タイトル:カマぼこマスター:水貴透子

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/09/13 23:54

●オープニング本文


不本意だけど、凄く不本意だけどっ!

今日は『鵺』じゃなくて『里中・竜三』でいなくちゃいけないのよね‥‥っ!

きぃぃっ、何であたしがこんな事をしなくちゃいけないのよぅ!

※※※

「お兄ちゃんっ!」

全ての始まりは鵺が一人の少女に出会ったことだった。

「えぇっ!? あたしにも妹はいるけれど貴女みたいな子じゃないわよぅ!」

いつものように服やアクセサリーを買いに来ていたら、一人の少女から抱きつかれて鵺は珍しく戸惑う。

「何でお兄ちゃん、そんなおねえ言葉なの? かすみの事忘れちゃったの?」

きょとんとしながら少女は鵺を見上げ、かくりと首を傾げる。

「兄さん!?」

それからもう一人、今度は女性が持っていた荷物をばさりと落としながら鵺と『かすみ』と名乗った少女に駆け寄ってくる。

「あ、お姉ちゃん! お兄ちゃんが帰って来たよ!」

嬉しそうに『かすみ』は『姉』に話しかける。

「かすみ、ちょっとジュースを買ってきてくれる? 私とかすみと――兄さんの分を」

女性は小銭を『かすみ』に渡す、そして少女は「はぁいっ」と嬉しそうに自動販売機の方へと走っていく。

「ちょ、ちょっとぉ‥‥あたしはあんた達の兄じゃないわよぅ! こんな乙女を『兄』だなんて失礼じゃないのよぅ!」

きぃぃ、と鵺が地団駄を踏みながら呟くと「すみません、人違いって事は分かってるんですけど‥‥」と女性が申し訳なさそうに言葉を返してきた。

「これがうちの兄です、兄は能力者で‥‥数日前に死んでしまったんです――だけど妹の霞だけは、兄の死を受け入れることが出来ませんでした。年も離れていて、兄も霞を凄く可愛がっていたから‥‥」

それにその服装、と女性はくすりと笑いながら言葉を続ける。

「兄は能力者になる前はモデルをしていたのですけど、今のあなたのような服装をする事が多かったんです。だから霞は余計にあなたを兄と間違えたんですね」

そこで女性が一つのお願いをしてきた。

「一日だけでいいんです、兄として、霞と過ごしてあげてくれませんか‥‥? その日が過ぎたら、私からきちんと兄の死を受け入れさせますから‥‥お願いします」

女性は頭を深々と下げ、鵺に頼み込んでくる。

その必死なお願いに鵺も断りきれずに、後日『かすみ』と一緒に遊園地に行く事になったのだった‥‥。


※※※

「わぁ! 色んな乗り物がいっぱいっ。お兄ちゃんと遊園地に来るのって凄く久々だからかすみ、凄く嬉しい」

にこにこと鵺の手を繋ぎながら色んな乗り物に目移りをしている。

「そうかし――、そうだな、うん、久々だから楽しみよね、じゃなくて楽しみだよな」

(「きぃぃぃ、何であたしってば男の口調にならないといけないのよぅ!」)

心の中で地団駄を踏みながら隣で笑っているかすみと一緒に乗り物に乗っていく。

――その時だった。

「きゃあああっ!!」

女性の悲鳴が聞こえ、鵺は其方へと視線を移す。するとキメラが現れており、既に怪我人も出ているようだ。

「‥‥なんでこんな時に現れるのよぅ‥‥!」

バッグに入れておいた『アーミーナイフ』を片手に鵺が忌々しそうに呟く。

もしかしたら『万が一』の時が来るかもしれないと思いナイフだけは持ってきていたが、さすがに普段戦いの場に身を置きながら真面目に戦っていなかったツケなのか、鵺がナイフ一本で敵に勝つ事は難しいものだった。

「‥‥お、おにいちゃぁん‥‥」

がたがたと震えるかすみに視線を落とし、鵺はこの子だけでも助けなくちゃ、と心の中で呟く。

それから鵺は直ぐに本部へと連絡を入れ、能力者を要請する。

「どのような状況でしょうか、場所は? 怪我人などは出ていますか?」

淡々と状況を聞いてくるオペレーターに鵺は苛々とする感情を抑える事が出来ずに電話越しに叫ぶ。

「場所はさっき言っただろ! さっさと能力者を寄越せって言ってンだよ! これ以上怪我人が増えてもいいのかよ!」

吐き捨てるように鵺は叫んだ後、乱暴に電話を切って応援の能力者達が来るのを待ったのだった。

●参加者一覧

榊 紫苑(ga8258
28歳・♂・DF
ビッグ・ロシウェル(ga9207
12歳・♂・DF
風見斗真(gb0908
20歳・♂・AA
皓祇(gb4143
24歳・♂・DG
ルカ・ブルーリバー(gb4180
11歳・♀・ST
フローネ・バルクホルン(gb4744
18歳・♀・ER
今給黎 伽織(gb5215
32歳・♂・JG
障子にメアリー(gb5879
10歳・♀・SN

●リプレイ本文

―― カマと少女と能力者と ――

 今回は鵺(gz0250)が本部にキメラ出現の報告をしてきた事が始まりだった。オペレーターから依頼を受けた能力者達は鵺がいる遊園地へと急いで向かっていた。
 遊園地に向かう高速艇の中である程度の状況を聞かされた能力者達は、鵺が『男』の格好をしている事、兄を亡くした少女・かすみと一緒に遊園地に来ていた事などを知った。
「早く行かないともっと怪我人が出るかもしれませんね、急ぎましょう」
 ビッグ・ロシウェル(ga9207)がやや落ち着かない様子で高速艇の中をうろうろとしていた。
「ぐふふふ‥‥焦るビッグちゃんも凄く可愛いわ、ビッグちゃんの可愛い所を見逃さないようにしっかり見守らなくちゃっ!」
 ぐふふ、と少し怖い笑い声と共に影からビッグを見守る障子にメアリー(gb5879)がひっそりと呟いたのだった。
「それにしても、竜三『お兄ちゃん』‥‥か。鵺でも人の役に立てる事があるんだね」
 今給黎 伽織(gb5215)がさらりと何気に酷い事を言う、だけど鵺の日ごろの行いを考えると言われても仕方のない事なので誰も反論する者はいない。
「だが、遊園地とは‥‥また人の多い厄介な場所にキメラも現れたものだ」
 フローネ・バルクホルン(gb4744)が資料を見ながら呟く。確かに彼女の言う通り、厄介な場所には違いないだろう。
 しかも事件が発生したばかりとなれば逃げ惑う人々が戦闘の支障になる可能性も考えられるから彼女が危惧するのも無理はない。
「ぐふふ、今日は竜三の奴が男装してるらしいじゃないの。それは早く見に行かなくっちゃ」
 メアリーはカメラを片手に「ぐふ、ぐふふ」と明らかに鵺に対する嫌がらせをすることで頭をいっぱいにしていた。
(「今日は‥‥皆、何か真剣な顔をしてる‥‥ルカも、頑張ろう」)
 少しいつもと違う雰囲気にルカ・ブルーリバー(gb4180)もおろおろとしながら心の中で呟く。
「人騒がせなキメラは早々にご退場いただくとして、本当の問題はその後なのでしょうね、とりあえず急いでキメラを倒さないといけませんね」
 皓祇(gb4143)が呟くと「そうだなぁ」と風見トウマ(gb0908)が言葉を返す。
「俺はカマとカマドウマは嫌いなんだが‥‥って言ってる場合じゃないな」
 苦笑しながら風見が呟く。
「それにしても、鵺さんを、お兄さんと間違えるなんて‥‥まあ、世の中には、自分に似た人が、3人いると言いますが、本当のようで」
 榊 紫苑(ga8258)が苦笑しながら呟き、がくん、と高速艇が揺れ、目的地に到着した事を能力者達に知らせたのだった。


―― 混乱の遊園地 鵺と少女 ――

 能力者達が遊園地に到着すると、遊園地の中は大騒ぎで普段とは違う賑やかさを持っていた。
「まずは、先に鵺さんやかすみちゃんを見つけないと――ですね」
 榊が呟いた時だった、奥のホラーハウス付近から派手で大きな音が響き渡り、それと同時に「きゃああっ」という悲鳴も能力者達の耳に入った。
「おい、一体何があった?」
 フローネが逃げ惑う若者を捕まえて事情を聞こうとすると「あっちにキメラがいるんだよ!」とフローネの手を振り払って逃げていってしまった。
「ほれ、そこの若いの。なかなか元気そうだからこの子供を抱えていけ」
 フローネが別の若者の腕を引っ張る。恐らくは家族と逸れてしまったであろう少年が座り込んで泣き喚いている。
「で、でもキメラが‥‥」
「心配するな、後は追わせんよ」
 フローネの言葉に若者は少年を抱き上げて入り口の方へと向かっていく。それから能力者達は騒ぎの場所へと駆けていくと、一人の少女を庇いながらキメラと対峙する鵺を発見した。
「あら、あらあら‥‥じゃなくて、何でアンタ達が‥‥」
 応援要請してやってきた能力者達の顔を見て、鵺は少し驚いたような顔をする。鵺の後ろにはがたがたと震えながら今にも泣きそうな少女・かすみの姿があった。
「‥‥鵺ちゃん‥‥今日はちょっとカッコいい、ね」
 にっこりとルカが鵺に話しかけ、その後ろのかすみにも「‥‥皆、いるから大丈夫」と優しく話しかけてやる。
「うぅ〜〜、アタシ、いや、俺、血が嫌いなの、いや、なんだよー」
 軽くパニックを起こしかけている鵺を見て能力者達は頭を抱える。
「僕が手伝いますから、頑張りましょうよ」
 ビッグが鵺の手をパシッと取って励ます――が、その行動が鵺を勘違いフルモードに突入させたのは言うまでもない。
(「や、やだ、ビッグちゃんたら、もしかしてアタシの事を本気で‥‥!? でも年齢差が、あぁ、でもそういうのって愛があれば問題なしよねっ!!」)
 鵺の勘違いはさておき、ビッグの視線は震えているかすみにあった。
(「か弱い、普通の、女の子――僕が助けてあげればフラグが立つかもしれないっ! そう、僕にもマトモで可愛い、普通の女の子とのフラグが!」)
 下心満載のビッグだったが、彼はまだ気がついていない。現在進行形(鵺の勘違いにより)鵺とのフラグが物凄い勢いで立ち始めている事に。
「おいそこの! 妹さんにカッコイイとこ見せてやれ!」
 風見が『刹那』を構えながら鵺に話しかける。
「えぇぇぇ、アタシ、いや、俺は‥‥むがっ」
 鵺が女々しい態度を取ろうとしたのに気がついて風見が鵺の口を(手で、勿論手で)塞ぐ。
「アホ! あの子に変なトラウマ植えつける気か! 今は我慢しろ!」
 いきなりカマモードに戻ろうとする鵺を風見が慌てて制止する。此処でカマに戻られては鵺を兄だと信じているかすみにとってショックが大きいだろう、と考えての事だ。
「まずはお前より、アイツを何とかだな――さぁ、お前の罪を数えろ!」
 風見は武器を振るって攻撃を仕掛ける。
「‥‥後ろはルカが、います。任せて‥‥ください」
 ルカは鵺の後ろにつき、かすみを守るような形になる。
「ちょ、ちょっとぉ! アタシ、いや、俺は‥‥どうしたらいいのよ、じゃなくていいのだ!」
 男口調を意識するあまり、妙な口調になる鵺に苦笑して「いつもながら騒がしい奴だな」と今給黎がため息混じりに呟く。
「まぁ、今回は煩いのが役に立ったようだけど」
 今給黎は呟いた後にかすみに近寄り、優しく頭を撫でてやる。
「かすみちゃん、目を閉じて、耳を塞いでいるんだよ。すぐに終わるから、ね」
 にっこりと(鵺には絶対見せない)笑顔で今給黎はかすみに話しかけ、武器を手に取る。
「でも‥‥助けに来てくれてありがとう、アタシ‥‥じゃなくて俺だけだったらどうなってたか」
 鵺が苦笑しながら呟く言葉を「鵺」と今給黎は制止する。
「‥‥里中の家を出て、傭兵として自立したんじゃなかったのかい? 戦えない? 血を見るのが怖い? そんな甘ったれたことが許されるのかな? 弱い人を守れなくて何の為の能力者なのかい?」
 そんなんじゃ、いつか大切な人が出来た時に守り通す事が出来ないよ、今給黎は少しだけ厳しい言葉を残してキメラの方へと足を向けた。
「ぐふふ、メアリーちゃんなら竜三みたいに伽織ちゃんを怒らせるようなことはしないわよ」
 メアリーは珍しく、凄く珍しく拳銃『ルドルフ』を両手に構えてキメラへと狙いを定める。
「竜三はかすみちゃんとマイスィート☆ダーリンなビッグちゃんを護るついでになら護ってあげてもいいわよ」
 ぐふふ、と怪しげな笑みを浮かべ、鵺はいつになく真剣な表情でため息を吐いた。
「あら」
 鵺は戦闘態勢を取るフローネと目が合い「‥‥久しぶりだな」とフローネが話しかける。
「いつもの服装とは違うようだが‥‥あと、覚悟もな。まぁ、キメラの足は止めて見せるさ、トドメは任せる」
 フローネは言葉を残し『大鎌 紫苑』を振るい、キメラの足を狙う。今回は犬のようなキメラで、素早さが在る事からフローネは最初に足を潰すことを考えていた。
「此処は子供や家族連れが楽しむ場所です、貴方のようなモノが来る場所じゃ、ありませんよ」
 榊は『天照』を振るい、スキルを使用して攻撃を仕掛ける。集まった能力者達は鵺と違って今まで真面目に(そうでない者もいるかもしれないが)任務をこなしていたおかげで犬型キメラに苦労するものはいなかった。
「鵺さん! これ使って――――っ!」
 ビッグが鵺に貸し出すように『イアリス』を投げつける、しかしそれは鵺を軽く通りこしてそのままキメラへと突き刺さる。
「ちょ、ちょっとぉ!」
 鵺が手をぶんぶんと振りながら「来てないわ――ぞよー!」とどこのマロだと言いたくなる程の口調で言葉を返してくる。ビッグが次の武器『バスタードソード』を投げつける。
 普段はくねくねと女の腐った野郎な態度の彼だが武器を取り、そのままキメラへと攻撃を仕掛ける。
「おお、中々やるじゃねぇ「いやぁぁんっ、血まみれ〜!!」‥‥か」
 風見が鵺を見直したと同時に激しく嫌悪の視線を向ける。
「今だけでもいいです、しっかりなさい!」
 皓祇が鵺の腕を引っ張り、ばちこんと殴る。しかし彼は忘れているのだろうか、自身が今AU−KVに身を包んでいるということに。
(「い、いたいわ‥‥すごくいたいわよ‥‥」)
 しかし彼はそんな事にも気づかずキメラの方へと向けて『長弓 万里起雲煙』にてキメラを狙い撃つ。
「しっかりと急所を狙え。倒した後ならいくら寝ても構わん。いけ、鵺」
 フローネがキメラの足を斬り落とし、キメラの動きを封じる。それと同時に榊もキメラの動きを完全に止める為に攻撃を仕掛ける。
「後ろにはかすみちゃんたちがいる――要は僕より後ろに攻撃が行かなければいいんだ!」
 ビッグは大きく叫び『レイシールド』でキメラの攻撃を防ぎ『イアリス』で攻撃を仕掛ける。
「右に避けろ!」
 ビッグが攻撃を仕掛けた後、風見が大きく叫び、ビッグは右へと避ける。それと同時に風見が小銃『フォーリングスター』で攻撃を仕掛け、彼と攻撃を合わせるようにメアリーも攻撃を仕掛ける。
「銃を使うのは久しぶりだが、腕は落ちてないぜ?」
 しかし、キメラの飛びつき攻撃で鵺は武器を落としてしまう。
「ほら‥‥カマ‥‥鵺にぴったりの得物。自分で守り抜いて見せなよ」
 今給黎は『大鎌 蝙蝠』を鵺に渡しながら『真デヴァステイター』を構え『影撃ち』を使用しながら攻撃を仕掛ける。
(「‥‥これって『カマ』がアタシにぴったりって事かしら、それとも男か女かはっきりしない蝙蝠って部分なのかしら」)
 鵺は大鎌を見ながら首を傾げるけれど、今はキメラ退治する事が先決だと思い、武器を持ってキメラへと攻撃を仕掛ける。他の能力者達がかなり弱らせてくれたおかげで鵺でもトドメを刺すことが出来たのだった‥‥。


―― 騒動解決・かすみ ――

「お兄ちゃん、お疲れ様っ」
 戦闘が終わった後にかすみが鵺へと抱きついてくる。
「普段を知っていると、物凄い違和感ですねぇ、見てる分には、楽しいですけど‥‥終わってから反動来そうで怖いですけどね」
 榊が苦笑しながら呟く。
(「っていうか、オカマじゃないんなら竜二さんに頼んだほうが早かったような‥‥それにいつもの鵺さんを見て『お兄さん』と思ったなら別に男装しなくても‥‥」)
 ビッグは心の中で疑問点を呟くのだが、真実は闇の中だ――と言ってもただの馬鹿という結論に至りそうな気もするけれど。
「っていうかお兄さん、どんなモデルだったとですか」
 ビッグは小さく呟き、首を傾げる。
「お兄ちゃん? 何で一緒に帰らないの?」
 首を傾げながらかすみが問いかけてくる。背格好が似ているせいか、鵺を本当の兄と思いこんでいるのだろう。
「あのね、ルカのお父さんと‥‥お母さん、も‥‥天国に居る、から‥‥」
 ルカがぽつりと呟く。その隣には薄緑色の燐光が集まり、幻想のリスたちが数匹現れる。
「天国に居るのに、全く無視しちゃってお兄さんが可哀想だと思う‥‥」
 ルカの言葉にかすみは泣き始めて「だって、お兄ちゃんがいないんだもん」と涙声で呟き始める。
「かすみちゃんのお兄さん、きっと今頃悲しんでいるかもよ? 可愛い大事な妹に忘れられてるーって」
 今給黎がかすみと視線を合わせながら話しかけてやる。
「ほら、かすみ。お礼を言って‥‥兄さんのお墓参り行こう?」
 かすみの姉が泣き喚くかすみを宥めながら話しかける。かすみは泣きながらも首を縦に振り「ありがと、竜三お兄ちゃん」と言葉を返した。
「鵺ちゃんは‥‥竜三ちゃんなの?」
 ルカは首をかくりと傾げながら問いかけ「ち、違うわよっ、あたしは鵺よ!」と言葉を返した。
「さて、後は任せるよ。私は他に怪我人がいないかを見てくる」
 フローネは言葉を残し、他の怪我人の所へと向かっていく。能力者達もかすみ達が帰っていくのを見ながら大きく伸びをした。
「あの、さっきはすみませんでした‥‥その酷い顔になってますよ」
 皓祇が申し訳なさそうに話しかけると「あんたがしたんじゃないのよぅ!」と鵺が「きぃっ」と地団駄を踏みながら言葉を返してくる。
「ねぇねぇねぇねぇ! アタシを癒して頂戴よぉ!」
 鵺が風見に擦り寄ると「ケダモノはキメラ一匹で十分だ」と言葉を返す。
「やだぁ! そんな事言わずにぃ♪」
「この! この! この! 失せろ! このオカマめ! おラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!!!」
 ちなみに彼が呟くたびにパンチが一発鵺に入る。
「ぐふふふ、竜三の男装姿、惨めな顔ボコ姿をカメラに収めてやったわ‥‥! さて、ビッグちゃんを見守りながらメアリーもお家に帰らなくちゃね‥‥」
 メアリーは不気味な笑い声をあげ、ビッグは鳥肌に見舞われながら、能力者達は本部へと帰還することにしたのだった。


END