タイトル:【JB】褌行進曲マスター:水貴透子

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/07/04 03:14

●オープニング本文


 太平洋上の無人島は、多くの手により急ピッチで調査が進んでいた。仲間達が幸せな結婚式を行う、そのための準備だと思えばやる気も増そうと言う物だ。
「ふむ。思ったよりも快適な場所のようだ。これならば、心に残る祝典が行えるだろうな」
 報告を聞いたカプロイア伯爵は、満足げに頷く。北側に見つかった入り江は遠浅で、泳ぎにも向いていた。海岸で迎えてくれる南国風の植生は明るく、当日の気分を盛り上げてくれるだろう。島中央の静かな湖畔は、ムードのある式を行いたいカップルにうってつけ、だ。
「島内の安全はまだ確認中です。崖などの危険な場所も調査中ですが‥‥」
 手付かずの森や海が見える草原といった安全そうな地点でも、キメラが見つかっている。とはいえ、花の咲き乱れる一角などは、安全さえ確保できればロマンチックな一日に文字通り華を添えそうだ。
「崖には、洞窟のような場所もあるそうだね」
「はい。危険があるかどうか、そちらも報告待ちとなっています」
 執事は、そう淡々と続ける。
「安全確認が終わったら、次の段階へ進もうか。そろそろ、人や物を動かさないとね」
 まだ空白の目立つ地図を、伯爵は楽しげに見た。

※※※

彼に悪気はない――筈だ。

彼は本気で新しい出発を迎える二人を祝福したいのだろう。

しかし――悲しいかな、彼の『好意』が相手にとっては『迷惑』でしかないのだから。

※※※

「はっはっは、これを見てくれ!!!」

朝から暑苦しいほどまでの爽やかな笑顔、きらりと輝く白い歯を見せながら大石が本部に入ってきた男性能力者を捕まえる。

「ええ! ちょちょちょ、俺任務探してるんだけど!!」

「いやいいから見てくれ!」

そう言って大石が見せてきたのは――金色の箱に入れられた紅白の‥‥‥‥褌だった。

「えぇぇぇ‥‥ちなみにこれをどうするんだ‥‥?」

男性能力者は心の中である程度の予想がついていた。

褌に『祝☆結婚 BY大石』と書かれていた時点で何に使うつもりなのか予想はしていたのだが、男性能力者としては、出来れば、なるべくなら、予想を否定して欲しかった。

しかし‥‥。

「これは結婚する能力者達に贈ろうと思っているんだ! 結婚の記念に!」

(「人生最良の日を悪魔の日にするつもりか、この男は」)

「この日の為に俺は夜なべしてこの褌を手縫いしたんだぜ!!」

確かにつぎはぎだらけでいかにも『手作りv』と言う物々しい雰囲気が出ていた。

(「しかも裁縫が下手なのか、所々に血がついてるじゃねぇかよ‥‥どんだけ不吉なモン渡そうとしてるんだ」)

模様かと思った赤いものは大石の血液で、彼の指は絆創膏ばかりが貼られていた。

(「どんだけ不器用なんだよ。何で二の腕まで針穴があるんだよ‥‥」)

「さぁ、これを幸せなカップル達に贈って幸せな道を歩いてもらうんだぜ!!」

(「ダメだ、この男を何とかしないと――幸せな奴らが可哀想だ!!」)

男性能力者は結婚する能力者達の為に大石を島へ行かせないために動き出したのだった‥‥。

●参加者一覧

伊佐美 希明(ga0214
21歳・♀・JG
西島 百白(ga2123
18歳・♂・PN
辰巳 空(ga4698
20歳・♂・PN
香坂・光(ga8414
14歳・♀・DF
天道 桃華(gb0097
14歳・♀・FT
ティム・ウェンライト(gb4274
18歳・♂・GD
リュウナ・セルフィン(gb4746
12歳・♀・SN
海東 静馬(gb6988
29歳・♂・SN

●リプレイ本文

―― 爆進、褌男 ――

「さぁて、結婚する能力者達に褌と言う名前の幸せも届けてやるとしよう」
 とても満足そうに大石・圭吾(gz0158)は褌が入れられていると思われるダンボール箱を抱えながら本部から出る。
 もちろん、こんな男が島に渡ってしまったら幸せ一杯の島が地獄絵図へと化してしまう事だろう。
「ん?」
 そこへ通りがかった伊佐美 希明(ga0214)がダンボールから落ちた褌を手に取る。彼女にしてみたらあまり手に取りたくないものだろうが、これも任務だと嫌がる自分の心を諌める。
「なんだこれは‥‥縫製が甘いッ! 甘すぎるぞ!」
 くわっと覚醒して鬼の形相を見せながら叫ぶ伊佐美。はっきり言って褌馬鹿男は少しだけ怯えている。
「貴様の褌に懸ける思いはその程度のものなのかッ!」
 全部やり直せ! 本部中に響き渡るような大きな声で伊佐美が叫び、持っていた竹刀で大石の背中を叩く。褌しか身に着けていない彼なのだから叩かれれば痛いのは必然なわけで「こんな雑な縫製のものを人に渡そうと考えているのか! 貴様は!」とバシバシ叩きながら叫ぶ。
「‥‥大石さん、それだけは駄目です」
 哀れみと嫌悪の混じった目で辰巳 空(ga4698)が大石を見ながら呟く。伊佐美を含めて彼が此処に現れたのも偶然ではない。

『大石を止めてくれ』

 そのような依頼が本部に出たからである。幾つものキメラ退治の依頼と並びながら。既にキメラと同じ扱いになっている事を彼だけが知らない。
「いつもは大石さんの味方だけど‥‥今回ばかりは貴方の前に立ちふさがらせてもらうのだ! 平和な結婚式の為に!」
 香坂・光(ga8414)は大石を見ながら叫ぶ。しかしそんな事を言っている彼女だが実際は放って置いても面白いかも、と思ったのは内緒なのだとか。
「大石さん、騙されてはなりません!」
 天道 桃華(gb0097)が大石に近寄りながら彼の褌を奪うべく任務を行おうとする能力者達の前に立つ。
「き、きみは確か愛好会副リーダーの娘!」
「大石さん、私は恵まれない人達の為に褌を集めてるんです‥‥お願いします‥‥褌を分けてください」
 天道はうるうると涙を瞳に溜めながら大石に話しかける。
「後300枚で病気の子供達が救えるんです」
 褌で治る病など存在しない。むしろ大石の褌と言うだけで病原菌をばら撒きそうな気がするのは気のせいだろうか。
「ショップに行って買えばいいじゃないか」
 しかし、天道のお願いも空しく大石は病気の子供をあっさりと見捨てる。
(「この人の頭の中は褌しかないんですかね‥‥」)
(「馬鹿だ。こいつは馬鹿だ。馬鹿だと思ってたけど本当の馬鹿だ」)
(「ちっ、素直に渡せばいいのに‥‥病気の子供を見捨てるなんて!」)
 上から辰巳、伊佐美、天道の心の声である。まるで大石の味方のように登場した天道さえも彼の褌を奪おうとする者達の仲間だった。
「圭吾さん、お久しぶりね。覚えてるかしら?」
 金色の髪を靡かせながらティム・ウェンライト(gb4274)が大石に話しかける。
「おお! きみは俺の初恋の人じゃないか!」
 ぽん、と手を叩きながら大石はティム――の胸を見る。褌しか頭にない馬鹿な男だが、大石も一応は『男』という事なのだろう。
(「くっ‥‥恥ずかしいし、何か間違えてるような気がするけど‥‥覚醒状態のこの姿で圭吾さんの気を引かないと‥‥ッ!」)
 ティムの役割、それは覚醒して大石の気を引く――その間に仲間が褌を奪う――という手はずだった。彼らの思惑通り、大石はティムに、ティムの胸に釘付けである。
(「でも私ももうすぐ結婚だから、あの褌を贈られた時の気持ちは理解できる‥‥なんとしても圭吾さんを止めないと――っ、たとえ私がこの身を犠牲しても!」)
 ぐ、とティムは心の中で強く決意する。ここまで人に決意させなければならない大石の褌とはどれだけ害があるのだろうか。
「ダンボール、3つあるのら‥‥」
 がーん、とリュウナ・セルフィン(gb4746)がダンボールを確認しながら呟く。
「‥‥確か‥‥軽く300枚とか‥‥言ってたな‥‥軽くだから‥‥300以上‥‥あるのは‥‥不思議じゃないか」
 西島 百白(ga2123)がため息混じりに呟く。
「‥‥あんなふざけた格好してるが‥‥奴の実力‥‥見てみたいな‥‥」
 西島は小さな声で呟く。褌姿と言えど同じファイター同士、大石の実力を見てみたいと彼は思っていた。
「‥‥リュウナ‥‥面倒だけは‥‥起こすなよ?」
 西島はリュウナに向けて呟くと「はいなのら」と彼女は大きく手を挙げながら答える。
「退屈しない奴だよなぁ‥‥」
 海東 静馬(gb6988)が褌の入ったダンボールを守る大石を見ながら呟く。
「まぁ、とりあえず無駄だとは思うが、念のためな」
 海東が伊佐美に怒られている大石に向けて言葉での説得をしようと試みる。
「ちょっと待て! これは危険物なんかじゃない! 結婚する能力者を祝福するための褌だ!」
 大石は慌てて弁明するが、そんな事など分かっている。分かった上で彼らは大石を止めようとしているのだから。
「あのなぁ。親しい友達に贈るのなら、手作り感があっていいかもしれないが、見ず知らずの人間にこんな下手糞なものを渡され喜ぶものか!」
 伊佐美はダンボールをべりべりと開けて褌を一枚取りながら叫ぶ。
「‥‥ていうか、血がついてるじゃねーか! こんなものを渡したら、たとえ褌好きでも、褌嫌いになっちまうぞ! トラウマ付きで!! それでもいいのか!」
 それがお前の願いなのか! と伊佐美は真剣に叫ぶ。しかしどんなに真剣な顔で言っていても、真剣な言葉を言っても所詮は褌についてである。シリアス性に物凄く欠けるのは気のせいだろう。
「それは大丈夫だ、俺は大丈夫だったから!」
 きらんと爽やかな表情で言葉を返すが「バカヤロウ!」と伊佐美から殴られ、大石は派手に吹っ飛ぶ。
「あのなぁ、これだけ真剣に言われるって事は今回に関しては舞台がそいつを贈るには相応しくないからだ」
 海東が無駄だと分かりつつも一筋の希望に懸けて言葉での説得を行おうとするのだが‥‥。
「大丈夫だぜ! ちゃんと相応しいように紅白にしたから!」
 ふたたびきらんと爽やかな顔で言葉を返す。こんな褌BAKAの為に傷つけないように事を運ぼうとする能力者諸君達に拍手を送りたい気持ちである。
「いや、話は最後まで聞け。相応しくない舞台で贈れば、逆に不幸を招く事になる。それでいいのか、大石? お前の褌に対する熱い思いはそれを望むのか?」
 海東も伊佐美同様シリアスな言葉で大石に島行きを諦めるように促すのだが――所詮はBAKA、褌BAKAである。
「でももう作ってしまったから仕方ないと思うんだ」
 お前は悪魔の使者か、能力者達は心の中で同じ事を呟く。
「だから話を最後まで聞けと何度言ったら分かるんだ」
 海東はいい加減苛々し始めた自分を何とか抑えて言葉を続ける。
「お前がその褌を贈るに相応しい舞台はきっとやってくる。今はまだ時期尚早だ。今は大事に暖めておいて、大石なりの祝福の言葉だけ贈っとけ。お前の作った褌は、然るべき所然るべき舞台でこそ輝くと思うぜ?」
「俺は今回が輝く舞台だと思う」
 所詮はBAKAか、海東は諦めたような呆れるような、そんな生温い表情で大石を見る。もうこれだけ言っても諦めないという事は実力行使しかない――能力者達は心の中で呟く。
「大石さん、あいつらは暗黒褌団なのよ――全国の褌好きから褌を奪う悪の組織、褌で世界征服をしようとしているのよ」
 褌がどうやって世界征服をするのか分からないが、大石は「なんと!」と驚いたような表情で天道に言葉を返す。やはりBAKAだ。
「私が褌を預かっててあげるわ、それが安全でしょうし」
「そうか? 能力者達の為に預かっててくれ」
 大石はそう呟きながら天道に褌の入ったダンボールを3つ渡した――その時、天道が能力者達に向けてダンボールを投げつける。
「足が滑って! ダンボールが暗黒褌団に奪われてしまったわ!」
 悲劇のヒロインのようなポーズで天道は泣き真似と共に呟く。ダンボールは辰巳、香坂、リュウナに渡り、彼らはそのまま逃げるように大石から離れる。
「おおおおっ! 欲しいなら俺の褌をやるから! その褌だけは返してくれぇ!」
 いらねぇよ、背中から聞こえる大石の絶叫に三人は心の中で言葉を返し、そのまま一目散に散っていく。
「ちょっと待て! まだ縫製について言いたい事があるんだ! 待てって言ってんだろうがああっ!」
 伊佐美が叫びながら大石の足を止めようとバナナの皮を投げる。
「おおっ!」
 バナナの皮に滑った大石は‥‥見事にくるっと回って着地してそのままダンボールを奪った能力者達を追いかける。
「‥‥あいつ、曲芸師にでもなった方が‥‥」
 伊佐美はバナナの皮と大石を交互に見てポツリと呟いたのだった。
「褌野郎が‥‥紳士気取りも‥‥これまでだ‥‥」
 西島が『グラファイトソード』を構えて大石を迎え撃つ。曲がりなりにも能力者なのだから多少は出来るだろうと西島は予想していたのだが‥‥。
「俺の褌がぁぁぁぁっ」
 攻撃の際に褌を切ってしまい、あやうくモザイクがかかるところだった。
「俺が憎いなら俺を斬ればいいじゃないかっ! 褌に罪はないだろう!」
 お前は一体何なんだ、西島は目の前で号泣する大石を見て何故か罪悪感に苛まれる。ちなみに彼は『大石の褌が憎い』わけではなく『大石を止める為に攻撃を仕掛けたら偶然にも褌を少しだけ斬ってしまった』という状況なので誤解をせぬよう。
「‥‥悪いが‥‥譲れないな‥‥」
 西島は大石を足止めする為に再び武器を構えるのだが‥‥「大石さん、こっちよ!」と天道に手を引かれる。
「まずは褌を取り返す方が先でしょう!」
 天道は目配せをしながら西島に合図をする。彼女は予め大石捕獲用落とし穴を用意しており、どうしても譲らぬ場合はこれに落とすと他の能力者達に言っていたのだ。
「きゃあああっ!」
「む!」
 突然ティムが叫びだしその場に蹲る。
「どうしたんだ、悩みなら俺の褌に飛び込んでくるがいい」
 変質者かよ、とティムは心の中で呟くが『ここはじっと我慢よ、私』とティムは自らを戒めて耐える。
「ご、ごめんなさい‥‥ちょっと躓いただけなの」
 ティムは言いながら大石の褌を一気に剥ぎ取る。

『汚物発生の為、一時本部のカメラを遮断しております』

「きゃあっ、私ったら恥ずかしいっ」
 ティムは照れる振りをしながら大石の褌(先ほどまで着用していました)を持って何処かへと去っていく。
「ぬおあああああ! 俺の褌を返してくれええええ!」
 前を隠し、その場に蹲りながらティムに向けて叫ぶが、既にティムはその辺にはいなかった。
「うおおおお、俺の褌を奪われた‥‥しかし能力者の為に褌を取り返さねば――む、伊佐美! 一生の頼みがあるんだ!」
 突然顔だけをあげて伊佐美に話しかけ「な、なんだよ」と伊佐美は少しだけ驚きながら言葉を返す。
「あとでちゃんと返すから、その、隠すようにその『【OR】金ダライ』を貸してくれないだろうか」
 大石の言葉に伊佐美が内容を理解するまで数秒、そして。
「ふ、ふざけんなあああっ! き、貴様は私の金ダライを使用不可にするつもりか!」
 彼女の抗議も尤もである。
 そして、その頃――‥‥褌を奪って逃げた能力者達はいつまで待っても追いかけてこない大石を不思議に思っていた。
「フンドシ魔が来ないのら‥‥これ、どうすればいいなり?」
 リュウナは抱えたダンボールを見ながらため息混じりに呟く。しかしそのダンボールの中にはびっしりと褌が入っていることを考えてリュウナはぞっとして手を放す。
「‥‥‥‥よし、埋めよう」
 リュウナは決意したように呟き、ダンボール箱を埋めるために穴を掘り始めたのだった。
「とりあえず、この褌をそのままにしとくのはマズいから袋に入れて厳重封印したんだけど‥‥大石さん、来ないなぁ‥‥絶対追いかけてくると思ったのに」
 首を傾げながら香坂が呟くが、まさか大石がZENRAになって動けずにいるなんて夢にも思っていないことだろう。
「‥‥長期戦に備えて食料、飲料もそろえていたんですけど――来ないですねぇ」
 辰巳もため息混じりにぽつりと呟く。彼の隣にはダンボールが入れられた大きな袋とその中にびっしりと投げ込まれた消臭剤。
 かくして恐らく彼らが受けた任務の中で一番BAKAのような、そしてこれほどまでに精神的に疲れた任務は終了を告げたのだった。


―― 褌埋めて、大石埋めて ――

「‥‥面倒な‥‥依頼だったな‥‥まったく‥‥」
 ため息混じりに西島が呟き、リュウナと一緒に帰ろうとしたのだが――彼女はまだ西島の元に帰って来ていない。
 それもそのはずだ。褌を埋め終わる頃にはとっぷりと日も暮れて、彼女は真っ暗になってしまったLHの中で「ここ‥‥どこなりか‥‥?」と寂しく呟いている最中だったのだから。
「とりあえず、こいつを使うまでにはいたらなくて良かった――のか?」
 海東は小銃『S−01』を見ながらため息混じりに呟く。
「まっ、任務終了――――かぁ?」
 海東は疑問系で呟く。何故か『依頼が終わった!』という達成感が沸かない不思議な仕事だったのだから無理もないのだけれど。
「お前は変態だが、祝いたい気持ちは純粋なモンだろ。直接行くのは完全アウトだが、贈り物を贈る気持ちくらいは認めてやってもいいんじゃないかと私は思うぜ‥‥なんならウチら一同からって事でもさ」
 そう呟きながら伊佐美は電報を書き始める。そのあて先は――お騒がせ記者・土浦 真里となっている。
 まさか彼女も結婚式の電報で褌が贈られてくるなんて予想も出来ないだろう。もちろん大石が作った血痕付きの褌ではなく、伊佐美の指導によって作られた立派な褌。
「大石さん、そのままでは動けないでしょ? 私が助けてあげる」
 天道はにっこりと微笑みながら大石を簀巻きにしていく。そして向かう先は――彼女が大石の為に作った落とし穴。
「これでお仕事完了っと」
「おあああぁぁぁぁぁ‥‥」
 落とし穴に落とされて小さくなっていく大石の姿を見ながら「食べ物とかはちゃんと届けてあげるから結婚月間が終わるまでそこで大人しくしててね」と告げたのだった。
「とりあえず褌を広めるチャンスはまたあると思うから‥‥今回は傭兵に噛まれたと思って諦めて」
 香坂が穴の中へ向けて叫ぶ。
「‥‥トランクスは使わなかったんだ」
 ティムが苦笑しながら呟く。ティムは褌を奪った代わりとしてトランクスを落としていっていたのだが「こんなもんは邪道だ!」と頑なに大石が着用する事を拒んだのだ。
「さて、これからタコ殴りタイムね。男に負けるなんて納得とかを通りこして理不尽だわ!」
 天道が叫び、男性なのに大きな胸(覚醒時)を持つティムに襲い掛かったのだとか‥‥。


END