タイトル:ララバイマスター:水貴透子

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/05/18 03:27

●オープニング本文


無理をしたら駄目だと分かっている。

だけど‥‥あの時のハルの顔がボクの頭から消えてくれない。

周りの皆は労わってくれる。

「つらかったね」「あんまり無理はしなくていいからね」

違う‥‥本当につらかったのはハルなんだ‥‥。

ボクはもっとあの時、無理をするべきだったんだ‥‥。

※※※

『ボクの弟になれる子供はなかなか見つからない。

 目がそっくりな少年を見つけたけれど、騒がしくて勢いあまって殺してしまった。

 だって、ボクの弟ならあんな風に騒ぐ事なんてないのだから。

 もう一人、ボクの弟になれるかもしれない子供がいたけれど‥‥女の子だったから無理だった。

 次は何処に探しに行こうかな‥‥今の時代、子供ばかりが集まる場所なんて多くあるから助かる』

クイーンズ記者・室生 舞は先日取材に行った孤児院で見つけたノートの中に書かれていた一文だった。

その中には実験記録のようなものも書かれており、舞は震える手でそれを読み続けていた。

「‥‥ハル‥‥」

もちろん実験記録の中にはハルの物もあって、思わず舞はノートをぐしゃりと握り締める。

そして一通り見た後、鍵つきの引き出しの中にノートをしまい、着替えを始めたのだった。

※※※

舞が少しおかしいと思い始めたのは、あの友人をキメラにされるという事件の直後からだった。

服装も何処か男の子のような服を着始め、少し大きめのサバイバルナイフまで持って歩くようになった。

「‥‥舞、あんた――最近取材って言って出かけてるけど‥‥一体何処に行ってるの? 頼んでいる取材はなかったわよね?」

朝早くから出かけようとする舞をチホが呼び止める。

「‥‥ボクはもう心配されるような子供じゃありません。お仕事はちゃんとやってますから、それ以外の時間で口出しされるいわれもありません」

舞は冷たい目でチホを見た後、玄関のドアを開けて出て行った。

「‥‥あの子、本当にどうしたのかしら‥‥」

そこでチホは気づく、いつもなら出かける時でも『QUEENS』の腕章を外した事のなかった舞が――腕章を外していたという事に。

※※※

(「‥‥ボクはもう決めた――誰に言われても変えない。ボクの気持ちなんて、誰にも分からないんだから」)

キメラがいると言われている場所、だけど舞はこの場所に用事があった。

ハルのいた孤児院の事を調べているうちに、各地で似たような事件があることを知った。

だから片っ端から探して行けば――‥‥もしかしたら、見つかるかもしれないと考えたのだ。

前を見据える舞の姿は、今までの舞とは別人のように厳しいものだった。

●参加者一覧

神無月 紫翠(ga0243
25歳・♂・SN
レィアンス(ga2662
17歳・♂・FT
ゲシュペンスト(ga5579
27歳・♂・PN
椎野 のぞみ(ga8736
17歳・♀・GD
レイン・シュトラウド(ga9279
15歳・♂・SN
朔月(gb1440
13歳・♀・BM
芝樋ノ爪 水夏(gb2060
21歳・♀・HD
水無月 春奈(gb4000
15歳・♀・HD

●リプレイ本文

―― 繰り返される悲劇 ――

「普通のキメラ退治でしょうか? ただ、どうも嫌な予感がするのは‥‥」
 神無月 紫翠(ga0243)がため息混じりに呟く。資料を見る限り、今回は普通のキメラ退治――だけど彼に危険を知らせるように胸の辺りがざわつくのを感じずにはいられなかった。
「宜しくお願いします‥‥また孤児院‥‥か‥‥」
 椎野 のぞみ(ga8736)は思案の表情を見せながら、今回一緒に行動を共にする能力者達に挨拶をした。
「孤児院でキメラ退治ですか‥‥どうしても思い出しちゃいますね」
 芝樋ノ爪 水夏(gb2060)も少しだけ沈んだ表情でポツリと呟く。彼女達の心にあること、それは先日起きた室生 舞(gz0140)の事件の事を思い出しているのだろう。
「‥‥既に潰れているとはいえ、いい気分はしませんね‥‥」
 水無月 春奈(gb4000)もため息混じりに呟く、しかし隣に立って片手で頭を抑えながら辛そうな表情をしているレィアンス(ga2662)を見て「大丈夫ですか?」と言葉を投げかける。
「‥‥‥‥大丈夫だ」
 レィアンスは短く言葉を返す。彼は先日の事件の所為で失くしていた記憶の一部を取り戻したのだけど良い記憶ではなかったのか彼を苦しめる事となっていた。
「ふむ、素早さがあるようだが8人も能力者が集まったんだ、何とかなるだろう」
 ゲシュペンスト(ga5579)が資料を見ながら呟くと「そうですね」とレイン・シュトラウド(ga9279)が言葉を返す。
「ただ‥‥一つだけ気になる事があるんだよな」
 朔月(gb1440)がため息混じりに呟き「どうか、しましたか?」と神無月が言葉を返す。
「この孤児院、この前の事件と似てるんだよ」
 朔月の言葉に前回の孤児院に赴いた能力者達が表情を強張らせる。
「舞さん‥‥」
 芝樋ノ爪がポツリと呟く。
「その事件なら報告書を読みましたので‥‥多少は知っています」
 レインも俯きながら言葉を返すように呟いた。
「とりあえず、まずは仕事を終わらせてしまいましょう」
 水無月の言葉に能力者達は首を縦に振り、それぞれ準備を始める。
「とりあえず、現地に到着したら状況を町の人に聞いて、素早く向かいましょう」
 椎野が呟き、能力者達は出発したのだった。


―― 意外な訪問者・そして ――

 問題の孤児院跡地は町から少し離れた場所に存在しており、能力者達は孤児院跡地に向かう前に住人達から少しだけ話を聞く事にしていた。
「一応確認ですが、あの孤児院は無人ですよね?」
 レインが住人の一人に話しかけると「えぇ、少し前に事件がありましたから‥‥」と女性が俯きながら言葉を返してきた。
「事件?」
 ゲシュペンストが聞き返すと「子供も大人も‥‥殺されたんです」と女性は身体を震わせながら呟いた。
「何日も連絡が取れなくなって様子を見に行った人がいたんですが‥‥まるで何かの実験か何かを行ったような惨状でした」
 その言葉を聞いて数名の能力者達は目を丸くした。まるで先日の事件と同じだからだ。
「そういえば‥‥一人だけ男の子だったと思うんだけど孤児院跡地に向かって行ったわ。ナイフを持っていたけど?」
 女性の言葉を聞いて能力者達は互いに顔を見合わせる。今回のキメラ退治を請け負った能力者は此処にいる8名、先に来ている能力者などいるはずもない。
「急ぎましょうか‥‥」
 神無月が呟き、能力者達は孤児院跡地へと向かったのだった。

 今回は迅速に任務を行う為に班を二つに分けて行動する作戦を能力者達は立てていた。
 A班・レイン、芝樋ノ爪、椎野、朔月の四人。
 B班・神無月、レィアンス、ゲシュペンスト、水無月の四人。
 キメラは孤児院跡地に居るという事がはっきりと分かっているので、能力者達は孤児院跡地に到着してから別れてキメラ捜索を行う事に決めていた。
「誰なんだろうな‥‥俺達の他にも来ている奴って」
 孤児院跡地に向かいながらレィアンスがポツリと呟き。
「武器を持っているからって能力者とは限らないからな」
 ゲシュペンストも呟く。
「民間人という可能性もありますからね‥‥もし民間人だったら護衛はお願いします、とりあえずはキメラ殲滅をしなければ‥‥」
 水無月が言葉を返し、孤児院跡地に向かう。
「とりあえず、範囲狭いけど、用心の為に『探査の眼』を使うね」
 椎野は呟きながらスキル発動してキメラなどの不意打ちなどに備える。それに民間人や能力者達が紛れ込んでいても分かる事だろう。
「此処からは班で行動だな」
 ゲシュペンストが呟き、能力者達は孤児院跡地の敷地内に入りキメラ、そして先に向かったという人物の捜索を開始したのだった。

※A班※
「元々は綺麗な場所だったはずなのに‥‥こんなに‥‥」
 レインは踏み荒らされ、花も枯れ果てた花壇を見ながらため息混じりに呟く。
「今頃どうしているんだろう――‥‥」
 椎野も様子のおかしかった舞の様子を思い出し、俯きながら呟いた。
「‥‥私達が舞さんのお友達を――」
 殺してしまった、芝樋ノ爪は最後まで言葉を続ける事なく唇を噛み締める。
(「‥‥此処がこの前の事件とほとんど同じ状況ってのが気になるんだよな‥‥」)
 朔月は心の中で呟く。その時、建物の中から物音が聞こえ、能力者達はそれぞれ武器を構える――だけど、建物の割れた窓から見えた姿は先ほどまで話題にしていた室生 舞、本人だった。
「こんにちは」
 舞は驚く素振りも見せずに挨拶をして見せた。
「舞さん? 何で此処に‥‥」
 その時『トランシーバー』からキメラを見つけたという連絡が入ると同時にA班が捜索していた場所へキメラとB班がやってきた。

※B班※
「結構荒れているんだな‥‥」
 ゲシュペンストは原型こそ留めているが、窓が割れ、壁にはひび割れた孤児院跡を見てため息混じりに呟いた。
「此処も、こんな風にならなければ今でも子供達が居ただろうにな」
 レィアンスも割れた壁に触れながらポツリと言葉を漏らす。
「そうですね‥‥でもキメラはどこに居るのでしょう――キメラの爪あとのようなものは残されていますが」
 水無月も周りを警戒しながら捜索しているが、肝心のキメラが見つからない。
「確かに‥‥」
 呟きかけた神無月の言葉がピタリととまり、人差し指で『静かに』というジェスチャーをしながら前方を指差した。
「う‥‥」
 そこには迷い込んできた動物を食い散らす獅子に似たキメラが存在した。
「あれか」
 レィアンスがポツリと呟いた瞬間だった、キメラは後ろに移動してきて能力者達の背後を取った。不意をつかれた所為もあって能力者達は一瞬だけ行動が遅れる。
「聞いた通り、速いな‥‥」
 レィアンスは呟き、水無月は『トランシーバー』でA班にキメラを発見した事を伝え、A班が居る場所へとキメラを誘導する事にした
「ほら、こっちだ‥‥っ!」
 ゲシュペンストは小銃『S−01』でキメラに攻撃を仕掛け、自分達についてくるように仕向ける。
「少し先にA班がいます‥‥合流して戦いましょう」
 神無月が呟き、A班と合流して本格的に戦闘開始となったのだった。


―― 戦闘開始 ――

「舞さん? ‥‥何故、ここに‥‥? 久しぶりですが‥‥」
 何かあったみたいですね、神無月は『魔創の弓』でキメラに攻撃を仕掛けながら言葉を付け足す。舞の身に起きた事、それが普通の事ではないのが彼にもすぐに分かった。
(「‥‥餓えた狼のような目です‥‥」)
 ちらりと舞を見て、そしてもう一度攻撃を仕掛ける。
「動きが速い‥‥ならば」
 レィアンスは『先手必勝』を使用した後に『流し斬り』でキメラに向けて攻撃を行う。その際に反撃としてレィアンス自身もダメージを受けたが、重傷というほどではない。
「あの子が誰か気になるが‥‥まずは与えられた役割を果たす‥‥」
 ゲシュペンストは小銃『S−01』で牽制攻撃を行いながら前衛が戦いやすいように状況を作っていく。
 そして暫くすると後ろへと下がって『ガンドルフ』へと武器を持ち変え「正面‥‥零距離で叩き込む!!」と叫びながら攻撃を仕掛けた。
「援護します!」
 椎野は大きく叫ぶと長弓『草薙』を構えて『紅蓮衝撃』を使用してキメラめがけて矢を放つ。
「此処はきみがいていい場所じゃないよ」
 レインは『スコーピオン』を構えて『狙撃眼』で射程を上げ、攻撃を仕掛けながら舞に話しかける。
「‥‥別に戦いの邪魔をしようとかは思ってないです」
 その時の舞の瞳に強い意思が込められており、言う事を聞く気がないという事が見て分かる。
「とりあえずキメラの足を止めます、援護宜しく」
 水無月は天剣『ラジエル』を構え、キメラに向かって走り出す。その間にも攻撃を受けてはいたが、彼女は止まる事はなかった。水無月がキメラに近寄って攻撃を仕掛ける間際、レインが『スコーピオン』で援護射撃を行い、一時的にキメラの動きを止める。
「‥‥これ以上、貴方を進ませるわけには行きません」
 芝樋ノ爪が『機械剣α』を振り上げてキメラに向けて攻撃をする――だけどこの前の事件のことを思い出して苦痛に表情を歪ませる。
「おい、下がるぞ」
「放っておいてください」
 差し出された朔月の手を振り払い、舞は下がる事をしない。戦闘の邪魔をするつもりはなさそうだが、いつキメラと能力者の戦闘に巻き込まれてもおかしくない。
「ま、ここにオマエがいる事情は後で聞くよ?」
 舞の行動に呆れながらも朔月は舞の護衛をする。そして同じく神無月も舞の護衛を行う為に舞の近くへと移動してくる。
「‥‥誰だ? 知り合いか?」
 舞と面識のなかったゲシュペンストが能力者達に問いかけると「うん、雑誌の記者さんです」と椎野が言葉を返した。
「援護してやる‥‥トドメは任せる」
 神無月は『強弾撃』と『影撃ち』を使用しながらキメラに向けて攻撃を行い、彼の攻撃にキメラが気を取られている間にレィアンスが『蛍火』と『【OR】柄無』を振り上げて攻撃を仕掛ける。
「此処から後ろには行かせない、舞がいるなら尚更な」
 ぎゃあ、とキメラが醜い悲鳴をあげている間にレィアンスがきつくキメラを睨みつけて呟いた。
「打ち抜く‥‥そし引き千切る!」
 ゲシュペンストは小銃『S−01』で攻撃を仕掛けた後に武器を持ち変えて『ガンドルフ』で引き裂くように攻撃を仕掛ける。
 そして椎野が弓、レインが銃で援護攻撃を行い、水無月と芝樋ノ爪が接近攻撃を仕掛ける。既に弱りきっていたキメラは二人の攻撃でトドメとなったが、芝樋ノ爪はキメラと舞の友人であったハルがダブって見えてしまい、思わず目を背けてしまったのだった‥‥。


―― 彼女の決意 ――

「終わったか‥‥」
 レィアンスが短く呟き、暗く表情を沈ませている舞に視線を向けた。レインは舞に向ける為か、それともキメラに向けたのか『【OR】白銀のハーモニカ』で子守唄を奏でている。
「‥‥こんな所でお会いするとは‥‥それで、ここには何かあるのですか?」
 キメラ退治を終えた後、水無月が舞に話しかける。
「貴方達にボクの気持ちは絶対に分からない」
 ポツリと舞が呟く。そしてそんな舞に「思う所あり、か」とゲシュペンストが短く呟いた。
「心が既に決まっているならそれに従うのもいいだろう。俺は何があったか直接知らない以上、お前の気持ちは分かってやれん」
 ゲシュペンストの言葉を舞は黙ったまま聞いている。
「だが、誰かに全部吐き出しちまえば多少は楽になるんじゃないのか? 今日見た限りじゃそれをさせてくれる相手に恵まれているようだしな」
 ゲシュペンストが言い終わると「ボクもその意見には同感です」とレインが口を挟んでくる。
「ボクは別に止めはしませんが、もっと周りを頼ってみたらどうですか? きっと皆さん、舞さんの力になってくれると思いますよ?」
 レインの言葉に「‥‥いや」と短く呟く。
「ああするしか出来なかったとは言え‥‥ハルを殺した能力者に頼るのは嫌!」
 その言葉はきっと舞がひたすら隠し続けていた本音なのだろう。
「ボクは貴方達が嫌いなわけじゃない‥‥けど」
 舞の呟きを聞きながら「私が、舞さんから友人を奪ったんです。どんなに言い繕っても、その事は変わりません」と芝樋ノ爪が弱々しく呟き返した。
「ごめんなさい、助けられなくて、ごめんなさい」
 呟きながら芝樋ノ爪は涙をぼろぼろと零している。
「俺には舞の気持ちは分からない。俺に分かるのは――ハルの気持ちくらいぐらいだ。幸か不幸か‥‥戻った記憶は、俺が実験体だったというものだったからな」
 その言葉を聞いて舞は少し驚いたように目を丸く見開いている。
「だからこそ言う。ハルがそれを望むかどうか、考えてみるんだな」
「舞さんの行動を止める事はしない! だけど、舞さんの気持ち話してよ! ‥‥じゃないとボクと同じで大切な人に舞さんに何かあった時、同じ気持ちにさせるよ!」
 マリさん達は大切じゃないの? 椎野は少し興奮気味に大きな声で叫ぶ。
「ハルさんの姿を見て怒りを感じたのは貴方だけではありません、何もかも一人でやろうとしないで‥‥私にも手伝わせて下さい‥‥」
 水無月が舞と視線をあわせながら呟く。
「ボクの気持ちは分からない――大事な人を奪われても、仇を討てる『力』を持っている貴方達だけには‥‥ボクの気持ちは分からない!」
 かたかたと震えながら舞はナイフを取り出して「こんなもん、何の役にも立たない事も分かってる」と涙を流しながら呟く。
 舞に言葉を聞かせる事は出来ても、心に届かない――そう感じた椎野は舞の手を持って自分の太ももにそのままナイフをおろした。
「ひ――」
 舞の悲鳴にならない声をあげ、血に塗れたナイフを見る。
「この手が汚れるのは――能力者の自分達で十分ですよ」
 神無月が「大丈夫ですか?」と椎野に話しかけた後に舞を見据えて呟く。
「そういう囮なら俺がやってやるよ」
 朔月は舞からナイフを奪い、そのまま自分の髪を切る。
「ボクは‥‥自分の力で――」
 言いかけた舞の言葉が突然とまる。それもそのはず。神無月の持つ小銃『ブラッディローズ』が舞に向けて発砲されたからだ。
「世の中、そんなに甘くないんですよ? それでも行くというのなら、次は、本気です」
 神無月の放った弾丸は舞の腕を掠める程度。だけど舞はその傷を冷めた目で見ている。
「ボクは諦めません。殺したいなら――殺せばいい」
 舞はそれだけ言い残してその場を立ち去る。能力者がそれを止めようとしたのだが「編集室に戻るだけです、一人で帰れます」と断られ、能力者達はそのまま見送る事しか出来なかった。

 後日、レインは舞の様子を見るためにクッキーを持ってクイーンズ編集室へとやってくる。
「ボクにはこれくらいの事しか出来ないけど」
 差し出されたクッキーを見て「‥‥ありがと」と表情を変える事なく呟き、いまだ舞の心に抉るようにつけられた傷が癒えるには時間が必要なのだとレインは心の中で呟いたのだった。


END