タイトル:カマ、沈むマスター:水貴透子

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/08/24 23:37

●オープニング本文


いぃぃやぁぁぁぁ!!

何で!?

何でアタシがこんな目に合ってるのよぅ!

※※※

確かにアタシが悪かったわ。

最近暑いわよね?

エアコンがんがん効かせた部屋にいてもいいんだけど、健康に悪そうじゃない?

だからアタシは海水浴に行く事にしたのよね。

泳げないアタシが海水浴行って何になるのかって?

イケメンの素敵な上半身ガン見に決まって‥‥じゃなくて涼しさを求めたのよ!

そうしたら何でかキメラが砂浜にいるじゃない!

だから人がいなかったのね! って誰か教えてくれてもいいと思わない!?

もちろん、砂浜にはアタシ一人‥‥どうすればいいねよ!!

「グォァァァ!!」

「キャアアアアアア!」

週七回のエステで磨きまくっているアタシの肌に傷が‥‥その前に血が‥‥。

血を見た途端にアタシってば気を失っちゃって‥‥とりあえず、これってすっごくピンチよね‥‥?

※※※


騒がしいオカマ、鵺が気を失ったとほぼ同時に能力者達が現地へ到着したのだが‥‥。

予想もしない人物が炎天下で倒れていて、能力者達は大きなため息を吐いたのだった。

●参加者一覧

リゼット・ランドルフ(ga5171
19歳・♀・FT
フローネ・バルクホルン(gb4744
18歳・♀・ER
ブロント・アルフォード(gb5351
20歳・♂・PN
夢守 ルキア(gb9436
15歳・♀・SF
片倉 繁蔵(gb9665
63歳・♂・HG
ラサ・ジェネシス(gc2273
16歳・♀・JG
桃代 龍牙(gc4290
32歳・♂・CA
福山 珠洲(gc4526
21歳・♀・FT

●リプレイ本文

―― 青い空、白い雲、砂浜にカマ ――

「折角の夏の海にキメラですか、ちょっと無粋ですね‥‥サクッと倒して皆で海を楽しみましょう」
 リゼット・ランドルフ(ga5171)は資料を見ながら呟く。
「私は浜辺までしか行かないぞ‥‥」
 リゼットの言葉に冷静に返すのはフローネ・バルクホルン(gb4744)だった。弱点など無さそうに見えるフローネなのだが実は泳げないという弱点が存在しており、その為に彼女は水に近づかないようにしようと考えていた。
「そういえば鵺(gz0250)も来ているという話を聞いたが‥‥まさか鵺は1人でキメラ退治に――‥‥それは無いな」
 フローネは言いかけて、絶対に天地がひっくり返ってもあり得ないことだ、と言葉を付け足しながら呟く。
 しかし、その直後だった。砂浜に無様に倒れる物体――もとい鵺を発見したのは。
「‥‥あそこに見えるのは‥‥鵺か? また‥‥えらい格好で転がってるな‥‥」
 フローネの苦笑しながら呟く言葉に釣られるように他の能力者達も砂浜へと視線を移動させる。
 すると、そこにはまるで漫画のようにうつ伏せで大の字になって倒れている鵺の姿が見えた。
「何故にまたこいつと会わなきゃいけないんだ‥‥」
 心の底からげんなりしたような声で呟いたのはブロント・アルフォード(gb5351)だった。彼自身は『キメラ退治』という事だけを聞いて参加した為、鵺に再び会ってしまった事で気分はブルー急降下である。
「‥‥ふむ、暑いな‥‥」
 片倉 繁蔵(gb9665)は額の汗を拭い、倒れている鵺を見て「‥‥だからか」と言葉を付け足した。どうやら暑さで倒れたとでも思っているのだろう。
「ちょっと待つのでス! 感想言ってないで鵺殿を助けよウ!」
 他の能力者達が口々にそれぞれ感想を言っている中、ラサ・ジェネシス(gc2273)が慌てたように言う。彼女は鵺が今回の任務地に行っているという事を聞いて、スイカを買い、水着も新調してすっかり恋する乙女である。
「そうだね、このままだと日焼けして鵺君が苦しみそうだからね」
 夢守 ルキア(gb9436)もラサの言葉に賛同して、鵺が倒れている所まで向かい、他の能力者達もキメラを警戒しながら鵺の所へと向かい始める。
「ふぅむ、何で民間人がこんな所に倒れているのかはさておき‥‥細すぎるな、こんなんじゃ倒れるのは当たり前だ」
 桃代 龍牙(gc4290)が倒れている鵺を民間人だと思っているのかため息混じりに呟く。
「此処にはキメラが居た筈よね‥‥? それなのに珠洲達が到着した時には砂浜にオカマが気絶している‥‥ど、どういう事なの!?」
 福山 珠洲(gc4526)はやや混乱しているのか、頭を抱えながら現在の状況を必死に受け入れようとしていた。
「うーん‥‥‥イ‥‥」
「鵺殿が苦しそうに何か言ってル!」
 鵺が呻くように呟いた言葉を聞き取る為、ラサが耳を近づけると‥‥。
「イケメン、パラダイス‥‥!」
 何と言う幸せな夢を見るオカマであろうか。
「一体どんな夢を見れば、こんなだらしのない顔になるんだよ‥‥」
 ブロントが苦笑しながら呟く。だが彼がそういうのも無理はない。本当に幸せそうでだらしのない顔で気を失っているのだから。
「そういえば‥‥キメラは‥‥? この周辺での目撃情報が多発しているのに、姿が見えませんね」
 リゼットが周りを見渡しながら呟く。確かにキメラの姿は今は何処にもない。
「ラサ君、鵺君が日焼けしちゃうと痛いじゃない、これ鵺君に使ってあげて」
 夢守がラサに手渡したのは日焼け止め。日焼け後のローションも一緒に渡したのだが、何となく鵺だったら持ち歩いていそうだと思い、夢守は少し笑う。
「とりあえず、急ぎまショウ。キメラが現れたら鵺殿の救出も出来なくなりマス」
 ラサが呟き、覚醒した次の瞬間――海の中からざっぱ〜んと何かが現れる。
「‥‥一つ、聞いてもいいか?」
 桃代が呟き「えぇ、ですが恐らく珠洲も同じ事を思っています」と福山も引きつった笑みで言葉を返す。
 桃代、福山の両名が――そして『それ』を目撃した者が必ずと言っていいほど思うであろう事。
「何故、頭が魚で首から下が人間なのか‥‥という事だろうな。確かに疑問だが‥‥何の為に作られたのかも、わからないが‥‥解決しそうにない疑問だな」
 片倉が『それ』を見ながら呟く。そう、今も片倉が言ったように海の中から現れたのはキメラ――頭だけが魚で首から下は人間という製作者はどんなセンスをしているんだよ、と突っ込みたくなる程のキメラだった。
「とりあえず鵺を連れて後ろに下がるぞ。このまま足手まといを抱えていては勝てる戦いも勝てなくなるかもしれんからな」
 フローネが呟き、鵺救出班であるブロント、桃代、フローネ、ラサの4人は一旦キメラの対処を他の能力者達に任せて鵺を連れて安全な場所まで下がる。

「おい、起きろ。大丈夫か?」
 気を失ったままでは放っておく事も出来ないのでとりあえず意識を復活させよう、とブロントが鵺に言葉を投げかける――数メートル離れた場所から。
(ただでさえ暑いって言うのに、こんな暑苦しい奴に飛び掛られちゃ適わんからな)
 ブロントは心の中で呟く。
「ふむ、どうやら暑さで倒れたわけじゃなさそうだ」
 フローネの言葉に「どういう事だ?」と桃代が言葉を返す。するとフローネは鵺の腕などについている真新しい傷を無言で指差した。
「鵺は血を見ると倒れてしまうんだよ、恐らくキメラと遭遇して攻撃されてそのままばったりと倒れた――そういう所だろう」
 フローネの的確すぎる分析に「血が苦手、なのか‥‥」と桃代は苦笑しながら言葉を返す。
(っていうか、何で血が苦手で傭兵やってるんだよ――ってツッコミ入れたいのは俺だけか? 俺だけなのか!?)
 ブロントは心の中で葛藤するが、此処はツッコミを入れたら負け――という事を本能的に感じ取り、ツッコミを入れる事はしなかった。
「‥‥しかし全く、手間取らせてくれるな。ほれ、起きんか。お主の為に良い男が頑張っておるぞ」
 フローネがため息を吐きながら鵺へと言葉を投げかけるが鵺は一向に起きる気配は感じられない。
「そうダ、念のためにと持ってきていた冷たい麦茶が役に立つ時が来タ! でも気絶してる鵺殿にどうやってお茶を飲ませよウ?」
 ま、まさかマウストゥマウス的な!? と顔を真っ赤にしながらラサはおろおろし始める。
「‥‥!」
「落ち着こう。冷静さを欠けば出来る事も出来なくなるぞ」
 桃代が慌てふためくラサを宥めながら言葉を投げかける。その時、フローネが「成程な‥‥」と呆れたようにため息を吐く。
「お前、起きているだろう。このまま意識をなくした振りをすれば人工呼吸が待ってるわ、なんて思いながら起きているだろう」
 この馬鹿が、と言葉を付けたしながらフローネはばちんと大きな音をたてながら鵺の頬を叩く。それと同時に「いたぁ〜い!」と叫びながら飛び上がるオカマ。
「俺は戦闘班に合流するぞ。止めるな、止めてくれるなよ」
 ブロントは身の危険を感じ、戦闘班へと向かって駆け出す。
「さて、此処ならキメラの攻撃が届く事もあるまい。行くぞ」
 フローネが桃代に声をかけ「ラサと桃代はそのまま鵺を見ていてやれ」と言葉を残し、戦闘班に合流する事になったのだった。

「どうやら、鵺さんの救助は無事に終わったみたいですね」
 リゼットがちらりと横を見ながら呟く。彼女の視界の隅には此方に向かってくるブロント、フローネの姿。2人が此方に向かってくるという事は鵺の事は心配しなくても良い事、と判断をした。
「それじゃ早速キメラにはご退場願おうか。此処で必要なのはプリンセス、君はお呼びじゃないよ」
 夢守はスキルを使用しながらエナジーガンでキメラに攻撃を繰り出す。
「‥‥そうだな、食せぬ魚などに興味はない」
 片倉も短く呟き、フォルトゥナ・マヨールーでスキルを使用しながら前衛で攻撃を行う能力者達の為にキメラに隙を作る。
「大人しく焼き切れろ!」
 福山は炎剣・ゼフォンを構え、キメラの死角から攻撃を行う。間抜けな外見のキメラだけあって、戦闘能力そのものも大した事はないのだろう。派手に攻撃を受け、キメラは派手に苦しんでいるようにも見えた。
「やぁん、もうアタシってば動けなぁい。もうくらくらして死んじゃうわぁ」
 これでもか、と言わんばかりに鵺は桃代に抱きつき、ラサは「ぬ、鵺殿‥‥」とちょっとショックを受けているように見ていた。
「とりあえず、傷を治療するからな――だから治療の為にも少し離れてくれるとありがたいんだが‥‥」
 桃代は苦笑しながら鵺に言葉を投げかけるのだが、肝心の鵺は「アタシはこうしてる方が回復するわぁ♪」と適当な言葉を返す。
「と、とりあえず鵺殿! 倒れていたんだシ、麦茶で水分補給しなくちゃ大変だヨ!」
 ラサが水筒に入れてきた麦茶を鵺に渡すと「ありがとう、ラサちゃん」と頭を撫でながら鵺が礼を言う。
「あぁ、早く戦闘が終わらないかしらぁ‥‥ちょっと暇だわぁ」
 戦闘をしている能力者達を見ながら鵺がため息を吐く。命をかけて戦っている能力者達が聞いたら怒る者も出てくるのではないか、と思える発言だったが、鵺なら、恐らくそれを怒る能力者はいない。
 何故なら、言ったのが鵺だからという何とも理解し難い理由で、なのだが。
「‥‥行くぞ‥‥」
 片倉はスキルを使用しながら射撃を行い、前衛能力者の手助けを行う。
「私も行くよ、早く退場してもらって皆で楽しく遊びたいね」
 夢守も呟きながら攻撃を繰り出し、リゼットがキメラに近づきながらスキルを使用する。その攻撃にキメラはノックバックさせられたかのようにバランスを崩され、次いでやってくるリゼットの攻撃を避ける事が出来なかった。
「お前が居なければ、俺がこの依頼を受ける事もなかった――つまり、あの変態カマと会う事もなかったんだ‥‥斬らせてもらうぞ」
 ブロントは怒りを交えた口調で呟き、スキルを使用しながら蛍火と雲隠を振るってキメラへ攻撃を仕掛けた。夢守や片倉の射撃によってキメラには隙が出来ており、攻撃してから離れるには十分すぎるほどの時間があった。
「運が悪かったな。しかしその不運さを嘆く事もないだろう、お前はもう死ぬのだからな」
 フローネはスキルを使用し、能力者達の武器を強化し、キメラの防御力を低下させる。
「さようなら――‥‥」
 リゼットが呟きながら攻撃を繰り出し、彼女の攻撃に続くようにブロントも攻撃を行い、キメラを無事に退治する事が出来たのだった。


―― 楽しい海 ――

 キメラを退治し終わった後、折角の海という事もあり能力者達は少しばかり遊んでから帰る事にしていた。
「海の家のご主人には施設を使ってもいいって返事を貰ってるし、食事とかは任せてくれ」
 桃代が持参してきた食材を持ちながら海の家へと入っていく。
「はぁ、終わった‥‥」
 ブロントが珈琲を飲みながら息を吐いていると、桃代が突然肩を抱いて三回ほど叩いてきた。
「暇そうだな、暇なら少し手伝ってくれないか?」
 桃代の行動はロシア風の挨拶兼ボディチェックでもあり、女性にしたらせくはらになりそうな行動である。
「え‥‥めんど「いやぁん、イケメンばっかりだわぁ! アタシすっごく嬉しい!」‥‥手伝おう、息を吐く暇もないくらいに手伝おう」
 最初は断ろうと思っていたブロントだったが、嬉々(鬼気とも言う)として叫ぶ鵺の声を聞いて手伝う事を決意した。
「ビーチバレーにスイカ割りとか楽しみですね♪」
 セパレートタイプの水着を着用したリゼットがラサの持つボールとスイカを見て楽しそうに微笑む。多少日差しが強いけれど、海で泳いでいるうちに暑さなんて忘れるだろうとリゼットは心の中で言葉を付け足した。
「あぁん、汗でメイクがぐちゃぐちゃだわぁ‥‥」
 鏡を見ながらがっくりと肩を落とす鵺に「こういう所でメイクはいらん。それに水着はどうするつもりだ?」とフローネが言葉を投げかける。
「勿論、ラメ入りのビキニを買ってきたわよぅ」
「‥‥女物の水着はお主にとって不利益にしかならん。いい男が欲しかったら‥‥これだ。コレを着て筋肉質な男の所にいけば人気になるのは受けあいだぞ」
 フローネが差し出したのはブーメランな水着。
「あ、これは私からだよ」
 夢守が差し出したのは上半身の大事な所を際どく隠すトップス。何故に15歳の少女がこんな際どいトップスを持っているのか多少鵺は疑問に思ったが「ありがと!」と素直に受け取る事にしたのだった。
「わ、我輩も今日の為にDカップに見える勝負水着を用意したのダ! それにこの浮き輪、大人用でお洒落だから鵺殿も泳げるよ」
 ラサが差し出した浮き輪を受け取り「きゃあ☆ これでアタシも波間を漂えるのね!」と嬉しそうに受け取った。
「そうだ、これを貴方にあげようと思ってたのよぅ」
 鵺が自分の荷物からある物を取り出し、それをラサに渡す。黄色いリボンと大きな向日葵の飾りがついたキャスケット。
「いつも帽子被ってるし、貴方に似合うと思って買ったのよ」
 この言葉はラサにとってクリティカルヒットである事間違いなしだろう。
「あ、アリガトウ、ゴザイマス」
「さ、皆で遊びましょ!」
 鵺は立ち上がり「筋肉質な男性って貴方ねぇ!」と桃代に抱きつき、料理の邪魔をしている。
「うわ、危ないから離してくれ!」
「‥‥それ以上近寄ったらマジでボコるからな‥‥」
 桃代、ブロントはそれぞれ鵺に対して言葉を投げかけるのだが‥‥それを聞く鵺ではない。
「‥‥静かで良いな、と思いたいが騒がしいな‥‥孫達と一緒に来た時は大抵混雑していたし、その時に比べればマシだが‥‥元気にしておるだろうか‥‥」
 片倉はぎゃあぎゃあと騒ぐ能力者達とは離れた所に腰掛け、空を見上げながら少しさびしそうに呟いた。

 その後、桃代の作ったジンギスカン、焼きそば、たまご焼きなどの料理を食べ、ラサの持って来たスイカでスイカ割りを楽しみ、ビーチバレーなどをして夏を満喫する能力者達であった。
 しかし、鵺は帰りの高速艇の中で片倉によって熱中症の恐ろしさを延々と聞かされ、注意するように言い聞かされていたのだった。


END