タイトル:願いを叶えてくれる人マスター:水貴透子

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/02/19 03:33

●オープニング本文


だれか、おねがいです。
わたしの、おねがいをきいてください。
きっと、むずかしいことだろうけど‥‥わたしのおねがいをかなえてください。

※※※

きっと、わたしはしんじゃうけど
つぎにうまれてきたときは、こころからわらえるようなせかいになっていてほしいです。
そんなせかいで、パパとママとみんなでわらっていきたいです。

「8歳の女の子が書いた最後の手紙よ」

女性能力者は手紙のコピーを見ながらため息混じりに呟いた。

「最後?」

「‥‥この子、元々身体が弱かったらしくて先日死んじゃったらしいのよ‥‥今回はその子の家付近にキメラが現れたらしいわ――尤も、もうじき売りに出される家らしいけど」

女性能力者は資料を見ながら「その子の両親、その子が死ぬより前にキメラに殺されているのよ」と言葉を付け足した。

「自分も生まれつき身体が弱く、親も亡くして決して幸せとはいえなかった筈なのに‥‥いつも笑っていたらしいわ、看護師の話だと」

「子供が死ぬ、やるせねぇなぁ‥‥」

男性能力者は大きなため息と共に資料に再び視線を落としたのだった。

●参加者一覧

リヒト・ロメリア(gb3852
13歳・♀・CA
ラグナ=カルネージ(gb6706
18歳・♂・DG
陽山 神樹(gb8858
22歳・♂・PN
八尾師 命(gb9785
18歳・♀・ER
ブロンズ(gb9972
21歳・♂・EL
ユーリア・パヴロヴナ(gc0484
18歳・♀・HG
久我 源三郎(gc0557
75歳・♂・HG
音無 音夢(gc0637
19歳・♀・PN

●リプレイ本文

―― 少女の願うこと、それは誰もが夢見ること ――

「心から笑える世界。手を取り合って、笑い合える世界。今はまだ、笑い飛ばされる夢物語だけど‥‥」
 リヒト・ロメリア(gb3852)は少女が最後に書き残した手紙を見て小さなため息と共にポツリと呟いた。
 今回キメラが現れたのは、その手紙を残した少女の家の近く――少女の死に直接関係はないけれど、自分と同じ思いを持っていた少女の家付近に、両親との思い出が詰まっていたであろうその場所にキメラが存在する事がリヒトは許せなかった。
(「心から笑える世界‥‥か、バグアが来なければこの子も多分幸せに過ごせたのかもなぁ‥‥」)
 陽山 神樹(gb8858)は心の中で呟く。少女は病死だと能力者には伝えられていた。たとえバグアがいなくても少女の死は回避できなかったかもしれない。
 だが両親に看取られることなく逝ってしまうのだけは回避できたはずだ。
(「俺はバグアからまだ何も奪われてないけど、こんな小さな少女の願いを壊す奴らは‥‥ブッ倒す!」)
 陽山は拳を強く握り締めながら、少女の願いに誓うように心の中で叫んだ。
「‥‥少女の願いくらいは叶えたいところだが‥‥」
 久我 源三郎(gc0557)は手紙を見ながら呟いた。少女は何も我侭を言っているわけではない、ただ皆で笑いあえる世界に生まれて来たいと願っているだけ。
「死んでしまったこの子の為に‥‥できることは願いをかなえてあげる事だけですからね」
 久我は手紙を見ながら少しだけ寂しそうに呟いた。
「さぁって、お嬢ちゃんの願いを叶えにいきますかね」
 大きく伸びをしながらラグナ=カルネージ(gb6706)が呟く。面倒そうな口調で話してはいるけれど、彼なりに少女の事を考えてはいるのだ。
「それでは、改めて作戦の確認を行いますよ〜」
 八尾師 命(gb9785)が能力者達に話し掛ける。
 作戦を確認しながらブロンズ(gb9972)は(「以前にもこんな依頼受けたっけな」)と心の中で呟いていた。
「私は誘導班ですね、分かりました」
 音無 音夢(gc0637)が作戦の確認作業を終えた後に呟く。
「私は待ち伏せか。さて、足手まといにならないように頑張らなくっちゃね」
 ユーリア・パヴロヴナ(gc0484)は小銃 ブラッディローズに弾丸を込めながら意気込むように呟く。今回が初任務の彼女や久我は緊張も意気込みも他の能力者達以上にあるのだろう。
「それじゃ、行こうか。一応近隣の住民は避難済みだって書いてあるけど早く倒しちゃうに越した事はないしね」
 リヒトは呟き、他の能力者達と共に高速艇へと乗り込んでキメラが徘徊する住宅街を目指したのだった。


―― 住宅街に潜むキメラ ――

 高速艇に乗って能力者達はキメラがいるという住宅街から少し離れたところに降り立った。住宅街と言うこともあり、家と家が密集している事から少女の家付近に高速艇を停める事が出来なかったのだ。
「まぁ、住人は避難済みらしいし俺らも気ぃつけとけば大丈夫だろ」
 ラグナが呟き、ひっそりとしている住宅街を歩き出す。
 今回の能力者達は迅速に任務を終えるべく班を分けて行動する事に決めていた。
 誘導・リヒト、ブロンズ、音無。
 待ち伏せ・ラグナ、八尾師、ユーリア、久我。
 足止め・陽山。
 誘導班がキメラを誘導し、その後ろを陽山がついていき、誘導からキメラが逸れないようにする――そして待ち伏せ班の待つ場所まで誘導したらすぐに戦闘を開始してなるべく早めに片付ける。
 これが今回の能力者達が立てた作戦だった。
「キメラと接触したり、近くなったらトランシーバーで連絡するね。ボク達もなるべく気をつけるけど陽山さんもキメラに注意をお願いね」
 リヒトが陽山に言葉を投げかけると「おう、まかせとけ」と頼もしい言葉を返す。
「それじゃ、行くか」
 ブロンズが呟き、能力者達は行動を開始したのだった。

※待ち伏せ班※
 ユーリアは本部を出発する前に地図を受け取っており、誘導場所に印をつけたものを誘導班にも渡していた。
「それにしても、これだけの家があって人の気配が全くしないのはちょっと不気味だな」
 ラグナが周りを見渡しながら呟く。近隣住民は全て避難済みなのだから人の気配がないのは当たり前なのだが、確かに彼の言う通り、これだけの家から人の気配が感じられないのは不気味だ、昼間でもこれだけ不気味さを感じるのだから、夜だったらもっと不気味だったことだろう。
「しかし、住人が残って危険にさらされるよりは‥‥」
 マシでしょう、と久我は呟く。
「そうですね〜、誰かが怪我とかしちゃうのはいやですし‥‥とりあえずは、建物とか壊さないように気をつけましょ〜」
 八尾師は呟くと「そうね、キメラは倒したけど家も一緒に倒壊しちゃってます、じゃ話にならないものね」とユーリアも言葉を返した。
 そしてユーリアは一度大きな深呼吸をした後に自分が隠れやすい場所を探し始める。射撃を攻撃法としている彼女は真っ向からではなく、隠れ潜みながら前衛を援護する為に適した場所を探しているのだ。
「あ――――‥‥待ってる時間っつーのも面倒だなぁ‥‥」
 はぁ、と大きなため息を吐きながら呟く。
 その時だった、トランシーバーから「キメラと接触した」という内容の報告が来たのは。

※誘導班、足止め班※
「いない、か‥‥」
 少し時間を遡って、まだキメラを見つけていない頃――リヒトはため息と共に小さく呟く。簡単に見つかるわけではないと分かっているけれど、やはり少しだけ逸る気持ちがある。
「それでもキメラがいるのは間違いないみたいだな」
 ブロンズが指差しながら呟く。彼が指し示した方向にリヒトと音無が視線を向けるとそこには車庫だったであろう場所が滅茶苦茶に破壊されていた。
「‥‥他にも‥‥ひび割れているところとか‥‥」
 音無がポツリと呟く。確かによく見れば壁がひび割れていたり、地面に不自然な穴が開いていたりとキメラがいるという証拠になりえる事がたくさんあった。
「‥‥誰も、こんな事は望んでいないはずなのに‥‥毎日を、ただ平和に暮らす‥‥それさえもキメラやバグアは‥‥奪っていく」
 悲しそうな表情をしながら音無が呟いた――その時だった。少し離れた場所から獣の咆哮のような激しい声が聞こえたのは。
「「「!」」」
 誘導班の後ろについてきていた陽山も頭を巡らせて声の出所を探る。すると、大型犬を5倍程度にしたくらいの大きさをしたキメラがのそりと現れた。
「あれが‥‥今回のキメラですか‥‥」
 音無が静かな声で呟く。
「実際見るとでかいもんだな」
 ブロンズが苦笑気味に呟くとトランシーバーを取り出す。
「こちらブロンズ、命か? 作戦通りにそっちに向かう、そっちも作戦通り頼むぞ」
 ブロンズはそれだけ告げるとトランシーバーを切り、誘導する為に行動を開始する。
「さぁ、こっち!」
 リヒトが拳銃を構えてキメラへと一発放つ。するとまだ能力者達には気づいていなかったのか、のろのろとした動作で振り向き、赤い瞳が大きく見開くと同時に能力者達めがけて襲いかかってくる。
「そうそう、そのまま俺たちにしっかりとついてこいよ」
 ブロンズは大剣 アウゲイアスでキメラの攻撃を受けながら小さく呟く。
 そして陽山は誘導班から比較的近い位置におり、キメラが誘導から逸れないように後ろから非覚醒状態でついていっていた。
「お願いだから気づくなよ‥‥」
 誘導そのものは順調にいっており、陽山はどこか祈るような口調で呟いた。
 そして、待ち伏せ班が待機している公園が見えてきて、公園に入ると同時にリヒトは180度反転してスキルを使用しながらキメラの両足を狙って撃つ。突然の事で回避出来なかったのだろう、彼女が放った弾丸は全てキメラの足を撃ちぬき、公園に似つかわしくない悲鳴が響き渡り、それが合図となって戦闘が本格的に開始したのだった。


―― 戦闘開始 能力者VS キメラ ――

「やーーーーーっとおいでなすったか。んじゃ、行くぜぇ!」
 ラグナはグラファイトソードを振り上げ、足を撃たれて動きが鈍くなったキメラ目掛けて振り下ろす。キメラはラグナの一撃も受けたが、倒れる事はせずに陽山へと攻撃を仕掛ける。
「おっと! 本当に単純な攻撃しかしてこないなぁ」
 真っ直ぐからの避けやすい攻撃、陽山はキメラを見ながら苦笑して呟いた。そしてお返しと言わんばかりに陽山がディガイアを構え、スキルを使用しながら攻撃を仕掛けた。
「みんなが笑いあえる世界の為に、がんばりますよー」
 八尾師はスキルを使用して能力者達の武器を強化し、そしてキメラの防御力を低下させた。
「これでもくらってな」
 ブロンズが大剣アウゲイアスで攻撃を仕掛けようとしたのだが、キメラの手の方が僅かに早く攻撃がブロンズに直撃する――瞬間。
 ――――ぱぁん。
「大丈夫?」
 ユーリアが小銃ブラッディローズを構えたまま、ブロンズへと言葉を投げかける。
「あぁ、大丈夫だ。助かった」
 言葉を返しながらブロンズはキメラへと攻撃を仕掛ける。もともとの力量そのものは大した事のないキメラなのだろう。能力者達に反撃はするもののキメラはまったく立ち回れていなかった。
「残念だが、逃がしてあげるわけにはいかないな。大人しく戻りたまえ」
 勝てないと思ったのかキメラが逃げようとすると久我がケルビムガンで足を撃ちぬきながら言葉を掛ける。穏やかな口調だけれど、それはどこか逆らう事を許さない絶対的な言葉にも聞こえた。
「‥‥逃がしません‥‥逃がすわけにはいきません‥‥」
 音無もククリナイフを構え、スキルを使用しながらキメラへと攻撃を仕掛ける。
「ここで逃がしたら、きっと誰かが苦しむ、傷つく――だから、逃がさないよ」
 リヒトは拳銃ラグエルで攻撃を仕掛け、その攻撃にあわせてユーリアもスキルを使用しながら「今‥‥這いつくばれっ!」と叫んで攻撃を仕掛けた。
「行くぜ、俺の必殺技‥‥! クリムゾン‥‥ディバイダァァ!!」
 ラグナはスキルを使用しながら攻撃を仕掛け、キメラに大きな一撃を与える。そして追撃するように陽山も攻撃を仕掛ける。
「大人しくやられてくれたまえ」
 久我は呟きながらスキルを使用して援護を行う。
「これで終わりだ!」
 ブロンズは叫びながらキメラの首を刎ね、能力者達は無事にキメラを退治する事が出来たのだった。


―― 少女の願いが見る未来は ――

 キメラを退治した後、能力者達は少しだけ休憩してから帰還する事にした。
「夢物語で終わらせない。絶対に‥‥心から笑える世界を作ってみせるから。だから‥‥そこで、待ってて‥‥三人で待ってて」
 リヒトは空を仰ぎながら逝ってしまった少女へと言葉を投げかける。少女はきっと天国にいるだろう、そう思ってリヒトは空を仰いでいた。
「これでちったぁ、安全になるといいんだけどな。願いは叶ったか、嬢ちゃん」
 ラグナも呟く。少女が願ったのは全ての『平和』だからまだ叶っているとはいい難いけれど、少しでも平和に近づいてくれればとラグナは思う。
(「心から笑えるような世界‥‥作って見せるからな」)
 陽山も座り込んだまま空を見上げ、少女に話し掛けるように心の中で呟いた。
「貴女の願いはいつか必ず。だから貴女も懲りないでもう一度生まれてきて、ね‥‥全てが平和になった世界に」
 ユーリアも穏やかな表情で吹き抜ける風の中、空を見上げて呟く。
「‥‥いつか‥‥平和な世界を‥‥」
 音無も呟き、能力者達は高速艇へと戻っていく。
 その際、二匹目がいないかを確認しながら戻ることにした。
「念には念を‥‥勝ったと思った時が一番危ないからな‥‥」
 久我は帰還する前にキメラが本当に死んでいるかを銃口を突きつけたまま確認し、死亡が確認できたところで銃を懐へとしまう。
「私、この手紙の女の子が入院していた病院にいってきますね〜」
 八尾師が手紙を見せながら呟く。
「お墓参りが出来たらしたいですし〜、最後の願い、叶えられるように頑張りますねっていいたいんです〜」
 八尾師は「どんな女の子だったかも知りたいですし」と言葉を付け足した。


 その後、八尾師を除く7人の能力者達は報告の為に帰還していく。
 そして八尾師は病院に赴き、少女のお墓がある場所を聞いて、お墓参りをしてから本部へと帰っていったのだった。

 少女の願いが叶う日、それは近くない未来かもしれないけれど、きっと来る未来なのかもしれない。


END