タイトル:【10月】南瓜祭マスター:水貴透子

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/10/19 22:53

●オープニング本文


それは小さな町で起きた事件だった。

※※※

「かぼちゃ? この時期になれば多いのかしら」

女性能力者が資料を見ながらため息混じりに呟く。

「かぼちゃ? 何の話だ?」

偶然通りかかった男性能力者が女性能力者に声をかけると「これよ」と資料を男性能力者に放り渡す。

その資料にはハロウィンの時期によく玩具などで見かけるジャック・オー・ランタンに似たキメラの姿が映し出された写真があった。

「怪我人は多いけど、まだ死者が出てないだけマシなのかしらね」

「確かに怪我人の数は結構多いな‥‥と言うことは殺傷能力は低い、のか?」

「どうなのかしらね、多分殺傷能力は低いんだと思うけど‥‥相手はキメラなんだし油断は出来ないわね」

女性能力者が呟くと「そうだな、小さな油断が死を招くからな」と男性能力者も言葉を返した。

相手が例えどんな格下なキメラであろうと、慢心や油断は命を捨てる事になるのだから。

「しかも、二匹いるみたいね。一緒に行動してるみたいだわ」

女性能力者が資料を見ながら呟くと「二匹いて、死者が出てないのか」と男性能力者が言葉を返し、再び資料に視線を落としたのだった。

●参加者一覧

ファタ・モルガナ(gc0598
21歳・♀・JG
シクル・ハーツ(gc1986
19歳・♀・PN
ジョシュア・キルストン(gc4215
24歳・♂・PN
龍乃 陽一(gc4336
22歳・♂・AA
ダンテ・トスターナ(gc4409
18歳・♂・GP
ツバサ・ハフリベ(gc4461
14歳・♂・FC
滝沢タキトゥス(gc4659
23歳・♂・GD
イスネグ・サエレ(gc4810
20歳・♂・ER

●リプレイ本文

―― 南瓜キメラを退治する者達 ――

「えぇと、これが今回の依頼の資料です。事前に伝えた事をメモしてあるだけですが、目を通しておいて下さいね」
 オペレーター訓練生の室生 舞(gz0140)が、今回の依頼に向かう能力者達に資料を渡しながら言葉を投げかける。
「トリックオアトリート♪ ってねぇ‥‥可愛く言うとお菓子をくれなきゃイタズラしちゃうぞ! 輩風に言うとバラされたくなければ出すモン出せや! だね☆」
 可愛い口調で言うファタ・モルガナ(gc0598)なのだが、言っている言葉は少しばかり穏やかではない。
「‥‥こ、この姿に擬態する事にどんな意味があったんだ‥‥? バグアもたまに訳の分からないキメラを作るな‥‥」
 シクル・ハーツ(gc1986)は資料を見ながら苦笑混じりに呟く。
「きっとハロウィンだからバグアも空気を読んでみたんじゃないのかな? まぁ、そんな事がある筈ないんだけどね☆」
 ファタはけらけらと笑いながらシクルに言葉を返す。
(はー‥‥南瓜ですか、意味が分からないですし面倒ですね‥‥ま、てきとーにキメラを退治して楽しませてもらうとしましょうか)
 ジョシュア・キルストン(gc4215)は資料を見ながら、小さくため息を吐いて心の中で呟いたのだった。
(ふふ、何だか楽しそうな依頼ですね〜♪ ‥‥こんな事を言っては不謹慎でしょうか‥‥でも季節にあったキメラなんて何て楽しそうなんでしょう)
 ふふ、と笑みを浮かべながら龍乃 陽一(gc4336)も心の中で呟く。
「ハロウィンの時期に南瓜キメラッスか! またまた粋なキメラが現れたッスね! でもそれはそれって事で‥‥きっちり倒しちまおうッス!」
 ぐ、と拳を強く握り締めて熱く語るのはダンテ・トスターナ(gc4409)だった。彼は資料にあった南瓜キメラの持つ鎌がカッコイイと感じ、その鎌の回収を行う為に今回の依頼に参加していた。
「ハロウィン‥‥祭に便乗して人を傷つけるのは許せないよね。心に隙がある時だし‥‥」
 ツバサ・ハフリベ(gc4461)が呟き「死人が出てないのが救いかな」と言葉を付け足した。
「ハロウィン風のキメラって‥‥どうなんだ? それに二匹も居て死亡者がいないなんて‥‥なぜ? ま、まぁ、いい事なんだけどさ」
 滝沢タキトゥス(gc4659)が独り言のように呟く。
「でも『まだ』死亡者がいないだけで、これからもいないって事にはならないですからね‥‥今回でちゃんと退治しておかなくては‥‥」
 イスネグ・サエレ(gc4810)が滝沢に言葉を投げかけると「確かにそうですね」と滝沢も再び資料に視線を落としながら言葉を返した。
(そうかぁ‥‥ハロウィンか‥‥もうすぐ寒くなるなぁ‥‥まぁ、今回は懐も寒いしたまには頑張るかぁ‥‥)
 イスネグは心の中で呟く。
「さて、それではそろそろ行きましょうか?」
 ジョシュアが呟き、能力者達は高速艇に乗り込んで目的の場所へと出発したのだった。


―― キメラ退治へ ――

 今回のキメラは二匹存在しており、一緒に行動しているという情報も資料にはあった。
 だが、街のどこに存在しているかは分からず、能力者達は班を二つに分けてキメラ捜索を行う作戦を立てていた。

A班・イスネグ、滝沢、シクル、ツバサの四名。
B班・ダンテ、ジョシュア、龍乃、ファタの四名。

「やれやれ、ゴーストタウンみたいになっちゃってまぁ‥‥」
 ファタは無人の街を見渡しながらため息交じりに呟いた。キメラが現れた事で住人達は避難を行っており、ファタの言う通り、ゴーストタウンのように思えた。
「とりあえず、何かあったらお互いに連絡を取り合う――でよかったんだよな」
 シクルが呟くと「そうですね、お互いに連絡を取り合えば発見も早いでしょうから」とイスネグは言葉を返し、能力者達は前もって決めた班に分かれ、行動を開始したのだった。

※A班※
「それにしてもハロウィンの時期に現れたキメラ‥‥、まさかお菓子を貰う為にこんな事をしてるんじゃないでしょうね」
 苦笑交じりに滝沢が呟く。
「お菓子をあげたらどこかに行ってくれる‥‥それだったらボク達も楽なんだけどな」
 ツバサもため息交じりに呟くと「暗いですね」とイスネグが周りを見ながら言葉を返した。
「確かに暗いな。家に灯りがついていないからだろうけど。不意打ちを受けないように気をつけないとな」
 シクルが呟きながら「それにしても‥‥」と言葉を付け足して街の中を見渡す。
「‥‥どうしたんですか?」
 滝沢が言葉を投げかけると「いや、人の住んでる場所だから壊すわけには行かないなと思って」とシクルは言葉を返す。
「確かにそうですね‥‥倒したけれど街がぼろぼろ、ではバグアとやっている事にあまり違いがないですし‥‥」
 滝沢は口元に手を当てながら言葉を返す。
「まだ向こうの班もキメラを見つけてないみたいだね」
 ツバサが呟き、イスネグがトランシーバーを見るがまだ連絡は来ておらず、A班同様にB班もキメラを見つけていないという事が分かる。
「っと、さすがに暗いな‥‥」
 シクルは足元の石を避けながら小さく呟く。
「あ」
 その時、滝沢が小さく呟く。B班から通信が入り「キメラを発見した」という連絡が来たのだ。
「場所は‥‥公園の方ですか、ここからもそう遠くはないですね、すぐに向かいましょう」
 イスネグが地図を確認しながら呟き、A班の能力者達はB班とキメラの居る公園まで駆け出したのだった。

※B班※
 まだB班がキメラを見つけていない所まで時を遡る‥‥。

「お菓子を強請って練り歩きたくなるようないい夜ですねぇ」
 ジョシュアは空を見上げながら薄く微笑み呟く。
「その気持ちは分かりますね〜♪ 僕もLHに来て色々なキメラを見てきましたが‥‥今回のようなキメラもいるんですね〜」
 龍乃も楽しそうに呟くと「どんなキメラなのかはっきりわかんないッスからね、油断はしないようにしないと‥‥」とダンテも言葉を返すのだが、わくわくしている――という意味では彼もどうやら同じのようだ。
「静かに!」
 突然、ファタが歩みを止め、声を潜めながら他の能力者達に言葉を投げかける。
「どうしたッスか?」
 ダンテがファタの方を見ながら問いかけると「聞こえないかい?」とファタが先ほどと同じように声を潜めながら言葉を返す。
 彼女の言葉に他の三人の能力者達も耳を澄ませると、ギギギ、と金属を擦り合わせるような音が4人の能力者達の耳に響く。
「何の音ッスかね‥‥」
 ダンテが呟くと「A班の皆さんがこの辺に居るわけないですよね‥‥」と龍乃が言葉を付け足す。
「‥‥と言うことは、残る答えは1つですよね」
 ジョシュアも武器を構えながら苦笑気味に言葉を返した。
「とりあえず、ここで戦闘を始めるのはまずいッスよね」
「少し戻れば公園がありましたよね、そこまで誘導しましょうか」
 ダンテが呟いた後、龍乃が言葉を返し、ファタとジョシュアもその案に賛同してA班に連絡を入れた後にキメラを公園まで誘導する事にしたのだった。


―― 戦闘開始・キメラ VS 能力者達 ――

 B班がキメラを誘導した数分後にA班も合流し、8名の能力者達はキメラ退治の為にそれぞれ行動を開始する。
「二匹!? つがいとはやるじゃないか」
 二匹のキメラを確認した後、大口径ガトリング砲をキメラへと向けて構える。
「あぁ! 厄介! 気にせずばら撒きたいなぁ!」
 ファタはキメラだけを狙い、少し疼く気持ちを抑えながらスキルを使用して攻撃を仕掛ける。
「ツバサ殿、挟み込むぞ!」
 シクルがツバサに言葉を投げかけると「分かってるよ!」と言葉を返し、キメラを挟み込むような陣形を取りシュバルツクローでキメラを攻撃する。
「キメラ‥‥折角のお祭をお前達が台無しにする権利なんて、何処にも無いよ」
 ツバサは小さく呟きながら攻撃を仕掛け、シクルは機械剣βでキメラへと斬りつけ、キメラの注意を自分へと向ける。
「今だ、やれ!」
 シクルがツバサに合図を送るのだが、キメラの鎌が数秒シクルの攻撃より早かったため、刃が彼女を襲う。
「っ!」
 攻撃を受けた、と思ったシクルだったが滝沢のソードブレイカーがキメラの刃を受け止める。
「危ない危ない。トリックオアトリートのつもりにしては、度が過ぎてるな」
 滝沢はスキルを使用しながら、キメラへと攻撃を行う。
「強化と弱体を使用しますね」
 イスネグが能力者達に言葉を投げかけ、スキルを使用して能力者達の武器を強化し、キメラの防御力を低下させたのだった。
「キメラだろうと、No One Lives Foreverさ、例外は無い」
 ツバサは短く呟き、滝沢と共にトドメの一撃を繰り出したのだった。
「向こうのキメラは片付いたみたいッスね」
 ダンテがキメラに射撃を行いながらちらりと視線を移し、小さく呟く。
「さぁ、平和の為に頑張るんですよ、ダンテ君!」
 ジョシュアがダンテに言葉を投げかけると「いやいや、一緒に頑張りましょうよ!」とダンテがツッコミをいれながらキメラに攻撃を行う。
「あぁ‥‥面倒くさい。早く終わればいいのに‥‥」
 ジョシュアがため息混じりに呟くと「早く終わる為にも頑張りましょうよ!」というダンテの叫び声がジョシュアの耳に入る。
「ふふ、まさかそれだけで終わりじゃないですよね?」
 龍乃はキメラの攻撃を受けながら、竜斬斧・ベオウルフを構え、スキルを使用しながら攻撃を繰り出した。
「あまり早く終わっては‥‥嫌ですよ?」
 ふ、と微笑む龍乃だがその微笑みに普段の優しさは感じられない。
「こっちとしては早く終わらせたいねぇ、抑えながら撃つのって結構ストレスが溜まるんだよ」
 ファタが小さくため息を漏らしながらガトリング砲でキメラを狙い撃ち、キメラの動きを止める。
「大丈夫ッスよ、その鎌は後から俺が使ってやるッスから!」
 ダンテはキメラの攻撃を避けながら言葉を投げかける。だが避けきれなかったのか、ダンテの頬を赤い線が伝う。
「そうそうキメラさん? 死にたくなかったらお菓子の1つでも出してみては如何ですか?」
 ジョシュアが笑いながらキメラに言葉を投げかけ「無理でしょうけどね」とつけたし壱式で攻撃を仕掛け、ファタのガトリング砲によりキメラにトドメを刺したのだった。


―― キメラ退治の後は、楽しいお食事タイム、楽しいナンパタイム? ――

「終わったか‥‥これでここも安全になるな」
 シクルが息をつきながら呟き、帰る準備をしているのだが、どうやら他の能力者達は別な事を始めており、不思議そうに問いかける。
「何をしているんだ?」
「何って‥‥南瓜料理の準備ですよ〜?」
 シクルの問いに答えたのは龍乃だった。彼は「最近南瓜食べてませんでしたからね〜」と嬉々として準備をしていた。
「た、食べるのか!? こ、これ(キメラ)を!?」
「俺、最初からそのつもりでえびとかさつまいもとか持ってきてるッスよ」
 ダンテが自分の手荷物を見せながら言葉を返すとシクルは余計に驚きを隠せなかった。
「そうか、食事があるんだね‥‥俺は料理が出来ない事もない‥‥さりげなくお手伝いしませんと、お茶の準備は色々な物を取り揃えておもてなししませんと♪」
「め、メイド服になる必要性があるのか!?」
 ツバサはばさりとメイド服に着替え、いそいそと手伝いを始める。シクルはそんな彼にツッコミを入れたのだが、もはや『当たり前』として扱われているこの状況についていく事がいっぱいで目の前がぐるぐるとする感じだった。
「残念だけどキメラにやる菓子はないですけど、俺たちが貰うものはありますからね。南瓜とか南瓜とか南瓜とか」
 キメラ料理は初めてですけど、と滝沢は言葉を付け足しながら料理が出来るのを待っていた。

 それから、龍乃やツバサ、ダンテの作った南瓜(キメラ)料理が出来上がり、能力者達はそれぞれの思いを馳せながら口にした。
「私はコーンポタージュをいれると美味しいと思うね」
 イスネグは持参してきたコーンポタージュを混ぜながら口にする。
「それでは、いただきます」
「あ」
 イスネグが口に運び、ごくり、と飲み込んだ瞬間ジョシュアが凄く哀れそうな表情を見せた。
「‥‥ダンテ君、これ凄く美味しいですよ。どうですか?」
 皿をダンテに差し出すと「貰います!」とダンテはぱくりと口に運ぶ。
「あれ‥‥地面が随分と‥‥近いな‥‥意識が‥‥」
 イスネグは呟きながらパタリと地面へと倒れ「うっ」と続いてダンテも倒れる。
「皆さん、美味しすぎて感極まったという所でしょうか」
 龍乃が倒れていく能力者を見ながら呟くと「そ、そうですね‥‥」とジョシュアは言葉を返した。
「みんな、パンプキンパイを‥‥」
 その時、キッチンを借りてパンプキンパイを作ってきたシクルが戻ってきて、ある意味キメラとの戦いよりも酷い惨劇に目を疑いたくなったのだとか。
「‥‥そこ、の‥‥美しい‥‥お嬢さ‥‥今度、僕と‥‥一緒に‥‥デート、を‥‥」
「い、いや‥‥私は‥‥というか、それ以前にあなたはデートに行くより病院に行くべきだと思う」
 倒れながらもナンパをするジョシュアに言葉を投げかけ「おやぁ、私にはデートのお誘いがなかったねぇ」とガトリング砲を出しながら「ふふふ」と怪しげな笑みをファタは浮かべたのだった。

 その後、意識を取り戻した能力者達は住人達にキメラ退治の出来事を伝え、ファタは子供達にお菓子を配った後、LHへと帰還していったのだった。
「キメラ料理怖いキメラ料理怖い、キメラはやっぱり退治するものであって食べるものじゃない」
 しかし、初のキメラ料理があまりにも強烈なものだった事から滝沢は帰りの高速艇の中でがたがたと震えていたのだったとか‥‥。


END