●リプレイ本文
―― キメラ退治へ赴く能力者達 ――
「こんにちはっ、今日は宜しくなっ」
にぱ、と笑いながら七海・鉄太(gz0263)が一緒に任務を行う能力者達に挨拶を行う。
「よう鉄太、元気だったか‥‥って聞くまでもないか」
篠崎 宗也(
gb3875)が明らかに元気に過ごしていたであろう鉄太を見ながら苦笑気味に呟く。
彼は鉄太に会うのを久しぶりだ、と思いながらも前回のような事にならないか少しだけ心配していた。
(「今回は犬型のキメラみたいだからこの前みたいな心配はいらないかな‥‥?」)
篠崎は心の中で呟きながら、任務地の『森』と言う言葉を見て大きくため息を吐いた。蚊や蜂に刺されそうな雰囲気があるし、特に彼は蜂が苦手なので場所的に少し憂鬱な気分なのだろう。
「‥‥まずはキメラの捜索から、ですね。皆様、宜しくお願いしますね」
深々と丁寧にお辞儀をしながら水無月 蒼依(
gb4278)が挨拶をする。今回は『森の奥にキメラがいるらしい』と言う事は分かっているけれど、正確な居場所はわかっていない為、能力者達に油断は許されないのだ。
「またよろしくね! 鉄太くん!」
雨夜月(
gb6285)が軽く手を振りながら鉄太に話しかけてくる。彼女は鉄太のお姉ちゃん的立場で、彼女自身も鉄太に会うのを楽しみにしている反面、しっかりフォローしなくちゃ、というお姉ちゃん精神で今回の任務に望んでいた。
(「結構苦労してる筈なのに、明るく元気ね」)
イーリス・立花(
gb6709)は鉄太を見ながら心の中で呟く。彼女が今回の任務を受けた理由は鉄太と保護者男性の話を聞いて自分と似た境遇なのだと考えたから。
(「私の場合は父親だけだったりと、色々と事情も境遇も違うけれど、それでも私は‥‥」)
イーリスは心の中で呟き、少しだけため息を吐いた。
「初めまして、流離(
gb7501)と言います。どうぞ宜しくお願いしますね?」
流離が頭を下げながら能力者達に挨拶をして、能力者達もそれに応える。
「俺、鉄太! 宜しくなっ」
流離の手を掴み、ぶんぶんと強く握手しながら元気に挨拶をする。
「宜しくお願いしますね」
流離もにっこりと穏やかに微笑みながら言葉を返すと、鉄太は満足そうに笑った。
「犬のキメラですか‥‥ま、油断せずに気を引き締めて頑張りましょ」
五十嵐 八九十(
gb7911)が資料を見ながら小さく呟く。
「現地の森もそんなに広くはないとのことですね? でも迷うといけないから木に目印でも付けておこうかしら」
流離が小さく呟く。
「とにかく、住人の安全を守るため、自分が剣となり盾となりましょう」
白蓮(
gb8102)が腰に手を当てながら資料を見て呟く。たとえ能力者達にとっては大した脅威ではなくても、戦う力を持たぬ一般人にとっては十二分に脅威となりうるのだから。
「うん、俺も頑張ってキメラ退治するっ」
手を挙げて応える鉄太が呟くと、その隣で十六夜 心(
gb8187)が大きなため息を吐いた。
「おい、ガキ。あんまうろちょろするんじゃねぇぞ」
鉄太が無茶な行動をしないように十六夜が釘を刺すのだが‥‥外見年齢だけを見るならば十六夜と鉄太は同じ年なので『ガキ』と呼んでいると少し違和感を感じてしまう。
だけど、鉄太の中身は少年のままなので十六夜が『ガキ』と呼ぶのも無理はないのだけれど。
(「怪我でもされたらこっちが困るからな‥‥別にこいつがどうなろうとどうでもいい、別に心配してるわけじゃねぇんだぞ、俺は」)
まるで自分に言い聞かせるように十六夜は心の中で叫ぶのだが、心の声なので他の能力者達には勿論聞こえるわけがない。
「鉄太様、雨夜月様、宗也様、今回も宜しくお願いしますね」
水無月が見知った能力者達に挨拶を行い、能力者達はキメラ退治を行う為に高速艇に乗って現地へと出発したのだった。
―― 分かれて捜索 ――
今回の能力者達は迅速にキメラを見つけて退治する為に班を三つに分けて行動する事に決めていた。
A班・篠崎、流離、五十嵐。
B班・水無月、イーリス、白蓮。
C班・十六夜、雨夜月、鉄太。
何かあったらトランシーバー、もしくは照明銃などで他の班に知らせるように決めて、各班は動き始めたのだった。
※A班※
「あー、もう。既に何か刺された感がする」
腕を掻きながら篠崎は『コンユンクシオ』で邪魔な草木を刈っていく。
「一応、迷わないように目印つけてますけど‥‥他班の為に通った時間なんかも、書いておくといいのでしょうか?」
流離が目印をつけた後に呟くと「あー、どうでしょうね」と五十嵐が言葉を返した。広い森ならばそれも必要かもしれないが、今回の森はあまり広いとは言えない為に目印は必要だが時間まで書いておく必要はないだろう。
「今回は書いておかなくても大丈夫じゃないでしょうか?」
五十嵐の言葉に「そうですね、分かりました」と流離は言葉を返した。
「うーん、それにしてもキメラはいないなぁ‥‥気配も感じられないし、何処にいるんだろ」
篠崎が周りを見渡しながら呟き『トランシーバー』に視線を落とす。まだ他の班からも連絡がないため、いまだキメラの発見はされていないのだろう。
「うし、とりあえず頑張って探すしかないかな」
篠崎は呟き、流離と五十嵐は再びキメラ探しを開始したのだった。
※B班※
「‥‥いかがですか? 立花さま、敵の気配はありましょうか?」
キメラ捜索を開始すると同時にイーリスが『探査の眼』を使用していた為、水無月が問いかけるのだがイーリスは緩く首を横に振って「いえ、まだ‥‥」と申し訳なさそうに言葉を返してきた。
「キメラの痕跡はありますけど、キメラそのものはいないようですね。狭い森だから行動範囲も広いのでしょうか」
白蓮は木に残された爪あとを見ながら呟く。確かに彼女が言う通り、痕跡そのものはあるのだが肝心のキメラが周囲に居る様子はない。
「‥‥なかなか見つかりませんね。大人しく見つかってくれると良いのですが‥‥」
水無月が「はぁ」とため息混じりに呟き、B班も捜索を再開したのだった。
※C班※
「あー、あれって何の鳥かなぁ」
物珍しそうに空を仰ぎながら楽しそうに呟く。
「おい、ガキ。うろちょろするなって言っただろ」
はぁ、と十六夜が呆れたように鉄太に話しかけると「でも、今凄く綺麗な鳥がいたんだよ」と空を仰いだまま鉄太は言葉を返してくる。
「ほらほら、鳥を見るのもいいけどまずはキメラ退治でしょ」
雨夜月は町で入手した地図を広げながら自分達の居場所、そして森の地形を頭に叩き込んでいく。
「はぁい、でも俺ノドが渇いちゃったよ」
その場に座り込みながら鉄太がまるで駄々っ子のように「何か飲むまで動けない」と言い始めてしまう。
「ほら、喉が渇いたなら好きに飲め。そっちの先輩とも分けとけよ」
十六夜は『水筒』を鉄太に放り投げながら話しかける。水筒の中にはジュースが入っており「わーい、ありがと!」と鉄太は嬉しそうに飲んでいる。
「ありがと、助かっちゃった」
雨夜月が小さくお礼を言うと「か、勘違いするな」と十六夜はぶっきらぼうに言葉を返す。
「べ、別に喉渇かないかとか心配して持って来たわけじゃねぇからな! 偶然喉が渇きそうだと思って持って来ただけなんだからな」
ムキになって否定する十六夜が可笑しくて雨夜月は思わず笑ってしまう。
その時だった。
「ぐるるるる」
獣の呻き声のようなものが聞こえ、視線を其方に向けると森の最奥付近で此方をジッと見つめる鋭い視線がそこにはあった。
「て、鉄太くん!」
それに気づいていないのか鉄太はまだ空を見上げたままぼけっと歩いている。そして十六夜が鉄太を止めて、雨夜月が『トランシーバー』で他の班に連絡をして、合流するのを待つのだった。
―― 戦闘開始 ――
雨夜月の通信から暫く経過した頃にA班とB班が合流してきた。それまではC班のみで牽制攻撃などを仕掛けており、どちらかが有利になっているというものではなかった。
「うっし、相手が犬なら容赦しないぜ!」
篠崎は『コンユンクシオ』を構えながら犬型キメラを見て呟く。
「‥‥私も遅れを取るつもりはありません。その首、落とさせていただきます」
水無月も『菫』を構えながら鋭くキメラを見据え『迅雷』を使用してキメラとの距離を一気に詰めて攻撃を仕掛ける。
「鉄太くん、あんまり離れないようにね」
雨夜月が鉄太に向けて呟くと「うん」とレイピアを構えながら鉄太も少しだけ震えてはいるけれど戦う意思を見せている。
「無茶はしないで下さいね?」
流離は呟くと『練成強化』を使用して能力者たちの武器を強化して『練成弱体』を使用してキメラの防御力を低下させた。
「威嚇ばっかりして、躾がなってないな。躾のなってない犬は、きっちり型に嵌めて調教してやる!」
五十嵐は大きな声で叫びながら『重爪 ガント』を構えて『疾風脚』を使用してキメラに一気に近寄り攻撃を仕掛ける。
「罪深きモノ、大白蓮地獄に堕としてあげる」
白蓮も『急所突き』を使用してキメラに攻撃を仕掛ける。
そして接近能力者たちが能力を生かしきれるように十六夜も『練成強化』を使用して能力者達の武器を強化して、続いて『練成弱体』を使用してキメラの防御力を低下させる。
「流石にこんなに人がいたら対処しきれないか!?」
篠崎は呟きながら『両断剣』と『流し斬り』を使用してキメラに攻撃を仕掛ける。続いて水無月が『二連撃』で攻撃を仕掛け、キメラに攻撃する暇を与えぬように白蓮が攻撃を繰り出す。
「さて、悪い犬さんは退治しなくちゃね」
雨夜月は『ゼロ』を構えて『急所突き』を使用しながら攻撃を仕掛ける。
「支援します、そのまま接近攻撃を」
イーリスは小銃『S−01』を構えて『強弾撃』を使用しながら接近戦の能力者たちが攻撃を行えるように援護射撃を続けた。
そして能力者達の連携攻撃はキメラを確実に弱らせ、そして退治する事が出来たのだった。
―― キメラ退治後、そして ――
「うぅ‥‥俺、今回も守られてばっか」
しょんぼりとしながら鉄太は俯き、小さな声で呟いた。
「うーん、鉄太くんはまだ慣れてないから、ね?」
雨夜月が慰めようとフォローするのだが「でも、今回が初めての人もいたのに」と更に鉄太はしょんぼりとする。
「う」
この言葉にはフォローのしようがなくて、雨夜月は言葉に詰まる。
「ま、あんまり気にしない方がいいって」
篠崎が頭の後ろで手を組み、笑いながら言葉を投げかける。
「そういや、キメラってこれで全部か? もう一匹いるとかないよな?」
周りを見渡しながら篠崎が呟くが、他にキメラの気配は感じられない。
「お疲れ様でした、鉄太さま。またご一緒する時は宜しくお願いしますわ」
水無月がにっこりと笑って話しかけると「‥‥うん、次はちゃんと戦えるようにする」としょんぼりとしながら言葉を返した。
「皆さん、お疲れ様でした。さて、町でお土産でも買って帰りましょうか?」
流離が呟くと「そういえば、この町は何か美味しい名物があるみたいですね」とイーリスが言葉を返す。森に入る前に『名物!』と書かれた看板を見ていたため、彼女はこの町の名産を知っていた。
「何か食べて帰るというのもいいかもしれませんね、美味しい酒があれば尚よしですね」
五十嵐が苦笑しながら答えると「俺もお腹減った。何か食べたい」と手を挙げて鉄太が言う。その仕草が本当にお腹を空かせた子供、と言う感じで五十嵐は更に苦笑する。
「やれやれ、子供を見ていると純真だった幼い頃を思い出してしまいますね‥‥」
外見こそは18歳と子供とは呼べない姿だが、鉄太の心はまだ純真な少年のまま。だからこそ五十嵐は余計に考えてしまうのだろう。
「ふぁぁ〜、今日はよく動きました。今日もよく眠れそうです」
軽く欠伸をしながら白蓮が呟くのだが、睡魔は既に彼女に襲い掛かっているようで、町へ向かって歩いている時でさえも眠りに落ちていた。
「このねーちゃん、寝ながら歩いてる‥‥」
何処か尊敬のまなざしで鉄太は白蓮を見つめて「‥‥俺も出来るかな」と小さく呟いた。
「おい、ガキ」
十六夜から話しかけられて「なんだ?」と鉄太が振り返って言葉を返す。
「元気が良い事は悪くないが、度が過ぎないようにしろよ? 精進して頑張れよ、鉄太」
今回の任務で十六夜が初めて鉄太の名前を呼び「うん! 俺も頑張るからにーちゃんも頑張れな!」とぱぁっと笑顔で言葉を返した。
その後、能力者達は町で食事をした後に報告の為に本部へと帰還していったのだった。
END