タイトル:週刊記者の日常マスター:水貴透子

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/05/30 22:32

●オープニング本文


はいはいはいはーい。

久々の取材に行っちゃうよー!

※※※

「今日も張り切って取材しちゃおー!」

午前7時32分、まだ他の記者たちも夢の中にいる時間帯な筈なのに週刊個人雑誌・クイーンズの記者である土浦 真里(gz0004)はバッグに取材道具を入れながら、ややハイテンション気味だった。

「‥‥朝っぱらから元気ねぇ‥‥っていうかうるさい。こっちは夜明けすぎまで仕事してたんだから寝かせなさいよ」

欠伸をかみ殺しながら同じく記者のチホがマリに言葉を投げかける。

「それで、今日は何処にいって無茶をして能力者を困らせるわけ?」

「ヤだなぁ、今日は訓練のところにお邪魔して取材する事になってるのっ」

訓練? とチホが言葉を返すと「うん」とマリは首を大きく縦に振る。

「まぁ訓練とは言っても実際にキメラと戦ってるから、訓練って訓練じゃないかもしれないんだけどっ」

どうやら、比較的弱めのキメラ退治に様々な能力者が同行して新人に指示を出す者、これからの強敵に向けて実戦訓練を積む新人能力者達などがいるらしい。

「だからこれからの意気込みとか聞けたらいいかなって思ってさ」

「‥‥何か、久々じゃない? ちゃんとした取材っぽいのって‥‥」

「失礼な! マリちゃんはいつだって全力で真面目に取材してるんだから!」

「全力すぎて能力者に迷惑ばかりかけてるけどね」

チホの冷たい言葉に「う」とマリは言葉を詰まらせる。

「そ、それじゃいってきまーすっ」

マリはこれ以上の冷たい言葉を受ける前に慌ててクイーンズ編集室を出て行ったのだった。

●参加者一覧

小鳥遊神楽(ga3319
22歳・♀・JG
玖堂 鷹秀(ga5346
27歳・♂・ER
レア・デュラン(ga6212
12歳・♀・SN
椎野 こだま(gb4181
17歳・♀・ER
過月 夕菜(gc1671
16歳・♀・SN
有村隼人(gc1736
18歳・♂・DF
守 鹿苑(gc1937
37歳・♂・EP
明菜 紗江子(gc2472
19歳・♀・GP

●リプレイ本文

―― キメラ倒して取材されて ――

 今回は週刊個人雑誌クイーンズの記者、土浦 真里(gz0004)が能力者の取材をするという事で戦闘訓練についていく事になっていた。
(「ふふふ、久々の取材ッ! じゃじゃんと頑張ってババンと記事にしちゃうんだから!」)
 ぐ、と拳を強く握り締めながらマリは心の中で叫ぶ。
「あら、マリさん。奇遇ね」
 マリに言葉を投げかけたのはマリとも付き合いの長い小鳥遊神楽(ga3319)だった。勿論マリが取材でこの場所にいると言う事は小鳥遊にも予想はついていた。
「うん、今日は取材〜。後で皆に抱負とかを聞こうかなって思ってるんだ♪」
「そうなの。でも取材と言うならいつも通りあたし達の指示に従って頂戴ね。旦那様の頭が白髪になるのも、ストレスで入院するのもマリさんの本意ではないでしょうしね」
 小鳥遊の言葉に「えぇ? 鷹秀にストレスなんてないよ?」とマリはかくりと首を傾げながら言葉を返した。
(「玖堂さん‥‥不憫ね」)
 小鳥遊は心の中で呟く。そしてマリの夫でもある玖堂 鷹秀(ga5346)もマリの言葉を聞いて少しだけ涙を流したくなっていた。
(「今回は何の因果か不運にも真里さんと関わってしまった人達がいる‥‥しかし、少しでもその毒を中和するのが夫としての役割ではないでしょうか」)
 玖堂は心の中で呟く。彼はマリと結婚してから『夫』という物を勘違いしているような気もする。しかしそんな勘違いをさせているのは紛れもなくマリ自身なのだけれど。
「と、とりあえずボクも初心者に入れてもらえると‥‥」
 レア・デュラン(ga6212)が大きなバスケットを4つほど抱えながらマリへと言葉を投げかける。
「あれ? それは何?」
 マリが問いかけると「サンドイッチと飲み物です」とレアは言葉を返す。それを見て「取材する時にのんびり出来ていいね♪」とバスケットの中身を見ながら呟いたのだった。
「‥‥初めまして‥‥うちの名前は‥‥椎野 こだま(gb4181)‥‥宜しく」
 椎野がマリへと言葉を投げかける。しかしマリは椎野という苗字に聞き覚えがあり「あれ?」と首を傾げる。
「‥‥うん、うち‥‥妹」
 マリの疑問が口に出る前に椎野は疑問の答えを口に出す。
「へぇ、妹ちゃんかぁ。今回は宜しくね〜♪」
 握手をしながら椎野と話す姿を見て「雑誌の記者さんか〜」と過月 夕菜(gc1671)がマリを見ながら小さく呟いた。
「私も能力者じゃなかったらそういう仕事してたんだろうなぁ‥‥うん! 折角なんだし色々聞いてみよう〜♪」
 まずはキメラ退治だけど、と過月は言葉を付け足して今回の任務を頑張ろうと拳を強く握り締めたのだった。
「そういえば、皆さんは普段取材される事ってありますか? 僕はないですが‥‥」
 有村隼人(gc1736)が他の能力者達に問いかけたのだが、言葉を返してきたのはマリだった。
「取材って言ってもクイーンズはメジャーな雑誌じゃないし、個人でしてる小さな雑誌だからあんまり気負わなくても大丈夫だよー。自分の考えてる事、思ってる事を言ってくれればいいだけだからねっ」
 頑張れ、若人! とマリは有村の肩をバシバシと叩きながら明るく笑って答えた。
「キメラは小型か‥‥ふむ、小型とはいえキメラはキメラ。油断せずに行くとしよう。しかし――取材、か‥‥私なんかで良いのだろうか‥‥」
 守 鹿苑(gc1937)はマリを見ながら呟く。
「大丈夫ですよ。先ほど彼女も言っていた通り軽い気持ちでかまいませんから」
 玖堂が苦笑しながら「まぁ‥‥今回は大丈夫だと思いますけど‥‥うん」とマリを見ながら玖堂は遠くを見つめる。普段のマリ(暴走モード)を知っている能力者ならば分かるだろう。取材と銘打った仕事で一体どれだけの能力者達が困らせられたかと言う事を。
「さて、取材云々はまずキメラを退治してからだね」
 明菜 紗江子(gc2472)が呟き、能力者達は訓練場の中に放たれたキメラを退治する為に行動を開始したのだった。


―― キメラとの戦い ――

 今回は訓練と言う事もあり、キメラの強さは弱い物だった――けれど油断や慢心はどんな怪我を招くか分からないので能力者達は気を抜く事はしなかった。
 そして暴走娘のマリというハンデも能力者達は抱えている為、能力者達は班を2つに分けて行動する事になっていた。
 マリ班・小鳥遊、玖堂、レア、椎野の4人。
 攻撃班・過月、有村、守、明菜の4人。
「本当に何匹もいる‥‥」
 ネズミに酷似しているキメラが空き地の中を複数うろうろとしている。戦う事に関して広さの面では不自由する事はなさそうだ、と能力者達は思いながらそれぞれ行動に移り始めたのだった。
「にゃーん! いいネタ集まりそう?」
 過月がマリに言葉を投げかけると「そうだねー、皆の戦いっぷり次第、かな?」と言葉を返し、戦闘に向かう能力者達を見送ったのだった。
「参ります‥‥」
 有村は呟きながら拳銃を構えてキメラを狙い撃つ。小型のキメラの為に命中――はしなかったけれど牽制攻撃なので、有村は当たらなくてもあまり気にはしなかった。
「そういえば、有村君とはこの間も一緒だったな。今回も宜しく頼む――よ!」
 守はスコーピオンでキメラに攻撃を仕掛けながら有村へと言葉を投げかける。
「えぇ、此方こそ宜しく」
 有村も言葉を返しながら近づいてきたキメラに蛇剋で攻撃を行う。
「近づく者は斬ります‥‥もう斬りましたけどね」
 有村は血払いをしながら呟き、別のキメラに視線を移す。守は空き地内の遮蔽物などに警戒をして探査の眼を使用していた。
「ほらほら、あんまりこっち来ると――‥‥」
 明菜はサブノックを装備した拳を振り上げ、キメラへと炸裂させる。
「痛い目を見るぜ――って少しばかり言うのが遅かったか?」
 不敵に笑む明菜が退治したキメラを見下ろしながら呟く。
「バシっと終わらせてまたいっぱい情報集めたいなぁ〜」
 過月は長弓・百花繚乱でキメラを射抜きながら呟く。彼女の攻撃が当たらずともキメラの動きを一時止める事は出来、有村が動きの止まったキメラを蛇剋で攻撃する。
「あらあら、こっちに来ちゃダメよ」
 小鳥遊がマリ班の方へとやってくるキメラを見つけ、スキルを使用しながらスコーピオンで牽制攻撃を行い、キメラを攻撃班へと戻す。
「そろそろ決着が着く頃ですかね」
 玖堂も全体の様子を見て呟き、スキルを使用して攻撃班の武器を強化した。
「あ、危ない‥‥大丈夫でしょうか‥‥」
 レアは玖堂の腰に張り付きながら攻撃班の様子を見ている。
「‥‥レアちー、鷹秀はマリちゃんの!」
 べり、とレアを引き剥がし玖堂とレアの間にマリが割り込む。ちょっとした嫉妬心が出たのだろう。
「ご、ごめんなさい‥‥あ!」
 レアが呟き、攻撃班の死角からキメラが現れて攻撃を仕掛けようとしているのを見つける。すぐさまレアはアサルトライフルを構えて援護射撃を行った。
「こ、声が小さいぞ新米ども! 玉落とした‥‥か‥‥」
 レアは戦闘班を奮い立たせるように渇を入れようとしたけれど、言った後に激しく後悔して赤面しながら「あぅぅ‥‥」と小さくなっていった。
「‥‥コッチに来る‥‥」
 椎野が小さく呟き、ヴィアを構えて攻撃班が討ち漏らしたキメラに刃を振り下ろす。椎野が退治したキメラがどうやら最後だったようで、空き地にはシンと静寂のみが広がったのだった。


―― サンドイッチ食べて楽しく取材開始! ――

 キメラを退治し終わった後、マリはカメラをバッグへと入れて代わりにメモ帳とペンを取り出して取材を開始し始めたのだった。
 レアが差し入れてくれたサンドイッチと飲み物を飲み食いしながらの取材の為、能力者達も軽く取材を受けることが出来た。
「それじゃー、まずは抱負から聞きたいなー! というわけで小鳥ちゃんから時計回りにどーぞっ!」
 マリがメモ帳とペンを構えながら能力者達の抱負を聞き始める。
「そうね。あたしの親友に1つの事に熱中すると周りが途端に見えなくなる困った人が居るんだけど、彼女にもっと信頼されるように腕を磨く事かしらね」
 小鳥遊がにっこりと笑って抱負を語る。
「という訳で、マリさん。LHを離れる時には必ず一報を入れること」
 約束よ、と小鳥遊が言葉を付け足しながらマリへと言葉を投げかける。どうやら小鳥遊の抱負はマリに関するものらしい。
「えぇ! マリちゃん!? 別にマリちゃんは困った人じゃないし!」
 心外! 次の人次の人! と言葉を付け足しながらマリが小鳥遊に返したのだった。
「そうですね‥‥とりあえずもっと経験を積み、所属している小隊に貢献できるようになりたいですね。主力として取り立ててもらっているので機体ももっと強化したいですし‥‥それに、人様の手を煩わせる事なく真里さん絡みの火消しを行えるようになるかもしれませんからねぇ」
 玖堂はにぃ、と黒い笑顔をマリへと向けながら抱負を語った。結局マリと面識のある能力者が行きつく先はマリ関連であり、その言葉で普段マリがどれだけの迷惑をかけているかを彼女を知らない能力者達も何となく伺い知る事が出来た。
「え、えっと‥‥ボクは‥‥戦う勇気より‥‥好きな人に好きって言える勇気が欲しいです‥‥」
 レアの抱負を聞いて「す・き・な・ひ・と‥‥!? 誰だ誰だ! 白状せい!」とマリが詰め寄る――が、玖堂によって首根っこを引っ張られて「自重という言葉をご存知ですか?」と黒く爽やかな笑顔でマリへと言葉を投げかけた。
「は、はーい。マリちゃん自重するー」
 一方、聞かれたレアは今にも湯気が出そうなほどに顔を真っ赤にしていた。
「‥‥うちの抱負‥‥まずは‥‥うちの田舎の解放‥‥そしてバグアを‥‥地球から追い出す事‥‥かな?」
 椎野が抱負を語ると「そういえば傭兵になったきっかけとかある?」とマリが質問をする。
「適性が分かった時‥‥傭兵になるか‥‥悩んでたんです‥‥でも田舎を占領され‥‥そこから逃げた姉の‥‥あの傷ついた姿‥‥見た時に‥‥決心したんです」
 椎野は恐らく今回初めて見せるであろう微笑と共に言葉を返した。色々な理由をもって能力者になる――勿論マリは分かっていたけれど、やはり目の前で言われると何かを感じずにはいられなかった。
「にゃーん! 次は私だね! 私の抱負――う〜ん‥‥とりあえず色んな人と交流していっぱい情報集めたいなぁ」
 過月は必ず持ち歩いている猫の手帳を見ながら「知らないよりは知ってた方がいいしね」と言葉を付け足しながら抱負を語ったのだった。
「そっかぁ。それじゃ戦う時の心構えとかあるー? 私はこんな所に気をつけてるっ! とか」
「心構え‥‥まぁ出来るだけ皆が攻撃されないように攻撃される前に相手を倒しきるって事を心がけてるよ〜」
 難しいけどね、過月は言葉を付け足しながら苦笑して呟く。確かに彼女も言っている通り一番難しい事なのかもしれない。だけど難しいからと言って諦めることはせず、心がけると言う事が出来るのは凄いことだとマリは心の中で思う。
「やっぱり緊張しちゃうな‥‥」
 ふぅ、と気を落ち着かせる為に深呼吸をする有村を見て「おーい、次はキミだよー」とマリが声をかける。
「すみません。ボーっとしてました‥‥えぇっと抱負ですよね。あんまり変わった事は言えませんけど少しでもみんなの助けになればと思います」
 有村は穏やかに笑って言葉を返す。
「あと心がけは状況を把握して、適切な動きをする事です」
 たとえどんな状況でも1人1人の動きが戦闘の勝敗を左右する事もあるのだから、と有村は心の中で呟く。
「へぇ、やっぱり皆しっかりと考えてるんだねぇ‥‥」
 マリが感心したように呟くと「ですね、負ける事――それは死ぬ事とも取れますから」と有村は言葉を返す。
「はい、次はそこの渋い人!」
 びしっとマリが指差しながら守のほうを向いて座る。
「何回か色んな者達と一緒に戦っているが、いずれの作戦も若者が多かった。人生の先輩として彼らの心の支えになれたら、と思っているよ」
 あと、と守は言葉を続ける。
「一番大切にしている事は、どんな状況でも前へ進むことを止めないように心がけている事、かな」
 守の抱負などをメモに纏めながら「へぇ〜‥‥」とマリも呟く。
「最後は俺、かな」
 明菜が周りを見渡しながら呟き「うん、最後はキミっ」とマリも大きく首を縦に振る。
「キメラ退治に対しては、常に真摯に当たっている‥‥誰かを守る為に拳を振るっているんだ‥‥いつだって全力投球、これが俺のポリシーだからな」
 ぐ、と拳を握って見せながら明菜が言葉を続ける。
「多分‥‥今後戦いは激しくなる。ジブラルタルの一件もあるし、バグアだっていつまでも守る戦はしないはずだ。それでも俺は諦めたくない。この拳で誰かが笑顔になれるのなら‥‥悪魔と呼ばれてもかまわないとすら考えている」
 明菜の真剣な表情につむがれる言葉が嘘ではない事がマリへ伝わる。
「あ、逆に質問。どうやったら、上手に文を纏められます? 俺、パーソナリティーをやってるんですがうまく原稿を纏められなくて‥‥何かコツがあるなら‥‥」
 明菜の質問に「上手くっていうより何を伝えたいのかって事を考えればいいんじゃないかなぁ」とマリが首を傾げながら言葉を返す。
「マリちゃんも文が特別上手って訳じゃないから、何を伝えたいのかが分かるように書くって心がけて書いてるよ」
 マリと明菜が話している間、守は過月や有村と話をしていた。
「過月君のそのノート、何が書いてあるんだい?」
 守が過月の持つ手帳を指差しながら問いかけると「色々かな、今までに知ったこととかを書いてるから」と言葉を返した。
「そうか‥‥有村君はあれから鵺君に会ったかい? 随分情熱的な人で面白かったな」
 守の言葉に「情熱的‥‥確かにある意味では情熱的でしたね」と有村も苦笑しながら言葉を返した。
 それと、今回もしもマリが暴走したら強制コスプレお仕置きが決行されるはずだったのだが、今回に限ってマリはおとなしくしており『お仕置き』は必要なかったらしい。
「この調子で毎回落ち着いてくれるといいんですけどねぇ‥‥」
 玖堂が呟くと「いい方法が1つあるかもしれないわ」と小鳥遊が言葉を返した。
「さすがのマリさんも子供が出来たら、もう少し大人しくなると思うわ。だから、変な言い方だけど、玖堂さん、頑張ってね」
 小鳥遊が苦笑して呟くと「子供、ですか」と玖堂も苦笑するしかなかった。

 そんなこんなで取材を終えた能力者達はレアの持ってきたサンドイッチなどを頬張りながらそれぞれ会話を続けていたのだった。
「あ、レアちー。このサンドイッチ凄く美味しかったよ♪ うちの記者――翔太も気に入る事間違いないね」
 マリがレアの耳元ぼそっと呟いた言葉に、レアは顔を真っ赤にするのだった。


END