●リプレイ本文
―― カマにも色々あるようです ――
「さぁ、今回も頑張っちゃいましょう!」
ぐ、と拳を強く握り締めながら普段は全く戦わない報酬泥棒の鵺(gz0250)が今回一緒に任務を行う能力者達に声をかけた。
「お久しぶりですね。ふふ‥‥あれから良い人を見つける事は出来たでしょうか?」
石動 小夜子(
ga0121)が鵺に話しかけると「まだよぅ! でもアタシ諦めないんだから!」と別な意味で気合が十二分に入っているようである。
「今回も素敵な殿方が何人もいらしてますもの、鵺さんのお眼鏡に叶う人が居るのではないですか?」
石動はそこまで呟くと暫く考えこみ「た、拓那さんはダメですよ」と焦って言葉を付け足した。
「あらあらぁ、ラブラブなのねぇ‥‥羨ましいわぁ‥‥」
はぁ、と鵺は羨ましそうに石動と新条 拓那(
ga1294)を見て呟く。
「今回もご一緒できて嬉しいです」
石動が新条に声をかけると「俺も嬉しいよ」と2人の世界に入りつつあった。
「あ、そうそう。この仕事終わったら皆でパーッと騒ぎましょ。嫌な事あった後なら尚更ね。どうかな? 鵺く‥‥えと、ちゃん?」
新条が呟くと「あら、いいわねぇ!」と鵺も大賛成のようだった。
「それに6月20日は鵺くんの誕生日だろう? 皆でお祝いしようじゃないか」
夢守 ルキア(
gb9436)が他の能力者達にも声をかける。
「誕生日か‥‥祝ってもらえて羨ましいですね」
ボクの周囲では覚えてる人すらいませんでした、とビッグ・ロシウェル(
ga9207)が自嘲気味に呟き「まぁまぁ、次からはアタシが祝ってあげるわ! もちろん、二人っきりで、きゃあ♪」と鵺が言葉を返してくるので「いえ結構です」とビッグは即座に応えたのだった。
(家族、か‥‥置いてきた何かがありながら、新しい人生を歩もうとしている鵺は強い、な)
クアッド・封(
gc0779)は心の中で呟きながら鵺を見る。
「んまぁ! 何か熱い視線を感じると思ったらあなただったのね! アタシを嫁に貰っちゃう!?」
鵺はさりげなく「俺を嫁にもらえや、ゴルァ」という意味の言葉を投げかけるがクアッドは「‥‥遠慮しておく」と視線を逸らしながら言葉を返した。
「ふぅ、戦場に立つのは久しぶりですが‥‥手早く終わらせれば身体に無理をさせる事もないでしょう。不用意に私の身を案じさせる事もないでしょうし‥‥」
無理せず戦おう、八葉 白夜(
gc3296)が小さく言葉を付け足しながら呟く。現在は通常生活に支障がないとはいえ、彼は病弱であり、あまり無理を出来ないでいた。
「そういえば挨拶を忘れていました。初めまして、美しいお嬢さん。八葉白夜と申します。この世界に身を投じてからまだ日が浅いため、ご迷惑をおかけすると思いますが何卒宜しくお願いします」
丁寧に挨拶をする八葉に「きゃあ! あたしは鵺よぉ♪」と嬉しそうに言葉を返す。美しいお嬢さん、といわれた事が凄く嬉しかったのだろう。
(弟を探しているのだけど、少しぐらい寄り道してもかまわないわよね)
南 星華(
gc4044)は心の中で呟く。そして「それに」と言葉を付け足して鵺を見る。
「あの鵺って子、何か気になるのよね」
南は小さく呟き「こんにちは、今回は宜しくね」と一緒に任務を行う能力者達に挨拶をしたのだった。
「今回のキメラは鳥さんなんだよねっ? 高所から襲ってくると厄介だし‥‥なるべく地上におびき寄せた方がいいよね」
ユウ・ターナー(
gc2715)が呟くと「そうですね」と石動も言葉を返す。
「それじゃあ、いきましょうか! 早くキメラなんて倒しちゃって皆で楽しく騒ぎましょ♪」
鵺が能力者達へと言葉を投げかけるのだが、普段まったく戦わない鵺が言っても全く緊張感を感じることが出来なかった――というのが能力者達の心の本音だったりするのだけれど。
そんな本音など能力者達は隠して、高速艇に乗り込んでキメラが徘徊する場所へと出発していったのだった。
―― 無人の町でキメラ捜索 ――
能力者達はそれぞれ役割分担をしてキメラとの戦闘に備えていた。
石動と新条は射撃をしやすい場所にキメラをおびき寄せる為の餌を仕掛ける囮仕掛け役。
ビッグは釣具屋で投網を探し、キメラが餌に釣られたのを確認すると投網を投げてキメラの飛行能力、そして逃げない為に足止めする為の役を受けている。
そして鵺の護衛にはクアッドがつく事になっていた。鵺としては「きゃあ! 危険スリルな恋の始まりだわぁ!」と楽しそうに騒いでいる。
「そうそう、ブラッドソーセージを用意してるからこれを餌に使う?」
夢守が仕掛け役の新条と石動に渡し、鵺に聞かれないように「そういえば鵺くん、何かあったの? いつもとなんか少しだけ様子が違うみたいだけど」と石動と新条に問いかける。
「あぁ、実は‥‥」
鵺と鵺の兄である竜一とのやり取りを見ていた2人は、簡単にだけれど起きた出来事を夢守へと教えた。
「‥‥そうだったんだ‥‥何か無理に明るく振舞っているような感じがしたからおかしいなとは思ってたんだけど‥‥」
夢守が呟き、鵺を見る。相変わらずきゃあきゃあと騒がしい鵺だが『男』である自分を出すほどに兄に食って掛かったのだ。よほどの確執が鵺と家族の間にはあるのだろうと思う。
「あのビルとか結構良さそうな感じだよね」
ユウが近くに見える高いビルを指差しながら呟く。
「あぁ、確かに‥‥あそこのビルの下に餌を仕掛けてキメラをおびき出そうか」
新条が言葉を返し、仕掛け役の石動と新条だけ下に残り、他の能力者達はそれぞれ自分に適した場所へと移動を始める。
「んー、ボクは投網を調達してきますんで! 調達した後は屋上にそのまま直行します」
ビッグが能力者達に言葉を投げかけ、そのまま町の釣具屋へと向かって走っていった。
「鵺くん、GoodLuckの使用をお願い。あと餌を仕掛けるなら風上に仕掛けたらどう? 臭気も広がるよ」
夢守が鵺、石動、新条に言葉を投げかける。
「判ったわ! アタシに任せて。スキル使っちゃうわよ!」
鵺がきゃあきゃあと騒ぎ立てながら言葉を返す。
「風上ですか、わかりました。それでは拓那さん‥‥行きましょうか」
石動が新条に言葉を投げかける。移動する前に石動は目立たない色の布をかぶる。キメラに簡単に見つからないようにという対策だった。
そして石動と新条が餌を仕掛けに向かった後、ユウと夢守はビルの2階でいつキメラが来ても良いように準備をしていた。
「ふぅ、間に合った‥‥」
ビッグは屋上へ続く階段を上りながら呟く。幸いにもビルからそう遠く離れていない場所に釣具屋があった為、ビッグは予想よりも早くに屋上へと到着する事が出来た。
「あまり、無駄に騒がないようにな。キメラに気づかれて怪我をするのはいやだろう?」
クアッドが鵺に言葉を投げかけると「それは嫌だわ! せっかくエステでつるつるになったお肌なのに!」と言葉を返してくる。
その時だった。仕掛け班からキメラが現れたと通信が届く。攻撃を仕掛ける為に身を隠していた能力者達に緊張が走る。
「敵は‥‥まだ此方からは見えない。小夜ちゃんの方はどう?」
「此方からは確認できます――あ、来ます!」
石動の言葉と同時にキメラが仕掛けられた餌のほうへと降下をはじめて興味深そうに匂いを嗅ぎ始める。
「投げます!」
ビッグが叫び、投網をキメラめがけて投げる。それと同時にビッグも飛び降りる。突然降って湧いた投網にキメラが驚き、そのキメラの上に乗るような形でビッグがキメラを地面へと蹴り付ける。
それを合図に他の能力者達も攻撃を開始する。夢守はユウにスキルを使用して武器の強化を行う。
「当たれ――――ッ!」
ユウは大きく叫びながらスキルを使用して鉛弾の雨を浴びせる。
「私も行きます」
八葉が呟き、スキルを使用しながらキメラとの距離を詰めて「その翼、頂きますよ」と呟きながら攻撃を仕掛ける。その攻撃の後、キメラが八葉に攻撃を仕掛ける――が八葉はひらりと攻撃を避ける。
「‥‥遅いですね。我が身を仕留めるには些か不用意です」
八葉が呟いた時「あなた、八葉君に何してるのよ」と南が二刀小太刀を構えながらキメラへと言葉を投げかける。
「優しく殺してあげるつもりだったけど、予定変更するしかないのかしらね」
南は呟き、笑顔のままキメラへと攻撃を仕掛ける。その攻撃に一切の躊躇いは見受けられない。
「其方ばかり気にして、此方の注意が疎かになってますよ」
石動が呟きながら攻撃を仕掛ける。しかしキメラはその攻撃を避ける――が、待ち構えていた新条の攻撃によって地面へと叩き伏せられてしまう。
「きゃあああ! 血が出てる‥‥う〜ん‥‥」
能力者達が戦う姿を見て、鵺は呟きながら意識をなくす。
「‥‥‥‥血が苦手で傭兵やってられるのか‥‥?」
クアッドは素朴な疑問を口にしたけれど鵺は意識を失っている為に言葉が返ってくる事はない。
そしてユウの援護射撃でキメラは動く事が出来ず、能力者達の総攻撃を受けてキメラはそのまま沈んでいったのだった。
―― 鵺のお誕生パーティー ――
「こんにちは、おねにーさま!」
キメラ退治を終えた後、鵺のスキルで他に敵の気配がないかを確認し、大丈夫だと言った所で鵺の妹、ツバメがやってくる。今回のキメラ退治の後のパーティーに誘ってみてはどうかとビッグが鵺に言い「いいわねぇ!」と意気揚々で電話をしていたのだ。
「あれ、お兄さん達は?」
「ごめんなさい、お兄様たちは‥‥その、用事があってこれなかったの」
ツバメのしどろもどろな言葉に恐らく用事ではなく本人達が「いかない」とでも言ったのだろうと簡単に予測が出来る。
「ふふ、鵺さん。少し早いですけどお誕生日おめでとうございます。祝いの席ですし、押してダメなら押し倒せという格言もありますもの、ここは積極的に当たってみるのもいいと想います」
石動の言葉に男性陣は「やめてくれ」という気持ちでいっぱいだった。恐らく鵺は別な意味での押し倒せを実行してきそうだと考えたからだ。
鵺の誕生パーティー、それはバーベキューをする事になっており能力者達は肉と野菜を準備して楽しそうに騒いでいた。
「ふぅ、アタシの王子様はいつになったら来るのかしらぁ‥‥」
「運命の女神様なんていつだって気まぐれだしね、とりあえず今を笑う事が出来ればそれだけでなんてーか、勝ち、でしょ?」
新条の言葉に「そう、ね。少なくともアタシは今楽しいからいいかもしれないわ、王子様は来ないけどね!」と笑って鵺も言葉を返す。
「ハッピーバースデー! はい、これプレゼント」
夢守が呟きながら鵺の右手薬指にスピカの指輪を嵌めてくる。
「きみの誕生日月の守護石、パール。左手の薬指は、愛する人と、だね」
悪戯っぽく笑いながら夢守が言葉を続けると「ありがとう!」と鵺は嬉しそうに言葉を返した。
「‥‥‥‥幸せそうだな、鵺」
クアッドが鵺に言葉を投げかける。
「えぇ、幸せに決まってるじゃない! 何の見返りも求めず、何もこびず『アタシ』の為にここまでしてくれるんだもの‥‥今までなかった事だから凄く幸せ」
鵺は何処か遠くを見るような視線で呟く。
「ハッピーバースデー! 鵺おねにーちゃん! ユウはハーモニカでの演奏をプレゼントするよ!」
ユウは呟いた後にハーモニカで演奏を始める。
「そうそう、折角のバーベキューですので鰻を焼きますよ。私の友人が名産地側に住んでいるので‥‥白焼きを送っていただいたのですよ」
八葉は呟き、鰻を網の端で焼き始める。
「ねぇ、ツバメちゃん――あなたのお母様は、お父様を愛していたのかしら?」
南がツバメに話しかけると「‥‥判りません」と俯きながら言葉を返す。
「私のお母様と鵺おねにー様たちのお母様は違う人なんです。だから、私は鵺おねにー様達のお母様を知りません――何があったかも、聞くことが出来ません」
明るく振舞う鵺を見ながらツバメは哀しそうに呟く。
「鵺さん、あなたに何があったか僕にはわかりません。でも‥‥家族が亡くなって、哀しくない人なんかいないと想います」
ビッグが鵺に言葉を投げかけると「‥‥でもね」と鵺がビッグの顔を見ないまま言葉を返してくる。
「子供を愛さない母親なんていないって言うでしょう? でもあれは嘘なのよ、世の中には子供が可愛くない母親だっている――それと同じでたとえ自分の母だろうが妻だろうが、亡くなっても悲しまない人間は存在するのよ」
鵺の低い声はいつもの鵺らしくない言葉であり、もしかしたら今の鵺こそが本来の彼なのではないだろうかとビッグは心の中で呟く。
「鵺くん、キミはキミ。自分の人生しか生きれない。もしかしたら竜一君は鵺君が羨ましいのかもしれないよ? 伸び伸び生きているように見えるから」
夢守の言葉に「そうかもしれないわ、でもアタシが生きてきた人生の中であの2人の人間らしさなんて見たことはなかったわ。だからあいつらに従う竜二も嫌い」と言葉を返す。
「鵺くん、家族を大切にしなさい。生きていればこそケンカも出来るのよ」
南が鵺に言葉を投げかけると「家族、ねぇ」と鵺は自嘲気味に呟く。
「アタシにとっての家族はもういないもの。死んだ母さんだけがアタシの家族だったわ――ってごめんなさいねぇ、何かくら〜い雰囲気になっちゃったわぁ!」
あは、とおどけたように笑いながら鵺は「ん〜、この鰻美味しい〜!」と鰻を頬張りながら大きく叫ぶ。
「ねぇ、ビッグくん? 何か視線を合わせようとしないわよね? 何かあるのかしら? 少しお話を聞かせてもらえる?」
にっこりと南がビッグに話しかける。その時のビッグには戦慄が走った――彼女の手に持たれているクッキーを見て。
その後、ビッグは遅れて鵺のプレゼントを買うという名目でツバメと買い物にいったのだが、何故か途中で鵺が乱入してきて「婚約指輪買っちゃいましょうよぉ!」と無理矢理3人おそろいの指輪を買わされてしまったのだとか‥‥。
END