タイトル:週刊記者が道を外すマスター:水貴透子

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/04/30 23:59

●オープニング本文


マリちゃんに足りないもの‥‥

それはお色気だったんだとさっき気づいたよ!!

※※※

「ねぇ、私に足りないものって何だと思う?」

マリがペンをくるくると回しながら他のクイーンズ記者達に問いかける。

「理性」←チホ

「知性」←静流

「女性ホルモン」←翔太

「自分が持っていると思っている全て」←舞

何気に言いたい放題の彼らだが、マリは「ちっちっち」と指を振りながら不敵な笑みを浮かべる。

「そのどれでもない! むしろ後で覚えてなさいよ、あんた達。私に足りないもの、それは‥‥色気なのよ!」

マリが『くわっ』と表情を険しくして、拳を強く握り締めながら大きく叫ぶと「あー‥‥」と記者の面々は納得しながら首を縦に振る。

「確かにマリと色気って繋がる要素が皆無よね」

チホが首を縦に振りながら呟き「むしろ、マリに色気の技を取得できるのかしら」と静流も考え込むように真剣な表情で呟く。

ちなみに『色気』は取得する技でも何でもない。

「むしろマリさんって女って言う気がしな――ぐふぁ――」

翔太が話している時、彼の顔面に見事なラリアットが決まり、いつものように彼は床に突っ伏す。

「そ、そういうところが女らしくな「まだ言うか、ばかたれ」――」

ぎゅむ、とマリは翔太を踏みつけながら言葉を返す。

「あ、翔太さんってそういうの好きですよね。ボク、少し前に翔太さんの部屋を片付けていたらマリさんみたいな事してる人がたくさん載ってる本を見つけましたから」

ほら、と舞は何処から取り出したのか『えすえむ』と書かれた本を取り出す。

「わーーーーーーーーっ!!!!」

慌ててその本を取り返す翔太だったが、その行動が本の所有者が翔太なのだと言う事を他の記者達に知らせる事になり‥‥マリを含める記者全員が一歩後ろへと下がる。

「だからあんた、いつもマリに殴られるような事を言うわけね」

静流が納得したように呟くと「ち、違う! これは友達が勝手においていって!」と反論するのだが‥‥。

「別にいいのよ、人の趣味をとやかく言うつもりはないから」

‥‥と言いながらチホはかなり離れた場所から翔太に声をかけている。

(「‥‥これ、ボクが用意した悪戯用の本だったのに‥‥同じもの持ってるんだ」)

舞は凄く冷ややかな目を翔太に向けて黒い笑顔を見せていた。

「あ、今日は取材があったから急いで化粧しなくちゃ! お色気マリちゃんを能力者諸君に見せてやるわよ!」

マリはずしりと重い紙袋を抱えながら自室へと赴き――2時間ほど経過して漸く部屋から出てきた。

((((「「「「う、うわぁ‥‥」」」」))))

現われた『お色気マリ』を見て‥‥記者の面々は更に一歩下がる。

それもそのはず。現われたマリ、それは妙に露出の多い服を着て、真っ赤な口紅、林檎でもくっつけているかのような頬、そして真っ青に塗りたくられた目元――明らかに『色気』を間違っている。

「それじゃ、いってきま〜〜〜す」

マリはご機嫌で編集室を出て行ったのだが、出て行った直後に「うわっ!」と外から声が聞こえる。

「なぁ、あれってクイーンズの信用問題に‥‥」

「言わないで。また胃が痛くなってきたから‥‥」

「これも全部、妹馬鹿の草太さんのせいよね」

「でも、面白ければいいとボクは思います」

そんな会話をされているなど知らずにマリは能力者達との待ち合わせ場所まで急いだのだった。

●参加者一覧

藤田あやこ(ga0204
21歳・♀・ST
小鳥遊神楽(ga3319
22歳・♀・JG
玖堂 鷹秀(ga5346
27歳・♂・ER
櫻杜・眞耶(ga8467
16歳・♀・DF
守原有希(ga8582
20歳・♂・AA
レイン・シュトラウド(ga9279
15歳・♂・SN
芝樋ノ爪 水夏(gb2060
21歳・♀・HD
水無月 春奈(gb4000
15歳・♀・HD

●リプレイ本文

―― 珍獣? いいえ、マリなんです ――

「ふぅ、まだ誰も来てないみたいですね‥‥」
 待ち合わせの時間より、少し前に水無月 春奈(gb4000)が呟くと「おーい」と話しかけてくる変人がいた。
「こんにちは‥‥えっとどちら様?」
 水無月が首を傾げながら言葉を返すと「酷いなー、マリちゃんを忘れたの!?」と言葉が返ってくる。
(「酷いのは貴女の顔と格好ですよ‥‥ヤダなぁ、こんなのと一緒にいるの」)
 さりげなく酷い事を心の中で呟きながら、水無月はひたすら他の能力者達が来るのを待ったのだった。

「こんにちは〜☆」
 藤田あやこ(ga0204)がチア服で登場しながら挨拶をしてきた。マリよりはマシなのだが、ある意味チア姿の彼女が加わった事でカオス空間が増したのは言うまでもない。
 そして続々と能力者達が集まってきて、小鳥遊神楽(ga3319)は『これも新手のジョークかしら?』と心の中で考えたのだったが、本気だという事を知ると突っ込む気力も失せたのだとか。
(「‥‥結構長いことマリさんとは付き合ってきたつもりだけど、まだまだ甘かったみたいね、あたしも‥‥マリさん畏るべしね」)
 小鳥遊がマリに視線を移すと再びため息が出る。
 そう、今回はクイーンズ記者の土浦 真里(gz0004)が妙な化粧、妙な格好をして能力者達を驚かせている事から始まった。
「やあ真里さん、おはようございます。今日も取材がんばりま‥‥しょうね」
 玖堂 鷹秀(ga5346)が挙げた手をそのままに固まってしまう。そして此処で彼女の姿を否定してキメラに突撃されても困るので『ツッコミはまだ無しの方向で行きましょう』と他の能力者達にこそっと伝える。
「今は時間が惜しいのでアレですが‥‥後で覚えていやがれ‥‥」
 ボソリと櫻杜・眞耶(ga8467)がマリに向けて呟く。
「何か今日の皆ってば変だよね、目を合わせようとはしないし‥‥何かあったのかな?」
 マリが首を傾げながら呟くのだが、むしろその言葉は能力者達がマリに向けて言いたい台詞である。
「‥‥方向性違うけど、姉ちゃん達と駄目さで互角‥‥頭痛がする」
 やや涙目で頭を押さえながら守原有希(ga8582)が1人はしゃいでいるマリに視線を送る。
「‥‥変な人がいる‥‥」
 レイン・シュトラウド(ga9279)がマリを見ながらポツリと呟くが「え! 何処! 何処に変な人がいるの!?」ときょろきょろと周りを見渡す。流石に『あんただよ』とは言えずにレインは無言でマリの言葉を流す事にした。
「はぁ‥‥結局、私達はキメラを倒す事しか出来ないんですね‥‥」
 ポツリと芝樋ノ爪 水夏(gb2060)が寂しそうな表情で呟く。先日、舞を助けた時の事を思い出しているのだろう。何処か上の空のような雰囲気で、表情を見ても元気がないのは一目瞭然だった。
「うん、でも露出は悪くないよ。例えばミニスカは若い時限定だし〜」
 藤田がマリの露出高めの服装を褒めると「別に露出が好きってワケじゃないんだけどなぁ、ただこうすればお色気って書いてあっただけだし」とマリが言葉を返してくる。
「でも露出だけが色気じゃないんだから〜」
 藤田は「今日は真里ちゃん改造講座だい」と言葉を続け、能力者達はまず先にキメラを退治して、それからマリの改造を行う事に決めたのだった。


―― キメラより恐ろしい人がいますが、まずはキメラ退治しましょう ――

「私は‥‥婚約を早まったのでしょうか‥‥」
 キメラが潜む森の中、玖堂は露出高い服で騒ぐマリを見ながらため息混じりに漏らす。
「あそこまで馬鹿とは思いませんでしたね、失礼なのはわかっていますが、馬鹿です」
 櫻杜はため息混じりに『馬鹿』を大事な事なのか二度言う。
「はっ、こ、こんな所にキメラ!?」
 突然、芝樋ノ爪が叫び「え! 何処に!?」と水無月が驚いたように言葉を返すのだが――その視線の先にいるのは紛れもなくマリだった。攻撃態勢を取っていた彼女を周りの能力者達が慌てて止め「ま、マリさんですか」と目を瞬かせながら、そして引きつりながら「仮装ですか? ですが、ハロウィンには半年ほど早いような‥‥」と言葉を付け足す。
「違う違う! 今日はマリちゃんのお色気で皆をめろめろにしてやろうと思ってさ!」
 そんなマリの言葉に『メロメロどころかヨロヨロになってます』と芝樋ノ爪は心の中で呟いた。
「ん? そういえばはるなちゃんも目を合わせようとはしないね、どうかした?」
 マリが水無月の顔を覗きこむと「‥‥いえ、何でもありませんよ。キメラは何処かしら‥‥早く片付けて帰りたい」とボソリと水無月は呟いた。
「そっか、具合でも悪いんだね! 早く片付けてさっさと帰ろう!」とマリはその具合の悪さがまさか自分が原因とは知らずに「頑張ろうね!」と能力者達に話しかけた。
 その時、鳥の羽ばたく音が聞こえて能力者達が上空を見ると――普通の鳥にしては形が大きく、能力者達は警戒を強める。
 そして少しずつ鳥が降下をしてきて、外見が一見してキメラだと分かり、能力者達は戦闘を、マリは取材用のカメラを構えて迎え撃つ事にしたのだった。
「とりあえず、離れないようにね〜」
 藤田がマリに向かって呟くと「了解」と素直にカメラを能力者達とキメラに向けて取材に専念する。
 ちなみに此処でマリが拒否的発言をしていたら簀巻きにしてでも抑えようと藤田は考えていたのだとか‥‥。
「さてまずはアッチを何とかしないとね」
 藤田は呟きながら『超機械α』でキメラに向けて攻撃を行う。しかしキメラはそれをするりと避け、小鳥遊が『スナイパーライフル』で攻撃を行い、キメラの動きが少しだけぐらつく。
「一匹だけのキメラとは言え油断は出来ません。いつものように真里さんは後ろに下がっていてください」
 玖堂はマリに背中を見せた状態で呟く、何故背中越しなのかと言うと直視してしまうと、色々と口から言葉が出てしまいそうなので、なるべくキメラ退治が終わるまではマリを見ないようにと決めていたのだ。
「今回は、まだキメラの方が綺麗に感じるわ‥‥」
 櫻杜はため息混じりに呟きながら大鎌『ノトス』を構える。しかしまだキメラが攻撃の範囲内に入ってきていないので、彼女は攻撃を行う事ができなかった。
「何か後ろにもキメラみたいなのがおるけど、気にせん、気にしたらいかんわ」
 守原はマリの壁になるように立ち、小銃『S−01』でキメラに向けて射撃を行う。彼は戦闘前に銃の初弾装填後に弾倉を抜き、一発補充して戻して一発分余分に撃てるようにしていた。
「牽制は部隊のおかげで得意でね! 9発目、持ってけ!」
 守原が銃弾を撃ち込みながら叫び、その間にレインが『隠密潜行』を使用しながら、キメラの死角になる場所へと移動を開始する。
「悪いけど、空から降りてもらうよ」
 レインは短く呟いた後に『強弾撃』を使用しながら『スコーピオン』で翼部分に集中攻撃を行う。
「狙った獲物は逃がさないわ! ここであたしに落とされなさい!」
 小鳥遊も『強弾撃』を使用しながら『スナイパーライフル』で攻撃を行う。それと同時に玖堂も『エネルギーガン』を構えて「何でも良いからとっととくたばりやがれ!」と荒い口調で叫び、攻撃を行う。
 射撃班の苦労の甲斐あってか、キメラは空を舞う翼を失い、地面へと降下して、ズンと重い音をたてながら落ちてきた。
 キメラが地面に落ちてきたのを確認すると藤田が『練成弱体』でキメラの防御力を低下させて『練成強化』で能力者達の武器の威力を上昇させる。
 翼を失ったキメラは必死に傷ついた翼を動かして空へと羽ばたこうとするが「そんな事はさせないわ」と小鳥遊が呟き、再び空に逃げぬように援護射撃を行う。
「悪いけど、一気に行かせて貰うよ」
 櫻杜は大鎌『ノトス』を振り上げながらキメラに攻撃を仕掛けていく。そして守原も武器を『蝉時雨』と『蛍火』に持ち変えて『急所突き』を使用しながら攻撃を行う。
 だが、キメラも悪あがきのように羽を飛ばし能力者達に攻撃を仕掛ける。
「マリさん、大丈夫ですか?」
 キメラの羽攻撃から水無月がマリを庇った――のだが、彼女は素早く眼を逸らしキメラの方へと戻る。
「‥‥大体、あなたが出てこなければこのような惨状(主にマリ)にならなかったのです‥‥落ちてきた以上、肉片になるまで斬り刻んであげます」
 水無月は『竜の翼』を使用して一気にキメラとの距離を詰め『竜の角』使用した後に天剣『ラジエル』を振り下ろす。
 しかし反撃を受けるも『竜の鱗』で防御力を上昇させたため、あまりキメラの攻撃は水無月には効果がなかった。
「‥‥あんまり痛くない‥‥実はこれは夢だったんですね。現実だったらいくら土浦さんがアレでもあんな格好するわけありませんし‥‥」
 マリのお色気は時に能力者を現実逃避させる効果があるのだと初めて知る。
「さよなら‥‥退治するしか出来ない私達を許してください」
 芝樋ノ爪はポツリと呟きながら『超機械剣α』を振り下ろし、キメラにトドメを刺したのだった。
「悪は滅びました‥‥世界は元に戻ったはず‥‥おかしいですね、まだ世界にエラーがありますよ」
 水無月はマリを見ながら首を傾げ「いつになったら悪夢から覚めれるのでしょう」と言葉を付け足しのだった。

―― これからが本番、能力者によるマリへお仕置き(?)タイム ――

「わー、やったね! お疲れ様でしたーっ! や、今回も良い写真が撮れたよ♪」
 満足そうにカメラを抱きしめながら「マリちゃんのお色気効果だー!」と暢気にはしゃいでいる。
「はぁ‥‥貴女の『色気』は何から何まで間違っています。何ですか、そのピエロの出来損ないのようなメイクは‥‥」
 玖堂の言葉に「ぴ、ぴえろ‥って酷いよ!」と鳩尾をいきおいよく殴りつけ「ぐふぁ」と玖堂は思わず膝をつきそうになる。
「さ‥‥櫻杜さんにみっちりイロハを教わってください。それにその服装! ただ肌を見せれば良いと思っているんですか! とにかくまずはコレを着て!」
 玖堂は何処かの娘を叱る父親のような台詞を吐きながらマリに着ていた白衣を着せる。
「色気だって向き不向きがあるんです、とりあえず真里さんにはそういう露骨な色気の出し方は似合わないと思います」
 似合わない、その言葉に「ひ、酷いよ!」と真里は玖堂のスネを蹴り、挙句に顔面パンチまで繰り出す。
(「あんたの方がひどいよ‥‥」)
 誰もが心の中で思っていたであろう言葉だったけれど、口に出せば自分に矛先が来るのでとりあえずは黙っておく事にした。
「‥‥色気がないあたしが言うのも何だけど、今時の高校生でももう少しマトモなメイクをするわよ。人にはそれぞれ似合った服装というのがあってね‥‥」
 小鳥遊が語りだすと「小鳥ちゃんまで否定するの! 馬鹿ぁ!」とチョップを食らわす。いきおいよく振り下ろされたチョップはずきずきと小鳥遊の頭に痛みを走らせる。
「女性への免疫がないうちが全く平気な化粧‥‥脳が本能的に女性と認識不可って事ですね。不良軍人やヤクザの大群素手で潰すうちの姉ちゃん達でも、そがん事なかけ‥‥姉弟全員、母似でよう顔似とっとです」
 守原が言い聞かせるようにマリに向けて呟くと「うわああんっ! 馬鹿ぁ!」とガスガス殴りつけてくる。
「ちょ、ちゃんと聞かんね! マリさんの為に言ってくれとっとよ! そがん人に手ば出すてなんか!」
 守原が叩かれながらも叫ぶと、マリは足で蹴りつけてくる。手を出すなと言われたから今度は足を出したのだろう。
「外見もそうですが、内面から綺麗になる事も大事です。そのためにはバランスの良い食事からです」
 レインが野菜と鶏肉、魚介類を中心としたヘルシーメニューをびっしりと書き込んだ献立表とレシピを渡す。
「この献立とレシピ通りに食事してもらいます。もし破ったら、メニュー全品セロリ+激苦野菜ジュースを毎日飲んでもらいますからね」
 レインの言葉に「えええ‥‥」とマリが不服そうな言葉と視線でレインを見る。
「このままだと、恋人さんにも嫌われちゃいますよ? それでもいいんですか?」
 レインの言葉に「‥‥駄目」と小さく呟き、レシピを見始めたのだった。
「それでは、指導開始しましょうか。派手な化粧と露出をして。1日で色気が出せると思っているなら言語道断! まずはミニスカートを履いて、ブランドバッグを持って生活を一週間続ける所から始めましょうか」
 にこにこと笑顔だけど、何処か黒いオーラの漂う櫻杜に「す、すいかちゃん! 助けて!」と手を伸ばすのだが‥‥芝樋ノ爪はちらりとマリを見ながら言葉を返す。
「え、はい、頑張ってください」
「頑張れないから助けを求めてるのにいいっ!!」
 マリの言葉に芝樋ノ爪はため息を吐きながらマリから離れていく。
(「自分で蒔いた種ですし、少なからず人の迷惑になっていますし。残念ですが私は助けてあげません」)
 芝樋ノ爪は背中から聞こえてくるマリの悲鳴にも似た声に心の中で言葉を返した。
「ねぇねぇ、こういうのはどう? えろ可愛いのが流行よ、マリ」
 藤田がそう言って差し出してきたのは‥‥コサージュ、ヘッドドレス、セーラー服、ぬいぐるみ、ブルマだった。
「セーラー服もお色気なのよ♪」
 やや明るい声で話しかけてくる藤田に‥‥「無理」とマリは一言告げた。
「セーラー服なんて着れるわけないじゃないっ! こう見えても実年齢は24歳なんだから! 絶対無理! 恥ずかしくて着れない!」
 マリは後ずさりながら叫ぶが、ここで藤田の思ったことは『マリの恥ずかしさの基準って何なんだろう』ということだった。


 それから一週間後‥‥色々会ったけれど、普段のマリに落ち着いた。
「これ、差し入れです。良かったら皆さんで食べてください。その後、真里さんの様子はいかがですか?」
 レインはクイーンズ編集室を訪れ、オペラの入った箱を同じ記者のチホに渡しながら問いかける。
「うーん、元には戻ったわね、色気怖い、色気怖いとか言ってるけど」
 その言葉に「真里さんは元が可愛いですし、そのままの方が似合ってますよ」と芝樋ノ爪が苦笑しながら呟く。
「あ、そういえば貴女に伝言頼まれてたわ」
 チホが思い出したように呟き「助けてくれなかった恨み、マリちゃんは忘れません――だって」と苦笑しながらチホは言葉を付け足す。
 その言葉を聞いてやや顔色を青ざめさせる芝樋ノ爪だった。
「でも個人的ですけど、真里さんには『健康美』が一番合うと思いますけどねぇ」
 玖堂がマリの部屋を見上げながら苦笑気味に呟く。

 その頃のマリはと言えば‥‥自分の唯一の弱点であるセロリを克服する為に大量のセロリを買い込み、一心不乱に食べている姿が他の記者の面々から見受けられたのだとか。
「絶対、この恨みはらしてやる‥‥覚えてなさいよ!」
 マリは涙混じりに仕返しするその日を夢見てセロリを食べ続けるのだった。


END