タイトル:彼女達の日常マスター:水貴透子

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/05/10 22:34

●オープニング本文


今回はあのじゃじゃ馬がいないから、少しは楽な取材になる――筈なんだけどね。

とりあえず、今回は宜しくお願いするわね。

※※※

クイーンズ記者の諸君、今回はキミ達に取材を任せる事にさっき決めたからv

マリちゃんはちょっと一週間ほど出かけてくるから、ちゃんと仕事するんだぞー。

もし任せたクイーンズの売り上げが減ってたら‥‥夏のボーナス減額も覚悟しておくといいよ。

では、頑張って仕事に取り組みたまえー!

※※

これがクイーンズ編集室のリビングに残されていたメモ。

「何処かに行くとか行ってたっけ?」

翔太がため息混じりに朝食に手を伸ばしながら呟くと「うん。何処かに行くって」と静流が答えにならない言葉を返してきた。

「ま、いつもマリさんがしてるみたいな取材すりゃいいんだろ?」

楽勝ジャーン、と言いかけた翔太の声がピタリと止まる。

「い、いつものマリさん――みたいな‥‥?」

「アレはマリだから出来る事であって、常人には無理でしょう」

静流が呟き、ジッとチホを見ながらため息混じりに呟く。

「そ、そうだ、舞は!? 舞に行かせりゃいいじゃんか!」

翔太が名案だと言わんばかりに「舞ー!」と叫ぶが「部屋にこもってるわ」とチホが言葉を返した。

「この前のこともあるんだし‥‥もう少しソッとしておきなさいよ‥‥」

そして「仕方ない、私が行くかな」とチホが腕を組み、盛大なため息を吐きながら呟く。

「とりあえず、ご丁寧に取材地も決めてあるみたいだし‥‥同行する能力者も決まっているみたいだからね、誰かが行かなくちゃいけないでしょ」

そしてチホは荷物を纏めて、能力者達との待ち合わせ場所である本部へと向かったのだった。


●参加者一覧

小鳥遊神楽(ga3319
22歳・♀・JG
椎野 のぞみ(ga8736
17歳・♀・GD
レイン・シュトラウド(ga9279
15歳・♂・SN
サルファ(ga9419
22歳・♂・DF
藤河・小春(gb4801
16歳・♀・FC
雪待月(gb5235
21歳・♀・EL
神咲 刹那(gb5472
17歳・♂・GD
ヨーク(gb6300
30歳・♂・ST

●リプレイ本文

―― 破天荒娘のいない取材へ ――

「あれ? 今日は真里さんじゃないんですね」
 集合場所に最初にやってきたレイン・シュトラウド(ga9279)が少し驚いたような表情でクイーンズ記者・チホを見て呟く。
「ふふ、あの子ったらこんな置手紙を残して何処かに行っちゃったのよ‥‥」
 チホは疲れたような表情でマリの残していった置手紙を見せる、そこにはマリらしい理不尽な事が書き並べられており「うわぁ‥‥」とレインも苦笑気味にため息を漏らした。
「チホさん、今回は宜しくお願いするわね」
 小鳥遊神楽(ga3319)がチホの肩を軽く叩きながら挨拶をしてくる。
「こんにちは、此方こそ宜しくお願いね。あの子ほど無理をするつもりはないんだけど、取材を成功させなくちゃボーナスがかかってるから‥‥」
 チホの言葉に「まぁ、マリさんと違って、暴走するような事がないでしょうからその点だけは安心しているわ」と小鳥遊が言葉を返す。
「ふふ、こっちも命は惜しいもの。無理なんて頼まれてもするもんですか」
「あ、チホさんだ! 年末以来ですね〜。宜しくお願いします」
 椎野 のぞみ(ga8736)がぺこりと頭を下げながら挨拶をしてくる。そして何故此処にチホがいるのかという経緯を聞くと同情交じりに「頑張りましょうね」と椎野は言葉を返した。
「ほへ? 今回は広場でガンマンキメラですか‥‥憩いの場所を邪魔するキメラはお仕置きですよ」
 うん、と藤河・小春(gb4801)は首を縦に振りながら呟く。
「チホさんは私達で必ずお守りしますから、安心して下さいね」
 雪待月(gb5235)が少しだけ緊張の色を伺わせるチホに向けて話しかけると「ありがとう」と少し笑みを浮かべてチホは言葉を返した。
「クイーンズ‥‥雑誌はいつも読んでるけど‥‥いつもの人じゃないんだ。あのさわが‥‥賑やかな人ってマリさんだっけ?」
 神咲 刹那(gb5472)が言葉を濁しながらチホに話しかけると「別にいいわよ、私だって実際騒がしいと思ってるから」と苦笑気味に応えた。その言葉に神咲は「あはは‥‥」と笑うしか出来なかった。
「まぁ、今日は色々大変かもしれないけど、頑張って取材してね〜」
 神咲の言葉に「まぁ、頑張るわ」とチホは短く言葉を返した。
「‥‥無理はするな」
 ヨーク(gb6300)がチホに話しかけると「大丈夫、心配してくれてありがとう」とチホは取材用の道具が入ったバッグを肩にかける。
「それじゃ、そろそろ出発しようか。暗くなってからじゃ取材も出来ないだろうしね」
 サルファ(ga9419)が呟き、能力者達はチホの取材を成功させる為にキメラが潜んでいると言う町へと出発したのだった。


―― 潜むキメラ・チホを守りながらの戦闘 ――

「さてて、敵は人型で武器が銃かぁ‥‥チホさんに流れ弾当たらないように気をつけないとね」
 椎野は呟き「それじゃ早速『探査の眼』を使うね」と言葉をつけたし、スキル発動してキメラからの不意打ちなど急襲に備える。
「チホさん、大丈夫?」
 小鳥遊が緊張の為に疲れを見せるチホに話しかける――と「えぇ、大丈夫よ。心配させてごめんなさい」と彼女は言葉を返す。
 しかし小鳥遊はチホの護衛役でもあるレインに「ちょっと‥‥」と手招きをして呼ぶ。
「どうかしましたか?」
「チホさんの事、宜しくね。誰もがマリさんと言う訳ではないし、パニックを起こして突拍子もない事をする可能性は捨てきれないから‥‥お願いね」
 小鳥遊の言葉に「大丈夫です、ちゃんとボクが守りますから」とレインは言葉を返し、チホの隣まで戻る。
「ほへ‥‥チホさん大丈夫ですか?」
 藤河も顔色の悪いチホを見て心配になったのだろう、眉を下げながら問いかける。
「キメラ退治と取材が終わったら、皆でお団子でも食べましょう。他の皆さんもお菓子とか飲み物を持ってきているみたいですし」
「ふふ、それは楽しそうね。まずは取材とキメラ退治ね‥‥キメラの方は手伝う事は出来ないけど、皆が戦うさまをばっちり写真に収めさせて貰うわ」
 チホはカメラを藤河に見せながら呟く。
「‥‥もうすぐ広場に着く」
 ヨークが呟き、チホは後ろへと下がり、能力者達も更に警戒を強める。
 今回、能力者達は作戦相談中にそれぞれの役割を決めていた。
 前衛・神咲、サルファ、藤河の三人で合図と共にキメラに同時攻撃を仕掛けるという作戦を立てていた。
 中衛・小鳥遊、椎野の二人でそれぞれ前衛の援護を行う役割を受けている。立ち位置的に後衛にも援護にいけるような場所に陣取る事になっている。
 後衛・ヨーク、雪待月、レインの三人で全班の支援や攻撃指示などを行う役割を受けている。
「皆、気をつけてっ! キメラが‥‥きますっ」
 椎野の『探査の眼』で感じたキメラの気配に注意を促し、能力者達は戦闘態勢を取る。
「戦闘開始‥‥手筈通りに頑張ろう」
 神咲はポツリと呟きながら、キメラに向かって正面の位置に立つ。中衛、後衛は神咲から少し距離は取っているものの、後ろにいる形となる。
 そしてキメラの背後を取るため、サルファと藤河は気づかれぬようにキメラの後ろへと回る。その間にもキメラは手に持った銃で攻撃を仕掛けてくる。全てを回避する事は難しかったけれど、当たったとしても軽傷で戦闘に支障はない。
 その時だった。
「今です! 挟撃をかけて下さい!」
 レインが『照明銃』を打ち上げながらサインを出す、それと同時に神咲、サルファ、藤河が同時にキメラへと攻撃を仕掛ける。キメラは同時攻撃に気がついたけれど、どの攻撃を避けていいのか咄嗟の判断力が低いらしく、三人の攻撃を全てその身で受けてしまう。
「そのまま動かないでジッとしてくれていたら此方も助かるんだけどね」
 小鳥遊は『先手必勝』を使用して『強弾撃』と『影撃ち』を使いながら攻撃を仕掛け、金色の瞳で嘲るように呟く。
「ボクも後ろから援護するよ! みんな気をつけて!」
 椎野も長弓『草薙』を構えると立ち上がろうとするキメラに『先手必勝』でイニシアチブを取り『影撃ち』で攻撃を行い、再びキメラを地面へと沈める。
「‥‥っと、此処から前には出ないで下さい、危ないですから」
 撮影の為か、少し前に出すぎたチホをレインが止めて後ろへと戻す。戦闘前に前に出すぎないよう、そして自分から離れないように注意はしていたけれど取材に夢中になるとマリほどではないにしろ周りが見えなくなるのはチホも同じのようだ。
 その時だった、キメラの銃口が此方に向かっている事に気がついたのは。
「危ない!」
 レインは身を挺してチホを守り、銃弾がレインの腕を掠める。
「ご、ごめんなさい‥‥だ、大丈夫!?」
 顔色を真っ青にしながらチホがレインに問いかけると「誰かを守る為ならこんな傷くらい――くっ」と表情を歪めながら言葉を返してきた。
「大丈夫ですか!」
 傷を負ったレインを見て雪待月も慌てて駆け寄ってくる。幸いにもレインの傷は大きな傷ではなく軽いものだった。
「‥‥治療」
 ヨークが『練成治療』でレインの傷を治療しようとするが「先にキメラを退治しましょう、ボクの傷は軽いものですから」と制止する。
「‥‥分かった」
 ヨークは首を縦に振りながら呟くと『練成強化』を使用して能力者達の武器を強化する。
「‥‥‥‥強化完了」
 ヨークは呟きながら『超機械α』を構えて「‥‥‥‥痺れろ」と攻撃を行う。勿論、前衛の能力者達の妨げにならないように。
「許しませんよ」
 藤河は少し形を崩した広場を見ながら呟き『閃光手榴弾』のピンを引く。
「目をつぶって!」
 そして叫びながら『閃光手榴弾』をキメラへとめがけて投げつける。能力者達は藤河の声を合図にそれぞれサングラスをかけたり、地面に伏せたりなど自分達の目を守る行動を取った。
「すみません、ちょっと失礼します」
 レインはチホの目を庇いながら地面に伏せた。ここでチホのことを放ってしまったらキメラ退治は成功しても彼女の取材は失敗に終わってしまう。それは避けたかったのだろう。
 そして『閃光手榴弾』で目をやられたキメラは無差別に銃を発砲してくる。その中の銃弾がサルファの身体へと食い込む。避ける事も可能だったが、彼はあえて『避ける』という事をしなかった。
 銃弾を受けた後『活性化』を使用しながら、傷口の再生を行い、身体にめり込んだ銃弾を除去する。
「‥‥なんだ? 今のは?」
 ハッタリの言葉なのだが、キメラは少しだけ怯む素振りを見せた。
「隙あり」
 椎野が呟きながら長弓『草薙』で攻撃を仕掛ける。
「‥‥‥‥これで、最後だ」
 ヨークは短く呟きながら能力者達に『練成強化』をかけて武器を強化し、キメラには『練成弱体』で防御力を低下させる。
 そしてほぼ同時に能力者達はキメラに対して総攻撃を仕掛けた。
「秘剣、鎧通し‥‥ほんとは鎧の継ぎ目を狙う技なんだけどな」
 神咲は『レイバックル』と『急所突き』を使用しながらキメラの首を突き、返り血を浴びぬように素早く後ろへと下がる。その際にポニーテールにしてある彼の髪の毛が舞うように靡く。
「あなたに‥‥人々の憩いの場を壊す権利はありません」
 雪待月は長弓『黒蝶』を構え、キメラの目を射抜きながら厳しい表情で呟く。
「どうした? 俺はここだ」
 目を射抜かれた事で視界が遮られたのかキメラが右に左に首を振りながら能力者達を探すような素振りを見せる。そんな時にサルファは素早く移動しながら『流し斬り』を何度も繰り出してキメラに反撃の暇すら与えない連続攻撃を行う。
「さっきのお返し、だよ」
 レインは拳銃『マーガレット』を構え、先ほどの仕返しのつもりなのか自分が受けた傷の場所と同じ所を撃ちぬく。
 そして能力者達は軽傷を負ったものの、苦労する事なくキメラを退治する事が出来たのだった。


―― 初めての戦場は? ――

 キメラ退治が終わった後、能力者達とチホは持参してきた飲み物やお酒、お菓子類を囲んで休憩をしていた。
「実際の戦場での取材の感想はどう?」
 小鳥遊が苦笑しながらチホに問いかけると「いつもこんな事をしてるマリが何で無事に生きてるのかが不思議なくらいね」とチホはお菓子を摘みながら言葉を返した。
「チホさんにはショッキングな事もあったかもしれないけど、これに懲りずにまた一緒に取材に来れるといいわね。マリさんに振り回されるのは嫌いじゃないけど‥‥」
 いつもだと流石にね、小鳥遊は大きなため息を吐きながら言葉を付け足した。
「そういえば‥‥暗い話になっちゃうけど‥‥舞さん、あれからどうしてますか? 最後別れ際の舞さんの顔‥‥少し怖かったんだよね‥‥何か思いつめた感じで」
 昔のボクみたいで、椎野は言葉を付け足しながらチホに問いかけると、チホはため息を吐きながら「今のあの子、何を考えているのか分からないわ‥‥」と舞の状況があまり良くないという事を知らせた。
「チホさん、舞さんの事注意して‥‥犯人が捕まった時は、ボクも命がけで捕まえるから‥‥舞さんには笑って欲しい‥‥」
 椎野の言葉に「今のあの子には‥‥誰の言葉も届かないのよ」とチホが目を伏せながら言葉を返してきた。
「‥‥一緒に食べませんか、チホさん?」
 レインが作ってきた苺のミルフィーユを差し出しながら話しかけてくる。舞の事、マリの事、そして今回の取材の事、色々と考えて疲れただろうとレインは考えてお菓子を作って持ってきていたのだ。
「お団子もありますから、食べてリラックスして下さいね」
 藤河がほにゃりとした笑顔で団子を勧めてきて「そういえば‥‥」とサルファに視線を向ける。
「女装!?」
 ちなみにまだ藤河は何も言っていない。ちなみに彼は最近女装が好きなようだ。今回も着る気はない、と心に決めていながら確り荷物の中には『メイド服』が潜んでいる。
「ほへ? カレーとお酒のことを聞こうとしたのですけど‥‥」
 どうやらサルファは墓穴を掘ったらしく「記念に着替えてみてよ、写真撮ってあげるから」とチホからも催促されサルファは『仕方なく(強調)』着替える事にした。
「飛び出している方は、後でどうなさるおつもりでしょうか?」
 サルファが持ってきたお酒を飲みながら藤河がチホに問いかける。
「別に、何もしないかな? あの子が飛び出すのはいつもの事だし、とりあえず‥‥生きてるでしょうし。いちいち怒ってたら私の神経が切れちゃうわ」
 あはは、と笑いながらチホが言葉を返す。
「あれ? 私ばかりが食べてるような気が‥‥ほら、貴女も食べて。私が持ってきたものじゃないけど」
 苦笑しながらチホが雪待月にお菓子を差し出すと「美味しそうですね、ありがとうございます!」とお礼を言いながら彼女もお菓子を口の中に入れた。
「う〜ん、仕事の後のおやつは美味しいね。あ、そこのお団子頂戴」
 神咲が手を伸ばしながら呟くとヨークが団子の入った容器を渡す。それを神咲は一気に口の中へと詰め込み、そして予想通り喉に詰まらせるという事をしてみせた。
「うぅ‥‥お、おちゃ‥‥」
 苦しそうな表情で神咲がお茶を求めると雪待月が慌ててジュースを差し出す。神咲は喉に団子を詰まらせて死ぬ事はなかったけれど、口の中に広がるジュースと団子のハーモニーに思わず「‥‥う‥‥」と言葉を漏らしたのだった。
 そんな様子にも動じずヨークはゆっくりとお茶を飲んでいる。
「‥‥‥‥‥‥、いい」
 お茶のうまみを確りと味わいながら、キメラを退治した余韻に浸る。

 その後、休憩が終わり帰ろうとした時にレインが『【OR】白銀のハーモニカ』で静かな鎮魂歌を奏でる。死したキメラへの追悼なのかは分からないけれど、それは何処か心を揺さぶる何かがあった。
「あれぇ、結局俺はこうなるんだな」
 メイド服をひらひらと風に靡かせながらサルファが遠くを見つめてポツリと呟いたのだった。


―― クイーンズ新刊・発売 ――

 こんにちは、クイーンズ記者のチホです。
 今回はマリが逃亡‥‥じゃなくて取材旅行に行っている為、今回の記事は私が書かせて頂きました。
 実戦を目の当たりにして感じたのは能力者の凄さとキメラへの恐怖、私一人だったらきっと怖くて動く事も出来なかったと思います。
 そんな中、能力者の皆さんは果敢に戦い、そして見事キメラを退治しました。
 その様子を写真に収めて記事を書いているわけですが、この緊迫した雰囲気が読者の皆さんに伝わる事を祈っています。
 最後は皆で休憩を取り、色んなお菓子とかを食べました。改めて、皆が私の事を気遣ってくれていたのだと知り、嬉しく思う反面、無力な自分が情けなく感じました。
 今回のおまけ写真は能力者の一人のメイド服姿の写真です。個人的に萌えたから付録にしちゃいました、えへ☆
 それでは、今後ともクイーンズを宜しくお願いします。

 クイーンズ記者・チホでした。


END