タイトル:ガンスリンガーマスター:水貴透子

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/04/05 22:07

●オープニング本文


そのキメラは立つ。

幾つもの銃器を背負いながら。

※※※

小さな町で起きた大きな事件。

キメラが現れて死者が3名という事件にまでなった。

もしかしたら『死者はまだ3名』と数えるべきかもしれないけれど、住人にとっては3人も10人もあまり変わらないのだ。

もしかしたら次は自分かもしれないという恐怖があるのだから。

「キメラも厄介よねぇ‥‥」

女性能力者が呟くと「え?」と男性能力者が言葉を返す。

「銃を幾つも持ってるんですって。1つ2つならいいんだけど、幾つも持ってられたら結構厄介じゃない」

資料にある写真はブレてよく見えなかったけれど、いくつも銃器を抱えている事だけは分かる。

ライフルのようなものから拳銃タイプのものまで幾つも持っており、確かに女性能力者が言うように厄介なキメラなのかもしれない。

「このキメラ自体が夜に行動するタイプみたいでね、3人の死亡者も家に乗り込まれて殺されてるわ。だから家の中が安全という保証がないから住人達も怯えているんでしょうね」

ふぅん、男性能力者は言葉を返し、資料に再び視線を落としたのだった。

●参加者一覧

宇月 慎之介(ga8419
20歳・♂・SN
アンジェラ・D.S.(gb3967
39歳・♀・JG
キヨシ(gb5991
26歳・♂・JG
カルブ・ハフィール(gb8021
25歳・♂・FC
ウルリケ・鹿内(gc0174
25歳・♀・FT
湊 獅子鷹(gc0233
17歳・♂・AA
殺(gc0726
26歳・♂・FC
椿骸(gc1136
19歳・♀・HG

●リプレイ本文

―― キメラを討つ者たち ――

「銃を持ったキメラなぁ‥‥」
 キヨシ(gb5991)が資料を見ながら呟く。
 今回の能力者達に課せられた任務は死者3名を出しているキメラの討伐任務だった。ブレた写真からは幾つも銃を所持している事が伺える。
「銃器が山盛りのキメラなんてさぞかし銃の使い手を任じて射撃戦が得意なんでしょうね、ふふ、まるで何処かで新規貸し出し待ちしているKVの名称と間違えそうね」
 アンジェラ・D.S.(gb3967)は笑みを零しながら呟く。
「このキメラは夜に行動するみたいだし、昼間のうちに街の地理や地形を覚えて、キメラの特徴を調べられるだけ調べたいな」
 宇月 慎之介(ga8419)は資料に挟んである地図を見ながら呟く。地図でおおよその街の形は覚える事は出来るだろうが、やはり現地に行って覚えないと役に立たない、彼はそう考えていた。
「何が目的で、家の中にまで乗り込んで‥‥目的は何なのでしょうか?」
 ウルリケ・鹿内(gc0174)が小さく呟く。
「ま、家の中だからって安心ってわけじゃないだろうけどな、ウリ姉」
 ウルリケの言葉に湊 獅子鷹(gc0233)が言葉を返す。
(「人間もキメラもやる事は変わらねぇな」)
 湊は何処か冷めた考えで心の中で呟く。先日の任務で彼は同じ能力者を手にかけていた。もちろん、それは彼が悪いわけではなくそうしなければ他を守る事が出来なかったからだ。
 そのせいか、彼は一般人とも能力者とも関わりを避け、距離を置くようになった。
(「アイツと‥‥手にかけた能力者と同じような思いをしたくないから」)
 自分の手を見つめ、強く握り締めながら心の中で湊は呟く。
「今はまだ3名と少ないが放っておいたら被害が増すばかりだ。早いところケリをつけないと‥‥」
 殺(gc0726)は死者3名と書かれた資料を見ながら呟く。だけどそう言いながらも戦うという事に僅かだけれど喜びを感じている部分もあった。
「ふむ‥‥キメラか」
 椿骸(gc1136)は資料を見ながら呟く。彼女は今回が初任務であり、自分がどの程度戦えるのか、そして相手はどの程度の力を持っているのか楽しみだと感じていた。
「キメラとやらは情報でしか知らんからな‥‥どの程度出来るのやら、楽しみだ」
 ふ、と椿骸が笑みを零す。
「そういえば、これ‥‥さっきオペレーターから預かってきた」
 殺が能力者たちに見せたのは色々な情報がまとめられたメモだった。資料に載っていない新しい情報はないか、街の地形、被害者の家の調査報告書など有利になる事はあっても不利になる情報はないので、能力者たちは一通り目を通し始める。
「ほな、向こうに着いてからの情報収集もあるし、そろそろ行こか」
 キヨシが能力者たちへと言葉を投げかけ、能力者たちはキメラを退治する為に高速艇へと乗り込んで、キメラが潜んでいる街へと出発していったのだった。


―― 静かな街、恐怖に怯える住人たち ――

 今回の能力者たちは3つの班に分かれて行動する作戦を立てていた。
 A班・湊、宇月の2人。
 B班・アンジェラ、殺、椿骸の3人。
 C班・キヨシ、ウルリケの2人。
 その中でもA班の湊は囮役として動き、宇月が監視・狙撃役、そしてB・C班の能力者たちは探索という形で動く事を決めていた。
 能力者たちは夜への戦闘の為に、昼間のうちに来て地形や建物などを具体的に把握し始める。襲われた家などにも赴き、怯える住人達から話を聞いたりなどを行う。
 キメラの特徴なども聞こうとしたけれど、住人たちは外套のせいで男なのか女なのかも分からないと言う。そうこうしている間にも時間は過ぎ、日も暮れて能力者たちはキメラ退治のために行動を起こし始める。
「何かあった時はトランシーバーで連絡を取り合えばいいな」
 殺が呟き、能力者たちはそれぞれの班で行動を開始したのだった。

※A班※
「地形もちゃんと把握したし、後はキメラを退治するだけだな」
 宇月はアサルトライフルを手に呟く。
(「まぁ、狙撃手は地形をきっちり把握するもんだからな」)
 宇月は心の中で呟きながら、湊の姿を見失わないように一定距離を保って捜索を続ける。もちろんスキルを使用して気配を隠し、周囲への警戒も怠らないようにしている。
「‥‥何処から、来るかな」
 湊は視線だけを動かしながら捜索を行う。今回は全身黒尽くめという格好に顔も黒のフェイスペイントを施し、キメラに見つかった時に狙われにくくするという工夫をしていた。
「他の班もまだ見つけてないのかな」
 湊はトランシーバーを見ながら呟くが、連絡はまだない。仕方ない、と呟きながら湊、そして宇月は捜索を続けたのだった。

※B班※
「コールサイン『Dame Angel』、深夜徘徊する銃器キメラ殲滅敢行。紛らわしい存在はさっさと排除するわよ」
 アンジェラが殺と椿骸に告げて、キメラ捜索を開始する。
「マンホールや空き家にも注意した方がいいだろうね」
 椿骸は布を被せたアサルトライフルを持ちながら歩いていく。布を被せる事によって街灯などからの光反射を抑えている。もしかしたら武器に反射した光でこちらが不利になるかもしれないという椿骸の配慮だった。
「静かだな、まぁ‥‥無理もないだろうけど」
 殺は街中全体の雰囲気を感じ取って呟く。もしかしたらまた死人が出るかもしれない、そう考えて怯える住人たちは静かに息を殺すように過ごしていた。
「いつ襲われるか分からない極限状態での生活でしょうからね、怯えるのも無理ないわ」
 アンジェラが言葉を返し、後方を警戒する。街中という事で死角が多く、警戒を強めなければ自分たちが危ないのだから。
「何か音がする‥‥」
 殺の言葉に椿骸とアンジェラが足をぴたりと止め、耳を澄ませる。
 すると銃声のような音が響き、確かに3人の耳に届いた。だが3人がいる場所からそれなりに離れた場所での発砲だったのかすぐに2発目が響いたけれど場所を特定するまでには至らなかった。
 その時、C班のキヨシとウルリケから連絡が入りキメラを発見して、攻撃されたと連絡が入ったのだった。

※C班※
「出て来い、出て来いキメラさんー♪」
 即興で作った歌を口ずさみながらウルリケが捜索をしていると「何なん、その歌」とキヨシが笑いながら話しかける。
「合間に作った歌です、これで出てきたらいいなーと思って」
 ウルリケが言葉を返すと「さよか」とキヨシも苦笑して言葉を返す。
「それにしても、他の班も見つからんて今日は動くつもりがないん‥‥」
 キヨシが言いかけたところで、ウルリケを「危ない」と叫びながら突き飛ばす。それと同時に2人の間にひゅんと風切り音とともに弾丸が駆け抜けていく。
「ど、どうして‥‥」
「街灯に反射して光ったんや、夜行性の理由、それは闇に紛れて攻撃してくるためだったんや」
 ぶれた写真では分からなかった黒い外套、真っ黒に塗りつくされた銃身。ウルリケはすぐさま他の能力者達に連絡をして攻撃をされた事を伝える。
「此処から追いつくかな、ちょっと難しいかも」
 ウルリケは呟きながらキヨシとともにキメラが先ほど立っていた場所を目指して走っていく。しかし多少距離があったため、2人が現場に到着した時にはすでにキメラは姿を消した後だった。
「キヨシさん! A班がキメラと交戦中です!」
 ウルリケはすぐに場所を聞き出し、キヨシと共にA班がいる場所へと向かっていった。


―― 戦闘開始・能力者 VS キメラ ――

 湊がキメラに襲われたのは、C班から連絡が入って少し時間が経過した時だった。突然横道から現れ襲われたが姿勢を低くして、急所への攻撃を避ける。
「こ‥‥っの!」
 一気に駆け、湊は爪にて攻撃を仕掛ける。キメラは避けようとしたけれど、宇月のアサルトライフルでの攻撃に気をとられ避ける事は適わず湊の一撃を受けて、後ろへと仰け反る。
「ようこそお客様、1940年代のフィンランドとスターリングラードどっちがお好みですか? なおこの鉛弾はサービスとなっております‥‥ってな!」
 アサルトライフルで攻撃を仕掛けながら宇月が楽しそうに呟く。
 そこへB班、C班が合流して本格的にキメラ退治の戦闘が始まったのだった。

 最初に攻撃を仕掛けたのはアンジェラだった。スキルを使用して攻撃を仕掛け、キメラの足止めを行い、キメラが動けずにいる隙にキメラを取り囲むように能力者達は陣形を組む。
「さてと、銃を持った鬼退治開始やな!」
 キヨシはエネルギーガンを構え、照準をキメラへと合わせてスキルを使用しながら攻撃を仕掛ける。キヨシが攻撃を仕掛けている間、ウルリケはキメラの背後へと回るために動き始める。いくら銃器を扱うキメラと言えど複数の能力者を相手にしてすべてに対応出来るとは思っていないからだ。
「いくら持ってる武器が多くても、扱う奴が1人なら‥‥」
 宇月はスキルを使用して攻撃を行い、呟く。キメラも攻撃してきて宇月の頬を弾丸が掠める。
「‥‥リロードの必要がねぇってか‥‥」
 キメラは弾切れを起こした武器はその場に捨て、次の銃を取り出す。そんな様子を見て湊が小さく呟き「持ち替えるその一瞬が命取りなんだよ!」と叫びながら攻撃を行う。武器を持ち替え、攻撃を仕掛けようとしたキメラだったが湊によって攻撃を受け、持ち替えた武器をそのまま地面に落としてしまう。
「たとえ多くの武器を持ったところで信頼できる仲間がいないなら、宝の持ち腐れね」
 アンジェラも前衛が攻撃をしやすいように援護を行いながら呟く。
「短剣士の名は伊達じゃないよ」
 ひゅん、とキメラへと近寄りながら殺が呟き、蛇剋を構えスキルを使用しながら攻撃を仕掛ける。強い一撃を受け、キメラは足を踏ん張るけれど、次々に追撃のように襲い掛かってくる能力者たちに対処が出来なくなりつつあった。
「あれじゃただの的じゃないか‥‥別にいいんだがね」
 椿骸は呟いた後、味方に誤射しないように狙いを定めながらアサルトライフルで攻撃を仕掛ける。
「‥‥! 危ない! 伏せろ!」
 椿骸が叫び、湊は即座にその場に座り込む。それと同時に湊の髪の毛を僅かに焼ききるように弾丸が発砲された。キメラがポケットに隠し持っていた銃で攻撃を仕掛けてきたのだ。
「っぶねぇ‥‥」
 このやろう、と言葉を付け足しながら湊は攻撃をし返す。
「避けて」
 アンジェラの言葉に湊は横へと避ける、それと同時に弾丸がキメラへと撃ち込まれる。
「ちっ、まだ銃を出そうとしてるんか。ったくどんだけ銃を持ってるねん!」
 キヨシは半ば呆れたように呟きケルビムガンで狙い、攻撃を仕掛ける。
「街の住人の安全、そして安心のために早く倒れてくれないかな」
 殺は呟きながら蛇剋で攻撃を行う。
「当たらなくともっ! 皆さん、目を閉じてください!」
 ウルリケの言葉に能力者たちは目を閉じる、それと同時にウルリケは照明銃をキメラへと打ち込む。もし失敗したとしても最悪視力だけは一時的に奪う事が出来る。その間にとどめを刺せば良いと考えたのだ。彼女の思惑通り、照明銃はキメラの視力を一時的に奪い、能力者たちはその隙を見過ごす事なくそれぞれ攻撃を仕掛ける。
「いい加減、沈んでください!」
 ウルリケが叫び、愛用の薙刀で突き攻撃を行う。
 それから能力者たちの総攻撃を受け、キメラは地面へと沈み、二度と起き上がる事はなかったのだった。


―― キメラ去りし街 ――

「だぁぁぁ‥‥動けねえ」
 湊は戦闘が終わったあと、ばたりとその場に倒れた。
 そして能力者たちはそれぞれ治療を行う。重傷者は出なかったものの、それなりにダメージを受けた能力者もいたからだ。
「何か、気になるから出来ればこのキメラは回収して調べてもらっていいか?」
 宇月の言葉に「勿論かまわないわ」とアンジェラが言葉を返す。他の能力者たちを見ても反対する者はいなく、キメラは回収して調べてもらう事になった。
「ふぅ、とりあえずこれで一件落着ね。死んだ人は戻らないけどこれ以上の犠牲者を出すことだけは防ぐ事が出来たわね」
 アンジェラは呟く。
「せやな、これでここの街ん人も安心して暮らせるやろ」
 キヨシが言葉を返すと「いつまで、こんな事が続くのかな」とウルリケがポツリと言葉を漏らす。倒しても倒してもキリのないキメラ退治に少しだけ思っていた事が口に出てしまったのだろう。
「ウリ姉‥‥いなくなるまで戦えばいいんだよ」
 湊が荒く息をしながら言葉を返す。
「うん、みんなが安心して暮らせる日まで戦えばいい‥‥いつ終わるか分からないけど、その日が来るまで俺は戦うことをやめない」
 殺の言葉に「今回が初任務の私だけど、同じ意見だね」と椿骸も言葉を返す。
「そうだね」
 ウルリケは言葉を返し、キメラの死体を運び、本部へと報告のために帰還した。
 後日、調べたキメラについては特におかしい所はなかったという連絡が能力者達に伝えられたのだった。


END