タイトル:四葉のクローバー・運マスター:水貴透子

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/10/30 23:19

●オープニング本文


四葉が意味する言葉――愛、希望、誠実。

そして‥‥運。

※※※

ぶっちゃけて言ってしまえば、俺が此処まで生き残れたのは運が良かったからだと思う。

自分で言うのもなんだけど俺はベテランの部類に入る傭兵だと思う。

でもはっきり言って強くはない、どっちかと言えば後から傭兵になった奴の方が強いくらいだ。

だから、俺が今まで生き残れたのは運が良かった、ただそれだけ。

でも最近は怖くて震えそうになる。

いつ、俺の『運』が尽きるんだろうって‥‥この時代、運が尽きるということは死ぬこと。

キメラは何も罪悪感なく殺せるのに、自分が殺されることを考えるとがたがたと震えて歩けなくなりそうだ。

(「そういえば‥‥なんで俺って傭兵になったんだっけ。適正があるからって皆に乗せられて、別に何かしたかったわけじゃないから、傭兵になってもいーやって‥‥薄っぺらい理由だなぁ」)

あぁ、だから死ぬのが怖いんだと俺は思う。

何かを護りたいわけじゃない、何かに必死なわけじゃない、だから俺は‥‥。

死にたくないなら傭兵をやめればいい、それは結構簡単にはいかない。

手続きとか、そんな詳しいことは分からないけど‥‥『傭兵の俺』を友達は慕ってくれている。

きっと、傭兵を辞めてしまったら友達ではいてくれない。

俺は‥‥自分の命をかけて友達を得ているんだ。

最低だ、そう思いながらも俺はきっと任務へ行くんだろう。

自分の運が尽きる日まで。

お守りの四葉のクローバーのキーホルダーを握り締めながら。

●参加者一覧

須佐 武流(ga1461
20歳・♂・PN
UNKNOWN(ga4276
35歳・♂・ER
九条・縁(ga8248
22歳・♂・AA
平野 等(gb4090
20歳・♂・PN
深墨(gb4129
25歳・♂・SN
水無月 蒼依(gb4278
13歳・♀・PN
ゼンラー(gb8572
27歳・♂・ER
流月 翔子(gb8970
20歳・♀・SN

●リプレイ本文

―― 四葉『運』の心 ――

「今回は宜しくな」
 今回一緒に任務を行う能力者達に挨拶をするのは、徹と名乗ったファイターの男性だった。
「おう、宜しくな。なるほど‥‥コレはいかにも俺向きの相手という事だ、俺の体術とこいつの体術‥‥どっちが強いか試してみようじゃないか」
 須佐 武流(ga1461)が徹に軽く挨拶をして、今回のキメラの資料をみている。それを羨ましそうに徹は見ていた。
「俺にも‥‥運だけじゃなくて、あんな事が言える実力があったらなぁ‥‥」
 少し寂しそうに呟く徹に「運?」とUNKNOWN(ga4276)が言葉を返してきた。
「それは、自分で掴み取るもの、だよ。掴んだからと言って驕らずに、そう、積み重ねていくからこそ得られるものだ」
 UNKNOWNの言葉に「‥‥驕らず、か」と徹は俯きながら小さく言葉を漏らした。
「諦めたら、そこで運は逃げていくからね」
 UNKNOWNはそれだけ言葉を呟くと咥えていた煙草から紫煙を吐き出した。
「うし、まずは仕事だな、仕事! キメラには俺の経験値になってもらうぜっ」
 九条・縁(ga8248)が大きく伸びをしながら呟く。元気が有り余っているかのような彼に徹は苦笑しながら「そうだな、まずは仕事を先にしなくちゃな」と言葉を返した。
「今回のキメラは女性型のようですね、ですがどんな姿だろうとキメラはキメラなので躊躇いはありませんけど」
 平野 等(gb4090)が資料を見ながら呟くと「人型のキメラも多くなりましたね」と深墨(gb4129)が言葉を返した。
「人型だから能力者達の攻撃が鈍るとでも思っているんですかね」
 深墨がため息混じりに呟くと「さぁ、所詮俺たちとは相容れないモノから作られたモノですからね、理解出来そうにないです」と平野は言葉を返した。
「資料には動きが読みづらいキメラとありますね‥‥動きが読みづらいキメラ‥‥厄介な相手ですね‥‥」
 水無月 蒼依(gb4278)が大きくため息を吐きながら呟く。
「とは言え‥‥民家の方に行く前に、倒してしまわないといけませんね」
 水無月は資料と一緒にあった地図を見て、自分の武装を確かめながら呟く。キメラがいるとされている場所から近くはないけれど、決して凄く離れているとも言えないので油断するわけには行かないのだ。
「ふむ、キメラが強いにしろ弱いにしろ周囲へ被害が出ないようにするのは少し難しいねぃ」
 ゼンラー(gb8572)が表情を曇らせてで呟く。彼が危惧するのも無理はない。どんなに簡単な任務であろうと確実に被害が出ないという保証はないのだから。
「そうですわね、わたくし達が頑張ってキメラが民家の方に行かないようにしましょう」
 流月 翔子(gb8970)がゼンラーに言葉を返す。
「そうだねぃ」
 ゼンラーは流月に言葉を返し、能力者たちは任務地へ向かう高速艇へと乗り込んでいった。
「‥‥いいなぁ、みんな‥‥ちゃんと能力者っぽくて‥‥」
 高速艇へと向かう能力者達の背中を見ながら徹は小さな声で呟いたのだった。


―― 任務、葛藤、自分の存在意義 ――

「どうしました? 何か悩み事ですか?」
 任務地へ向かう高速艇の中、ボーっとしている徹の姿を見つけて平野が話しかける。彼が話しかけた事により、他の能力者達も徹へと視線を集めた。
「悩みって言うか‥‥俺、他の皆みたいに正義感から傭兵やってるんじゃないんですよ‥‥ホント、俺って最低なくらいに不純な動機なんです」
 苦笑しながら徹が言葉を返し、自分の悩みについてポツリと語り始めた。自分に実力がない事、今まで運が良くて生き残ったこと、そして友達が去ることが怖くて能力者を辞められないこと――などを平野に話した。
「‥‥なるほど」
 平野は煙草を吸いながら相槌を打ち「自分が殺されるのが怖いっての、当たり前だと思いますよ」と言葉を返した。
「はぁ‥‥そんなもんですか?」
 徹が言葉を返した後、九条が徹の肩をぽんと叩きながら「まあ、その‥‥何だ‥‥深く考えるな!」と言葉を投げかける。彼なりに徹を慰めようという意識はあったのだろうがうまく言葉が出てこなかったらしく『深く考えるな』という言葉に落ち着いた。
「俺個人の考えとしちゃ、死にたくないなら仕事辞めりゃいいし、それでいなくなる類の友人なら無くしても大した損失じゃねえと思う。とりあえず相談してみる事から始めるのがいいぞ」
 うん、と九条は首を縦に振りながら自分の考えている事を徹に話した所で高速艇がガクンと揺れて目的地へ到着した事を能力者達は知る。
「とりあえずはキメラ退治に専念しましょう」
 深墨が高速艇を降りる時に徹へと向けて話しかける。
「‥‥あぁ、分かってる‥‥」
 徹は言葉を返しながら震える体を押さえて高速艇を降りてキメラがいるとされている公園へと向かい始めたのだった。

「こんな民家から離れた場所に公園とは、ね‥‥」
 UNKNOWNが覚醒を行いながら所持している双眼鏡で公園から少し離れた所から様子を見ていた。そして何かに気づいたように「おや」と小さく呟いた。
「何か見つけたかねぃ?」
 ゼンラーが問いかけるとUNKNOWNは軽く帽子を押さえて「――女の姿、か」と小さく言葉を返した。
「なんとも困ったものだ、いや、戦いにくいものだ」
 UNKNOWNは少しため息を吐きながら呟き、公園の遊具の位置などを手帳に書きながら他の能力者達に知らせた。
「女型だろうが関係ないな、所詮はキメラ――倒すだけだしな」
 須佐は指を鳴らしながら短く呟いた。
「とりあえず、あのキメラを公園から出しちゃマズイよな、もしかしたら逃げるかもしれないしさ」
 九条が『クロムブレイド』を構えながら呟く。
「そうですね、公園から出すのもマズいですし、戦闘の時に遊具などを壊したりしないようにも注意をしなければなりませんしね」
 平野が呟くと、遊具の事は他の能力者達の中にも考えていた者がいたらしく首を縦に振る。
「それじゃ‥‥行きましょうか」
 深墨は目を閉じて「ふ〜っ」と長く息を吐き、そして瞳を開く。黒かった深墨の瞳は銀色へと変化して、先ほどまでの彼とは雰囲気が明らかに違った。
「前方に出て行動を阻害します。前に進めないようにする程度の力は持ち合わせているはずですから」
 水無月も『菫』を構えて、キメラがいる公園へと向かっていく。
「‥‥皆は怖くないんだろうか、俺は‥‥」
 怖くて仕方ない、がたがたと震える手を握り締めながら徹は呟き、自分の剣を持って戦闘へと参加した。
「流月流弓術の技見せてあげるわ」
 流月は洋弓『リセル』を構え、キメラを狙う。彼女は平野の近くに位置しており、前衛で戦う彼や他の能力者達を支援できるようにスキルを使用して攻撃を仕掛けていた。
「さぁて、俺の体術とお前の体術――どちらが上かな」
 須佐は呟きながら女性型キメラへと攻撃を仕掛けた、キメラは能力者達の存在には気づいていなかったのか完全に不意打ちを喰らった状態で須佐の攻撃を防御する事も出来ずに吹き飛ばされて木へと叩きつけられる。
「そこにいられると遊具が傷つく、少しばかり移動してもらおうかな」
 UNKNOWNが低く呟きながら『スコーピオン』で女性型キメラの足元を撃つ。彼の目的は牽制で、遊具などが壊されないように注意を払っていた。
「うおらあっ! そっちに行くな! そっちは公園の外だろうがっ」
 九条はスキルを使用しながら女性型キメラへと斬りかかり、女性型キメラが公園の外へと出ないようにしていた。
「さっさと死んで俺の経験値になれぇぇぇぇぇぇ!!」
 九条は叫びながら攻撃を仕掛ける――が反撃を受けてしまい、後ろへと下がる。
「8対1だからかなり分は悪いと思うけどね」
 平野は呟きながらキメラへと接近して、スキルを使用しながら攻撃を行う。女性型キメラは避けようとしたのだが流月の援護射撃により足を止められて、平野の攻撃をまともに受ける形となった。
「ふらふらしやがって‥‥ま、それでも捉えて見せるけどな」
 深墨は小さく呟き長弓『雨竜』にて攻撃を仕掛ける。女性型キメラは平野の攻撃のおかげで足を止められていた事もあり、深墨の攻撃は綺麗にキメラの腕を打ち抜く。
「疾く、去りなさい。ここは人の住まう場所。あなた方が足を踏み入れる領域ではありません」
 水無月は『菫』を振るい、女性型キメラへと斬りかかる。攻撃の途中で女性型キメラからの攻撃が来て、水無月の攻撃の軌道が変わってしまったけれど、女性型キメラの腕をかすめており、女性型キメラの表情が痛みに歪む。
「ふむ、治療が必要なら言ってくれねぃ」
 ゼンラーは呟きながら超機械で攻撃を行った後に前衛で戦う能力者達に告げる。そしてトドメを刺すためにゼンラーは『練成強化』を使用して能力者達の武器を強化した。
「流月流弓術の奥義、いきます」
 流月は呟きながらスキルを使用してキメラへと向けて矢を放つ。逃げようとした女性型キメラを須佐が掴み「おいおい、ここまで来て逃げるなんてナシにしようぜ」とスキルを使用して回し蹴りで他の能力者達のところへと蹴り飛ばす。
「お前さんもなかなかやるようだが‥‥今回ばかりは、相手が悪かったようだな?」
 須佐は不敵に笑みながら蹴り飛ばした女性キメラを見て呟いた。
「いっけぇぇぇぇっ!」
 大きく武器を振るいながら九条が蹴り飛んできた女性型キメラに攻撃を仕掛ける。
「‥‥今だ、チャンスを逃すな」
 UNKNOWNが呟き、武器を構えていた徹が女性型キメラへと向かって走り出し、そして剣を振り下ろした。
「おっと、そっちに行ったら遊具に激突だから遠慮してもらうよ」
 平野が『エーデルワイス』を装備した手で女性型キメラが遊具に激突する前に攻撃を仕掛け、元の位置に弾き飛ばす。
「さようなら、次にお会い出来る時が来るならキメラやバグア以外でお会いしたいですね」
 水無月は呟き、他の能力者達も同時に攻撃を仕掛けて女性型キメラを見事に退治したのだった。


―― 彼が望むは‥‥ ――

「やっぱり、俺って役に立たない駄目能力者だよな‥‥」
 女性型キメラとの戦闘が終わった後、徹はうな垂れながら小さく呟く。彼は他の能力者達が一生懸命戦っている間、怖くて、震えて体が上手く動かず、UNKNOWNの声で漸く攻撃が出来たほどだった。
「俺にはやっぱり生き残る運しかないんだな‥‥」
 がっくりと肩を落とす徹に「別に運でも何でもよかろう」と須佐が声をかけた。
「運も実力のうち。気にする事はなかろう。だが‥‥実力とはいえ運に頼るだけではそこまでになるだろうがな。死にたくなかったら力をつけろ。それしか方法はない」
 須佐の言葉に「それが出来ないから俺はこうなってるんじゃないか‥‥」と言葉を返した。その言葉に須佐は大きくため息を吐き「運だけに頼っているうちは‥‥一生そのまま、そうだろ?」と言葉を返した。
「最初にも言ったが、ね――積み上げていくこと、これが大事だ。それに、偶然を運と呼んではいけない」
 それに慢心してしまうから、ね――UNKNOWNは言葉をつけたし、再び煙草を咥える。
「慢心‥‥確かにそうかもしれない、俺はいつだって自分の運が尽きることが怖いから」
 徹の言葉に「運の良し悪しで言えば俺ら全員1000分の1の可能性の宝籤に当たったんだし」と九条が言葉を返す。
「だからそう簡単に尽きることはないと思うな〜」
 九条は頭の後ろで手を組みながら徹へと言葉を投げかける。
「まぁ、支給品はいいモンが出ないけどな」
 ぼそりと呟く九条は肩をがっくりと落としながら言い、どこか哀愁すら感じる。
「でも俺は皆みたいに正義感で傭兵やってるわけじゃない、友達を失うのが怖いから‥‥ただそれだけの理由なんだよ」
 徹の言葉に「それでいいんじゃない?」と平野は言葉を返した。
「勿論、俺の考えとして聞いてくださいね。で、友達を得るためにっての、それでいいんじゃないですかね? 自分の命と天秤にかけるくらい友達がいてくれることが大事だってことっしょ」
 平野は「にゃははは」と笑いながら徹に言葉を返した。
「どんな後付けしたって悩んだって後味悪くたって生きてるんですから、それでいいじゃないですか」
 平野の言葉を聞いて徹はぽかんと口を開けたまま彼を見る。彼のマイペースさを見ていると徹は自分が悩んでいるのが馬鹿らしく思えてきたのだろう。
「この状況じゃ何処で何をしていても死ぬ時は死にますし、それに‥‥誰かが戦わなきゃバグアに負けて、それで終わりですから‥‥結局生きたかったら戦って勝つしかないって事です‥‥」
 深墨の言葉に徹は俯く。恐らくそれは彼自身も分かっていることだったのだろう、だけどどうしても自分の中の恐怖などを追い払うことが出来なく、今のように曖昧な戦い方しか出来ないのだろう。
「‥‥その為にも恐怖も罪悪感も無視して、それをやるのが俺たちなのは‥‥力があるから仕方ない、のかな」
 苦笑しながら深墨は「っと、ごめんなさい。俺がこんなことを言ってもあまり説得力はないですね」と言葉を付け足した。
「いや、そんな事はない。俺なんかより立派に戦っていたじゃないか」
 徹は言葉を返し、再び俯く。
「お友達はそんな事で離れたりはしないと思います。一緒にいて楽しくない人とは付き合いませんしね」
 水無月の言葉に「‥‥でも」と徹は言葉を返そうとするが、それを飲み込む。
「自信を持ってください。生き残ってこれたという事は貴方にはそれだけの力があるということです。お友達についても‥‥ただの取り越し苦労だと思いますわ」
 水無月が言葉を付け足すと「結局は何のために傭兵をしているかに尽きると思うんだよねぃ」とゼンラーが言葉を投げかけてきた。
「一人では倒すことが難しいキメラもチームでならなんとかなるわけだよねぃ。共通の理念や、勿論違う目的を持った仲間でも、依頼を通して繋がり、其々の目的を果たしていく、そういう一期一会の中で拙者傭兵たちは自分の目的を果たすことが出来る」
 そこに自分が強いかどうかはそんなに関係ない、とゼンラーは言葉を付け足した。
「そうですわ、あなたはもっと自信を持つべきだとわたくしは思います」
 流月も言葉を返すと「そう、なのかな」と徹は四葉のクローバーのキーホルダーを強く握り締めた。
「んんん? 四葉のクローバー? 何かしら」
 徹が握り締めたキーホルダーを見ながら流月が問いかけると「初めての任務で貰った金で買ったキーホルダーなんだ」と徹は言葉を返した。
「俺にとってお守りみたいなモンでさ――でも、今度からはコイツに恥じないようなもっとマシな能力者になってみせる」
 徹は呟きながらキーホルダーを握り締め、能力者達と一緒に報告の為に本部へと帰還していったのだった。


END