タイトル:アナタから逃げ隊!マスター:水貴透子

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2007/11/29 23:41

●オープニング本文


そうですわ、忘れてました! 私ってば一般人ですもの!

これでは、いつまでたってもアルカ様に会えないはずですわ!


※※※

「たのも〜〜〜! ですわあっ!」

UPC本部に突撃してきたのは、毎度おなじみ台風爆裂娘・風峰志保である。

「今回はどなたか私に協力して欲しいのですけど‥‥私、アルカ様という方にお会いしたいのですけど、毎回誰かに邪魔されて会えませんの! 私とアルカ様を引き離しますの!」

「は、はぁ‥‥」

近くにいた(不運な)能力者は志保に捕まり(無理矢理に)話を聞かされている。

「はぁ、ではありませんわ!(バシッ)私とアルカ様がお会い出来るように協力して欲しいんですの」

もちろん(バシッ)というのは志保が能力者に攻撃した音である。

「えぇと‥‥俺は忙しいから! あいつ! あいつならきっと暇!」

そう言って能力者は志保を別な能力者の所に案内(むしろ押し付け)する。

「まぁ! あなたが私に協力してくださいますのね! 志保’Sメモによればアルカ様のこの時間帯は本部に向かってくる途中ですわ!」

志保は自慢げにメモを見せる。

するとそこには、アルカ(曜日ごと)の行動が逐一書き込まれていた。

「‥‥‥‥アルカ様の朝ごはん、麦飯、なんてワイルドなんですの!」

能力者が『スクープ!』と書かれたメモ欄を見ると、アルカの朝飯メニューが書かれていた。

(「何処でどうやって知ったんだろうな‥‥」)

本気で志保が怖くなってきた能力者だったが、確りと服をつかまれていて逃げる事は不可能だった。

●参加者一覧

神無月 紫翠(ga0243
25歳・♂・SN
水鏡・シメイ(ga0523
21歳・♂・SN
ミア・エルミナール(ga0741
20歳・♀・FT
シェリル・シンクレア(ga0749
12歳・♀・ST
藤枝 真一(ga0779
21歳・♂・ER
社 槙斗(ga3086
20歳・♂・FT
シエラ(ga3258
10歳・♀・PN
南部 祐希(ga4390
28歳・♀・SF

●リプレイ本文

「来ましたね〜、志保さんからの依頼♪ 私、頑張っちゃいますよ〜うふふふ♪」
 楽しげに話すのはシェリル・シンクレア(ga0749)だった。
 きっと、その笑顔は後に起こるであろうアルカと志保の悲劇を予想しての事なのかもしれない。
「まさか‥‥コッチ側に立つ事になる日が来るとはな‥‥人生何があるかわかんねぇなぁ」
 遠い目をしながら呟くのは社 槙斗(ga3086)だった。今までアルカからの依頼ばかりを受けていた彼が、まさか今度は志保側につくとは予想もしなかった事だろう。
「志保さんのお父様はとてもいい人でした、志保さんも良い人だといいのですけど‥‥」
 シエラ(ga3258)が呟き、その言葉に答えたのはミア・エルミナール(ga0741)だった。
「イイ人‥‥ねぇ? あたしは志保とアルカに会った事ないから何とも言えないけどね」
「ともあれ、今回の仕事はアルカさんを志保さんに差し出すというもの――アルカさんには悪いですが仕事ですからね」
 口ではそう言いながら、表情は凄く楽しげなのは水鏡・シメイ(ga0523)だった。
「表情が‥‥一致してませんよ‥‥? それにしても‥‥この依頼‥‥本人には‥‥黙っていた方が‥‥良さそうですね?」
 神無月 紫翠(ga0243)が呟くと、能力者は少し考えた後に「そうだな」と首を縦に振った。
「まぁ‥‥暇だし、面白そうだし――楽しけりゃいいんじゃないか?」
 藤枝 真一(ga0779)が呟くと「そうですよね♪」とシェリルがにっこりと笑顔で答えた。
「まぁ‥‥とにかく仕事を始めましょうか」
 南部 祐希(ga4390)の言葉を合図に能力者達は首を縦に振り、台風娘との待ち合わせ場所に向かったのだった‥‥。


●志保を止め隊! 出動!

「あたしらが志保と会って、アルカ捜索隊の邪魔をさせないようにするんだね。志保からアルカの行きそうな所を聞き出したら連絡するよ」
 ミアが呟き、シェリルとシエラと共に志保のところへと向かっていった。
「志保さんとアルカさんを上手くくっつける方法はないものでしょうかね〜?」
 志保のところへ向かう途中でシェリルが楽しげに呟く。
「やっぱり締め上げて伸びた後の寝込みを襲って責任を‥‥」
「お〜い‥‥穏やかじゃないねぇ」
 シェリルの暴走発現にミアが苦笑しながら答える。
「‥‥あの方が志保さんですね、此方を見て‥‥突進してきています」
 ポツリとシエラが呟き、突進してくる志保をひらりと避ける。
「―――ってあたしが犠牲!?」
 志保の突進は見事ミアに直撃し、ミアは体を張って志保の突進を受け止めたのだった。
「皆様、こんにちは♪ 今回は私の恋の応援に来て下さりありがとうございます‥‥あら? アルカ様は‥‥?」
 アルカも一緒に来ていると思ったのだろう、志保は周りをキョロキョロしながら問いかける。
「アルカさんは‥‥他の仲間たちが探しに出かけています‥‥」
「その辺のカフェでお茶でも飲みながら話でもしない? 色々話を聞いてみたいわけで」
 ミアの提案に志保は大きく頷き、一冊のノートを取り出した。そのノートには『志保のアルカ様の良いところ!』と書かれたものだった。
「この中には、アルカ様の良いところを書き溜めたものですわ! これを見ながらじっくり聞かせてあげてよ!」
 フリルワンピースを翻しながら「さぁ! 参りましょう!」と勇み足でカフェへと入っていったのだった。

「私はまだ能力者になったばかりで、アルカさんの事をよく知らないのです‥‥良かったら彼のことを聞かせてください」
 カフェの一番奥の席へと座り、シエラが呟く。
「まぁ! 良い心がけですわ! 最近アルカ様の真似をするくらい能力者の間では人気者のようなんですの!」
 ばしばしばしばし、と隣に座っているミアを叩き、照れながら叫ぶ。叩かれるそれをミアは器用に受け流しながら「そうなんだ〜」と聞いている。
「そういえば、志保さんのメモでアルカさんが何処にいるかを予想できませんか〜? 仲間が探すのに苦労しているみたいで‥‥」
 シェリルが苦笑しながら志保に問いかけると『志保Sメモ』を取り出して「えぇと」と呟きながら調べ始める。
「今の時間帯でしたら、きっとお仕事を探していらっしゃるのではないでしょうか。毎日この時間帯はお仕事を探しているようですから」
 志保の言葉に「ありがとうございます」とシェリルは礼を言って仲間たちにそれを伝えた。
「ねえねえ、そのメモってどうやって調べてるの? かなり興味あるんだけど!」
 ミアが問いかけると「それは‥‥」と一つのカメラを取り出した。
「これをアルカ様が毎日つけているアクセサリーにつけて、それがカメラですの」
 頬を染めて照れる志保にミア、シェリル、シエラの三人は同じことを心の中で叫んでいた。

『それは犯罪だ――――――っ!!!』‥‥と。

「‥‥ひ、人からこんなにも好かれるアルカさんは‥‥とても果報者ですね‥‥私は‥‥人にご迷惑をかけてばかりですから‥‥人から好かれる事がとても羨ましいです」
(「‥‥本当に羨ましいのかな‥‥」)
 真面目に志保に話すシエラに、ミアは心の中で呟いた。
「しかし、志保さん。時には引いてみるのも手じゃないでしょうか? 愛とは押し付けるものではありません。受け入れるものだと私は思うのです」
 シエラの言葉に志保はオレンジジュースを飲みながら「そ、そうかしら‥‥」と考え込むように呟いた。
「そういえば、志保さんのお父様は今は何処にいるのでしょう? 会えるなら会ってみたいのですが‥‥」
 シェリルの言葉に「あんなお父様なんて会わなくて結構ですわ!」と志保が答える。
「ようやくお会い出来ると思ったアルカ様と私を引き離したんですから! 今はお仕事に出かけていて家にいないので清々しますわ!」
「そうなんですか、実際に会ってお話をしてみたかったのですが‥‥」
 残念そうに呟くとシエラが「良い人でしたよ」と答える。
「志保さんの事をとても大事にしていらっしゃる方でした‥‥とても羨ましいです」
「そっかー、あたしも興味あったんだけどな‥‥それよりアルカに会うんだったらやっぱりおめかしがいるかな?」
 ミアの提案に「あああっ!」と志保が叫ぶ。
「おめかし忘れてました‥‥普段着でアルカ様に会うなんて考えられませんわ!」
 ちなみに志保の今日の服装はフリルワンピース(ピンク)に髪には白とピンクのストライプリボン。靴は薄いピンクのもので女性らしい格好だった。
「まあ、アレだよね。アレ。慌てるナントカは貰いが少ないって言うじゃない。仲間が直連れて来るだろうからさ、おめかしして待っとけー! 見違えた姿を見せるんだ!」
 ミアが焚きつけるように叫ぶと「オォー! ですわ」と志保が手を伸ばして答え、志保を止め隊のメンバーはショッピングに向かう事になったのだった‥‥。


●アルカを捕まえ隊! 哀れなアルカに明るい明日はあるのか!?

「シェリルからの連絡によれば‥‥アルカは仕事探しをしているだろうってさ」
 社の言葉にUPC本部内を見渡しながら「人が多いから見つかりませんね」と水鏡が言葉を返す。
「何が何でも探して奴に差し出さなくちゃ‥‥俺達は明日の朝日を見ることはない!」
 社の言葉に「そんな大げさな‥‥」と藤枝が言葉を返す――が、社は今にも泣きそうな顔で藤枝の肩に手を置いた。
「あんたは奴の恐ろしさを知らないから言えるんだ! 俺なんて‥‥俺なんて!」
 クッ、と泣き真似をしながら語る社に「わ、悪かったよ」と藤枝が何が悪いのか分からない状況で謝罪する。
「‥‥アルカさんを‥‥見つけました‥‥」
 神無月が指差しながら呟く。その指の向こうには確かに仕事を探すアルカの姿が見受けられた。
「‥‥では、コレで呼び出しますから‥‥梱包のほうを宜しくお願いします‥‥」
 神無月は呟くと同時にアルカの方へと歩き始めたのだった。
「さて私達は神無月さんが呼び出した後の梱包係ですね‥‥目的の場所に向かいましょうか」
 水鏡の言葉に藤枝、社はアルカが来る場所へと向かいだしたのだった。
「おや‥‥久しぶりですね‥‥? そうそう‥‥こんなものを預かってきたんですが‥‥志保さんから―――じゃないですよ?」
 神無月の言葉をドキドキしながら聞いていたのか、志保ではないと知ると神無月が持っていた手紙を受け取り、中を見る、そして顔をパァッと明るくしたのだった。

 TO:アルカさん
 初めまして、突然こんなお手紙で驚かれたことでしょう。
 私の胸はアルカさんを見るとドキドキと高鳴ってしまうのです。
 このままでは夜も眠れません‥‥。
 どうか、私を助けてくれないでしょうか?
 FROM:あなたに一目惚れしたわたしより

「ラブレターーーアッ! 俺にもまともな女の子からラブレター! 恋の手紙! ひゃっほーーぅ!」
「そうですか‥‥実は自分の知り合いでして‥‥返事を聞きたいから‥‥連れてきてくれって言われてるんですが‥‥」
「行きます! 行きますともさ! 俺の愛しいキミよ〜♪ 今すぐ行くから待ってておくれ〜」
 妙な歌を歌いながら神無月と共に地獄の階段を降りていく姿に遠くから見ていた南部が笑いを堪えていた。
「あ――アルカさんですね? この近くで志保さんという方が貴方を探していましたよ」
 偶然を装い、水鏡がアルカに話しかけると「ぎゃあああああっ」と悲鳴をあげる。
「あ、俺も聞かれたぜ。今日のお前の朝飯は麦飯なんだろ? 色々とアルカについての事を聞かされてさ」
 藤枝がアルカの恐怖を煽るかのように『志保Sメモ』の内容を話していく。
「ひいいい‥‥悪魔だー、鬼だー、閻魔大王がー‥‥」
 肩を震わせて怯えるアルカに藤枝がため息を吐く。
「全く‥‥迷惑防止条例違反だな‥‥だが安心しろ、アルカ。俺達がお前を逃がしてやる。志保に決して‥‥お前を渡さない!」
 藤枝の言葉に「何で見ず知らずの俺のために‥‥」と感動で少し泣きそうな声で問いかける。
「馬鹿だな‥‥俺達能力者は、皆、仲間‥‥家族みたいなものじゃないか、困っていたら力を貸す―――だろ?」
 藤枝の心にもない言葉に水鏡、神無月、社は顔を背けて震えていた。(ちなみに笑いを堪えるため)
「また‥‥ダンボール作戦で‥‥いきますか」
「そうだな、それが一番見つかりにくいだろうしな、ダンボールの用意は?」
「南部さんがしてくれていると思いますよ」
 水鏡の言葉に一行はアルカをダンボールに詰める為に南部がいる場所へと向かったのだった。

 ―30分後

 見事にダンボールに詰められたアルカは「またよろしく頼むよ」とラブレターのことなど頭からすっかり消えていた。
 がらがらと台車で運ばれるアルカは何の疑いもなく運ばれていく――のだが、志保のけたたましい笑い声に流石のアルカも何かおかしいと感じたらしい。
「おい! 何で志保の声が! うおおおおおい!」
「アルカ‥‥昨日の敵は今日の友――昨日の友は今日の敵‥‥悲しいがこれも現実だ」
 社の言葉に「意味わかんねえよ!」と叫ぶ。それは尤もである。敵から友に、そしてまた敵に戻るのでは誰も信じる事などできないという意味に聞こえるからだ。
「悪いな‥‥これも仕事‥‥いや(俺を)救うためなんだ!」
「ちょっと待てえええ! 何か小さく『俺を』って聞こえたぞおお!」
 その時、アルカの往生際の悪さに神無月が覚醒し、ダンボールをガンと蹴り上げる。
「黙るんだな? 何なら気を失ったまま志保に引き渡してもいいんだぜ? いつ目覚めるか分からないがな?」
 くくく、と邪笑を浮かべながら神無月がダンボールにピンクのリボンをつける。
「あいつは危険なんだ! 俺は殺されるぅぅぅぅ!」
「おや、そんなに危険なんですか‥‥大丈夫ですよ(私達は)絶対に見つかりませんから」
「お前等の事は聞いてねええっ! 馬鹿野郎! さっきの家族がどうとか言う話は嘘かああ!」
 アルカの叫びに「君の尊い犠牲は忘れない」と藤枝が手を合わせなが呟く。
「お前等がくっつくことでUPC本部に平和になるのだ」
「UPC本部の平和より俺の平和の方が大事だあああっ!」
「ご容赦を。これも仕事ですから‥‥でも銃弾撃ち込まれて差し出されるよりマシだと思っていただきたい」
 南部の言葉に「‥‥もう誰も信じるもんか‥‥」とダンボールの中からアルカのすすり泣く声が聞こえ始めたのだった。


●めでたくゴールイン! 新婚夫婦誕生!?

「まぁ! アルカ様!」
 あれから志保を止め隊はショッピングなどで時間を稼ぎ、アルカが連れられてくるまで志保が暴走しないようにしていた。
 そしてアルカ捕縛隊がダンボールを差し出し、中に口から魂が出かけているアルカを見て驚いていた。
「アルカ様! もう離しませんわ! ぽちっとな」
 そう言って志保はアルカの指に朱肉をつけ、ある書類に拇印を押させる。

 婚 姻 届 !

「これで私とアルカ様は夫婦ですわーっ!」
 きゃっきゃと喜ぶ志保に能力者たちは『うわあ』と心の中でアルカに同情したのだとか‥‥。

 そして‥‥
「あぁ‥‥母さん、俺結婚しちゃったよ、もう母さんの味噌汁飲めないのかな‥‥その前に俺、日本人じゃないから味噌汁飲んだことないけどね、へへへ、真っ赤な蝶々が飛んでいる〜〜‥‥」
 とりあえず、アルカは自分に起きた事を認められず、現実逃避をしていたのだった‥‥。

「む、惨い‥‥誰が一体こんな酷いことを‥‥」
 顔を背けながら水鏡が悲しそうに呟く。
「私‥‥アルカさんと志保さんがはっきり話し合いすれば解決すると思ったんですけど‥‥これも一種の解決なんでしょうか‥‥」
 シエラはアルカに攻撃が及びそうになった時は自分が身代わりになる覚悟だったが、さすがに結婚までは身代わりになる事はできなかった。
「‥‥哀れと思わなくはないのですが‥‥相手が彼女ですし‥‥まぁ、ツキがなかったと諦めてください」
 南部は少しアルカを哀れに思いながら、その場を離れていったのだった‥‥。
「まあ‥‥強く生きてください」
 神無月も笑いを堪えきれずに肩を震わせていたのだった――‥‥。

 頑張れ! アルカ!

END