●リプレイ本文
―― ピクニックの前に ――
「戦いの邪魔にならないようにしますから、今回は宜しくお願いします」
ぺこり、と室生 舞(gz0140)は丁寧に頭を下げて今回キメラ退治に向かう能力者達に挨拶をした。
「舞さん、お久しぶりです〜。お元気でしたか?」
水無月 春奈(
gb4000)は舞に駆け寄りながら話しかける。
「今日はお弁当も持って来たんですよ〜。キメラを退治したら一緒に食べましょうね」
水無月の言葉に「わぁ、凄く楽しみです」と舞は笑って言葉を返す。
「よしっ! サクっとキメラ退治して、ピクニックしよう!」
黒羽・ベルナール(
gb2862)は「お弁当〜♪ お菓子〜♪」と楽しげにうきうきとした様子で言葉を付け足した。
「今回はキメラ退治の後にピクニックを行うのですね。ピクニックをするのは久しぶりなので、なんだか楽しみです」
リュティア・アマリリス(
gc0778)は持参してきたお弁当を見せながら「キメラ退治が終わったら皆さんで食べましょうね」と他の能力者、そして舞に言葉を投げかけた。
「ピクニッック――いいじゃないですか。えぇ、実にいい。この間は酷い戦いに狩り出され、人殺しをさせられましたからね。サクッとキメラさんをやっつけて楽しみましょうか」
ジョシュア・キルストン(
gc4215)が軽く肩をすくめて見せながら呟く。
「早くお弁当‥‥いえ、キメラ退治を!」
龍乃 陽一(
gc4336)は言いかけた言葉を直しながら「ごほん」と小さく咳払いをする。
「そういえば、これ――はい、これ預かってきたよ」
龍乃はリズレット・ベイヤール(
gc4816)に可愛らしいピンク色のお弁当箱を渡す。リズレットはお弁当箱を受け取りながらキョトンとした顔で「どなた様からでしょうか?」と目を瞬かせて言葉を返すと、龍乃が預けた人物の名をリズレットに小さな声で教える。お弁当箱を渡した人物の名前を聞いて、リズレットは嬉しそうな表情を見せて「‥‥ありがとうございます」と呟いたのだった。
「それにしても今日は良い天気だな」
滝沢タキトゥス(
gc4659)は空を仰ぎながら小さく呟く。
「ピクニック日和だというのにキメラが‥‥排除優先とは言え人員と現場に被害を出すわけにはいかない――まぁ、あくまでピクニックを楽しむのが目的。キメラ討伐は障害排除に過ぎないな」
滝沢が呟くと「そうだね、ピクニックにキメラなんて邪魔だもんね!」と黒羽が言葉を返した。
(ピクニックか‥‥給仕でもしようかな)
ORT=ヴェアデュリス(
gb2988)は少し離れた所で紫煙を吐きながら心の中で呟く。
「それじゃ、ピクニックの為にも早々にキメラにはお帰り願いましょうかね」
ジョシュアが呟き、能力者達は高速艇に乗り込んでキメラが暴れている自然公園へと出発していったのだった。
―― 現地到着、そしてキメラとの戦闘 ――
「わぁ、ひろーい!」
現地に到着して、黒羽が自然公園を見ながら目を瞬かせて大きな声で叫んだ。
「良い場所ですね。ピクニックをするには最適な場所です」
リュティアも微笑みながら「こういう場所でお弁当を食べるといつもより美味しく感じるのでしょうね」と言葉を付け足した。
「まずピクニックをするにはキメラ退治を終わらせないと出来ないけどな」
ヴェアデュリスが呟きながら小銃・シエルクラインを手に持ちキメラ捜索へと繰り出す。
「無闇に戦ってはこの場所が駄目になってしまう可能性もありますね、何処かに誘き出すのが良いかと思いますが‥‥」
水無月が呟くと「折角の綺麗な場所ですからね、出来るなら戦闘での傷をつけたくありませんね」と龍乃が言葉を返す。
「キミはあまり離れすぎないように――それと、他の皆さんも怪我だけはなさらぬように」
滝沢が舞、そして他の能力者達に言葉を投げかけると「怪我をすると、折角のピクニックが楽しくなくなってしまいますからね‥‥」とリズレットが言葉を返す。
「あの‥‥もしかして、キメラって‥‥あれ、ですよね?」
舞が前方を指差し、能力者達も釣られるように視線を移す。すると‥‥。
「なんていうか」
「アレだよね」
「――‥‥はぁ」
上からジョシュア、黒羽、ヴェアデュリス。彼らが呆れるのも仕方ないのかもしれない。いくらキメラ退治がオマケとは言っても、少し離れた所でバッサバッサと楽しそうに飛んでいるキメラの姿を見つけてしまっては少しだけやる気が削がれてしまうというもの。
「まぁ、探す手間が省けたのは良い事――だと思いましょうよ」
滝沢が苦笑しながら呟く。
「‥‥あちらで戦っては‥‥被害が出てしまいます。こちら側に誘き寄せた方が宜しいのでは‥‥ないでしょうか‥‥」
リズレットが呟くと「そうですね、それでは牽制しながら誘き寄せますね」と水無月が言葉を返し、天剣・ラジエルを手に持ちながらキメラの居る方向へと向かいだした。
「あ、あの‥‥ボクはどうすればいいでしょうか‥‥」
舞が少しおろおろとしながらリズレットに言葉を投げかけると「‥‥リゼが室生様の護衛につきます‥‥必ず護って見せます‥‥」と舞を安心させるように言葉を返した。
「は、はい‥‥宜しくお願いします」
今回、自然公園に現れたキメラの数は情報によると1匹。だが不測の事態に備えてリズレットは舞の護衛を行う事になっていた。
「大丈夫ですよ。皆が本気を出せば、あんなキメラに手こずる筈がありませんから」
少し不安そうな表情を見せる舞に龍乃が言葉を投げかける。
そして、水無月が牽制攻撃を行い、他の能力者達の所まで誘導を終え、能力者達は一気にキメラを退治すべく攻撃を開始した。
「清掃を始めようか」
ヴェアデュリスは低く呟き、小銃・シエラクラインを構え、キメラを正確に狙いながら射撃を行う。キメラはヴェアデュリスの攻撃をマトモに受け、ぐらりとよろめきながら降下を始める。
そこを狙っていたようにリュティアとジョシュアがスキルを使用しながらジャンプを行い、リュティアは特注の双短剣を構え、ジョシュアはブラッドクロスを構えてスキルを使用しながら攻撃を繰り出した。
「こういう戦い方も中々面白い――そうは思いませんか? 出来れば下から拝みたかったものです‥‥なんてね♪」
ふ、とジョシュアは可笑しそうに笑いながら攻撃を行う。
「いっくよー!」
そして、黒羽は待ち構えていたかのようにスキルを使用してキメラへと攻撃を仕掛け、水無月が居る方へとキメラを叩き落す――が、水無月が攻撃を仕掛けようとした瞬間、キメラは彼女の攻撃を避けてしまう。
「これからこっちはピクニックの予定が入ってるんだ。邪魔をするのなら、すぐ楽にしてやるさ」
滝沢は「ふ」と冷たく微笑む。覚醒後の変化で青く光る瞳が余計に冷たさを感じさせた。
そして滝沢は小銃S−01を構え、キメラの翼を狙って攻撃を仕掛ける。その攻撃にあわせてヴェアデュリスも翼に攻撃を仕掛ける。
「翼をやられたんじゃ、身動きは出来ないだろうな」
地面へと倒れるキメラを見ながら滝沢が冷たい視線を向けながら呟く。
「塵は、塵に還れ」
ヴェアデュリスは閻魔を「ひゅ」と風切り音が鳴るほど素早く振り、キメラに攻撃を仕掛ける。
「さようなら、次に生まれてくる時は敵ではないといいですね」
水無月は呟き、スキルを使用しながらキメラへ攻撃を仕掛け、無事にキメラ退治を終える事が出来たのだった。
―― 楽しいピクニックの時間 ――
キメラ退治が終わった後、能力者達は予定通りピクニックを行っていた。
「えっと、これが私の作ってきたお弁当ですね」
水無月が取り出したお弁当箱の中身はおにぎり、から揚げ、エビフライ、ハンバーグなどだった。このお弁当は水無月の手作りでどれも美味しそうに仕上がっている。
「私のお弁当はパン系にしてみました」
リュティアは大きめのバスケットの中からサンドイッチとベーグルサンドを取り出す。手作りパンにハム、タマゴ、ツナを中心にBLT、野菜など栄養のあるものばかりだった。
そして彼女はお弁当ばかりではなく、レジャーシートや食器なども用意してきており、それらを他の能力者に渡し始める。
「あ、食器を配ったりはしますよ」
ヴェアデュリスがリュティアから食器などを受け取り、それらにサンドイッチやベーグルサンドを乗せながら他の能力者達に渡していく。
「人数も多いですし、お弁当が多くても困ることはないでしょうね。一応僕も作ってきたんです」
まぁ、男の料理なんて食べたくもないでしょうが――とジョシュアは苦笑しながらお弁当箱を取り出し、差し出す。
「あ、僕も自分の店から『おしるこ?』を持ってきましたよ」
龍乃が自慢気に見せた『おしるこ?』を見てジョシュアが表情を凍りつかせる。
「‥‥気のせいでしょうか、おしるこ――ではなく『おしるこ?』と『?』がついているような‥‥」
滝沢が首を傾げながら考えるのだが、それに言葉を返す者は居ない。
「あ、忘れる所でした。これをどうぞ」
滝沢はウーロン茶とミックスジュースを他の能力者や舞に渡していく。
「‥‥リゼは‥‥ミルククレープを‥‥持ってきました‥‥お弁当後のデザートに、どうぞ」
リズレットが少しおずおずとした動作で作ってきたミルククレープを取り出し、お弁当箱の横に置く。
「あぁ〜、もうお腹空いて我慢できないっ! ハンバーグ、食べていい!?」
黒羽が皿を持って水無月に問いかけると「どうぞ、皆で食べる為に作ってきたんですから」と言葉を返す。水無月の言葉が返ってくると同時に黒羽はハンバーグを取り、ぱくり、と口の中に放り込む。
「美味しい〜っ! 春奈って良いお嫁さんになりそうだよね〜!」
黒羽が食べながら呟くと「あ、ありがとうございます」と水無月は照れたように言葉を返した。
「飲み物のお代わりはいかがですか?」
リュティアが舞に言葉を投げかける、舞のコップは既に空になっており「あ、いただきます」と舞は言葉を返す。
「‥‥陽一君、それを僕に下さい‥‥」
ジョシュアは龍乃の持つ『おしるこ?』を自分に渡すようにと言葉を投げる。
「あ、うん。はい、どうぞ」
犠牲者は僕一人で十分なんです――ジョシュアは自分の心に言い聞かせて『おしるこ?』を一気に飲み干す。
(何故でしょうね、キメラの攻撃よりも効きますよ、コレ)
軽く意識を失いかけながら、ジョシュアは「生きてるって、素晴らしいですね」と謎の言葉を発し、次の『おしるこ?』を飲み始めた。
「ジョシュなら気に入ってくれると思ったよ」
龍乃の言葉に「そんなに気に入った物ならぜひとも一つ頂きたいですね」と新たな犠牲者――もとい滝沢が『おしるこ?』を飲み、そのままパタリと倒れ「うをををををを」と悶え始める。
しかし龍乃はそんな滝沢を見ても「そんなに美味しかったのかな」くらいにしか考えていないという‥‥。
「‥‥大丈夫でしょうか‥‥」
リズレットは呻く滝沢を見ながら、渡されたお弁当をぱくりと食べていた。
「え〜? そんなに美味しいんなら俺も食べるー!」
黒羽が『おしるこ?』へと手を伸ばし、ジョシュアは(あぁ、また一人犠牲者が‥‥!)と見ている事しか出来なかったのだった‥‥。
「ま、舞さんはお料理頑張ってます? 彼氏さんがお料理上手でも手料理を作ったりすると、喜んでくれますよ」
水無月が舞に言葉を投げかけると「頑張ってるんですけど、中々美味しく出来ないんですよね‥‥」と舞はしょんぼりとしながら言葉を返した。
「お料理は日々の練習ですよ、直ぐに美味しいものが作れるわけではありませんもの」
リュティアの言葉に「そう、ですか‥‥ボク、がんばります」と舞はリュティアの作ってきたサンドイッチを食べながら言葉を返す。
「これは黒羽さんの持って来たドリンクですよね?」
ジョシュアは黒羽が学園で買ってきた謎ドリンクを見ながら呟く。謎、という言葉が確かに相応しい飲み物ばかりが並んでいた。抹茶コーラ、納豆ココア、ゴーヤ青汁、普通に自販機に並んでいたら買おうという者は居ないだろう。
「どんな味かと思えば‥‥意外と普通でしたね」
ジョシュアは飲み終わった空き缶を置きながら感想を述べる。その前に飲んだものが『おしるこ?』だったせいもあり、いくら謎ドリンクといえど、味が霞んでしまっていたようだ。
「ボク、皆さんとピクニックに来れてよかったです」
お弁当を食べながら舞が呟くと「ピクニックは皆がいるから楽しいもの‥‥これだけは確かなものです」と滝沢が言葉を返した。
「リズレットさん、このミルククレープも凄く美味しいです」
舞がリズレットに言葉を投げかけると「‥‥ありがとうございます。美味しいと言ってもらえて‥‥嬉しいです」とリズレットは言葉を返した。
そして、少し離れた所では「――‥‥そろそろ、か」と呟き、吸っていた煙草を消して舞や能力者達が居るところへと向かう。
「あ、すみません」
ちょうど食器などを片付ける所にヴェアデュリスが帰ってきて「我がしましょう」と言葉を投げかけながら舞から皿を受け取る。
「この後は本部に報告にもいかなくてはいけませんね」
滝沢が呟くと「それでは、そろそろ戻りましょうか」と龍乃が言葉を返す。
「また、皆さんで来れるといいですね」
今日は本当にありがとうございました、と舞は丁寧に頭を下げてピクニックに付き合ってくれたことに対してお礼を言ったのだった。
その後、能力者達は片付けを終えた後、キメラ退治の報告のためにLHへと帰還していったのだった。
END