タイトル:【1月】獅子が舞う日マスター:水貴透子

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/01/26 00:42

●オープニング本文


あのキメラはきっと悪い子のボクたちを食べに来たんだ‥‥。

だから、きっとボクも殺される。

※※※

「あっくんは悪い子だから食べられちゃったんだ。次はボクが食べられる、ボクが殺されちゃうよ」

空ろな瞳で独り言のように呟くのは、先日キメラ被害に遭った少年だった。

この街には、近くに森があってその奥には何十年も放置されている廃校があった。

昔は少数の子供達で賑わっていた学校だったらしいが、街の発展につれて隣町の学校と合併したのだと住人は語る。

その廃校はいつ崩れてもおかしくない状況にあり、大人たちは子供達に「危険だから」という理由でなるべく近寄らせないようにしていた。

しかし、好奇心の塊のような子供達には「行くな」という言葉は「行っていい」という言葉にしか聞こえないものである。

アツシとタイチ、この2人は廃校となった場所を『秘密基地』として遊び場にしていた。

玩具やお菓子、飲み物などを持ち込んで2人で遊ぶ時は必ずこの秘密基地で遊んでいた。

しかし子供達は気づかなかっただろう、いや、夢にも思わなかっただろう。

その秘密基地にキメラが迷い込んでいることに。

いつも2人で遊んでおり、2人でいるのが当たり前となった子供達が死というモノによって引き裂かれることに。

「行っちゃダメっていわれてる場所にボクたちはいった‥‥だから悪い子なんだ、だからボクもあっくんみたいに食べられて殺されるんだよ」

●参加者一覧

レイン・シュトラウド(ga9279
15歳・♂・SN
アンジェラ・D.S.(gb3967
39歳・♀・JG
七市 一信(gb5015
26歳・♂・HD
紅鬼 レイム(gb8839
18歳・♂・FT
紅蓮(gb9407
18歳・♂・SF
八尾師 命(gb9785
18歳・♀・ER
9A(gb9900
30歳・♀・FC
アセリア・グレーデン(gc0185
21歳・♀・AA

●リプレイ本文

―― 好奇心が招いた悲劇 ――

「子供達にとって、秘密基地は特別な場所なのに‥‥」
 レイン・シュトラウド(ga9279)は資料をくしゃりとしながら小さく呟く。
「秘密基地ですか〜‥‥子供達の夢ですよね〜」
 八尾師 命(gb9785)も資料を見ながら呟いた。今回はその秘密基地を持ったばかりに子供が犠牲となったのだ。
(「‥‥くそ、ボクと似た様な境遇か、こんな子供がさ!」)
 9A(gb9900)は資料に挟まれてあった生き残った子供の情報を見ながら呟く。恐らく子供の心では到底受け止めきれないほどの傷がつけられたであろう子供に自分の過去を重ね、そして何が何でもキメラを退治する事を決意する。
(「獅子舞だぁ? 知るか、必ずブッた斬る‥‥!」)
「生き残った子も心配ですね‥‥自分を責めてなければ良いのですが‥‥」
 レインの呟きに「実は‥‥」とオペレーターの室生 舞(gz0140)が言い辛そうに口を開いた。そして彼女から告げられたこと、それは生き残った子供が『ボクも殺される』と繰り返し呟いているという事、キメラの形状は獅子舞のようなもの。だから悪い子のボク達は殺されるんだ、まるで他の事が見えていないかのように何度も何度も繰り返しつぶやいているという事実を知って能力者達は言葉を失った。
「聞く所によると日本の新年の象徴たる容姿みたいだけど、それで既に人を害しているのでは討伐するのはやむ得ないという事ね」
 アンジェラ・ディック(gb3967)が「尤もキメラだから討伐するのは当然でしょうけど」と言葉を付け足しながら呟く。
「当然さね、子供を殺して、傷つけて――パンダにだって逆鱗の1枚や2枚、当然あるさね」
 七市 一信(gb5015)は怒りを露にしながら呟く。
「‥‥同感だな」
 紅鬼(gb8839)も短く言葉を返す。子供が犠牲になっているという事実が彼の機嫌を悪くさせているのだろう。纏っている空気がぴりぴりとしたものになっていた。
「相棒、あんまりカリカリすんなって、そんなんじゃ怪我しちまうぜ?」
 紅鬼の相棒である紅蓮(gb9407)がへらへらとした表情で紅鬼に話しかける。彼がへらへらとしている理由、それは今回の任務を軽く考えているから――ではなかった。彼も子供が犠牲になっている事で相棒の紅鬼や他の能力者達がぴりぴりとする気持ちが分かる。だが此処で全員が怒りに身を任せても良いことはないと考えて、あえて軽く振舞っているのだ。
 その心の内で怒りを隠せないという彼の心情に気づいている者は果たして何名いるのだろうか。
「今回は建物が非常に古い事もあり、キメラと同様に気をつけねばなりませんね」
 アセリア・グレーデン(gc0185)が呟く。そう、確かに今回はいつ倒壊してもおかしくない場所での戦闘を強いられる事になるだろう。その点も能力者達の不安材料の1つだった。
「それじゃ、速やかに実行して達成しましょう。コールサイン『Dame Angel』、廃学校に潜む獅子舞キメラを現場を崩さないよう追い立てて、殲滅実行するわよ」
 アンジェラが呟き、能力者達はキメラを退治する為に高速艇へと乗り込んで現場へと向かっていったのだった。


―― 廃校 友を失った場所 ――

 今回の能力者達は倒壊寸前の廃校で迅速にキメラを退治する為に班を4つに分けて行動する事にしていた。幸いな事に廃校そのものの規模は小さく、キメラ捜索に関してはそこまで時間が掛かる事はないと思われていた。
 1班、1階探索・アセリア、レインの2人。
 2班・2階捜索・紅鬼、紅蓮の2人。
 後詰待機・9A、八尾師の2人。
 校庭待機・七市・アンジェラの2人。

※1班※
「気をつけないと、一気に倒壊してしまいそうですね。慎重に行きましょう」
 歩くたびにギシギシと軋む音を響かせる廊下を見ながら小さく呟く。
「確かに‥‥すぐに倒壊という事はなさそうですが急いだ方が良い事には間違いないですね」
 アセリアも言葉を返す。キメラを探してて校舎が崩れて生き埋めになりました、では洒落にならないのだから。
「‥‥いません、ね」
 レインが警戒しながらキメラを捜索するのだが、気配は全く感じられない。
「そうです――‥‥ね」
 アセリアの言葉が途中で途切れ、レインが不思議に思って彼女が覗いている教室を覗き見ると‥‥そこには目を逸らしたくなる程の血痕が残されていた。
 恐らくこの教室こそが犠牲となった子供が殺された現場なのだろう。生々しく残されている血痕はキメラへの怒りを倍増させるには十分すぎるものだった。
「どうやら一階にはいないようですね、2階の方でしょうか」
 レインが呟くと「そうかもしれないわ、上から少しばたばたとした音が聞こえるから」とアセリアは言葉を返したのだった。

※2班※
「行くぞ、相棒」
 紅鬼が紅蓮に言葉を投げかけて2階へ続く階段を登っていく。ぎしぎしと軋む音はキメラとの別の意味での緊張を2人へと与えていた。
「それにしても小さい学校だなぁ、学校として機能してた頃はどのくらいの生徒がいたんだろうな」
 紅蓮が教室を見ながら呟く。教室の数も少なく、恐らくは1学年に1つの教室だったのだろう。キメラを捜索する中で紅蓮と紅鬼は2階の教室を1つ1つ見ていく。
「いないな‥‥」
「焦っても仕方ないって。こういうのはじっくりと探していこうぜ」
 逸る紅鬼を宥めつつ紅蓮が言葉を返す。その時、1班からの通信が入り、犠牲となった子供が殺された現場を発見したと知らされた。
 そして、1階にはキメラがいなかったという事も。
「‥‥1階にはいなか‥‥」
「どうした?」
 紅鬼が途中で言葉を止め、紅蓮が眉を顰めて問いかける。すると『ギシ‥‥ギシ‥‥』と何かが廊下を歩いている音が聞こえる。歩く音は1人分、仲間の足音であるはずはない。それを分かっているのか紅鬼と紅蓮の2人はそれぞれ武器に手を掛ける。
 そして曲がり角のところに手が掛かり、獅子舞のような顔をしたそれが姿を現した。
「深紅に染まりし闇の鬼、紅鬼レイム‥‥いざ」
 紅鬼が呟くと「あんまり接近戦は得意じゃないんだけどなぁ、研究させてもらうぜ」とダンタリオンを手にして紅蓮も攻撃態勢を取る。
「キメラを発見した。これから外に誘導する」
 紅蓮はトランシーバーから他の班へと連絡を入れて、紅鬼と共に行動を開始する。

※3班※
「どうやらキメラと接触したようですね〜」
 八尾師が双眼鏡で2階を見ながら呟く。窓に面した場所でキメラと接触しているので、後詰待機班の2人としては行動をしやすかった。
「恐らくもうまもなくキメラが外に来ると思われます〜」
 八尾師が他の班の能力者達にトランシーバーで連絡を行う。その間、9Aはジッとキメラを強く睨むように見据えていた。覚醒を行い、彼女の心境を表すような真っ黒な髪の毛へと変化する。
 そしてキメラが近づいてくるのを見て武器へと手を掛ける。
「ようやく来たな‥‥待ちくたびれたっ!」
 9Aは校舎から出てきた2人の後ろから追いかけてくるキメラへと斬りかかりながら叫ぶ。
「さぁ、子供の仇は取らせてもらいますよ〜」
 八尾師も呟きながらキメラを包囲するように動き始めた。

※4班※
「来た、かな」
 七市は呟きながらバイク形態にしていたAU−KVのエンジンを吹かす。トランシーバーからの連絡で既にキメラが外へと出ている事は知っていた。3班が逃げないようにしており、アンジェラと七市が向かう途中の事だった。
「そっち側に行ってしまった、申し訳ない!」
 9Aの言葉を聞いて、アンジェラと七市はキメラを迎え撃つ事にしたのだ。もちろん連絡を受けた他の能力者達も此方へと来る連絡は受けている。
「‥‥子供を殺しておいて、自分がヤバイと思ったら逃げる‥‥許せる範囲を超えているわね」
 アンジェラが呟くと同時にキメラが2人の前へと姿を現す。
「はいはい、いらっしゃい。地獄の入り口は此方ですよー」
 七市がベオウルフを構えて駆けて来るキメラ目掛けて攻撃を仕掛ける。七市は子供が犠牲になっている事で腸が煮えくり返る思いがあったけれど、それは着ぐるみの中へと押し込める。
(「‥‥じゃなくちゃ、優しく明るいパンダさんを忘れそうだしな」)
 心の中で呟きながら七市はキメラを逃さないように足止めをする。そして七市の攻撃の後にアンジェラがスキルを使用しながら攻撃を行う。
 そこへバラバラに行動していた能力者達が合流して、本格的に戦闘が開始されたのだった。


―― 戦闘開始・キメラ VS 能力者 ――

 能力者たちは合流するとキメラを逃がさないように包囲する形で陣形を組んだ。
「罪は償ってもらいますよ」
 レインがスキルを使用しながら心臓を狙って攻撃する――がキメラによって避けられてしまい、心臓を狙った攻撃は腕へと当たった。
「此処じゃ、校舎に被害が及ぶかもしれないね」
 アンジェラは呟くと、キメラへと通常攻撃を行いながら、校舎に被害が及ばない所まで下がっていき、大丈夫だと思う所まできたらスキルを使用してキメラへ攻撃を仕掛けた。
「お前さんがキメラじゃなかったら芸の1つや2つくらい見せてやるんだけどなぁ」
 七市は呟きながら射撃組の邪魔にならないようにスキルを使用しながらキメラへと攻撃を仕掛ける。
「あんまり長引かせると余計な傷が増えるからね、さっさと終わらせてもらうよ」
 七市の言葉に「同感です〜」と八尾師が言葉を返し、スキルを使用して能力者達の武器を強化する。
 そして次に再びスキルを使用して今度はキメラの防御力を低下させたのだった。
「お前は絶対に逃がさないよッ! こいつで‥‥ショォーッ‥‥ダウンッ!」
 9Aはスキルを使用してキメラへと叫びながら攻撃をした。
「幼き命と心を奪ったもの‥‥その命、神に返しなさい」
 静かに目を伏せていたアセリアがきつい視線でキメラを見て愛用の斧剣で攻撃を仕掛ける。キメラは彼女の攻撃を避けようとしたのだが、射撃によってバランスを崩されてしまい避ける事は適わずアセリアの攻撃をマトモに受けてしまう。
「染めろ紅月‥‥紅光斬月」
 紅鬼がスキルを使用して攻撃を行い、紅蓮は紅鬼の武器を強化する。紅鬼の攻撃が終わった後にアセリアが援護射撃などを受けながら攻撃を仕掛ける。
「行くぞ‥‥」
 紅鬼が紅蓮に合図を送ると「行くぜ相棒!」と言葉を返す、その言葉の後に「後で覚えてろよ」という小さな言葉も付け足して。
「「紅光十字!!」」
 紅蓮を踏み台にして紅鬼が上から勢いよく斬りつけ、その間に紅蓮が機械剣で横斬りにして、攻撃を行う。傷口が十字に見える事からそう名づけられたのだろう。
 そしてレインとアンジェラの連携攻撃により、キメラは立ち上がる間もなくそのまま動かなくなったのだった。


―― 少年の心 ――

「貴様の罪‥‥命を持って償え」
 キメラを退治した後、紅鬼は吐き捨てるようにキメラを一瞥しながら呟く。
「ん? 何処にいくんだい?」
 他の能力者達は高速艇の場所へと歩こうとしているのに、八尾師だけは校舎の中に戻ろうとしている事を疑問におもった9Aが問いかける。
「ごめんなさい〜‥‥ちょっと宝物を探しに‥‥」
 八尾師は子供達が秘密基地としてこの校舎を使っていた頃に持ち込んでいた玩具などを生き残った子供に持って帰ろうと考えていたのだ。
 それを知った何名かの能力者達は一緒に校舎内へと入り、生き残った子供‥‥タイチに持って帰る玩具などを持ってタイチがいる場所へと向かった。


「ボクは殺される‥‥悪い子だから殺される、あっくんみたいに殺される‥‥」
 上半身だけを起こした状態でタイチは俯きながらぶつぶつと言葉を繰り返している。
「確かに、きみは悪い事をしてしまったのかもしれません」
 レインの言葉にタイチはびくりと肩を震わせながら拳を強く握り締める。
「でも、お友達はきみのことを責めてないとおもいますよ」
「お前に何が分かるっ! あっくんはボクを恨んでる、ボクだけが生き残ったから憎んでるんだ!」
 タイチはそこら中に響き渡るような大きな声で言葉を返してくる。恐らくタイチはそう思う事で許しを請うているのだろう。そして責め続ける事で自分で自分を罰しているのだ、おそらく無意識に。
「お姉さんも‥‥たくさん友達を亡くしたよ、キメラのせいで。でも挫けるなんてつまんないよ」
 9Aは窓から外を見ながら言葉を続ける。
「あんな奴らのせいで嫌な気持ちになるなんて、馬鹿馬鹿しいじゃないか。ゆっくり、元気になれよ‥‥その方があっくんも喜ぶよ」
 9Aの言葉にタイチは大声で泣き始めた。
「これを‥‥持ってきました」
 八尾師が差し出したのは廃校に残されていたタイチとアツシの宝物、中には血で汚れているものもあったけれど、タイチが持つべきだと判断して持って来たのだろう。
「ボク‥‥あっくんを助けられなかったのに、生きてていいのかな‥‥あっくんはボクをうらんでないのかな」
 ぼろぼろと涙を零してタイチが呟く。
「キミの友達はそんな恨み言を言う友達だったのか?」
 アンジェラが問いかけるとタイチは勢いよく首を横に振る。
「あっくんは優しかったよ、いつもボクを助けてくれた‥‥」
「だったらあっくんの分まで楽しく生きていかなくちゃ。きっとあっくんもそれを望んでいるはずだよ」
 9Aの言葉にタイチは『宝物』を強く抱きしめながら「ごめんなさい、あっくん」と呟いたのだった。
「ほら、泣いてばかりじゃだめだろ」
 七市は元芸人という事を生かして着ぐるみでタイチを笑わせようとする。それはタイチが前を向けるように、ちょっとでも傷ついた心を癒したいと思う事からだった。


END