわかりませんが」
アリエイルの言葉に「そうだな、頑張って一人の人に付き纏うことにするよ!」とジェイルはストーカー宣言をしてしまう。
(これでまた問題が起きなければいいのですが〜‥‥)
八尾師は別な方向に目覚めたジェイルを心から心配するのだった。
(ちぇっ、男の娘なら女性から可愛いといわれ、殿方からはその手の趣味の方に大いにモテる――そして萌えるBでLな展開が、と思いましたのに)
メイクをした二条はどこか納得のいかない様子で高速艇へと乗り込み、他の能力者達と一緒に帰還していったのだった。
END