タイトル:【10月】南瓜が笑うマスター:水貴透子

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/11/10 21:41

●オープニング本文


トリック オア トリート!

お菓子をくれなきゃ悪戯しちゃうぞ。

でも‥‥この悪戯には少しだけ危険が付き纏う。

※※※

夜の森には番人がいる。

カボチャの頭に大きな鎌を携えて

迷い込んだヒトを殺し食べる

夜の森には番人がいる、好奇心の代償は大きなもの。

※※※

キメラが現れてから一週間、こんな歌が子供達の間で流行り始めた。

子供というのは危険なことほど興味をそそられ、そして危険だと分かっているはずなのに手を伸ばす。

子供ゆえの危機感の欠如、自分だけは大丈夫という根拠のない確信を持っているのだろう。

「犠牲者は大人が一人に子供が二人か、子供の方は明らかにふざけて森に入ったみたいね」

女性能力者は資料を見ながらため息混じりに呟く。

「最初の犠牲者が大人、あとの子供達は二日後に夜の森に入って殺された、か」

男性能力者もため息混じりに資料に書かれた事を読み上げた。犠牲となった子供二人は夜に家から抜け出して森へ向かったとされている。

しかも最初の犠牲者が殺された次の日に夜の森に肝試しで行こうと学校で募集をかけているという事実もある。

「好奇心の代償が命、お高い買い物になったわね、この子たちも」

女性能力者はため息混じりに呟き、ばさりと資料をテーブルへと放る。

「新しく情報が入りました、キメラが現在街へと侵入して、怪我人などが増えているそうです。すぐに退治に向かってもらえますか?」

オペレーター訓練生の室生・舞(gz0140)はあわただしく情報を新しいものへと書き換えていく。

現在、キメラは市街地に現れて住人達を傷つけ、殺している――‥‥。

この事実を知った能力者達は手続きを済ませ、任務へと向かうのだった。

●参加者一覧

レイン・シュトラウド(ga9279
15歳・♂・SN
紅月・焔(gb1386
27歳・♂・ER
朔月(gb1440
13歳・♀・BM
芝樋ノ爪 水夏(gb2060
21歳・♀・HD
ジン・レイカー(gb5813
19歳・♂・AA
鷹谷 隼人(gb6184
21歳・♂・SN
月城 紗夜(gb6417
19歳・♀・HD
能見・亮平(gb9492
23歳・♂・SF

●リプレイ本文

―― キメラ出現緊急警報 ――

「これ以上、犠牲者を増やすわけにはいきませんね」
 レイン・シュトラウド(ga9279)は小さな声で呟く。現在までに3名の犠牲者が出ており、尚且つ今は街へとキメラが侵入している。犠牲者が増えてもおかしくない状況にレインは感情を押し殺しつつ、街の住人達が無事で居る事を願った。
「南瓜ね‥‥食えるようなら夕飯のオカズかな?」
 朔月(gb1440)が資料にある『南瓜頭のキメラ』という言葉を見て苦笑しながら呟く。
「楽しいハロウィンの時期に、こんな悪趣味なキメラを‥‥」
 芝樋ノ爪 水夏(gb2060)が大きくため息を吐いて呟く。
「確かに。こういうのがトラウマになって子供達がハロウィン嫌いになったらどうするんだよ、まったく‥‥」
 ジン・レイカー(gb5813)が大きなため息を吐くと同時に呟く。確かに彼の言う通り、小さな子供達のトラウマになっても仕方ない出来事が起きているのだから危惧するのも無理はない。
「既にトラウマになってる可能性はありますね、変な流行り歌が出来てるくらいですから‥‥」
 芝樋ノ爪が俯きながら呟く。流行り歌が出来る位に子供達の心には今回の事件が大きく根付いてしまったのだから、と彼女は考えているのだろう。
「森の番人‥‥? 無駄に死をばら撒いた以上‥‥退場願いたいね‥‥」
 鷹谷 隼人(gb6184)が『【OR】秋月』を握り締めながら呟く。
「恐らく現場は混乱状態だろう、戦闘場所は広い場所がいいのだがな‥‥さて、そんな都合の良い場所があるかな」
 月城 紗夜(gb6417)が本部で渡された地図を見ながら呟く。大きな街とも小さな街とも言えぬ規模だったが、中心街から少し離れた場所に広めの公園がある事が記されている。
「戦闘場所にはうってつけの場所はあるようだな、さて‥‥犠牲者が増えないうちに急いだ方が良さそうだ」
 月城が呟き、能力者達は高速艇へと向かい行く。
(「キメラが街に現れたか‥‥今回が初めての仕事になるが、能力者として恥ずかしくない行動を心がけよう」)
 能見・亮平(gb9492)が心の中で呟き、少しだけ拳を強く握り締める。
(「‥‥流石にまだ解決してないうちからHENTAIなことは出来ないか‥‥」)
 紅月・焔(gb1386)は真面目な表情をしていたが、心の中は相変わらずな彼だった。
「それでは、宜しくお願いします」
 オペレーターの室生 舞(gz0140)がぺこりと頭を下げて、能力者達を見送ったのだった。


―― 混乱に落ちた街 ――

 今回の現場は混乱状態に陥っているので、能力者達はキメラへの対処班と逃げ後れた住人達の救助や誘導をする班と二つに分ける事を作戦上で決めていた。
 キメラ対処班・月城、能見、朔月、芝樋ノ爪、ジン、レインの6名。
 救助・誘導班・紅月、鷹谷の2名。
「すみません、現在の状況とキメラに関しての情報をお願いします」
 レインがばたばたと慌しく走る警官の一人を捕まえて問いかけると「混乱してるせいか、あっちでは大変なことになってるんだよ!」と言葉を返してきた。
「向こう側にキメラがいるから、皆が我先に逃げようとして向こうでは将棋倒しみたいになってるんだ」
「ふむ、結構酷い状況だな? 急いだ方が良さそうだ」
 朔月が呟くと「公園は何処にある?」と月城が警官へと問いかける。
「公園だったら此処を真っ直ぐ行った左手にある、でもキメラが付近にいるから‥‥」
 警官の言葉に「それなら好都合だ」と月城は言葉を返す。広い場所での戦闘を望み、月城はおびき出す為に囮役をする事になっている。
 だからおびき出す場所が近ければ近いほど能力者達にとって都合が良いのだ。
「俺はキメラと正面きって渡り合う事は出来ないけど、支援なら任せてくれ」
 能見が能力者達に言葉を投げかけると「頼りにしてますね」と芝樋ノ爪が言葉を返した。
「そて、それじゃさっさと退治して本当のハロウィンを楽しんでもらうとするかね」
 ジンが大きく伸びをした後、キメラ対処班と救助・誘導班はそれぞれ別行動を開始したのだった。

※キメラ対処班

 警官に言われた通り、公園に向かう道の途中でキメラの姿を確認する事が出来た。
「南瓜が家を壊すか、人に食われることはあっても人を食うことは許されないだろうに」
 ジンが呟き「目標発見‥‥さて、始めようか」と言葉を付け足した。
「貴公達は公園の方で待っていてくれ。我がキメラをおびき出して公園の方へと誘導しよう」
 月城が呟き『苦無』で自らの腕を斬る。すると白い肌から存在を主張するような赤い血がポタリ、ポタリと流れ落ちる。
「大丈夫‥‥か?」
 能見が問いかけると「問題ない、任務遂行の為なら手段など選んでいられん」と月城は言葉を返した。
「おい、キミ達はやく逃げないと‥‥って能力者か?」
 住人の1人であろう男性が能力者達へと駆け寄ってくる。
「ULTから派遣された傭兵です、状況のご説明をお願いできますか?」
 芝樋ノ爪が男性に話しかけると「酷いもんさ」と男性はため息混じりに言葉を返してくる。
「アイツのせいで怪我人は続出するわ、逃げた奴らは逃げた奴らで怪我してるって言うし‥‥あんたら能力者なら、逃げた奴らの方も助けてくれよ」
 男性が呟くと「大丈夫です」と芝樋ノ爪が言葉を返した。
「誘導の補助にも、能力者が向かっています。その、見た目は怪しいかもしれませんが、悪い人ではないので‥‥」
 少し歯切れ悪く言う彼女に男性は首を傾げるしか出来なかったが「キメラは任せたよ」と言葉を残して自分も避難していった。

※救助・誘導班
「ああ‥‥なんか懐かしいこの職務‥‥」
 紅月は混乱している状況で住人達が怪我をしないようにゆっくりと誘導をしている。紅月と鷹谷が到着するまでは「俺が先に逃げる」「いや、私が先よ!」な状況だった。
「あなた達を‥‥安全な地域へ‥‥避難させるのが‥‥僕達の任務です‥‥安心してください‥‥僕は‥‥あなた達の盾‥‥だから」
 崩れかけた建物が近くにあり、半ば暴動のような雰囲気になっていた住人達が押しかけた事により、建物の一部が崩れて住人達へと落ちる所だった。鷹谷は身を挺して住人を庇い、紅月も落ちる瓦礫を武器で攻撃して住人達にかかる負担が最小限で済むように行動した。
 そのおかげか、住人達は2人を信用して騒がずゆっくりと行動をするようになったのだ。
 しかし子供達はやはり大人しくしてくれるわけがなく、冗談をする子供はいないけれど「怖いよ」と泣き叫ぶ子供達が数名いた。
「‥‥大丈夫‥‥今、仲間達が戦ってる‥‥避難が終われば‥‥僕たちもいくから‥‥直ぐにキメラはいなくなるよ」
 鷹谷が子供達を落ち着かせるように話しかけると「うんっ‥‥」と涙を堪えながら子供が言葉を返す。
「怪我をしている」
 子供の一人に紅月が話しかけて『救急セット』で子供の怪我を治療していく。
「さて、これで避難も終わりそうだし、俺たちも向かうか‥‥」
 紅月が呟き、鷹谷と2人で住人達が避難し終えるのを確認してからキメラ対処班の方へと向かっていったのだった。


―― 攻撃開始・南瓜キメラVS能力者 ――

「気づいたか、所詮は人に牙を向くキメラか」
 月城が自分の腕を流れる地の匂いに引き付けられてやってきたキメラを見ながら淡々と呟いた。
「血に飢えた獣が、血の匂いに引き付けられて自ら地獄の罠に進むがいい」
 月城はキメラの攻撃を『蛍火』で受け止め、スキルを使用しながら反撃を繰り出す。そして完全に自分に気が向いたと判断すると、一歩、また一歩とキメラがついてくるのを確認しながら仲間達が待つ公園へとキメラを誘導していく。

「あれがそうみたいですね」
 月城の姿を確認して、その後ろからついてくるキメラを見てレインが呟く。そして愛用のスナイパーライフルを構える。
「援護しますから気にせず突っ込んでください」
 レインが呟き、芝樋ノ爪は「この周辺に逃げ遅れた人はいないようですが、確実ではないので気をつけていきましょう」と言葉を能力者達に投げかけた。
 彼女は月城が誘導してくる間の時間を使って公園内を見回り、逃げ遅れた人がいないかを確認していたのだ。
 そして、キメラが公園に足を踏み入れ、能力者達は攻撃を開始する。
「自分がされた事、今度は自分で味わいな!」
 ジンは呟きながら『隼風』を振り上げ、スキルを使用しながら攻撃を仕掛ける。大きな槍の為、キメラに攻撃を避けるすべはなく、自らが持つ大鎌で防ぐが力はジンの方が強く僅かにダメージを軽減するという結果に終わった。
「任務遂行の為、排除する」
 月城は短く、そして冷たく呟き『蛍火』と『【OR】初蝶』でキメラを攻撃する。スキルを使用しながら靭帯を狙い、攻撃するけれど大鎌によってそれは遮られ、月城は後ろへと下がらずを得なくなった。
「ふむ、一撃は確かに重いが‥‥付け入る隙は十分にある。肉を切らせて骨を断つ‥‥だな」
 月城は呟くと立ち上がり、再びキメラへと攻撃を仕掛ける。その際に攻撃を彼女が受けるが傷に構うことなく刃を進める。
「受けた以上のダメージを与えられるのなら、この程度の傷など惜しむ必要もない」
 月城が呟き、攻撃を仕掛ける瞬間に「キメラの防御力を低下させます」と能見が叫び、スキルを使用してキメラの防御力を低下させる。
 そして続いて再びスキルを使用して超機械を構えてキメラに向かって攻撃を仕掛けた。しかしその攻撃を避けるべく移動しかけたが‥‥。
「そのまま、そこで突っ立っててください」
 レインが呟きながら援護射撃を行い、スキルを使用して再び攻撃を仕掛ける。
「おっと、いくら武器が大きかろうが、当たらなきゃ単なる棒だろうが‥‥」
 キメラの攻撃を避けながら朔月が呟き『エクリュの爪』で反撃する。
 その時、銃声が響き渡りキメラの腕を打ち抜く。
「‥‥貴様は未来ある命を奪った‥‥その罪‥‥許せん!」
 紅月が『SMG スコール』と『カプロイアM2007』を構え、キメラを攻撃しながら叫ぶ。
「‥‥あなたのせいで‥‥悲しむ人がいる‥‥これ以上の悲しみを‥‥増やさないために‥‥退治します」
 鷹谷が呟き『【OR】秋月』を構えてキメラへと攻撃を行う。射撃武器を構える能力者達が援護してくれる中、接近武器を持つ能力者達はキメラへと駆け寄る。
「もう、これ以上人を傷つけさせません‥‥早く倒されてください」
 芝樋ノ爪が呟き『機械剣α』でキメラを斬りつけ、間髪いれずに朔月が攻撃を入れる。動きが鈍い為に能力者達の攻撃を避ける事も出来ず、キメラはただダメージを負っていくだけとなった。
「おいおい、何処に行くんだ? もっと遊ぼうぜ?」
 逃げようと能力者達に背中を見せたキメラに向けてジンが言葉を投げかけ、同時に槍で攻撃を行う。
「ひはっ、遊びはこうでなくちゃ、だろ?」
 ジンは呟きながら追撃を行い、月城が大きく振り上げてトドメの一撃を繰り出す。その直前で能見がスキルを使用してキメラの防御力を低下させていたおかげで与えるダメージが増え、それがトドメとなったのだった。


―― キメラ退治を終えて、街に戻った平和は ――

「静かに眠ってください」
 キメラ退治を終えて、レインは犠牲者達の墓参りをしていた。手に持たれているのは彼がいつも持ち歩いている白銀のハーモニカ、彼はそのハーモニカで鎮魂歌を奏でる。
「トリック オア トリート。お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ、か。しかし今回は随分と危険な悪戯だったな‥‥」
 ジンは墓に手を合わせ、黙祷をした後に呟く。
「‥‥カボチャのキメラ‥‥中の人‥‥なんていないか‥‥」
 鷹谷は呟いた後に少し考えて「‥‥食して供養‥‥というのもいいか‥‥な」と言葉を付け足した。
「あの、その、良ければ‥‥手当てして欲しいのですが‥‥」
 芝樋ノ爪が紅月に傷の手当てを頼むと先ほどまでのシリアスは何処の彼方に消え去ったのか紅月は「お兄ちゃんが優しく手当てしてあげるネ!」と何故かエセチャイナ風で言葉を返してくる。
「え?」
「大丈夫! 優しくするヨ!」
 先ほどまでのシリアスな雰囲気は消え去り、変態を我慢していたのか彼はキメラを退治すると同時にいつもの彼へと戻ってしまった。
 そして何故エセチャイナ風なのか分からないけれど、気にしたら負けとなるだろう。結局、芝樋ノ爪は紅月(時々エセチャイナ風)に手当てをしてもらったのだけど、甘酸っぱい雰囲気など皆無であり、怪しげな商人に何かを買わされている、傍から見たらそんな雰囲気に近かった。
(「とりあえず初めての任務は終わったか‥‥俺にも出来た事があった、これからもこの調子で頑張っていこう」)
 初めての任務を終えた能見は心の中で呟く。犠牲者の事を考えると手放しでは喜べないのだが、能力者達がキメラを退治したことによって悲劇の増大は防げたと思うことにした。
「キメラは退治したからさ、重傷者は病院を手配してるからちゃんと怪我を見てもらえよ?」
 朔月は住人たちに言葉を残し、他の能力者たちと一緒に高速艇へと乗り込んで本部へと帰還する。

「お疲れさまでした」
 本部の入り口で舞が待っており、能力者達に頭を下げる。
「任務は無事に終わりました」
 レインが舞に任務報告を行う。
(「全ての人を守るのは無理でも、せめて自分の傍に居る人は守りたいですね」)
 レインは心の中で呟き、他の能力者達はそれぞれ「お疲れ様」と言い合って帰路についたのだった。


END