●リプレイ本文
―― カマがいなくなりました ――
今回は鵺(gz0250)が落し物を探しにいまだキメラが残る森へと戻っていってしまった事から始まった。
「止む無き撤退は、打ち漏らしの数と共に、帰還前に本部に通達するべき。対価がある以上、命張ってでもやり遂げる――それがプロ」
夢守 ルキア(
gb9436)が鵺と一緒に任務に行っていた能力者達に言葉を投げかける。どんな不利な状況でも放棄する理由にはならない。それが夢守が対人傭兵として得た考えであり、彼女にとって撤退は死を意味するものでもあった。
「まぁとりあえずはキメラ退治と鵺嬢の探し物を見つけてあげようか。紳士たるものお困りのレディが居ればお助けするのは当然だろう?」
エイミー・H・メイヤー(
gb5994)が呟くと「そうだね、まずは鵺君を救助しないと」と夢守も言葉を返す。
「まったく‥‥ろくに戦えないのに単独行動を取るなんて‥‥何を考えているのやら」
はぁ、とソウマ(
gc0505)は皮肉を交えた言葉を呟く。しかし言葉とは裏腹に表情は心配そのものであり、彼が捻くれた素直ではない性格が伺える。
「キメラが残っているのに‥‥よほど大切な物なんですね。大切な物は見つけてあげないと‥‥」
有村隼人(
gc1736)がポツリと呟く。彼は今回、探し物の為に無謀にも飛び出していった人物が居ると聞いて任務に参加していた。
「そうだな‥‥大切な物を失くすのは辛いからな‥‥しかしもっと大切な物がある事を鵺君に伝えてやりたいものだ」
守 鹿苑(
gc1937)は小さくため息を吐きながら呟く。キメラが居る事すらも忘れて飛び出すほどだからよほど大事な物だと言う事は守にも分かっていた。
しかし、その為に自らの命さえも危険に曝してまで探しに行くという行動は少し感心できないものだと彼は心の中で呟いた。
「鵺殿‥‥大丈夫カナ‥‥」
ラサ・ジェネシス(
gc2273)はポツリと呟く。今回、大事な物を探しに行く為に無謀な事をしたと聞いて彼女は鵺が心配で仕方が無かった。
「‥‥我輩、なんデこんな心配なんだろウ?」
かくりと首を傾げながら自分の気持ちに疑問を問いかける――けれど彼女自身がはっきりと気づいていない為、その答えは分からないままだった。
「ペンダントか‥‥妹さんとの繋がりを大事にしているんですねー、姉として? 仲の良い姉妹なんでしょうねー‥‥そんな妹さんに興味がありますー」
功刀 元(
gc2818)は呟く。そこで『鵺に興味がある』ではなく『妹の方に興味がある』という彼ははっきりとオカマに気に入られたくない事を見え隠れさせている。
(「鵺はオカマと聞きましたけど‥‥オカマてどんな生き物なのかしら」)
ファリア・レンデル(
gc3549)は心の中で呟く。今回彼女は自分の腕試しで任務を受けたのだが、任務にオカマが絡んでいるとの事を聞いていた。
しかし今まで周りに『オカマ』という生き物がいなかったのだろう。中々『鵺』という人物を想像することが出来なかった。
「虎型キメラ、初陣の相手としては物足りないですわ」
ファリアは資料を見ながら小さく呟き、ため息を吐く。
「ふむ、全員揃っているようだしそろそろ出発しようか。あまり時間をかけすぎると鵺嬢に危険が及ぶ可能性が高くなっていくからね」
エイミーが呟き、能力者達は高速艇に乗り込んで鵺がいる森へと出発したのだった。
―― 森に潜むは虎とカマ ――
今回は鵺とキメラ――そして鵺が探すペンダントと探す物が複数ある事から能力者達は班を2つに分けて行動する事にしていた。現地に到着すると森そのものもあまり大きくはなく、2つに分かれて行動した方が見つける事も早く出来ると思ったのだろう。
α班・夢守、有村、ラサ、守の四人。
β班・エイミー、ファリア、功刀、ソウマの四人。
「鵺嬢の悲鳴とかキメラの鳴き声とかを頼りに捜索していくといいかもしれないね」
エイミーが呟き、α班とβ班はそれぞれ任務遂行、そして鵺を救助の為に動き始めたのだった。
※α班※
能力者達は出発する前に森までの地図、森の規模など仕入れられるだけの情報を集めていた。
勿論キメラの特徴も。残っているキメラは虎型という事が分かっており能力者達はそれぞれ警戒を強める。
夢守はスキルを使用して幸運状態に、守が探査の眼を使用してキメラからの不意打ちなどを受けぬように警戒を行う。
「そういえば、夢守君は鵺君との付き合いは長いのか?」
捜索を行いながら守が夢守に問いかけると「うん、何回も一緒に任務してるからね」と言葉を返す。
そして有村は警戒を強めながらも地面をきょろきょろと見渡しながら歩いていく。キメラや鵺捜索を行う途中でペンダントを見つけられないかと考えたのだ。
それはラサも同じなのか、有村同様に地面を見て歩いていた。
「大事なペンダント探さないト‥‥」
恐らくラサは無意識なのだろうが、鵺に良い所を見せようと心の奥底で思っていた。ペンダントを見つければきっと鵺も喜んでくれるに違いないと心の中で呟きながら。
「「「「あ」」」」
捜索を続ける途中、4人は同時に声を発する。何故なら捜索対象の1つが目の前にいたからだ。
「あら‥‥? ルキアちゃん達じゃないの! どうしたのよぅ、こんな所で」
鵺はけろりとした表情で目を丸くしながら4人を見つめる。鵺の様子を見る限り、まだキメラと接触していない事が分かり、能力者達はとりあえずほっと胸を撫で下ろした。
「もー、鵺君。此処にキメラが残ってるって事を忘れてるんじゃないかな? あんまり無理して薄命のレディになっちゃダメだよ?」
夢守の言葉に「ままままま、まさか‥‥忘れてたなんてありえないわよぅ!」と明らかに動揺した様子で鵺は言葉を返す。
「向こうの班に連絡しますね。鵺さんを見つけたって」
有村が呟き、トランシーバーを使ってβ班へと連絡を入れる。その時だった‥‥「やぁん! 可愛い子だわ!」と鵺が有村に抱きつこうとしたのは。
「う、うわっ!? 」
「きゃあ! こっちには渋メンがいるわ!」
守を見てきゃあきゃあと騒ぐ鵺に有村と守は一歩後ずさる。
「今日はなんて運の良い日なの! こんなカッコイイ人や可愛い子があたしの、あたしの! 心配をしてくれるなんて!」
鵺にとっては大事な部分だったのだろう。あたしの、を二度言いながら再びきゃあきゃあと喚き散らす。
そして鵺が2人に抱きつこうとした瞬間、β班から連絡が入りキメラを見つけたという言葉と共に照明銃が打ち上げられたのだった。
※β班※
そして少しだけ時を遡る。
α班と分かれて鵺、キメラの捜索を開始すると同時にソウマがスキルを使用して幸運状態にし、尚且つ探査の眼を使用した。
「さて、キメラ退治に鵺さん救出を頑張ろう」
そして妹さんの情報をゲットする、功刀は心の中で言葉を付け足す。心の中で呟いた言葉こそ彼の今回の一番の目的と言っても過言ではないかもしれない。功刀は他の能力者達と足並みを揃える為にAU−KVをバイクではなくアーマー形態にして着用していた。
(「これなら、もし鵺さんを見つけても身を守ることが出来る筈‥‥!」)
功刀は心の中で呟く。何故か彼の中では鵺という人物はキメラ並の人物と思われているのは気のせいだろうか?
「それにしても、地図を見た時も思ったけどこの森って本当に広くないのね」
ファリアが上を見上げながら呟く。広さ的には捜索もしやすい広さなのだが鬱蒼とした森は昼間でも少し薄暗く感じられ、キメラからの奇襲に警戒を置かねばならなかった。
「少しだけ薄暗いのが難点だが、森そのものの狭さが幸いしていると考えようか」
エイミーが呟く。確かに彼女の言う通りで、もし相手の班に、もしくは自分達の班に何かあったとしても連絡すればそこまで待つ事なく互いの班は合流する事が出来るだろうから。
――ガサ。
「気をつけて! 後ろ!」
ソウマが呟いた次の瞬間、能力者達は横へと移動する。すると先ほどまで能力者達が立っていた場所にキメラが地面に爪を深く突き刺していた。ソウマの探査の眼がなければ攻撃を受けて、キメラが先に攻撃してきて能力者達は出遅れていたかも知れない。
そしてファリアがトランシーバーでα班へと連絡を行う。
「居ましたー! 気づいて下さいーっ」
功刀は照明銃を打ち上げてα班に自分達の居場所を知らせ、α班が合流するまでの間、キメラが何処か他の所に行かないようにとけん制攻撃を仕掛けたのだった。
―― 戦闘開始・キメラ VS 能力者 ――
β班から連絡を貰い、10分近くが経過した頃にα班がβ班の所へとたどり着き、本格的に戦闘が開始される。
「大きな猫さん遊びましょう」
ツインテールを揺らしながらエイミーが呟き、スキルを使用しながら槍斧ダリアを振り下ろす。
「あー、鵺君は下がっててね。あんまり前に出ると怪我しちゃうかもしれないし――ってもう気を失ってる」
夢守が鵺を下がらせようと声をかけた時には既に鵺は意識を失っていた。苦笑する夢守だったけれど逆に気を失ってくれていた方がいいかもしれないと思い、鵺の前に立ち、こちらに攻撃が来た場合に対処が出来るようにする。
「フォローは僕に任せて、思う存分攻撃に集中して下さい。怪我の心配も無用です」
ソウマが前衛の能力者達に声をかけながら小銃S−01で射撃を行う。
(「‥‥渾身の一撃‥‥」)
有村は心の中で呟きながら、銃撃によって足止めされたキメラにスキルを使用して強力な一撃を喰らわせる。
「機動力を奪いたいな‥‥まずは足からだ」
守が呟き、有村の攻撃を受けている間にスコーピオンで足を狙って攻撃を行う。
「鵺姉サマを守ル! 今の我輩シリアスネ!」
ラサが少し大きな声で叫びながら拳銃スピエガンドでスキルを使用し射撃攻撃を行う。守と攻撃をあわせるように足を狙って攻撃を行ったので、キメラは苦しそうに大きく吼える。
「さて、味方を撃っちゃいました――じゃ洒落になりませんからねぇ」
功刀は呟きながらスキルを使用して命中を高め、両手に持った拳銃ライスナーを構えて射撃を行う。
(「鵺さんはお任せします、と言おうと思ったけれど気を失ってるから大丈夫かな?」)
ちらりと視線を移すと功刀の視界に入ったのは気を失った鵺の姿。
「わたくしに貴方の爪が届くかしら?」
功刀が銃撃を行っている間にファリアはキメラへと近づき傭兵刀を振り上げ、スキルを使用しながら攻撃を繰り出す。
「あらあら。貴方の相手は、わたくしですわよ!」
ファリアは後衛に向かって攻撃を行おうとしているキメラに言葉と同時に攻撃も与える。
「後ろに手出しはさせませんよ」
エイミーが呟き、追撃するように槍斧ダリアを勢いよく振り下ろす。
そして能力者達のダメージを受けてある程度キメラが弱ってきた兆候を見せ始めた頃、夢守がスキルを使用して能力者達の武器を強化する。
「さあ、皆様! いきますわよ!」
ファリアが合図のように叫び、能力者達はそれぞれ攻撃を仕掛ける。いくら虎型のキメラと言えど、8人の能力者を相手にしては適うはずもなく、ひときわけたたましく吼えたかと思うと、次の瞬間に地面へと倒れて二度と起き上がる事は無かったのだった。
―― 大事な物、そして恋心 ――
「いやぁん、アタシの為に皆ありがとう☆」
戦闘が終わり、鵺が目を覚ますと「感激だわぁ!」と叫びながら男性陣に抱きつこうとしていた。
「ごめんなさい。僕には心に決めた人がいるので‥‥」
上目遣いの涙目という演技で鵺の抱擁を回避しようとした有村だったが、上目遣い&涙目は鵺にとっては逆効果だったらしい。
「きゃあああ、可愛いわ!」
鵺が叫んだ後、抱きつこうとしたが有村の「しつこい人は嫌い‥‥」という呟きと共に巨大ぴこぴこハンマーの打撃を受ける。
鵺の目的であったペンダントも戦闘が終わった後、シグナルミラーを使って探していたラサが見付け、無事に全ての目的を終了する事が出来ていたのだが‥‥これ幸いと言わんばかりに鵺が男性陣に抱きつこうとする姿が見受けられる。
「鵺姉サマ‥‥無事で良かっタ――けど、マイハート切なさ乱れ打ちネ‥‥」
ラサはポツリと呟く。まだ本人が気づいていないけれど鵺が男性陣を見てきゃあきゃあと言うたびにラサの胸にずきずきとした痛みが走るのを感じていた。
(「カマいませんってワケにはイカナイヨ‥‥」)
はぁ、とため息を吐きながらラサは心の中で呟く。
「ありがとお! アタシの為に戦ってくれたのよねぇ!」
鵺がソウマの方に向かうと、木の根で足を引っ掛けてしまい鵺は「ぷぎゃっ」と呻きながら顔面からコケてしまう。ソウマのキョウ運が発動して鵺の抱擁を回避した――と思っていいのだろうか。
「でも鵺さん、ペンダントが大事なのは分かりますが短絡的過ぎます」
まぁ、悪運は強そうですし心配はしてなかったですけどね。と言葉を付け足しながらソウマが鵺に言葉を投げかけた。
「それは私も思う。そのペンダントの妹さんも、命がけで探しに来てくれて喜んでいると思うよ。でも妹さんが本当に嬉しいのは、君が無事で元気にしていてくれる事じゃないかな」
だからあまり無茶をしてはいけないよ、と鵺に言葉を投げかけると‥‥。
「シブイわ‥‥シブイわ、シブメンだわ! 嫁にしてぇぇ!」
くわっ、と鬼気迫る表情で守に迫る鵺だったがさらりと避けられてしまう。
「そういえば、鵺嬢の妹ならさぞ可愛らしいのだろうな」
エイミーが呟くと「そうなのよぅ! 見る!? 見るわよね!」といって鵺がペンダントの中の写真をエイミーに見せると其処には可愛い少女が写っていた。
「可愛いですね、今度妹さんを紹介してくださいよ」
ソウマが言葉を投げかけると「ちょっと待って」と功刀がそれをとめる。彼にとっては妹の事を聞きだす、それが一番の目的だったのでとりあえず功刀は止めてみた。
「ボクも妹さんには興味がありますねー。どういう方なのかじっくりと聞きたいですー」
功刀が呟くと「アタシに似て可愛いのよ! 何もかもが!」と鵺は妹の事を延々と語り始める。よほど妹の事が大事なんだろうな、と能力者達は苦笑しながら鵺の話を聞き、報告の為に本部へと戻っていったのだった。
そして、高速艇の中では自分の気持ちをエイミーに相談するラサの姿があったのだとか‥‥。
END