タイトル:Σ(○△○)マスター:水貴透子

シナリオ形態: ショート
難易度: やや易
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/04/01 06:08

●オープニング本文


あたし、猫井珠子は本日傭兵デビューしますっ。

※※※

名前・猫井珠子(ネコイ タマコ)
年齢・18歳!
職業・スナイパー
通称・ネコタマ(タマゴって言った奴ぶっ潰す)
性格・辛いもの大好き乙女!

意気込み・迷惑にならない程度に頑張りますので宜しくネ〜v(^○^)v

※※※

「よしっ、名刺も準備したし頑張るぞぉっ♪」

傭兵になって頑張ろう、うん、その意気込みまでは良かったと思うんだ。

でもさでもさ、ふつ〜に考えて最初から『傭兵になったZE☆→銃撃ばきゅーん☆→ふ、俺かっこいい!』って人いないんだよねっ!?

っていうか、むしろ今までふっつ〜ぅの女子高生してた私がいきなり銃とか持ってて扱い慣れてたら怖いよね!

ふっつーぅに銃刀法違反じゃん! や、今の時代この言葉が適用されるかわかんないけどっ!

つまり、タマ的意見を述べさせてもらいますと‥‥。

キメラ退治、めっちゃ怖いんですけど!

ほらほら、私の足なんか見てよ、異常なくらいにガクブルってるんだよ!?

武者震いとかじゃなくて、ビビリ震いだから!

おおおお、どうしようどうしよう。

私に守護霊なんてモンがいるんなら全力で護りなさいよっ!

他の能力者見てみると、ふっつーぅな顔してるし!

(「何何何何何! もう、俺ベテランだから。足手まといになるくらいなら置いてくぜ? ――とか思ってるんじゃないよね!? そんな事はこのネコタマがさせないんだから!」)

依頼を見てみれば、初心者向けと書かれた資料。

「よし、頭にワカバマークつけていこう。誰が見ても初心者、キメラも手加減して死んでくれるかも」

ぺたりとワカバマークをつけ、タマ発進――。

●参加者一覧

ベーオウルフ(ga3640
25歳・♂・PN
高日 菘(ga8906
20歳・♀・EP
不破 霞(gb8820
20歳・♀・PN
ユウ・ナイトレイン(gb8963
19歳・♂・FC
ファリス(gb9339
11歳・♀・PN
佐賀繁紀(gc0126
39歳・♂・JG
布野 あすみ(gc0588
19歳・♀・DF
白鳥沢 優雅(gc1255
18歳・♂・SF

●リプレイ本文

―― 初心者能力者・ネコタマ発進 ――

「猫井珠子でーす! どうぞ宜しくねー!」
 足をガクガクと震わせながらもハイテンションで話しかけてくるのは今回能力者達に同行するスナイパーのネコタマだった。
「不破 霞(gb8820)と言います。よろし‥‥く‥‥」
 不破が挨拶をしながらネコタマが頭にぺたりと貼っているワカバマークを見てツッコミを入れるべきかを悩む。
(「‥‥これはツッコミを待っているんでしょうか‥‥」)
「お、何これ。君面白いねー」
 布野 あすみ(gc0588)はワカバマークをつつきながらけたけたと笑い、ネコタマに話し掛ける。やはり気になっているのは不破だけではなかったようだ。
「うちも気になっててん。なんでタマちゃんは頭にワカバマーク付けてんの? 若葉隊の人?」
 高日 菘(ga8906)も笑いながら問いかける。
「え、えっと‥‥これは気持ちの現われって言うか」
 ネコタマが言葉を返そうとすると、服の裾をくいくいと引っ張る何かに気づいて其方へと視線を移す。すると白い髪に赤い瞳の少女がネコタマを見上げていた。
「あのね‥‥初めましてなの。ファリス(gb9339)はファリスと言うの。宜しくお願いしますの!」
 にっこりと笑顔で挨拶してくるファリスに「もえー!」と叫びながらネコタマはぎゅーっと抱きしめて「こちらこそよろしくー!」と言葉を返す。
「姉様、どうしてそんな物、頭につけているの?」
 かくりと首を傾げながら問いかけてくるファリスに「あたしは今回が初めてだし、初心者ってことでキメラが早く倒れてくれるように!」と言葉を返すのだが‥‥。
「そんなこと、あるはずないと思うの」
「ぎゃふん」
 ばっさりと斬られてしまい、ネコタマは次に続く言葉を返す事が出来なかった。
「今回は鼠か、まぁたまにはこういう気が楽な任務もいいかな」
 ユウ・ナイトレイン(gb8963)が呟いた時「ちょっとー!」とネコタマがびしっと指を指しながらずいずいとユウに近寄っていく。
「キミにとっては気楽な任務でもこっちは真面目にビビリ震いしてるんだからねー!」
 腰に手を当てて叫びながら、ネコタマの足は既に震えている。
「いや、それは分かってるが‥‥勿論気を抜いたりはしないし、気合はいれていくつもりだけど」
「それならいいけどー!」
 ふん、とまるで先輩風のようなものを吹かせながらネコタマは言葉を返した。
「とりあえず、初めての任務で緊張するなって方が無理かもしれんがあまり気を張り詰めると良い事はないぞ、適度に肩の力を抜けよ」
 ユウの言葉に「むー、それが出来たら苦労しないのですよっ」と肩をがっくりと落としながら言葉を返す。
「鼠という事で素早そうだが、まっ、わしらの敵ではない」
 佐賀繁紀(gc0126)は奉天製SMGを持ちながら呟く。
「ふふ‥‥初任務に鼠とはあんまりエレガントじゃないけど‥‥僕はエレガントだね♪」
 きらん、と鏡を取り出して白鳥沢 優雅(gc1255)が呟く。その手には小銃シエルクラインと――なぜかアルティメットフライ返しが持たれていた。
「今回は宜しくねー♪ ネッチー♪」
 フライ返しを振り回しながら白鳥沢がネコタマに挨拶をしてくる。ちなみにあだ名でネコタマの事を『ネッチー』と呼んでいるが2人は初めて会う。
「タマ、ネッチーって呼ばれてるんだ‥‥?」
「いやいやいやいや、違うよ! 何かねちねちした女みたいで嫌だよ!」
 手を振りながら否定するけれど白鳥沢の耳には届いていない。
「おい、タマゴ」
「‥‥は? 何て仰いましたか? このやろう。誰がタマゴだって? あたしはタマゴじゃなくてタマコなんだけど!」
 一番嫌な呼ばれ方をされたせいでネコタマは半ギレでベーオウルフ(ga3640)に近寄りながら話し掛ける。
「ヒヨコにもなっていない初心者にはちょうど良い名前だ」
 尚も『タマゴ』と呼ぶベーオウルフに「だからタマゴは止めろって言ってるでしょー!」と今にも掴みかかりそうな勢いだったけれど、他の女性能力者達によってそれは止められる。
「と、とりあえずキメラ退治を頑張りましょう? それが最優先ですよ」
 不破の言葉にネコタマは首を縦に振り、能力者達は高速艇に乗って鼠キメラが蔓延る空き地へと出発していったのだった。


―― 鼠でもキメラはキメラ。怖いんです ――

 今回のキメラは空き地に現れていると資料にはあり、大きさも普通の鼠の2倍程度だと書かれていた。おまけに具体的な数は分かっておらず、何体のキメラを相手にしなければならないのかは実際に現場に行くまで分からなかった。
 そんな中、初心者のネコタマを気遣い、能力者達は班分けを行う。
 布野とネコタマは空き地入り口付近でキメラの逃走を阻止する。ベーオウルフ、高日、不破、ユウ、ファリス、佐賀、白鳥沢は空き地内でキメラを包囲&殲滅をするという班分けを行った。
「ねぇ、タマ」
 布野は適当な草をむしって、まるで猫にするようにネコタマの前でそれを揺らす。
「‥‥あすみちゃん、これどういうこと」
「え? いや、猫っぽい行動取るかなーと実験してみた」
「あ、あたしは名前は猫っぽいけど猫じゃないもん!」
 酷いよっ、と言葉を返しながらネコタマが抗議すると「あはは、ごめんごめん」と布野が可笑しそうに笑いながら言葉を返した。
「そーいえば、キミは何でフライ返しなんて持ってきてるの?」
 ネコタマが白鳥沢に問いかけると「ふふふ‥‥」と背景にキラキラしたものを飛ばしながら髪をかきあげて説明をする。
「今日の任務、優雅な僕にはフライ返しを持っていくほうがいいと御告げがあったのさ。だから別に間違えて持って来たわけじゃないよ? 優雅な僕が武器を間違えて持ってくるなんてありえないからね」
(「間違えたんだ‥‥」)
 白鳥沢の説明を聞きながらネコタマは心の中で呟く、おそらく他の能力者達も同じ事を思っているのか、ネコタマと同じ表情で白鳥沢を見ていた。
「キメラがおる空き地までもうちょいやなー」
 高日の言葉にネコタマがびくりと大げさに肩を震わせた後に足も震わせ始める。
「タマー? さっきあの人も言うとったけどあんまり気構えし過ぎるといらん怪我するで? うちらもおるんやし適度に気ぃ抜いていこ」
 高日が苦笑しながらネコタマに話し掛けるけれど、やはり初任務と言うことが彼女に過度の緊張を与えているのだろう。
(「同じ初任務でもあっちとは大違いだな」)
 ユウは心の中で呟き、ちらりと白鳥沢を見る。彼も初任務らしいのだが、あまり緊張しているようには見えなかった。
「心配するな、敵をお前らの所には通さん」
 ネコタマの頭を軽く叩きながらベーオウルフが震えるネコタマを励ますように呟く。勿論この言葉を実行してしまってはネコタマの為にならないので、戦力を削いだキメラを意図的にネコタマ、そして布野の方へと通すつもりではあった。
(「守ってばかりじゃ、こいつの為にはならんからな」)
「さぁて、乱獲の時間だぜ、ヒャッハー!」
 佐賀が楽しそうに叫び、能力者達は空き地へとやってきた。恐らく能力者達がやってくるまでの簡易バリケードを住人達が張ったのだろう、今にも崩れそうなバリケードだったけれど能力者達が来るまでの時間は稼げたらしく、能力者達はバリケードの中へと入っていく。
「さて、あたしとタマは此処で退治しそこなったキメラの駆除をするからね」
 入り口付近で布野とネコタマは立ち止まり、他の能力者を見送る。
「だ、大丈夫かなー‥‥あたしって結構土壇場に弱いんだよねー‥‥あううう」
「ファリスも頑張るの! だからネコタマ姉様もファリスと一緒に頑張るの!」
 ファリスが怯えるネコタマを励ます、自分よりも年下の子供に励まされ、ネコタマもしっかりしなくちゃと考えたのだろう。首を縦に振り、震える手で武器を手に持つと「わかった、がんばるよ、あたし」と言葉を返し、それぞれ戦闘態勢を取るのだった。


―― 戦闘開始・鼠キメラ VS 能力者達 ――

「質より量か‥‥」
 ベーオウルフは愛用の屠竜刀を構えながら呟き、うろちょろと走り回るキメラに向けて攻撃を仕掛ける。今回はあまり苦戦する相手でもないので、ベーオウルフはキメラの耳や尻尾を切ったり、髭だけを切ったりなど目標を持って戦闘を行う事にしていた。
「ちょこまか動いたところで、そうは問屋が卸さない、てね」
 高日は番天印で動き回るキメラの牽制を行いながら、ばらばらに散っているキメラを一箇所に集めていく。
「一瞬六斬‥‥的が小さくても逃がさないっ!」
 不破は彼女愛用の特注武器・二刀小太刀『銘無し』を構えてスキルを使用しながら攻撃を仕掛ける。
 ユウも二刀小太刀・永劫回帰を駆使してキメラへと攻撃を仕掛ける。いくら鼠の二倍程度の大きさを持っているからと言っても、やはり小型な事に変わりはなく攻撃が当てづらい。
「‥‥まだ、大丈夫みたいだな」
 ユウはチラリと布野とネコタマの方に視線を移す。彼はいつでも2人のフォローに入れる位置に立ち戦闘を行っている。
「えいっ」
 ファリスは脇に抱えたグラーヴェでスキルを使用しながらキメラへと攻撃を仕掛ける。脇に武器を抱えることでバランスを取って、攻撃をしていた。
「逃げ回るしか出来ないのか!」
 佐賀は逃げ惑うキメラに奉天製SMGで攻撃を行う。スキルも使用しながら攻撃しているため弾丸の威力が上昇している。
「ふふ、優雅な僕にはムードメーカーという立場が相応しいね」
 白鳥沢は中間距離に立ち、髪をかきあげながら呟く。ムードメーカーと見せかけて中距離からの射撃攻撃をメインにするのかと思えば――能力者達を応援するという行動を取っている。彼なりに初任務に緊張しているのだろうか。
 しかし、意識しているのか無意識なのかは定かではないがキメラの退路を上手く断ち、能力者達にとっては攻撃しやすい位置にキメラを追い込むことが出来ている。
「数匹いったぞ! タマゴ!」
 ベーオウルフがネコタマと布野に大きな声で言葉を投げかけると「タマゴじゃなーい!」という言葉が返ってくる。
「タマ! そっちいったよ!」
 布野が自分の前に来たキメラを腕につけたゼルエル、靴に取り付けたステュムの爪で攻撃を仕掛け、退治しながらネコタマに声を掛ける。
「ふ〜ふ〜‥‥こわいぃぃぃ‥‥」
 がちがちと震える手で狙いを定めようとするけれど、震えているせいで照準が定まらない。
「落ち着いて、敵をよく狙って撃つんだよ? 焦って味方を攻撃しないでね? 大丈夫、あたしが護衛してあげるから。それに他の皆もいるんだから」
 布野の言葉にネコタマは深呼吸をして、再び銃を構える。既に弱りきったキメラ、きちんと狙いさえ定めれば退治する事が出来るだろう。
「頑張れ、タマ」
 ネコタマを不安にさせないように布野が呟く。彼女自身も足が震えているのだが、これをネコタマに気づかれてしまえば一気に彼女は不安に押しつぶされるかもしれない、そう考えて布野は震える足を押さえながらネコタマがキメラを退治するのを待つ。
 既に他のキメラは能力者達によって倒され、ネコタマの狙っているキメラのみとなっていた。
「あ、あたしだって‥‥やれば出来るんだから‥‥!」
 ネコタマは呟きながら引き金を引き、キメラへと弾丸を発砲する。彼女が放った弾は多少狙いをズレたけれど、十分に弱っていたキメラだったのでトドメを刺す事が出来、空き地に巣食う鼠キメラを無事に全部退治する事が出来たのだった。


―― ネコタマ・ワカバマーク卒業? ――

「いやぁ、皆お疲れ様だね。なんとかなったみたいで良かった良かった」
 キメラを退治し終えた後、能力者達はそれぞれ治療を行いながら集まってくると布野が労いの言葉を投げかける。
「デビュー戦お2人も、頑張ったね。偉い偉い、ちょっとは自信ついたかな?」
 布野がネコタマと白鳥沢に言葉を投げかける。
「ふふ、僕に自信喪失なんて言葉はないよ、そんな言葉は全然優雅じゃないからね」
 白鳥沢は髪をかきあげながら言葉を返し、その行動に能力者達は苦笑するしかなかった。
「ま、無事に害獣駆除が終了してよかったさ」
 佐賀がネコタマに「な?」と言葉を投げかけると「ね、ネコタマ的にやれば出来る子なんです」と偉そうに言葉を返した。
「猫井、上出来だったぞ」
 タマゴではなく『猫井』と呼ばれ、少しは認めてもらえたのかとネコタマは嬉しくなり表情を緩ませる。
「タマちゃん、次からはワカバマークいらんて。自信を持ちー、な?」
 にこっと笑いかけながら高日が話し掛ける。
「でも‥‥あたし全然役に立てなかったし、やっぱりワカバマークはいるよ‥‥」
 確かに今回、ネコタマは能力者として役に立ってはいなかった。周りの能力者達にフォローばかりしてもらい、結果的に足手まといと呼ばれても仕方が無いほどだ。
「誰でも最初は怖いものですよ‥‥ね? 怖いのは私も一緒‥‥でも、誰かを守りたい。そしてその力を持つ事が出来た‥‥なら、あとは心と体が勝手に動いてくれます」
 不破がにこりと儚げな笑みを浮かべてネコタマに言葉を投げかける。
「依頼は1人で行く事は滅多にない筈だ、自分に出来ない事は仲間に頼ればいい」
 ユウが呟くと「そうですの! ファリスもネコタマ姉様を助けますの!」とファリスは両手で握り拳を作ってにっこりと微笑みかける。
「ありがとう、あたし‥‥これからも頑張るねっ!」

 あたし、猫井珠子――あだ名はネコタマ。
 今日、初めての任務に行ってきた。でも全然何も出来なくて、一緒に行った皆に迷惑ばかりかけたけど、これから頑張って強くなっていこうと思う。
 でも迷惑をかけた事は事実だから、まだワカバマークは取れないけどねっ。


END