タイトル:イヤァァ( ><)ノノマスター:水貴透子

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/09/25 22:51

●オープニング本文


ネコタマ的に何でこんな事になっているのか、まったくもってさっぱり分かりませんっ!

‥‥というか、凄く手がイタイです!

※※※

「全治三週間!?」

本部に女性能力者の大きな声が響き渡る。

能力者なのだから、多少大きな怪我をするのは変な言い方だが当たり前と言う認識だ。

しかし、ネコタマの場合は‥‥犬型キメラに向かって手を出して噛まれたという何とも間抜けな理由だったりする。

「ネコタマ的に、なついてくれるといいなぁ――みたいな?」

「キメラがなつくわけないでしょ」

「や、でも凄く可愛い犬だったわけですよ。まさかあんな可愛いキメラがいるとは思わなくてですね」

はぁ、とネコタマは大きくため息を吐きながら呟く。

「でも依頼受けてるんでしょ?」

「その辺は大丈夫! ネコタマ的に今回だけは剣を使うですよ!」

ちゃきん、と取り出したのは小型の剣。確かに扱いやすそうなものだけど‥‥。

「ただし、ちょっと心配な事が‥‥ネコタマ、噛まれたのって利き腕だったりするわけですよね」

今回も結構前途多難な依頼になりそうだ――と女性能力者は同行する能力者達に同情するのだった。

●参加者一覧

Innocence(ga8305
20歳・♀・ER
夏目 リョウ(gb2267
16歳・♂・HD
堺・清四郎(gb3564
24歳・♂・AA
ストレガ(gb4457
20歳・♀・DF
ファリス(gb9339
11歳・♀・PN
レヴィ・ネコノミロクン(gc3182
22歳・♀・GD
比良坂 瑞希(gc3826
16歳・♂・FC
ルリム・シャイコース(gc4543
18歳・♀・GP

●リプレイ本文

―― 馬鹿な娘、ネコタマ ――

「こんにちは、ネコタマ的に頑張るので宜しくなのですよ!」
 すちゃっと持ち慣れない剣を持って挨拶をしてきたのはスナイパーの猫井珠子だった。
「やぁ、初めまして。俺は夏目 リョウ(gb2267)、特殊風紀委員をしている。怪我はどう? 今回は宜しく」
 夏目は利き腕で握手を求めかけ、あ、と思い出したように逆の手を差し出す。
「宜しくなのですよ!」
 がしっと握手をした後、夏目の腕をぶんぶんと勢いよく振り回しながらネコタマは言葉を返した。
(片手を怪我した状態で依頼に来るとはな。心意気は認めるが大丈夫なのか‥‥?)
 とりあえず無理はさせないようにしないとな、と堺・清四郎(gb3564)は心の中で言葉を付け足しながらはしゃぐネコタマを見て不安を覚えずにはいられなかった。
「ネコタマさんも相変わらずですねぇ‥‥あ、これでも飲みますか?」
 ストレガ(gb4457)も苦笑しながら呟き、はしゃぐネコタマを落ち着かせる為にミネラルウォーターを差し出した。
「おう、ありがとうなのですよ」
 ネコタマはストレガにお礼を言った後でミネラルウォーターを開けてもらい、まるでビールでも飲むかのように一気に飲み干した。
「ぷはー、やっぱり暑い時にはこれですねぇ」
 ビールでも飲んだような口ぶりだが、彼女が今飲んだのは紛れもない水。
「ネコタマ姉様、お久しぶりなの。お怪我大丈夫なの?」
 ファリス(gb9339)がかくりと首を傾げながらネコタマに問いかけると「大丈夫大丈夫! こんなモン犬にでも噛まれたようなモンだって!」と言葉を返した。
 いや、実際に噛まれたようなモンではなく、犬(キメラだが)に噛まれた傷じゃん――と能力者達は心の中でひっそりとツッコミを入れていた。
「ファリスが姉様の分まで頑張るの。だから姉様は安心してファリス達に任せて欲しいの」
 ファリスの言葉に「大丈夫! ネコタマ的に今日だけはファイターな気分なのですよ!」と能力者達が一気に不安になるような言葉を返した。
「そういえば、スナイパーだって聞いてたけどその剣は――「ネコタマ的にたまには剣で戦うのもかっこよくない? って感じで剣にしてみたですよ」‥‥とっ、とりあえずその心意気はよしだ‥‥」
 夏目は限りなく不安になりながらも言葉を返す。かっこいいから剣にした、何処かの小学生か、お前は! と言いたくなったのはきっと彼だけではない筈だ。
「好奇心猫を殺すとは言うけれど‥‥ネコを苛めるなんて、わんこ、許すまじ! 徹底的にお仕置きしちゃいましょう!」
 レヴィ・ネコノミロクン(gc3182)が拳をググッと強く握り締めながら呟く。
(ネコっぽい奴がいると聞けば猫好きとしちゃぁほっとけねぇよな! と思ってたがただの馬鹿だったか)
 比良坂 瑞希(gc3826)は呆れた視線でネコタマを見ながら小さくため息を漏らした。
「ネコタマだったか? 心意気は買うが、剣なんか持ったって危ねぇだけだぜ。正直足手まといだ。だから今回は周囲の警戒をしてくれ、町民の安全を守る大事な仕事だ」
 比良坂がネコタマに言葉を投げかけると「えぇぇ、ネコタマの剣が火を吹く場面ナシですかぁ?」と文句たっぷりの表情で言葉を返す。
(‥‥っていうか、まず剣は火を吹かねぇんだよ。こいつただの馬鹿じゃなくて厄介すぎる馬鹿じゃねぇか)
「ねこたまさん、がんばっ☆」
 きらきらとした表情でネコタマを見るのはInnocence(ga8305)だった。がんば、という言葉にネコタマも動かされたのだろうか、ネコタマは渋々ながらも警戒を引き受ける事になった。
「挨拶が遅れたな、ルリム・シャイコース(gc4543)と言います、皆さん今回は宜しくな」
 ルリムが挨拶をすると「猫井珠子! ネコタマ的にネコタマって呼んでくれると嬉しいのですよ!」と言葉を返した。
「ネコタマさんに神のご加護があらんことを」
 ルリムはネコタマの胸の辺りで十字を切りながら無事でいられるようにと祝福を施し、能力者達は不安(ネコタマ)を抱えながらもキメラ退治へと出発していったのだった。


―― 所詮は頭の弱いお馬鹿な娘なんです ――

 今回は能力者の人数も多いし、何よりネコタマを孤立させると何をしでかすか分からないという事もあり、能力者達は班を分けずに行動をする事になっていた。
 キメラが現れた場所も小さな町と言う事で捜索はしやすいだろうという事も考えて。
「むぅ、今回も犬キメラ‥‥でもネコタマ的にこの前失敗しちゃったし‥‥」
 むむむ、と唸りながらネコタマが呟いていると「一度で諦めてはいけませんわ?」とInnocenceが言葉を返した。
「ほえ?」
「わんわんさんと仲良くなりますのは試練の道ですの! 怪我したら癒せるようにしてありますので、またわんわんさんと仲良くなりに行きましょう?」
 まだネコタマさんには逆側の手がありますの! と何故かInnocenceはけしかけるような言葉を言っており、それを聞いていた能力者達はネコタマ暴走度が上昇しそうな事に今から警戒を強めていたのだった。
「でもいくら可愛いからと言っても、奴らは獰猛な獣だ。いきなり手を差し出すのは校則違反だな‥‥ほら、昔からよく言うだろ? 飼い犬に手を噛まれる――いだぁっ!」
 夏目がネコタマを諦めさせようと奮闘している中、ネコタマからいきなり手をがぶりと噛みつかれる羽目になった。
「だったらこれも飼い犬に手を噛まれる、ですね! ネコタマ的に!」
 ネコタマは鼻息荒く「ふん」と言葉を付け足す。
「ね、ネコタマさんも落ち着いてください。利き手を使えない状態でネコタマさんが動いては逆に全員が危険な状況に曝される可能性もあります。私達を信頼してくれるというなら、ここは私達に任せてください」
 ストレガが真剣な表情でネコタマに問いかけると「うぅ‥‥」と困ったような表情を見せた。
「キメラは身も心も醜悪な存在。そのような相手と心が相容れる筈がありません。ネコタマさんもその辺を考えた方がいい」
 ルリムの言葉に更にネコタマは唸る声を酷くさせる。
「大丈夫です! 今日はこんなモノも持ってきています」
 Innocenceが猫用と犬用の缶詰を得意げに見せながら話に加わってくる。
「一緒にお食事をしたらきっと仲良しさんですわ♪」
 Innocenceが満面の笑みで呟くのだが、彼女はきっと1つ忘れていることがある。いくらネコタマが猫のような名前だからと言ってもネコタマはれっきとした人間なのだという事を。
「‥‥ネコタマ、別に猫缶嫌いって訳じゃないですけど、ネコタマ的にネコタマは人間なのですよ」
 ネコタマの反論に(嫌いじゃないんだ‥‥)と能力者達は別の方向での驚きを見せていた。
 その時だった。今回の標的であるキメラが現れ、能力者達に襲い掛かってきたのは。


―― 戦闘開始、敵は相手だけに限らず ――

「無用な殺生は本意では無いのですが‥‥」
 ストレガは呟きながらロエティシアを構える。
「現れたな、キメラ獣ポチポチ、行くぞ『騎煌』武装変だ!」
 夏目は叫びながらAU−KVを装着してインサージェントを構えてキメラに攻撃を仕掛ける。
「あわわわ、いきなり現れましたけど! ネコタマ的にどう動けばいいですかね!」
 ぎゃあぎゃあと突然現れたキメラに対してネコタマはパニックを起こしている。
「落ち着け! 武器を構えて敵を確り見ろ!」
 堺の言葉に「はっ、そ、そうですね!」とネコタマは武器を構える。
「うおおおい! 俺は敵じゃない! 喧嘩売ってるのか! お前は!」
 堺に向けて剣を構え、確りと睨みつけるネコタマに堺は怒りを通り越して呆れる思いがした。
「紅変化! 紅夜叉、比良坂瑞希推参!」
 比良坂は叫びながらスキルを使用してキメラとの距離を一気に詰め、脚甲・グラスホッパーによる蹴り攻撃をお見舞いする。
「ハッ! 遅っせぇな! まずは挨拶代わりだぜ!」
 挨拶代わりと言う割には比良坂は確りと攻撃前に挨拶をしていたような気がするのだがそこは気にしないでおこう。
「‥‥‥‥」
 ルリムは覚醒を行った後、スキルを使用して両手に嵌めたマーシナリーナックルで攻撃を仕掛ける。
「まぁ、何て可愛いわんわんさんなのかしら。白いソックスがキュートですわ。利発そうな顔をされてますの‥‥♪」
 Innocenceはうっとりとしたような表情で呟く。利発そうな顔と彼女は言っているけれど物凄く威嚇して唸っているような気がするのは気のせいだろうか。
「ネコタマさん、今ですわ!」
 どーん、とネコタマを突き飛ばしながら「スキンシップなさいませ!」とInnocenceはネコタマに言葉を投げかけた。
「アホかお前はああああああ!! キメラがお手なんぞするかあああ! 指全部失くしたいのかあああ!」
 堺が慌ててキメラとネコタマの間に割って入り、ネコタマが攻撃を受けぬように庇う。
 ちなみにネコタマは突き飛ばされたおかげで前のめりになってよろける事になり、堺にはネコタマがお手を求めて割り込んできたように見えたのだろう。
「ね、ネコタマ的に今の言われ方は理不尽ぽいのですが! ネコタマ的にちゃんと大人しくしてようと砥石で剣を磨こうと思ったのですが! 酷いですよ! 強面おっさん!!」
 何気に酷い事を言っているネコタマなのだが、堺は勘違いと言うこともあり「す、すまん」と言葉を返した。
「こうなったら、ネコタマ的に頑張って‥‥「姉様! 駄目なの! 大人しく自分の持ち場に戻るの!」‥‥ちぇー」
 自分もカッコイイ所を見せようとしたネコタマだったが、ファリスの言葉に口を尖らせながら後ろの方へと戻っていった。
 ネコタマが後ろに戻ったのを確認した後、ファリスもグラーヴェを構えてスキルを使用しながらキメラへと攻撃を仕掛ける。コンボでの攻撃を行い、ファリスの攻撃はキメラに大きなダメージを与える事になった。
「たとえ愛くるしい目で見上げて来ようが、小首を傾げて来ようが関係ないんだから‥‥関係ない‥‥関係‥‥」
 呟きながらレヴィは攻撃を仕掛ける。目の前のキメラに当てはまる事はないのだが、実際にそういうキメラと戦ったらどうしよう、とレヴィは考え、関係ないと言いながらも心は挫けそうな勢いだった。
「てめぇらがいくら可愛さを出しても無駄なんだよ!」
 比良坂は不規則な動きでキメラに次の行動を読ませないように動きまわり蹴りの乱舞を与え確実にキメラの体力を奪っていった。
「生憎これ以上先に行かせるわけには行かないんでね」
 夏目はスキルを使用しながら、ちらりとネコタマを見る。これ以上戦闘が長引けばネコタマが暴走する可能性もある、と考えたのだ。
「行くぞ‥‥くらえ、カンパリオンファイナルクラッシュ!!」
 夏目はスキルを乗せた一撃をキメラへと繰り出し、その攻撃にあわせてルリムも攻撃を仕掛け、能力者達は見事キメラを撃破したのだった。
「浄化完了」
 倒した後のキメラを一瞥した後、ルリムが呟いた。


―― やっぱりお馬鹿なんです ――

「あぁ‥‥私が確りとお世話をするからこの子達を飼いたかったのに‥‥」
 Innocenceは物言わぬ遺体となったキメラを見た後、ネコタマに視線を移しながら悲しそうに呟いた。
「ちょちょい待つですよ、ネコタマは人間! ヒューマン! レディ!」
 Innocenceの言葉にネコタマが反論するが彼女には聞こえていないようだ。
「珠子、スナイパーでも今回のように近接をやらなければならない事あるからコツを教えておこう」
 堺が良かれと思って提案したのだが‥‥「ネコタマ的に断るです」ときっぱりと言葉を返した。
「はぁ!?」
「ネコタマ的に凄く疲れましたし、帰ってゆっくり寝たいですよ」
 ネコタマは大きなため息と共に呟く。ちなみに今回彼女は何もしていない。能力者達の不安を煽るだけ煽っただけである。
「姉様、傭兵さんに怪我は付き物なの。だから、怪我をした時には自分が出来る事をすべきだと思うの。スナイパーさんは剣で戦うのが仕事じゃない、とファリスは思うの」
 だから利き腕じゃない方でも銃が撃てるようにすべきと思うの、とファリスは言葉を付け足す。
「だから帰ったら特訓するの。ファリスが『おにぐんそう』してあげるの」
 名案と言わんばかりのファリスの笑顔に「い、いらねええええ‥‥」とネコタマも引きつった表情を見せた。
「それは良い提案だな。俺も手伝おう」
 堺がまるで怖いお兄さんのような笑顔を浮かべ、参加してくる。
「あ、そ、そういえば大丈夫だったですか? ネコタマ庇って怪我してましたけど!」
 ネコタマは話を逸らすようにレヴィに言葉を投げかける。
「大丈夫かって? 見た通り、痛いわよ。でも自分の失敗のせいで誰かが傷つくよりマシだもの」
 レヴィの言葉に「凄いですねぇ、ネコタマにはマネ出来ないですよ」と言葉を返し(いや。少しは見習えよ)と能力者達は心の中でツッコミを入れた。
「おい、ネコタマ。こっち来い。包帯ゆるんでんな。巻き直してやるからソコ座んな!」
 比良坂がネコタマを呼び、負傷している手の包帯を巻きなおしてやる。
「これでよし、と。帰ったらもう一回病院に行った方がいいぜ。血が滲んでるから」
 比良坂は言葉を付けたし「帰ろうぜ」と他の能力者達に声をかけ、高速艇へと乗り込んでいったのだった。

 その後、任務を終えた能力者達は報告を行う為に本部へと帰還していった。


END