●リプレイ本文
―― キメラ退治に赴く能力者達 ――
「うーん‥‥」
新居・やすかず(
ga1891)は手を握ったり離したりを繰り返しながら小さく唸るように呟いていた。
(勘が鈍っているという程ではないにしろ、どうもしっくり来ない感じが‥‥大規模作戦前だけど、生身戦闘に重点を置いた方がいいかな?)
新居は先ほどと同じ動作を数回繰り返しながら心の中で呟いた。
「今回のキメラは‥‥光を厭う獣、か」
なにやら象徴的だねぃ‥‥と言葉を付け足しながら資料を見つつゼンラー(
gb8572)が呟く。
「夜はゆっくりお休みする時間なの、それを妨げるキメラは許さないの、ファリスが頑張って退治するの」
白銀の髪を靡かせながらファリス(
gb9339)が呟き、言葉を続ける。
「でも‥‥光に弱いなんてキメラらしくないの。もしかしたら闇の中で物凄く強いのかもしれないの。だから、心して戦うの!」
ファリスは拳をきゅっと握り締めながら呟き、キメラ退治への意欲を見せた。
「確かに変だね、それに夜だけ行動するキメラかぁ‥‥皆、不安だろうから、早いトコやっつけて、安心させてあげたいね」
鈴木悠司(
gc1251)も資料を見ながら呟く。夜に行動するという事は住人達も不安で眠れない日々を送っている者が多数存在するという事。
この状況が長く続けば、住人達の緊張の糸が切れるのも遠くはないだろう。
「虎のようなキメラですか‥‥以前にも戦ったような‥‥まぁ、それはともかくこれ以上の犠牲は食い止めないといけませんね」
有村隼人(
gc1736)は資料を見てため息混じりに呟く。彼は住人の安全を一番の最優先事項と考えている。勿論、他の能力者達も同じだと彼も分かっているが、どうすれば最小限の被害で退治できるか、住人に犠牲が出ないように出来るかなどを考えていた。
「ユウは、これが凄く気になるよ」
ユウ・ターナー(
gc2715)は資料のある部分を指差しながら少し怒ったような口調で呟いた。彼女が指したのは『キメラが笑うような鳴き声を発する』という部分。
「何だかバカにされてるみたいでムカつくのっ! さっさと退治しちゃうんだカラー!」
ユウは愛用の特殊銃を構えながらやや興奮気味に叫んだ。
「お、落ち着いてっ! 今ここで興奮しても何にもならないよ」
セシル シルフィス(
gc4302)は興奮するユウを宥めながら言葉を投げかける。
(これが私の初依頼になるけど、キメラがどうこうより‥‥この武器を私が使いこなせるかが問題なのかな? 今の私の手に余る代物だし‥‥)
セシルは自身の武器である暗剣・フェイタリティを見ながら心の中で呟く。
「とりあえず、皆の足手まといにはならないように頑張らないとね♪」
うん、と首を縦に振りながらセシルは大きく深呼吸をして緊張を鎮めたのだった。
(まぁ、今回の依頼は通過点だからな。こんなキメラが俺を殺すなんて考えられないし、それ以前に俺に傷をつけられるか――って話だな)
弓削 一徳(
gc4617)は心の中で呟く。彼は初依頼にも関わらず、リラックスした気分で依頼に挑んでいた。油断している、というわけではないだろうが、彼の態度は自信に満ち溢れている。
「地図も借りたし、そろそろ行くかねぃ」
ゼンラーがオペレーターから受け取ってきた地図を能力者達に見せながら呟く。
今回の能力者達は昼間に目的地へと向かい、昼の間に戦闘を行う場所などを探す事にしていた。
「そうですね、早めに行って色々と情報を集めましょう」
鈴木が言葉を返し、能力者達は高速艇に乗り込んでキメラ退治をする為に出発したのだった。
―― キメラ退治に向けて ――
「キメラを倒せてもお家が壊れたら、街の人が困ると思うの。だから、公園みたいな開けた場所がいいと思うの」
現地に到着し、ファリスが周りを見渡しながら呟く。街は民家が固まっている所とそうでない所の差が激しく、もし民家が固まっている所で戦闘を行ったら――キメラという不安は取り除かれても生活面での不安が新たに出てしまう事だろう。
「そうだね、キメラを退治しても暮らす家が無くなった――じゃシャレにもならないもんね」
セシルはファリスに言葉を返し「何処らへんがいいのかな」とゼンラーから地図を借りて戦闘に適した場所を地図上で探し始める。
「戦う場所もだけド、キメラが潜んで居そうな場所もチェックしておこうよ〜」
ユウも地図を覗きこみながら能力者達に言葉を投げかける。
「そういうのは住人に聞いた方が早いかもしれませんね」
新居がユウに言葉を返すと、ちょうどタイミングよく住人が子供を連れて買い物から帰ってきている姿が見えた。
「こんにちわん! ‥‥すまんが、この街を騒がしているキメラについて聞かせてもらってもいいかねぃ?」
ゼンラーが女性と子供に話しかけると「能力者の人ですか?」と女性が不安そうな視線をゼンラーに向ける。
「そうだねぃ、キメラ退治の為に知ってる事は教えて欲しいのねぃ」
ゼンラーが言葉を返すと「分かりました」と女性は言葉を返し、キメラについて知っている事を全て能力者達に告げた。
昼の間、キメラは昼間でも薄暗い小さな林の中に身を隠しているらしいという事。だけど住人が狙って攻撃を仕掛けるとキメラが逆上して酷い騒ぎになったという事。
今までに襲われた人間達も不意打ちで襲われているという事。
「貴方達も大変でしょうけど、よろしくお願いしますね」
女性が丁寧に頭を下げる。
「うむ。悪い夢は終わりにせねば、ねぃ。お前さんがたがかつての生活に戻れるよう尽力するよぅ」
ゼンラーは言葉を返し、知った事を全て他の能力者達にも伝えた。
それから能力者達は戦う場所を公園へと決め、夜になるのを待ってキメラ捜索を開始したのだった。
今回の能力者達は2つに班を分けてキメラ捜索をする作戦を取っていた。
A班・新居、ファリス、有村、弓削の4名。
B班・ゼンラー、鈴木、ユウ、セシルの4名。
お互いにキメラを見つけたり、何か不審な事があったら連絡を取り合う事を約束して、2つの班はキメラ捜索へと向かい始めたのだった。
※A班※
「さっき、捜索前に林の中を見たらキメラの姿はなかったですね‥‥何処かに移動しているのでしょうが、早めに見つけて退治してしまいましょう」
新居が同じ班の能力者達に言葉を投げかける。そう、能力者達は分かれて行動する前に林の中を見てきたのだが、既にキメラの姿は無かった。
「夜間に光源の無い所も昼の間に調べておきましたし、先ずはそこを先に調べてみた方がいいでしょうか?」
有村が地図を簡易に書き写したものを見ながら呟く。
「そうだな、光がある場所には出ないみたいだから、真っ暗な方から調べた方が効率は良さそうだよな」
弓削も地図を覗き込みながら有村に言葉を投げかける。
「真っ暗だから、足元には気をつけるの‥‥」
ファリスが足元に気をつけながら呟く。民家からの灯りもない場所の為、足元がほとんど見えないというのが現在の状況。
「こういう闇の中で不意打ちで襲って来られると‥‥確かに困りますね」
新居も周囲の警戒を続けながら呟く。
その時だった、B班からキメラを発見して公園に誘導中という連絡を受けたのは‥‥。連絡を受けたA班はすぐさま移動先を公園へと変更して、先に公園へ到着するようにしたのだった。
※B班※
「戦闘の時はなるべく民家を避けられるように捜索しなければならないねぃ」
捜索を開始してゼンラーが呟くと他の能力者達もその言葉に賛同する。民家の近くで戦闘をするという事は必ずと言っていいほどに被害が出るから。
「こういうのってワクワクするねっ♪ BBQとかしたいかも‥‥」
セシルが少し騒がしく言う。静かに捜索するよりも騒いだ方がキメラが自分達を見つけてくれるかもしれないと考えてのことだ。
勿論、不意打ちなどを受けぬようにセシルを含め、全員が警戒を強めている。
「あれ?」
歩いている途中で鈴木がぴたりと足を止め、後ろを振り返る。
「どーかしたの? 悠司おにーちゃん?」
ユウが問いかけると「何か、変な音が‥‥」と鈴木が呟いた瞬間「来ます!」とセシルが叫び、けらけら、という笑い声のような声と共にキメラがB班の能力者達に向かって襲い掛かってくる。
不意打ちでの攻撃は受けたけれど、思ったような怪我はなく、B班の能力者達はA班に連絡を入れて、戦闘場所に予定していた公園へとキメラの誘導を開始したのだった。
―― 戦闘開始 キメラVS能力者 ――
「これを渡しておくの」
A班とB班が合流した後、ファリスが鈴木に閃光手榴弾を渡す。光に弱いキメラならばある程度の効果が見られると踏んでの事だ。
「住人の安心の為に、早々に退治させていただきます」
新居がスキルを使用しながら攻撃を仕掛ける。ペイント弾をキメラへと向け、蛍光色のペイント弾はキメラへと命中し、暗闇の中でも僅かながら位置が確認することが出来るようになった。
そして、公園で戦うにあたって能力者達はランタンや懐中電灯などの光源も要所に置いている。
「ペイント弾の匂いで嗅覚阻害という効果も得られればと思ったんですが‥‥あまり効果は無さそうですね」
残念そうに新居が呟き、再び接近して攻撃をする能力者達の援護を行う為に射撃を開始する。
「とうとう始まったようだな、祭がよ」
弓削は楽しげに呟くとライフルを構えて、キメラを狙い撃つ。
「夜行性の生き物とは、光を嫌うものだったかねぃ‥‥? 記憶にないが、そのように作られたのであれば、なんとも、複雑なものだねぃ‥‥」
ゼンラーはスキルを使用して能力者の武器を強化しながらキメラを見て呟く。
「たとえ、どんなキメラでも‥‥街の人の為に、ここで倒すの!」
ファリスはグラーヴェを振るいながら攻撃を仕掛け、ファリスの攻撃がヒットする間際にゼンラーがスキルを使用してキメラの防御力を低下させた。
キメラ自体は攻撃を避けようとしているのだが、能力者達が腰に下げたりしている光源などのせいで動きが鈍り、完璧には避けることが出来ない状況になっていた。
「3秒後に使うよ!」
鈴木がファリスから渡されていた閃光手榴弾を手に持ち、能力者全員に聞こえるように大きな声で叫ぶ。
鈴木の言葉を聞いた能力者達は離れたり目を庇ったりなどして閃光手榴弾の影響を受けない事に徹する。カウントダウンと共に閃光手榴弾が投げられ、キメラはマトモにその光を見てしまい、ぎゃうん、という犬のような鳴き声をあげたあとに地面を転がり始めた。
「いくよ‥‥」
鈴木はロエティシアを構え、スキルを使用しながら攻撃を仕掛ける。閃光手榴弾の効果もあってか、キメラは攻撃が来る方向すらわからずに鈴木の攻撃を避けることが出来ない。
(全力でいきます‥‥)
有村は心の中で呟き、大鎌・紫苑に武器を持ちかえ、スキルを使用しながら攻撃を仕掛ける。
「流石にそんな状況じゃ笑う事なんて出来ないよネ」
ユウは呟き、愛用の特殊銃をキメラの近くで発砲してキメラに大ダメージを与える。攻撃を避けることも出来ず、マトモにくらったキメラはだんだんと弱っていく様が見て取れる。
「逃がさないよ、キミは此処で倒されるんだから」
セシルは表情から笑みを消し、暗剣・フェイタリティで攻撃を仕掛けた。闇雲に動いたキメラからの攻撃を受けかけたが、セシルはブローディアの盾でキメラの攻撃を防御する。
「化け物め、知るがいい。お招きによってやってきた山猫がお前を滅するとな!」
弓削はライフルを至近距離で発砲し、キメラは衝撃で少し離れた場所に吹き飛ばされる形になる。
「さようなら」
新居がSMG・スコールでキメラを蜂の巣にして、能力者達は無事にキメラ退治を終えることが出来たのだった。
―― 戦闘終了 ――
キメラを退治した後、能力者達は受けた傷の手当などを行っていた。
「やっぱり、戦っていればある程度の勘は戻ってくるね」
新居は自分の手を見ながら小さく呟く。
「何をしているんですか?」
新居がゼンラーに問いかける。戦闘が終わった後、ゼンラーはキメラを埋めてやり供養しているように見えた。
「死んだ後くらい、安らかに、ねぃ‥‥」
手を合わせながらゼンラーが小さな声で呟く。いくらキメラであろうとも命は命。退治しなくてはならないと分かっていても、死んだ後は安らかに眠って欲しいと願ってしまうのだろう。
「‥‥みんなで頑張って、早くキメラのいない世界を作るの。そうしたら、もう悲しい思いはしなくて済むから」
ファリスも少し表情を曇らせながら呟き、空を仰ぐ。真っ黒な空に煌く星々。まるで今の世界のようだとファリスは心の中で思っていた。
「とりあえず、みんな、お疲れ様だね」
鈴木が笑って他の能力者達1人1人にねぎらいの言葉を投げかける。
「これで、住人の不安が解消されると良いのですが‥‥」
「うん、大丈夫だよ。キメラはもう居ないし、みんなもゆっくり眠れるはず」
有村の言葉に鈴木が言葉を返す。キメラが世界から居なくならない限り、確実に不安がなくなる、という事はないのだが少なくとも街の中を徘徊していたキメラは退治したのだから住人達の不安も解消された事だろう。
「早く帰ろう、何かユウも眠くなっちゃったよ」
欠伸をかみ殺しながらユウが呟き「そうだね」とセシルが言葉を返す。
「‥‥少しずつ、でも確実に強くなっていければいいね‥‥」
セシルは小さな声で呟き「どうした?」と弓削が言葉を投げかける。
「何でもないよ、そうだ。今度みんなでBBQとか出来たら楽しそうだねって考えてたところ」
セシルは弓削に言葉を返し、高速艇へと乗り込む。
その後、報告をする為に能力者達は本部へと帰還していったのだった。
END