●リプレイ本文
―― かくれんぼに参加する者達 ――
今回は誰が募集したのかすら分からない『かくれんぼ』が開催される事となり、一般人から能力者まで幅広く集められる事になった。
まぁ、一般人と言うのはクイーンズ記者の土浦 真里(gz0004)とオペレーター訓練生の室生 舞(gz0140)の2人のみなのだけれど。
「‥‥能力者だけならともかく一般人、と言うか何故ウチの嫁が関わってるんですかねぇ‥‥ねぇ、真里さん?」
玖堂 鷹秀(
ga5346)がにっこりと満面の笑みを浮かべ、黒いオーラを漂わせながらマリへと言葉を投げかける。
「だってかくれんぼだよ!? 面白そうだからマリちゃんも頑張ってかくれんぼしようと思ってやって来たのさっ」
ふふん、とマリが威張りながら言葉を返すのだが玖堂は無言のまま黒いオーラを漂わせたまま。
「ま、まぁ‥‥折角の楽しい場なんだし‥‥鷹秀も、ね?」
終夜・無月(
ga3084)が玖堂を宥めながら「それより‥‥奥さんを紹介‥‥して欲しいな」と言葉を付け足す。
「真里さん、此方は所属している小隊の総隊長でもあり、お世話になっている方なんです。えぇと、ウチの嫁である真里です」
「おおぅ、つまり能力者よね!? 強いのかな! 何かクイーンズに提供できるネタはあるかな? 他の雑誌では乗せない事もクイーンズならばっちり載せちゃうよ! だからネタ――」
真里が物凄い勢いで言葉を並べ立てるのだが、途中で玖堂によって首根っこを捕まれ「普段からお世話になっている方なんです、失礼な事をしないで下さいね」と先ほどより黒い笑みでマリに言葉を投げかける。
「えぇー‥‥」
「‥‥ふふ‥‥今日は宜しく‥‥」
終夜も漫才のような2人を見ながら微笑み、挨拶をしたのだった。
(‥‥かくれんぼが、依頼‥‥? う〜ん、懐かしいなぁ‥‥)
金城 エンタ(
ga4154)が周りに集まった能力者達を見ながら心の中で呟く。
「‥‥うん、でも参加したからには全身全霊で童心に返って大真面目に遊ぶ事にしましょう」
ぐ、と拳を小さく握り締めながら金城は独り言のように呟いたのだった。
「かくれんぼ、か‥‥特に動機は無いが、轢けるチャンスだけは逃さん‥‥」
UNKNOWN(
ga4276)は大石 圭吾(gz0158)をちらりと一瞥しながら不敵に笑む。
「はわわ、何でこんな所でかくれんぼーなのですかー」
土方伊織(
ga4771)ががくがくと震えながら呟く。
(と言うか自信とか全く無いから、華麗にするーで行こうと思ってたのにー‥‥何でとーろくされてるのです?)
はわわ、と土方はがっくりと肩を落としながら心の中で呟く。
「あら、あんたまでいたのね。わんこ」
その時、土方は背後から聞こえた声にビクッと大げさに肩を震わせた。
「そ、その声はー‥‥ま、まさか‥‥まおー様ですか? 何でこのかくれんぼでもまおー様の理不尽が発生するのですかー」
「誰が魔王の理不尽よ、穴に埋めて一生見つからないかくれんぼをさせてあげるわよ。このヘタレわんこ」
魔王――もといキルメリア・シュプール(gz0278)が土方の背中に蹴りを入れながら言葉を投げかける。
「あは、キリーも相変わらずなのね」
百地・悠季(
ga8270)がキリーを見て苦笑しながら呟く。
(本当に敵に廻る連中は強力過ぎね‥‥こっちは少数精鋭として精々足掻いてみせるわよ)
百地は心の中で呟き「さーて、傭兵屈指の直観力をフル回転させてトリックとかフェイクとか見破って、突破してみようかしら」と大きく伸びをしながら呟いた。
「にゃー、かくれんぼ‥‥お姉ちゃんと一緒にかくれんぼ‥‥にゃー」
白虎(
ga9191)が鼻の下を伸ばしながら(キリーと一緒の)かくれんぼを楽しみにしていた。
そして今回、彼・白虎はかくれんぼをする中で桃色――特に目立っているマリと玖堂の粛清対象にと考えていた。
「桃色は許すまじにゃー」
しかし、ここでほとんどの能力者達が思った事だろう。桃色総帥は許されるのか、と。
(まぁ、息抜き――と言うにはちょっと激しい遊びかもしれないけど‥‥優勝してキリーさんを喜ばせてあげたいですね)
仮染 勇輝(
gb1239)はキリーを見ながら心の中で呟いた。
「‥‥うわぁ」
翡焔・東雲(
gb2615)が周りを見渡しながら呟く。彼女は参加者一覧にマリの名前を見て挨拶くらいは出来るかな、と考えて参加したのだが‥‥意外と参加者が多く、賑わっている姿を見て少しだけ気後れしていた。
(人見知りだからなぁ‥‥ま、参加するからには勝ちたいよな)
うん、と言葉を付け足して「優勝できるといいけど」と翡焔は呟いたのだった。
「ふふ、鬼だろうが逃げる側だろうがやる事は変わらないよね‥‥」
矢神小雪(
gb3650)は不気味に笑みながら「ふふ、このメイド服・月夜を着せてあげるんだから‥‥」と言葉を付け足す。彼女はかくれんぼ――というよりはコスプレをさせる事を今回の目的としているようだ。
「初対面だけど、友達の友達って事でよろしくね」
神咲 刹那(
gb5472)は舞に握手を求めるように手を差し出しながら挨拶をしてきた。
「は、はい‥‥ボクも足手まといにならないように、頑張ります‥‥っ」
舞は神咲に手を差し出し、握手をしながら挨拶をして言葉を返したのだった。
「きゃあん☆ イケメンがいっぱいだわ! まさに今回のかくれんぼはパラダイス! 天国だわ!」
きゃあきゃあと騒ぎ立てるのは鵺(gz0250)である。男性参加者が多いのか興奮して鼻を押さえていた。
「鵺さん、しっと団の仲間として支援しに来ましたよ。今日は宜しくお願いしますね!」
諌山美雲(
gb5758)は大きなお腹を抱えながら鵺へと挨拶を行う。
「あらん、随分と大きくなったのねぇ‥‥アタシもイケメンと結婚して可愛い赤ちゃんを産みたいわぁ‥‥!」
鵺の言葉に(まず性別的に生む側じゃねぇよ、お前)と能力者達が心の中で呟き、生温い視線を送ったのだった。
「鵺殿‥‥」
ラサ・ジェネシス(
gc2273)はイケメンを追いかける鵺を見てちょっとだけ泣きたくなる気持ちだった。
「しかし今回はオールスター夢の競演‥‥楽しみだナァ――イケメンばかりを追いかける鵺殿だけド、ここでいい所を見せればあるいは‥‥」
ふふふ、とかくれんぼの他に目的が出来て余計に気合が入ったのだった。
「ラサ嬢も大変だな‥‥逃げるのも隠れるのもあんまり好きじゃないが、ルールだから仕方ないか」
エイミー・H・メイヤー(
gb5994)は小さくため息を吐き、参加するからには勝たねば、と言葉を付け足してかくれんぼ開始の合図を待つ。
「ふ、例え何が起ころうと勝利するのは僕です!」
ぐ、と拳を強く握り締めながらソウマ(
gc0505)は少し大きな声で叫ぶ。
「かくれんぼかぁ、楽しみだなぁ♪」
フロスヒルデ(
gc0528)は「鬼でも逃げる側でも皆で連携取れば勝てるよね♪」とフロスヒルデは自分に似た人形『なっちゃん』を見ながら呟いたのだった。
「凄いな〜‥‥見事に初対面の人しか居ないや」
苦笑しながら吹雪 蒼牙(
gc0781)は周りの能力者達を見る。
「ま、楽しめりゃ良いか〜」
「‥‥凄く疲れそうだけどね‥‥」
フェンリス・ウールヴ(
gc4838)が冷静に吹雪へと言葉を返した。
「かくれんぼか‥‥懐かしいぜ! 夜中まで隠れて叱られたのも良い思い出だよな! 問題は鬼なのか鬼じゃないのかだけどな‥‥」
ガル・ゼーガイア(
gc1478)が呟く。鬼なのかそうでないのか、それは他の能力者達も気になっている事だろう。
今回はそれぞれ班分けされており、鬼になった場合はその班全てが敵になるのだから。
「うにゃん、でも鬼になってもそうじゃなくても楽しくなりそうだよね〜♪ たまにはキメラ退治じゃなくて純粋に遊ぶのも良いだろうしっ! まぁ元々そんなに働き者って訳じゃないけど〜♪」
過月 夕菜(
gc1671)は「今回も沢山情報仕入れちゃうぞ〜♪」とメモ帳をすちゃっと取り出しながら周りを見渡す。今回参加した能力者達は25人、きっと彼女が満足するような情報を仕入れる事が出来るだろう。
「はー‥‥おれ、ちゃんと出来るかなぁ‥‥みんなの足をひっぱらなきゃいいけどなぁ」
うーん、と唸りながら七海 鉄太(gz0263)は少しだけ気後れした様子で呟いた。
「こんな廃墟でかくれんぼか‥‥隠れる場所が多すぎて探す側も隠れる側も大変な事になりそうだな」
ネオ・グランデ(
gc2626)は苦笑しながら呟く。
(ふふふ、みんな私の手の上で踊るがいい‥‥!)
春夏秋冬 立花(
gc3009)は邪笑を浮かべながら心の中で叫ぶ。
「そういえば、今回のかくれんぼには団長殿の思い人も参加しているんですね‥‥団長の思い人に会えるとは、面白い事になりそうですね」
和泉 恭也(
gc3978)は小さく呟きながら彼が団長と呼ぶ人物――白虎とその思い人、キリーを少し離れた所から見て微笑む。
「一体私の班はどっちなのかしら‥‥私はぜひ鬼をやりたいわね」
南 星華(
gc4044)は呟く。彼女は今回純粋にかくれんぼを楽しむ為に参加していた。あと彼女の弟が気になっているという存在、キリーを見る為にも参加していたのだけど。
「例えかくれんぼであろうと、報酬分の仕事はするかね」
リック・オルコット(
gc4548)は呟き、自分の班のリーダーでもある大石を見て「‥‥不安ではあるがな」と言葉を付け足した。
「さぁ、これよりかくれんぼを開始いたします! まずは事前に告知しましたが皆様の班分けを発表したいと思います!」
マリ班・ネオ、玖堂、過月、終夜、リック。
舞班・神咲、土方、フロスヒルデ。
大石班・UNKNOWN、矢神。
鵺班・ラサ、ソウマ、諌山、金城、南。
鉄太班・翡焔、百地、吹雪、エイミー、フェンリス。
キリー班・春夏秋冬、白虎、和泉、ガル、仮染。
「ちなみに言っとくけど、鬼は私の班よ」
さらりと言われた言葉に能力者全員が「えぇ!?」とキリーを見ながら叫び、探す側も隠れる側も鬼の班のメンバーを慌てて覚え始めるのだった。
「かくれんぼ開始は1時間後! それでは――かくれんぼ、開始!!」
ピー、と笛の音が響き渡り『かくれんぼ』が開始されたのだった。
―― かくれんぼ、開始! ――
「まずは‥‥初めまして、お噂はかねがね伺っております」
和泉は自分の胸に手を当ててまるで執事のように一礼しながらキリーに挨拶を行う。言葉を投げかけられたキリーは「噂?」と首を傾げながら言葉を返す。
「えぇ、ツンしかない性悪魔王女「にゅあッ‥‥!」ですとか僕の足元にも及ばぬ存在「い、痛いにゃー!」とか仰ってましたね」
和泉の言葉の途中で白虎の悲鳴が入っているが、和泉からの言葉を聞くたびにキリーが密かに攻撃を行ってるようだ。
「そんな事はどうでもいいわ。私の班が鬼になった以上、全員見つけなさいよね。もし‥‥私の班が優勝できなかったら――ぶっ飛ばすからね」
キリーは親指を勢いよく下に向けながら同じ班の能力者達に言葉を投げかける。
「仕方ねぇなぁ、まぁ‥‥もやしが探せと言ったら何処でも探すけ「喋ってる暇があるならさっさと探しに行ったらどうなの? ヘタレ」どよ‥‥って人の話は最後まで聞こうぜ‥‥」
ガルはがっくりと地面に手をつきながら「相変わらずの魔王だな‥‥」と言葉を付け足したのだった。
「まぁ、それじゃあ‥‥落としやすい人から狙ってみますかね」
仮染は小さくため息を吐きながら呟き、キリーの班は一時間が経過したのを確認すると街の至る所に隠れた能力者達を捜索し始めるのだった。
そして、かくれんぼ開始から僅か10分後――最初に捕まった能力者が現れた。捕まった能力者達は街中に設置されているスピーカーによって名前を挙げられる事になっている。
「最初に捕まったのは――大石 圭吾だぁぁぁぁ!」
おい、早いな――放送を聴いていた能力者達はそれぞれ心の中で呟く。
ちなみに大石を捕まえたのは仮染であり「褌なんか時代遅れだー!」と叫んだ瞬間に「そんな事はないぞおう!」と物陰から現れて褌について力説し始めたらしい。
「‥‥此処まで計画通りだと、哀れみすら感じますね‥‥」
現れた大石を見つけ、予めスタッフにより鬼の班のみに渡されていた『捕縛済』のシールを大石へとぺたりと貼り付けて、仮染はげんなりとした表情で呟いたのだった。
「もう1人捕まってしまったんですね――って鵺さん?」
金城が自分をじろじろと見る鵺に苦笑しながら「どうかしましたか?」と言葉を投げかけると「惜しいわ‥‥男の子だったら‥‥」と心の底から悔しそうに呟く。
(このまま『女の子』だと思わせておいた方が身のためなんでしょうけど‥‥何だか複雑な気分です)
金城は笑顔のまま心の中で呟く。
「鵺殿! 大切な身体なので無茶しないで下さいネ」
ラサが鵺に言葉を投げかけると「そうね! いつかイケメンの子供を生む大事な身体だもの!」とぐぐっと鵺は拳を強く握り締めながら叫ぶ。
「お元気‥‥そうですね、相変わらず」
ソウマは「イケメンの子供を生むんだからぁ!」と叫ぶ鵺を見て心配する必要ナシと判断して、言葉を投げかける――が鵺は自分の世界に入り込んでいてソウマの声は届いていなかった。
「さて、いくらお遊びとは言え負けるのは嫌ですからね。皆さんも隠れた方がいいですよ」
ソウマはそれだけ言葉を残すと単独で隠れる為にこっそりと行動を開始していた。
「そういえば、この街はデパートの中とかもそのままみたいね。着ぐるみでも着て転がっていようかしら‥‥」
「鵺さん、一緒に隠れましょうよ。誰かと一緒だった方が何となく安心ですしね」
諌山が鵺に話しかけると「イケメンじゃないのがちょっと残念だけど仕方ないわネェ」と何気に失礼な言葉を返している。
そしてマリ班は‥‥。
「一生懸命な所が可愛い、それが空回りする所も可愛い、怒られてシュンとしている所だって可愛いし‥‥「鷹秀! ストーップ!」‥‥おや、まだ沢山あるのですが?」
過月が「真里さんの何処が好きなの?」と玖堂に問いかけた所、上記の言葉を返し、恥ずかしさにたまらなくなったマリによりストップを掛けられた。
「とりあえず、鬼がこの班を狙って来るのは間違いないだろうからそろそろ移動しないか?」
ネオが苦笑しながら同じ班の能力者達に言葉を投げかける。キリーの班が鬼、その班にはしっと団総帥が存在しており『桃色は粛清!』と自分の事はまるで神棚に上げるかのような行動を取る――らしい、自分も桃色なのに。
「UNKNOWNからの情報――というか先ほどの放送でも流れたが大石は既に捕まったらしいからな――と、この付近に鬼の能力者が数名捜索をしているらしい、離れた方がいいかもしれんな」
リックはUNKNOWNから受けた情報を班内に伝達し、その場を離れ、隠れる場所を探し始めるのだった。
「はわわ、おそろしー事になったのですぅ‥‥本物の鬼が鬼になってますぅ‥‥!」
土方はがたがたと震えながら呟く。ここでキリーが聞いていればエルボーくらいは喰らわされる発言だろう、今のは。
「他の班の皆と連携出来たらいいんだけどねー‥‥もう、皆隠れちゃってるかなぁ」
フロスヒルデが周りをきょろきょろとしながら呟く。
「デパートとかに隠れるのはどうかな? 結構大きめのデパート跡があったよね。中も広いだろうし、結構隠れる所は沢山あるかもしれないよ」
神咲がフロスヒルデ、土方、そして舞に言葉を投げかける。
「現在機能してない街ってのが残念だけどねー。機能してる街だったらデパートの店員とかウェイトレスとかに成りすまして誤魔化すって方法もあったんだけどー」
神咲が苦笑気味に呟く。
「そ、それじゃデパートの方に向かってみましょうか‥‥途中で見つからないといいんですけど」
目をぱちぱちとさせながら舞は呟き、舞の班はデパートに向かって歩き出した。
「ふふ、春夏秋冬 立花さん‥‥逃がさないからね。このメイド服・月夜を着せるまでは絶対に逃がさないし、誰にも邪魔はさせないからね」
妖しげな笑みを浮かべるのは矢神。ちなみに矢神は『逃げる側』であり春夏秋冬は『見つける側』なのだが、何故か立場が逆転しているような気がしないでもない。
「ライオンさん? そっちは何かわかったー?」
矢神が通信機でUNKNOWNに話しかけると「あぁ、皆の隠れる姿が見える、ね」と言葉を返した。UNKNOWNは高い場所――は他の能力者達も考えるだろうという事から更に高い場所、貯水塔の影に潜みながら矢神に言葉を返した。
そして最後――鉄太班は、何故か鉄太が美少女へと変身させられていた。エイミーの提案で女装させられたのだが、最初は断ろうとしていたが満面の笑みを浮かべるエイミーが怖くて断ることが出来なかったのだった。
「うん、似合うよ――‥‥僕は出来ないけどね」
吹雪がにっこりと笑いながら鉄太を見て肩をぽむと叩きながら言葉を投げかける。
「あたしは鬼を撹乱する為に別の方向に逃げる事にするよ」
翡焔は同じ班の能力者達に言葉を投げかけ、それぞれ隠れる場所を探す為に行動を開始した。
かくれんぼが開始されてから1時間と45分、捕まった能力者は大石のみ。
だが、鬼の班も此処からは必死で能力者達を探し始める事になる。
―― 追う者と追われる者達の攻防 ――
キリー班は小学校跡地を拠点にして能力者捜索を行っていた――が2時間近く経っても捕まえる事が出来た能力者は大石のみ。
「あんた達何してるのよ! このヘタレ! 早く皆を見つけてきなさいよ! 何て役立たずばかりなの!」
きぃ、とキリーは落ちていた石を投げながら癇癪を起こしたかのように叫びだす。
「にゃ!」
その時、窓から外を見張っていた白虎が何かを見つけたようで「言ってくるにゃ!」と叫んで拠点(小学校跡地)から飛び出していく。
白虎が見つけたのはマンホールの下、下水道に隠れようとしているソウマだった。
「ここは盲点のはず‥‥しかし悪臭が酷そうですね‥‥」
ソウマが呟いた時「捕まえたのにゃ!」とぺたりと捕縛シールを貼り付けながら楽しげに笑う。当のソウマはまさか見つかるとは思っていなかったのか「僕のキョウ運が‥‥」とがくりと膝折れながら呟き、白虎に連れられて捕まった者達の部屋へと案内されたのだった。
「こっちも見つけたわよ! 堂々とこの拠点の屋上にある貯水塔にいたわ――ってあぁ、逃げられた!」
屋上に休憩に行った春夏秋冬はUNKNOWNを見つけてシールを貼ろうとするのだが、彼は縄で建物から滑り降りて春夏秋冬の前から見事逃げ切って見せた。
そして彼から矢神に連絡が入り、春夏秋冬は後に矢神によって追いかけられる事になるのだが――今の彼女は知る筈がなかった。
「‥‥あのさ、捕まえてもいいか?」
ガルの方は、外を這いずる怪しげな段ボール箱を見つけ、やや呆れた様子で言葉を投げかける。
「空気読もうカ? 今は捕まえる所じゃないと思うネ! それでも捕まえますカ!?」
何故か段ボール箱――もといラサは逆ギレをしてガルを少し怯ませるのだが「っていうか段ボールに入って這いずってたら目立つに決まってんだろ!?」と大きな声で言葉を返してシールをぺたりと貼って「おら、さっさと捕縛部屋に行きやがれ! こっちはさっさと見つけねぇともやしにキレられるんだよ!」と言葉を付け足したのだった。
「桃色班は何処にゃー! 粛清じゃー!」
白虎は桃色班(マリ班)を探す為、大きな声で叫んでいる。彼はかくれんぼが開始された後、放送を使ってマリと玖堂を標的にすると公言していた。
「物凄い形相で俺らの班を探してるな‥‥」
瓦礫に身を隠しながら白虎を見てネオが呟く。
「こっち側に誘き寄せる事が出来ますか? 多少トラップを仕掛けてありますが‥‥」
玖堂が黒い笑顔で呟く。マリ班が身を潜めているのは廃工場、その廃工場にはマリ班の能力者達で足を引っ掛けたり、頭上から何かが落ちてくるなどのサプライズ的なトラップが仕掛けられている。
「それじゃ、ちょっとこっちに気づいてもらうとするか」
リックは落ちていた石を少し離れた場所にあるドラム缶に向けて投げる。静かな廃工場にコーンと響く音が聞こえ「あっちに誰かいるわよ! さっさと行くわよ、ヘタレ」とキリーの怒鳴り声が廃工場内に響き渡る。
「春の方向にトラップがあります」
春夏秋冬がキリーに言葉を投げかけ、トラップに注意するよう促すのだが‥‥「春の方向って何処よー!」とキリーが言葉を返し、キリーを庇った白虎の頭にゴオオンと音が響いて金タライが落ちてきた。
「さて、面白い物も見れましたし‥‥逃げま「はい、残念でした」‥‥あ」
玖堂達が逃げようとすると、密かににっこりと近づいていた和泉によってシールをぺたりと貼られ、マリと玖堂の2人は捕まってしまう。
「あー! こんなのってズルイ! って、あー!! うちの班の能力者達逃げてるよ! ほら、あっちあっち!」
マリは自分だけが捕まるのは納得いかないと言わんばかりに同じ班の仲間を売ろうと「あっちも捕まえなさいよー!」と叫んでいる。
「まさか自分の班の仲間を売ろうとするなんて‥‥流石としかいい様がないですね」
和泉は苦笑しながらぎゃあぎゃあと騒ぐマリを見て呟いたのだった。
「困りましたね、まさか鷹秀と奥さんが‥‥捕まるなんて‥‥しかも‥‥こっちまで捕まえさせようとするなんて‥‥」
「にゃーん、こっそり逃げなくちゃ鬼の人がまだ近くにいるかもしれないねー」
過月が小さな声で終夜、ネオ、リックに言葉を投げかけ、3人はこっそりと物音を立てずにこっそりと逃げ始めるのだった。
「さすがに誰も気づきませんねぇ‥‥」
瓦礫の下に潜り込んだ金城が小さくため息を吐く。彼は『流石に此処に隠れる人は居ないだろう』的な場所に逃げ込んでいる為、思惑通り誰も見つける事が出来ずにいる。
「ふふふ‥‥僕は、存外腹黒な性格なのですよー♪」
金城は言葉を付け足しながら「何時までのかくれんぼになるか分かりませんが、此処から動かない方が良いかもしれませんね」と呟いたのだった。
「‥‥あの、それで隠れているつもり――なんですよね‥‥?」
一方、此処はデパート跡地――仮染は恐らくは更衣室に残されていたであろうウェイトレスの服を着てマネキンの振りをしている土方、神咲、フロスヒルデに言葉を投げかけた。
「「「‥‥‥‥」」」
「いや、マネキンの振りしてもなんか無理なポーズ取ってるせいでぷるぷる震えてるから」
仮染が「はい、捕まえた――と」と呆れたようにため息を吐きながらシールを貼る。
――ぐにゅ
「いたっ‥‥」
「‥‥‥‥‥‥」
3人を連れて拠点まで戻ろうとした時、仮染はうさぎの着ぐるみを踏んづけてしまい、何故か「痛い」という言葉が耳に入ってくる。
「‥‥南さん‥‥」
あからさまに転がっていた着ぐるみの為、まさか人が入っているとは思わなかったのだろう。仮染がうさぎの頭を取ると、そこにはちょっと暑そうにしている南の姿があり、仮染は彼女にもぺたりとシールを貼って拠点へと戻っていったのだった。
「あと一時間でかくれんぼは終了です! 現在の捕縛者は7名! 最後まで見つからずに逃げ切れるのかー!?」
「あと1時間なのね、逃げ切れない時間じゃないと思うけど‥‥」
百地が呟くと「確かに、こうなったら逃げ切ってみせよう」とエイミーも言葉を返す。
そこへ周りの様子を調べに行っていた吹雪とフェンリスが百地、エイミー、鉄太の所へと帰って来た。
「この辺に鬼の人は居なさそうだったね、途中で東雲さんから連絡入って、東雲さんが居る場所付近に鬼が居るみたいだよ。あぁ、でもこの緊張感、堪んないねぇ♪」
「‥‥はしゃぎすぎは、禁物。吹雪は、調子乗りすぎる」
はしゃぐ吹雪にフェンリスが言葉を投げかけると「分かってるって♪」と言葉を返す。吹雪の言葉を聞いて(‥‥分かってるように見えない)とフェンリスは心の中で呟いた。
「そこの人達、動かずに待っていなさい」
春夏秋冬が鉄太班の能力者達を見つけて走って近づいてくる。
「うわ、ヤバ‥‥ッ」
「‥‥吹雪の声が大きかったんじゃない?」
冷静に呟くフェンリスに「とりあえず逃げなくちゃ」と百地が言葉を返し、春夏秋冬から逃げる事になった――が、運悪くフェンリスと吹雪は捕まってしまいシールを貼り付けられてしまう。
「うわわ、こっちもヤバそうだぞ!」
鉄太が慌てたように叫ぶと「立花た―――――ん! み――――つけた――!」と矢神がハァハァと怪しげに息を切らせながら春夏秋冬の前へと現れる。
「さぁ‥‥着替えの時間よ‥‥」
手をわきわきさせながら矢神がメイド服・月夜を見せながら満面の笑みを見せる。
「変態め! 近寄るな! こっちに来るな!」
春夏秋冬はじりじりと後ずさりをしながらくるりと向きを変えて矢神から逃げるべく全力疾走をする。
「まってよ――――ッ!」
逃げる春夏秋冬を矢神はあふれ出る鼻血を押さえながら追いかけ、残った鉄太班は捕まらずに済んだという結果に終わった。
「‥‥鬼が追いかけられている状況とは‥‥中々見れるものではないな」
エイミーがしみじみと呟くと「明らかにかくれんぼで追いかけてるわけじゃなさそうだけどね」と百地が苦笑しながら言葉を返したのだった。
「やだぁ‥‥イケメンが全然私の事を見つけてくれないわぁ‥‥」
しゅん、としながら鵺が呟くと「此処から鬼の班は近いみたいですね」と諌山が呟き、何かを思いついたように鵺に言葉を投げかける。
彼女はしっ闘士であり、リア充である仮染と白虎に粛清を行う機会を窺いながら隠れていた。ちなみに彼女は既婚者だ、しっ闘士なのに。ちなみに彼女はリア充だ、しっ闘士なのに。
「よし、鵺さん好みのイケメンはきっと仮染さん! あそこにいるのでGOですよ!」
「きゃああん、イケメェェェェェェン! アタシを捕まえて一生離さないでぇぇぇぇ!」
諌山の合図と共に鵺が駆け出し、仮染めがけて駆け出す。
「わ、な、何ですか!?」
「きゃあ! イケメンが2人いるわ!!」
和泉と仮染を見て叫ぶ鵺だが「うおおおい! 俺は!?」とガルがちょっと涙目で叫んでいる。
「えええい! 何をしているかあ! さっさと捕まえるにゃああ!」
白虎の合図と共に捕まえようとしたキリー班だったが『ゴゴン』と頭上から金タライが降ってきて仮染と白虎に命中する。
「ふふふ、大当たり♪」
上から聞こえた声に能力者達が見上げると、してやったりな諌山の姿があった。
「ちょ、ちょっと離れないんですけど!」
和泉と仮染、両方に抱きつくように鵺が「捕まっちゃったわぁ!」と楽しそうに叫んでいる――が抱きつかれている方としては迷惑極まり無かったりする。
「この変態めっ! 追いかけてくるなと言うのに‥‥大体私の方が追いかける側なのに、何で私が追いかけられているの!」
春夏秋冬が叫びながら相変わらず全力疾走で矢神から逃げている。途中で物陰に隠れ、やり過ごした所で春夏秋冬はようやく一息入れることが出来たのだが‥‥それを見ていた翡焔は首を傾げている。
「‥‥確かあの人、鬼だったよな‥‥? 何で追いかけられてるんだろう?」
翡焔は首を傾げたまま呟き「まぁ、いいや。このまま時間まで逃げ続けよう」と言葉を付け足したのだった。
「うふふ、捕まえた‥‥さぁ、着替えようか‥‥?」
矢神が呟くと「こ、この変態め」と春夏秋冬も言葉を返す。
「変態だと! 違う! 小雪は『変態』じゃない! 『ど変態』だ――――!」
矢神は自信満々で叫ぶが、春夏秋冬にとっては状況が悪化する以外の何者でもない言葉だったりする。
かくれんぼが終了したという放送と同時に春夏秋冬の叫び声も響いたのだった。
―― 打ち上げ ――
かくれんぼが終了した後、逃げ延びた9名の能力者達は表彰された――が特に優勝商品が出る事は無かった。
そして鬼、キリーの班員達は「何で全員見つけないのよ! このドへたれ!」とキリーに終始罵られる始末となってしまっていた。
「それにしても何だか疲れたな‥‥」
ガルがげっそりとした表情で呟く。捕まった玖堂により、マリの良い所、可愛い所など散々ノロケ話を聞かされ、思わずしっ闘士になってしまいそうな彼だった。
「はいはーい。お酒のおつまみはこっちにあるからねー」
矢神が持参してきた調理器具などでバーベキューの準備や能力者達の飲んでいるお酒やジュースのつまみなどを作っていた。
「うにゃん♪ 私はミルク飴を持って来たよ〜♪ 此処に置いておくから食べてね♪」
過月は持参してきたミルク飴をつまみの皿近くに置いて、他の能力者達に言葉を投げかける。
「それにしても惜しいわねぇ‥‥あなたが男の子だったら‥‥」
鵺がバーベキューを食べながら金城に言葉を投げかける。
「ぬ、鵺さん‥‥もう最後なので訂正しておきますが『僕』は男性ですよ?」
金城の言葉に鵺の瞳が妖しく輝く。それはもう、まるで獲物を見つけたハイエナのように。
「鵺殿、このバーベキュー‥‥「きゃああ! 男の子だったの!? ヤダぁ、早く言ってよお!」‥‥ぬ、鵺殿――――ッ!」
ラサがバーベキューを取り盛って来たのだが、鵺は金城、そして他のイケメンSに向かって突進でもするかのように駆け出していった。
「はぁ‥‥あ、疲れたデショウ? 我輩が運んできまス」
諌山に話しかけ、彼女が持っていた皿と飲み物を持って諌山が座る場所まで持っていく。
「んー、美味しい♪ 動いた後のご飯っていつもより美味しく思えるよね。やっぱり皆で食べてるのもあるのかな?」
フロスヒルデはバーベキューを食べながら楽しそうに呟く。
「そうね、最後に食べて飲んで騒ぎましょう」
南もジュースを飲みながらフロスヒルデに言葉を返す。
「ぐわああああ‥‥」
打ち上げの最中、大石の声が響き渡り、能力者達がそちらへ視線を向けるとリックによって轢かれている大石の姿があった。
「えっと、ここでは‥‥『くっ‥‥バグアめ!』‥‥でいいのか」
リックがメモを見ながら呟くと「な、何故お前まで俺を‥‥」と大石がよろめきながら言葉を返す。
「悪いね。これもお仕事なのよ」
リックが言葉を返すと、少し離れた所で不敵に笑むUNKNOWNの姿があった。
「ま、まぁ‥‥たまにはこんなのもアリだな」
ビールを呷りながらネオが轢かれた大石を見やって「あれは、まぁ‥‥ありなのか分からんが」と言葉を付け足した。
「土浦さん、かなり遅くなってしまったけど結婚おめでとう。結婚生活は――見る限り順風満帆みたいだね」
翡焔がマリに話しかけ、ノロケ話を続ける玖堂を見て苦笑する。
「ありがとう、折角だからほら一緒にご飯取りにいこうよ」
マリがぐいぐいと翡焔の腕を引っ張りながらバーベキューをしている所まで一緒に向かい始める。
「あ、これは自家製のタレなんです。良ければ使いませんか?」
和泉がタレを差し出しながら呟く。
「あ、もらうもらう。それにしても楽しかったぁ、フェンも楽しかったよね?」
吹雪がフェンリスを撫で回しながら問いかけると「‥‥撫ですぎ」とフェンリスは言葉を返す。
「‥‥疲れた、でも、楽しかったから、良い、のかな?」
フェンリスもうっすらと笑みを浮かべながら吹雪に言葉を返す。
「まぁ、なんにせよ。今日は面白かったね。またこういう機会があるといいねぇ」
神咲がごくりとジュースを飲みながら呟くと「とほほー、こんな格好までしたのにー‥‥」と土方もがっくりと肩を落としながら呟く。彼の言うこんな格好とは『ウェイトレス姿』のことだろう。
しかもキリーから「この変態、このかくれんぼ中はずっとそれを着てなさいよ」といわれてしまい、着替える事も出来なかったりする。
そんなこんなでハチャメチャかくれんぼは終了したのだが「次回をお楽しみにー!」という放送に少しだけ不安を抱いた能力者達なのだった。
END