●リプレイ本文
―― 薔薇キメラ駆除をする能力者達 ――
(「薔薇のキメラ‥‥綺麗‥‥でも、本物の方が綺麗です‥‥」)
セシリア・ディールス(
ga0475)は資料に挟んであるキメラの写真を見ながら心の中で呟いた。
「どれだけ綺麗であろうと、キメラである以上‥‥観賞に耐えるとかの問題以前に危険な雑草でしかないので、頑張って駆除したいと思います」
辰巳 空(
ga4698)は小さく呟き、資料に視線を落とす。
「それにしても何でバラなんだろうな。ハエトリソウとかなら分かる気もするんだが‥‥」
織部 ジェット(
gb3834)は顔や目を守れるようにとフェイスマスク、ゴーグルを装備しながら呟く。そして格好は園芸用エプロンと見事に気分は植物園の係員さんなことだろう。
「植物園にキメラ‥‥しかもバラですか‥‥趣味がいいのか悪いのか‥‥」
水無月 春奈(
gb4000)がため息混じりに呟く。
「んー、多分問題ないと思いますけど、植物型は根っこから討伐するように授業で習いました。俺、掘りますんで、根元からやっちゃいましょう」
マルセル・ライスター(
gb4909)が『土竜爪』を見せながら他の能力者達に言葉を投げかけた。
「んと、そうですね。今回はキメラが薔薇だということで、フルボッコしますっ」
ヨグ=ニグラス(
gb1949)は拳をぐっと握り締めながら言葉を返す。そこで水無月とセシリアに気づいたらしく「こんにちはっ」とヨグは声をかけた。
(「まま、僕はプロですから? 全然知らない人とチームになってもバシッと決められますけども、やっぱり知っている人がいるのは良い事ですよー」)
ヨグは心の中で呟きながら二人へと近づいていく。
「今回は宜しくお願いします、頑張りましょうね」
水無月はにっこりと笑顔で言葉を返し、セシリアも軽く頭を下げる程度の挨拶をした。
「それにしても動くバラかぁ、どんなのなんだろう」
首をかくりと傾げながら紅桜舞(
gb8836)は呟いて資料を見る。
「どんなのでしょうね、どっちにしてもあまり見ていて綺麗とは思えそうにないですけど」
流月 翔子(
gb8970)が苦笑しながら言葉を返す。
「まぁ、綺麗であったとしてもキメラですから退治対象でしかないでしょうけど」
流月は言葉をつけたし、今回一緒に任務を行う能力者達と一緒に高速艇へと乗り込んだのだった。
―― 薔薇キメラにはご注意を ――
「あれ? AU−KVは置いていくんですか?」
ヨグが首を傾げながら水無月へと話しかける。彼女はAU−KVから剣と盾を取り出していたから不思議に思ってヨグは話しかけたのだろう。
「ええ、植物園に入ってしまうと、他の植物を潰してしまいそうですし‥‥何より、ひときわ大きいバハムートですからね」
苦笑しながら水無月は言葉を返す。今回の任務、簡単に言えばキメラ退治なのだが、それ以上に『植物園の植物を気遣う』必要もあった。闇雲に戦えばキメラは退治出来るだろう、しかし無茶な戦い方をすれば間違いなく他の植物達も犠牲になってしまう。
しかし、ほとんどの能力者達はそれを考慮したうえで任務へと来ていた。
「貴方達がアレを退治する為に来てくれた能力者の皆さんですか」
薔薇キメラが現れている植物園の園長が入園門の所で能力者達を待っていた。
「どうか宜しくお願いします。アレのせいで他の植物達も‥‥」
園長の言葉に「他の植物達にも被害が?」と水無月が問いかける。
「えぇ、大きな被害は今の所ないのですが‥‥近辺の花たちは多少やられています」
園長は重い表情で呟き、視線を向こう側へと移す。能力者達も釣られるようにそちらへ視線を向けると『危険』と書かれた看板が立てかけられている。
「あの看板の所にあるゲートを潜ればすぐにキメラのいる場所が見えます。これ以上の被害を防ぐためにも、どうぞ宜しくお願いします」
園長は能力者達に深く頭を下げると管理室の方へと向かい始めたのだった。
「とりあえず、行きましょう」
辰巳が呟き『G区画』と書かれたゲートを潜って外へと出た。
「うわ〜、何あれ、気持ち悪い」
外に出て最初に呟いたのは紅桜舞だった。外に出ると少し離れた正面の所に気持ち悪く動く薔薇キメラを見つけたからだ。彼女が言っている通り『気持ち悪い』と思うのも無理はないだろう。うねうねと不気味に動く薔薇なのだから。
「そうだ、先ほどの園長さんに一応全てが片付くまでは植物園に立ち入り禁止にしてもらえるようにお願いできますか?」
能力者達が薔薇キメラを見つけられなかった時の為に置かれた係員だろう、その女性に辰巳が話しかけると「わ、分かりました」と言葉を返して、そのままパタパタと管理室の方へと走っていった。
「あらら、綺麗なお花が思いっきり外道に堕ちていますね」
流月が苦笑しながら洋弓『リセル』を構えて呟く。
今回の能力者達が薔薇キメラに対して立てた作戦は前衛が横一列に並び、直接攻撃を仕掛けるというもの。後衛は支援攻撃、回復などで前衛が攻撃できるようにと作戦を立てていた。
前衛・ヨグ、織部、水無月、辰巳、マルセルの5人。
後衛・セシリア、紅桜舞、流月の3人。
「AU−KVの代わりにツナギ装着、土に塗れる覚悟完了! 行きますっ」
マルセルは土竜爪を構え、キメラへと向かっていく。
「‥‥‥‥右から来ます‥‥」
マルセルが向かっていった後、セシリアが呟き、マルセルは薔薇キメラの攻撃を避ける。
「これじゃ竜騎兵じゃなくて土竜兵ですね〜」
マルセルは呟きながら土竜爪でキメラの根っこを掘り出していく。その間にも彼を薔薇キメラの棘などが襲うが、攻撃力は高くないのか動けなくなる程の傷ではなかった。
(「ツナギ、大丈夫かなぁ」)
薔薇キメラの攻撃を受けながらマルセルは自分よりもツナギの心配をしていた。能力者である彼自身はキメラの攻撃に耐える事は出来るが、ツナギはそういかないのだから。
「こんな花で愛を語れる筈がねぇって!」
織部は叫びながら『砂錐の爪』で薔薇キメラへと攻撃を仕掛ける。一つ、一つを見れば大きな強さはない、むしろ弱い部類に入るキメラだろう。
しかし‥‥。
「ぐ‥‥っ!」
塵も積もれば何とやら、積み重なれば小さな傷も大きなものへとなっていく。
「気をつけて下さい、狙ってきていますよ」
水無月は織部の方へと向かっていく数十本の蔓を『エンジェルシールド』で防ぐ。
「‥‥大丈夫か?」
織部が話しかけると「‥‥盾で防いでいるといっても‥‥少しは痛いですねぇ‥‥」と苦笑気味に言葉を返した。
「よ〜く狙って発射〜!」
紅桜舞は『コンポジットボウ』を構えて確りと狙い撃つ。その攻撃で数本の蔓を切り落とす。
「う〜、まだまだいる〜」
紅桜舞は気持ち悪そうに表情を歪め、再び攻撃を仕掛けていく。
「退治するまで頑張りましょう、流月流真弓術見せてあげる‥‥って意気込めませんね」
流月は苦笑しながら洋弓『リセル』を構えて狙う。
「今回はただの射的練習みたいですねぇ」
流月は呟き、再び援護射撃を続けて前衛たちを手助けするように攻撃を仕掛けたのだった。
「くっ、本当に束になれば油断は出来ませんね」
辰巳は呟きスキルをを使用して防御力を上昇させて、戦闘に当たっていた。
「おおぅ、綺麗な薔薇にこんな物を向けていいのでしょうかぁ」
ヨグはそう言いながらも遠慮なく『装着式超機械』を使って攻撃を続ける。能力者達が戦っているおかげで半分ほどは数が減ったけれど、それでもまだ半分は残っている。
「‥‥ッ!」
セシリアが何かに気づいたようで、突然走り出してキメラの蔓の前へと飛び出した。
「セシリア姉さま、大丈夫ですか?」
セシリアを攻撃した蔓を切り落としながらヨグが話しかけると、セシリアは無言で首を縦に振る。
「‥‥平気です。問題ありません‥‥」
セシリアは無表情で言葉を返すと、後ろへと下がってスキルを使用して傷を治療する。
「でもどうして‥‥」
織部が攻撃を続けながらセシリアが飛び出した方向を見る。そこで気づく。
「‥‥花を守るため‥‥」
水無月もポツリと呟いた。セシリアが飛び出した所には小さな花の花壇があった。あのまま彼女が飛び出していなければ花壇は滅茶苦茶にされていた事だろう。
「これ以上の被害を出さない為にも早く片付けてしまいましょう。それに‥‥草刈りという作業の邪魔はさせませんよ」
水無月は呟きながら攻撃を続け「まぁ、この程度の攻撃で邪魔になるかは微妙ですけど‥‥」と嘲るように言葉を付け足したのだった。
「ふぅ、数だけは多いから厄介ですね」
流月はため息を吐き、攻撃を続ける。
「早く倒しちゃわないと夢にでも出て来そうな感じ‥‥」
紅桜舞は呟きながら次々に矢を放つ。
「まぁ、なんだかんだ言ってもそこら辺の雑草よりは手ごわい『雑草魂』付のキメラですからね、しぶとく、しつこいのでしょう」
辰巳が苦笑しながら言葉を返す。それから1時間以上の時間をかけて50という数の薔薇キメラを無事に討伐することが出来たのだった。
―― 薔薇キメラ退治後の片付けと植物鑑賞 ――
「本当にありがとうございます、お疲れでしょうからゆっくりしていてください」
キメラを退治し終えた事を園長に報告すると、園長は何度も頭を下げてお礼を言ってきた。
「アフターケアが大事ですっ、他に危険がないかを見て回っていいですか?」
ヨグが園長に問いかけると「え、あぁ。そうしてもらえるなら嬉しいが‥‥」と園長は少し驚いたような表情で言葉を返してきた。
「‥‥ヨグさん、一緒に見て廻りませんか‥‥?」
セシリアがヨグに話しかけると「もちろんですっ、一緒に行きましょう」とヨグは言葉を返して2人は植物園の中を見回りすることになった。
「とりあえず倒したキメラはそのまま焼却処分するとして、私も見回りをするとしましょうか」
辰巳も立ち上がりながら植物園のゲートをくぐっていく。
「‥‥ふぅ、ようやく一息ついたな」
織部は水筒の中身をごくごくと飲みながら小さく呟いた。
「何ですか? それ」
水無月が呟くと「水だよ、水道水だけどな」と織部は言葉を返した。
「さて、俺も植物園の方に行ってみるかな」
織部はジョウロを持って外へと出て行く。
「何処にいくんですか?」
「植物達に水をやりにな、喉が渇くのは俺たちだけじゃないって奴だよ」
織部の言葉に「あぁ、なるほど」と水無月は納得したように呟いて織部が出て行くのを見送ったのだった。
その頃、マルセルはキメラが焼却処分される場所へと来ていた。
「君達も友達が欲しかったんだよね。でもごめん、ごめんね‥‥あの場所には別の子が植えられるんだって」
焼却処分されていくキメラ達を見ながらマルセルは申し訳なさそうに燃えていくキメラ達を見ていた。
そして花たちを見て廻り、水をあげていく。
「次に生まれてくる時は、皆に愛される花になるといいね」
マルセルは少しつらそうに呟きながら花たちに水をあげていたのだった。
「ふぅ、ようやく終わった〜。あとは帰ってからゆっくりお風呂にでも入りたいな」
紅桜舞は大きく伸びをしながら呟く。
「そのためには片付けをしていかないとね、片付けも仕事のうちですよね」
流月は貸し出してもらった作業用の袋と手袋を見せながら呟く。
「なんかこっちの方が疲れそうですけど」
苦笑しながら流月は呟き「‥‥凄くくたくたになりそう」と紅桜舞は引きつった笑顔を見せたのだった。
そして水無月は‥‥。
「‥‥一度、植物園に来ましたが‥‥昔とは違う視点で見れるものですね。また、次に来た時も別の視点で見れるのかしら‥‥」
そう呟き、何かを考えるように花を見つめる。
「出来れば‥‥彼氏と見たい所ですが‥‥なかなか誘ってくれそうにありませんしね‥‥」
水無月は苦笑して片付けの二人を手伝いに向かう。
その後、片付けや見回りを終えて能力者達は報告をする為に本部へと帰還していったのだった。
END