タイトル:報いマスター:水貴透子

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/06/16 01:52

●オープニング本文


あの子は言った。

死んでしまえ――と。

あの時のあの子の表情、俺は忘れる事が出来ない‥‥。

※※※

それは2週間ほど前の出来事だった。

俺は仲間達と一緒に小さな町に現れたキメラを退治すべく、その町へと赴いた。

結果、キメラは退治する事が出来た――けれど。

戦いの最中に一人一般人男性が襲われて死んでしまうというアクシデントが起きてしまった。

「パパぁ! パパ! ねぇ、起きてよ‥‥パパぁ!!」

戦闘が終わった後、その男性の元へと駆け寄ってきたのはまだ10歳ほどの女の子だった。

他の住人から聞けば、少女の母親はキメラに殺されたらしく身寄りは父親しかいないらしい。

「何でパパが死ななくちゃいけないの! 何で、お兄さん達は助けてくれる為にきたんじゃないの!?」

大きな声で叫んだ後「あんた達なんか死んでしまえばいい!」と瞳に沢山の涙をためながらひときわ大きな声で叫んだ。

きっと、あの子の言う通り俺はいつか死ぬだろう。

だけどそれは報いなのだと思う、助ける事が出来なかった人たち――その報いをいつか俺は受けるだろう。

●参加者一覧

ファリス(gb9339
11歳・♀・PN
ライフェット・エモンツ(gc0545
13歳・♀・FC
天小路 皐月(gc1161
18歳・♀・SF
天原 慎吾(gc1445
16歳・♂・FC
ラサ・ジェネシス(gc2273
16歳・♀・JG
和泉 澪(gc2284
17歳・♀・PN
赤月 腕(gc2839
24歳・♂・FC
ミリハナク(gc4008
24歳・♀・AA

●リプレイ本文

―― 能力者としての葛藤 ――

「今回は宜しく‥‥」
 何処か憂いた表情のファイター、洋二が一緒に任務へ赴く能力者達へと挨拶をする。
「みんな、今回は宜しくなの!」
 洋二に続いて挨拶をしたのはファリス(gb9339)だった。
「街の人を怖がらせて困らせるキメラはファリスが退治するの!」
 ぐ、と拳を強く握り締めながらファリスが言葉を付け足した。
「宜しくー‥‥ってどうしたのー?」
 ライフェット・エモンツ(gc0545)が顔色の悪い洋二に問いかける。最初はその理由を言うのを躊躇う素振りを見せた洋二だったが「実は‥‥」と自分が2週間前に経験した出来事を能力者達にか細く小さな声で告げたのだった。
「洋二さん‥‥未熟な身で生意気を言うかもしれませんが、能力者は神様じゃありません。あまり思いつめると任務にも影響が出てしまいますよ‥‥?」
 天小路 皐月(gc1161)が洋二に言葉を投げかける。本当ならば別の言葉を投げかけたいのだが、今はそんな雰囲気ではない為、とりあえず任務のことを最優先として洋二へと言葉を投げかけた。
(2週間前の出来事のせいだったのかな、洋二さんの雰囲気が気になるなって思ったのは‥‥)
 天原 慎吾(gc1445)が受け取った地図を見ながら心の中で呟く。最初に洋二を見た時から天原は彼の様子がおかしい事に気がつき、気になっていたのだ。
 勿論、それは天原だけではなく今回の任務に集まった能力者全員が洋二の様子がおかしい事に気がついていたのだけれど。
「‥‥守れなかっタ‥‥我輩も救えなかっタ‥‥洋二殿‥‥貴方と同じでス」
 ラサ・ジェネシス(gc2273)が俯きながら洋二へと言葉を投げかけた。すると洋二は少し驚いたように目を丸く見開いた後、再び目を細めて「そうなのか‥‥」と言葉を返した。同じ気持ちを知っているからこそ、何と言葉を返していいのか洋二はわからなかったのだろう。
「洋二さん、ラサさんも‥‥あまり無理はしないでくださいね?」
 和泉 澪(gc2284)が不安気な表情で言葉を投げかける。彼女は初めての任務という事もあり、緊張は任務に慣れた能力者の倍以上感じていた。
(初めての依頼、上手くいくかなぁ‥‥)
 自分が初任務な事、そして気がかりな洋二のこと、色々と考える事が多すぎて和泉は少しだけ小さなため息を漏らしたのだった。
(死にたがり‥‥か)
 赤月 腕(gc2839)は洋二を見ながら心の中で呟く。虚ろな表情、それは守れなかった辛さから死にたいと願う人間のものだった。恐らく今の洋二は『能力者』ですらないのだろう。
「さて、どうしたものかな」
 ジンジャークッキーを食べながら赤月は小さく呟いた。
「初依頼に挑戦よ、手に入れたこの力を振るえるのが楽しみだわ」
 ミリハナク(gc4008)は双斧・パイシーズを手にして緊張というより、何処か楽しげな表情で呟く。
「でも無理はしちゃダメなの。みんなで協力してキメラ退治するの」
 ファリスがミリハナクに言葉を返すと「大丈夫よ」と言葉を返した。
「自分の未熟さは自分が一番わかってるわ。独走したり暴走するような事はしないから安心してちょうだい」
 ミリハナクが言葉を返すと「ん、みんなで協力すればキメラなんて倒せるの」とファリスもにっこりと微笑んで言葉を返したのだった。
「それじゃ、そろそろ出発するー? キメラが現れたのは小さな町らしいけど夜になったら色々と不便だろうしね」
 ライフェットが呟き、能力者達は暗くなる前に任務を終わらせる為、高速艇に乗ってキメラが徘徊する目的地へと出発したのだった。


―― 小さな町に現れた危険物 ――

 今回の捜索場所は小さいとはいえ町の中。だから能力者達はそれぞれで班を組み、東西南北を調べていく事にしていた。
 南側・ファリス、和泉の2人。
 北側・天小路、ミリハナク、洋二の3人。
 西側・赤月、ラサの2人。
 東側・ライフェット、天原の2人。
 それぞれ何かあったらトランシーバーで連絡を取り合う事にして、東西南北のそれぞれで戦闘に適した場所を決めて能力者達はキメラを見つける為に動き始めたのだった。

※南側※
「南側はこの辺が戦いやすいと思うの」
 ファリスは地図を見ながら和泉へと言葉を投げかける。すると和泉も地図を覗き込んで考え始める。
「あぁ、確かにそうですね‥‥此方も戦いやすいと思いますけど住宅地が近くにあるので、周りに何もない此方の方が戦闘はしやすいと思います」
 お互いの意見が一致した所で2人は捜索を開始する。和泉は初めての任務という事もあり、余計に緊張して周りを常に警戒する。
「あ」
「え? キメラがいましたか?」
 和泉がファリスに問いかけると「ううん」とファリスは少し先を指差しながら言葉を返してきた。指された先にあるのは公園と踏み荒らされた花壇だった。此処でももしかしたらキメラの被害があったのかもしれない。綺麗に咲いている筈の花はぐちゃぐちゃになっていた。
「酷いですね‥‥早くこんな事がないようにしたいです」
 和泉の言葉に「うん」と言葉を返し、2人は再びキメラ捜索を開始したのだった。

※北側※
「‥‥‥‥」
 天小路とミリハナクは洋二と共に北側を捜索していた。
「洋二さん、其方じゃなくて此方ですよ」
 洋二がふらりと何処かに行きそうになると天小路が言葉を投げかけ、他の方へ行かないようにする。
「洋二さん、先ほども言いましたが‥‥皐月はまだまだ未熟な身ですが、思いつめないで欲しいと思います。皐月たちの力は、皆を守る為、助ける為の力だと思います。でも皐月たちは神様じゃありません」
 天小路の言葉をミリハナクと洋二は口を挟むことなく黙って聞いている。
「どうしても避けられない事も起こります。それを繰り返さない事が大事で、哀しい思いをする人を出さないようにする事こそが手向けになると思います」
 生意気ですみません、と言葉を付け足して天小路が洋二を確りと見据える。
「貴方は何の為に此処に来たのですか?」
 ミリハナクの言葉に洋二がびくりと肩を震わせる。
「私達はキメラを倒す為に来ています、でもそのご様子ですと貴方は他の理由で来たようにも見えますわ」
 ミリハナクの言葉に「‥‥何が言いたいんだ」と洋二が言葉を返すと「まるで死ぬのを待っているみたいに見えます」と天小路が呟く。
 そしてその言葉が図星とでも言うかのように洋二は表情を強張らせた。
「ちょっと待ってください、どうやらキメラが発見されたようです」
 ミリハナクが他の能力者達からの通信を受け、洋二と天小路に言葉を投げかけ、キメラが見つかった場所へと向かい始める。


※西側※
「洋二殿は大丈夫でしょうカ」
 ジーザリオで移動しながらラサがポツリと呟く。赤月は覚醒を行っているので言葉を返す事は出来ないけれど、彼もやはり洋二のことを気にはしていた。
(死んで報いる、か‥‥恐らくあの様子だと死を望んでいるのは間違いないだろうな)
 赤月は心の中で呟く。だから余計に戦闘中は気にかけなければならない存在だ。
「あ、あれハ‥‥!」
 ラサが呟き、ジーザリオを停める。赤月もラサと同じ場所に視線を移すと翼の生えた人――いや、キメラを発見した。
「此処からなら‥‥空き地が近いですネ」
 ラサと赤月は地図を見ながら呟く。そしてジーザリオから降りるとそれぞれ空き地へ誘導するために武器を構える。赤月はハンドサインを行いながらキメラの前へと姿を現す。
 すると2人に気づいたキメラは手に持っていた剣を構えてラサと赤月めがけて走り出してくる。
「どうやラ飛ぶ事はできないヨウですネ」
 ラサは此方に向かってくるキメラの姿を見ながら呟き、赤月も首を縦に振る。
「此方西側のラサでス。キメラを発見しまシタので、空き地に誘導シマスので宜しくお願いシマス」
 ラサはトランシーバーで他の班に連絡を入れると、赤月と一緒に空き地へと誘導を開始したのだった。

※東側※
「えっと‥‥地図ってこう読むのかな?」
 おろおろとしながら天原が地図を見ながらキメラ捜索を行う。この時点ではまだキメラは発見されておらず、天原はペアのライフェットと一緒にキメラ捜索を行っていた。
「天原さん、地図の向きが逆だよー」
 ライフェットのツッコミに「あぁ!」と天原は地図を逆に読んでいた事に気づく。
「だからいまいち今の場所と地図がかみ合わなかったんですね」
 いけないいけない、と呟きながら天原は地図をくるりと回して本来の読み方で見る。
「急に、出てくるかも‥‥気をつけようね」
 ライフェットが警戒しながらキメラを捜索し、天原に言葉をかける。
「そうですね、遮蔽物からいきなり出てきたりとかありそうですし‥‥気をつけましょう」
 天原が言葉を返した時、ラサからの通信が入り、キメラを発見して空き地へ誘導するという連絡がきた。
「急いで向かいましょう!」
 天原が呟き、ライフェットと共に町の南側へと向かって走り出したのだった。


―― 戦闘開始・能力者 VS キメラ ――

 キメラを発見したラサと赤月は無事にキメラを空き地へ誘導して他の能力者達が来るまで牽制攻撃を続けていた。
 ラサと赤月が空き地へ到着してから十数分が経過した頃、他の能力者達も到着して戦闘を開始したのだった。
「キメラは、許さないの」
 ファリスは呟き、スキルを使用しながら攻撃を仕掛ける。
「肩、狙います」
 ライフェットは呟きながら弾頭矢をつがえた和弓・月雪花で攻撃を仕掛ける。それと同時に天原も刀を構えて「翼を狙います‥‥!」と呟きながら攻撃を仕掛けた。ライフェットの攻撃に気を取られていたせいか、キメラは天原の攻撃を避ける事が出来ずに翼に大きなダメージを受ける。
「もう一発いきます」
 ライフェットは二つ目の弾頭矢を使い、キメラへと攻撃を仕掛ける。
「強化します! 怪我をしたら無理しないで下がってください、治療します」
 天小路がスキルを使用して能力者達の武器を強化し、治療がいつでもできるように準備しながら能力者達へと言葉を投げかけた。
「洋二殿!」
 ラサの大きな声に能力者達がハッとして洋二を見る。すると無謀としか言いようのない正面からの攻撃を仕掛け、キメラから反撃を受けて地面へと倒れる。
「無茶な戦い方をしないデ! もう誰も死なせたくナイ!」
 ラサはキメラに攻撃を仕掛けていたけれど、それをやめて洋二の傍へと行き、救急セットで洋二の怪我を治療する。
「洋二さんは下がっていてください――行きます、鳴隼一刀流・隼迅撃!」
 和泉はスキルを使用しながら己の技をキメラへと繰り出し、キメラに大きなダメージを与えた。和泉の攻撃で隙が生じたキメラを赤月は見逃す事なくアンチシペイターライフルでスキルを使用しながら射撃を行う。人型だけれどキメラ、そう心の中で呟きながら赤月は躊躇う事をせずに攻撃を行っていた。
「洋二さん、皆さんが有利な戦場を作ってくれているのですからご一緒しなくちゃダメですわよ。それとも貴方の行動のせいで任務そのものを失敗にさせたいのかしら?」
 先ほどの無理な行動をミリハナクは少し責めるように呟く。そして「邪魔だけはしないで頂きたいわ」と言葉を残して双斧・パイシーズを構えてスキルを使用してキメラへと攻撃を仕掛ける。
「ほらほら、どうしたの? さっきまでの勢いは何処にいったのかしら?」
 ミリハナクは双斧・パイシーズを何度も振り下ろしながら愉しそうに攻撃を仕掛ける。そして攻撃が終わると彼女は下がり、別の能力者が攻撃を仕掛ける。
 これを繰り返して能力者達は少しずつキメラを弱らせていく。
「これでトドメ! 鳴隼一刀流・煉隼葵籟!」
 和泉はジャンプしながら叫び、キメラの頭上から斬り下げて着地した態勢から地面を蹴って、その反動で勢いよく刀を突き上げるという技だ。
「さようなら、恨むのなら‥‥キメラに生まれた自分をお願いなの」
 ファリスも呟き、苦しがっているキメラに攻撃を仕掛け、キメラを無事に能力者達は退治する事が出来たのだった。


―― 戦闘終了、そして彼は ――

「もう、死んでるぞ」
 赤月がミリハナクに言葉を投げかける。彼女はキメラを完全に破壊するまで攻撃の手を緩める事はなかった。
「あそこまでしなくても大丈夫だと思うが?」
「だって生き返ったら怖いじゃない。ホラーは苦手なんですもの」
 ミリハナクはにっこりと笑って赤月に言葉を返した。

 キメラを退治できたけれど、洋二の行動、そして雰囲気から能力者達を取り巻く空気はあまり良いものではなかった。
「ファリスは、ファリスを守る為に死んでいった人の事を忘れないの。だから、けして死ねないの。それに死んだら悲しむ人が沢山いるから死んじゃいけないの」
 ファリスがポツリと呟き、言葉を続ける。
「ファリスの命はもうファリスだけのモノじゃなく、多くの戦えない人の希望を背負っているの。だから一人でも多くの人を救う為に戦うの」
 幼いながらも強い意志を秘めたファリスを見て洋二は自分の行動を恥じて俯く。
「俺は、報いを受けるべきだと思ってた。報いを受けて、死ぬべきだと‥‥」
「報いを、受けるって、考えるのは‥‥せめて世界が平和になってから、考えようよ。助けられなかったって思うなら‥‥その分生きて、沢山の人を助けるの」
 ライフェットは責めるような言葉ではなく、訴えかけるように洋二へと言葉を投げかける。そして同時に彼女は自分にも言い聞かせていた。
「えっと‥‥でも、洋二さんは頑張ったんですよね? わざとだったら確かに報いを受けるべきかもしれないですけど、一生懸命頑張った結果なら、報いなんかじゃないですよ」
 天原がおろおろとした口調で洋二に言葉を投げかける。遺族としては許せないという気持ちがあるのは天原も理解している。
 だけどその責任は1人が背負うには大きすぎるものだ。
「我輩も人を死なせてしまった‥‥デモ我輩や洋二殿にはミンナを助ける力があるんダ、ここで死んだら、それも出来なくなっちゃウ」
 ラサも自分に言い聞かせるように呟き、洋二へと訴えかける。
「死んで報いを受けるのではなく、生きてより多くの人を救う事が、助けられなかった人達への報いになると私は想います」
 和泉の言葉に洋二はハッとしたように顔を勢いよくあげる。
「死んで報いるか、お前が死んでも死者は生き返らん。それに死ぬのはいつでも出来る。生きて少女のような犠牲者、いや少女も死んでいた可能性もあるんだ。犠牲者を増やさないようにする事も償い方としてあるんじゃないか?」
 赤月は洋二に言葉を投げかけながら「人に言うのは簡単なんだがな」と誰にも聞き取れない程の小さな声で言葉を付け足した。
「‥‥すぐには無理かもしれないけど、俺、頑張るから‥‥」
 洋二は何処か吹っ切れたような表情で能力者達に言葉を返し、本部へと一緒に帰還していったのだった。


END