●リプレイ本文
「どうも〜! こんにちは! 今回は宜しくネ〜」
手をひらひらとさせながら能力者達に挨拶をするのはお騒がせ破天荒娘・マリだった。
「こないだは素敵な記事をど〜も、不名誉な記事を書かれたなんて、これっぽっちも根には持ってへんよ?」
にっこり笑顔でマリに話しかけるのは、少し前の犠牲者・クレイフェル(
ga0435)だった。
「いえいえ、お礼を言われる事なんてしてないってば〜!」
クレイフェルの嫌味をモノともせずに、マリはばしばしとクレイフェルの背中を叩きながら言葉を返した。
「まあまあ、ク〜ちゃんも押さえて、マリちゃんに悪気はないのよ‥‥多分」
ナレイン・フェルド(
ga0506)がクレイフェルを宥めるように問いかけると、マリの動きが止まる。
「‥‥? どうかした?」
ナレインが問いかけると同時にマリの両手がナレインの胸の辺りに置かれ「な、ない!」と驚いている。
「ナレインは男だぞ」
驚くマリの後ろから黒川丈一朗(
ga0776)が苦笑しながら話しかける。
「‥‥ひ、酷い‥‥こんなのってあんまりよおおっ!」
叫びながら何処かに行く素振りを見せるが、あくまで『素振り』なだけでマリは何処かに行く事はなかった。つまり、男のナレインより女の自分が全てに置いて負けているという事実がショックだったのだろう。
「えぇと‥‥あんた、本当にこの前の人と同一人物?」
前回のシリアスなマリとは雰囲気も話し方も全然違うため、伊佐美 希明(
ga0214)が多少驚きながらマリに話しかける。
「‥‥あぁ、確かに久しぶりって挨拶しようと思った俺も驚いた」
花柳 龍太(
ga3540)も伊佐美と同じ意見なのか、短く呟く。
「ヤダなあ! のんちゃん、私のこと忘れたの? 意外と薄情ね〜」
マリがけらけらと笑いながら伊佐美に言葉を返す。
「‥‥‥‥のんちゃん?」
聞きなれない名前に伊佐美が首を傾げると「あなたよ」とマリが伊佐美を指差しながら答える。
「実は! 皆のあだ名考えてきちゃいました!」
そう言ってマリが自信満々で見せた紙には奇怪な名前が並べられている。
伊佐美→のんちゃん
クレイフェル→‥‥‥‥
ナレイン→お姉様
黒川→ジョーさん
沢村 五郎(
ga1749)→ごろっち
村田シンジ(
ga2146)→シンちゃん
小鳥遊神楽(
ga3319)→小鳥ちゃん
花柳→花ちゃん
「異議有! 何で俺の所は『‥‥』やねん!」
最初に異議を申し出たのはもはや言葉に出せないあだ名を付けられたクレイフェルだった。
「仕方ないなあ、次から選んでね? 1・く、2・れい、3・ふぇる! さぁ! どれだ!」
「名前分けただけやんけ‥‥じゃあ、ちょっとカッコイイ二番のレイで!」
「分かった、4番のクレイやんに決定」
「‥‥選択権ないんやったら始めに言えや‥‥」
がく、と項垂れながら諦めたように『クレイやん』に決定された。
「俺のごろっちも‥‥」
「はい、キメラ退治がんばろー(棒読み)」
沢村が異議を申し出た所でマリはそれを却下し、キメラ退治をしろと能力者達に応援にならないエールを送ったのだった‥‥。
●レッツ取材!
「そういえば、三人一緒なのは初めてよね! 戦いに出向くのに二人と一緒だと思うと楽しいわ」
笑顔でナレインが黒川とクレイフェルに話しかける。
「‥‥そういえば本当に許可を取ってくるとは思わなかったぞ、どんなズルい手を使いやがった?」
沢村がマリに問いかけると「ふふふ」と一冊のノートを取り出す。
「このノートには色々な弱みが書かれているのだ! これさえあれば私にできないことはないね!」
けたたましく笑うマリを見て、村田はため息を吐きながら「その報道精神は認めんでもないが‥‥」と呆れ気味に呟いた。
「‥‥マリさんも用意周到になったわね‥‥一番いいのは取材を諦めてくれることだけど‥‥それは無理だろうから、まぁ、此方の目の届く範囲にいてくれるのが一番安全かしらね」
小鳥遊も村田に言葉を返すように呟く。
「そういえば、普段はどんな武器を使ってるの?」
マリが問いかけると、黒川が自身の持つ武器・メタルナックルを見せて話し始める。
「詳しい事は知らんが、バグアどものフォースフィールドとやらをブチ抜くエネルギーを発生させる機構がついているらしい‥‥それ以外は普通の武器と変わりはしないと思うんだが」
黒川の説明を受けて、マリは「へぇ」と感心したように呟く。
「俺は拳骨以外に能がないんでな、これで不満はないな」
黒川がメタルナックルを装備しながら呟く、そしてその言葉に「私は不満ありありよ〜」とナレインが叫ぶ。
「私は拳での攻撃が上手いとは言えないのよね‥‥私、足技専門なのよ、それなのに足用の武器がないから困ってるわ」
「あたしももう少し決定打になるような武器が欲しいわね、装填弾を改良するなりして、よりダメージを与えられるようなものにして欲しいわ」
小鳥遊も小銃・スコーピオンを見ながらため息混じりに呟く。
「俺の使っているのはナレインと同じファングだな、手甲に巨大な爪をつけた格闘用装備でSESも搭載されている」
そして、村田は言葉を続ける。彼自身は主武器に不満はなさそうだが、副装に不満があるらしい。
「俺達グラップラーに関わらず、もう少し強力な副装があればいいんだがな、アーミーナイフよりは強力で、かといってソード程長くなく重くなく‥‥刃渡り30〜40センチの肉厚なハンターナイフでもあれば常備できて便利だと思うんだが」
「へぇ‥‥皆色々武器の事を考えているのねぇ‥‥クレイやんは?」
「クレイやんは止めてぇな‥‥俺の場合も硬い装甲が躊躇わずに引き裂けるような頑丈な爪が欲しいな、あと! デザインもダサくない奴がええ、見た目も大切やん?」
「なるほど、だったらそのハリセンをファングに改良してみたら? キメラへの攻撃も『何でやねん!』風にさ!」
「何で命の危険がある場所で漫才せなならんねん!」
ぎゃあぎゃあと騒ぎたてるクレイフェルに「のんちゃんは何かないの?」と話しかける。
「私は和弓に拘りを持っているからね、いくら強い武器をもっていても、自分自身が強くならなければそれはただの暴力‥‥強いって事じゃない」
彼女いわく、弓道とは自分との戦いなのだと言う。強い精神力を作り続け、維持し続ける為に必要な『儀式』なのだと‥‥。
「へぇ‥‥立派な考えを持っているのねぇ‥‥」
マリとしての予想では伊佐美の答えは『強い武器!』と答えるのかと思っていたが、強い意志を持つ彼女の言葉に、マリは己の軽率な考えを恥じた。
「マリちゃんの力で何とかならない? 貴女の記事って影響力凄いから期待しているのよ? ほら、以前の記事だってねぇ‥‥」
ちらりとナレインはクレイフェルを見ながら可笑しそうに笑う。
「あの事は忘れたいんや!」
耳を塞ぎ騒ぎ立てるクレイフェルに花柳の顔が険しくなる。それはクレイフェルに対してではなく、姿を現したキメラに対してのものだった‥‥。
●いざ戦闘!
今回の戦う場は荒廃した公園、かつては子供達が賑わっていたであろう遊具も錆付いていてギィと軋む音が鳴るだけだった。
「マリは私と丈一朗で守るから、大人しくしててね」
伊佐美がマリに話しかける。彼女はマリと黒川から少し距離を置き、遠距離からの攻撃役だった。
「黒川、信頼しとるで」
そう言ってマリと黒川の傍を離れながらクレイフェルが呟く。その顔は先ほどまでの冗談交じりなものではなく、戦いに挑む真剣な顔だった。
情報にあった攻撃型のキメラにクレイフェル・ナレイン・小鳥遊の三人が戦うことになり、防御型のキメラには沢村・村田・花柳の三人が対処する事になっていた。
クレイフェルがいち早く攻撃型に仕掛け、二匹のキメラに距離を置き、互いが有利に戦えるような場所までキメラを引き付けたのだった。
「これを被ってろ」
沢村がキメラに向かう前、マリに向けて投げ渡したのは『安全第一』と書かれた黄色いヘルメットだった。
防御型を担当する彼らがたてた作戦は爆破によるキメラ殲滅だった。これはキメラに攻撃して効果が見られない時の為の作戦なのだが‥‥。
最初に花柳と村田が攻撃を仕掛けるがキィンと高い音で攻撃を弾かれる。
「やっぱり見た目だけではなく、実際も硬かったな‥‥さて、沢村、村田‥‥行こうか」
呟くと同時に花柳は覚醒し、体の周りに紅いオーラが迸る。
そして沢村が爆発物の用意をしている間に、花柳と村田は無駄だと知りつつも攻撃を繰り返す。防御型と言われるだけあって動き自体は鈍く、能力者の動きにキメラがついてこれていない。
「用意できたぞ! 3で離れろ!」
沢村が叫ぶと同時に数え始め、その間に花柳と村田はキメラの近くから離れる。沢村はマリの方を見ると、大人しくしているため、爆破に躊躇う事はなかった。
そして「3!」と叫び、弾頭矢を改良して作った即席爆弾をキメラの腹辺りに投げつける。爆発物がキメラに触れると同時に爆音が響き、能力者達は伏せる。
キメラは爆発物で倒す事は出来なかったが、元より倒す為に作ったのではない。キメラは爆発物の衝撃で浮き、装甲が硬くないと思われる腹や首を三人で集中攻撃する。
「グオォォォォッ!」
キメラは自分の弱点である硬さの弱い場所を攻撃され、三人によって倒されたのだった。
残るキメラはあと一体‥‥。
「向こうはカタがついたみたいだな」
黒川がマリを守りながら防御型のキメラを見る。
「‥‥いい取材が出来たわー! よーし! 皆がんばれええっ!」
マリが叫ぶと、キメラがマリのほうに気づいてしまう。
「‥‥馬鹿‥‥」
攻撃型のキメラと戦っている三人が頭を抱えながら呟く。
「丈一朗! マリは守んなさいよ!」
伊佐美が長弓を構えながら叫ぶ。
「仕方ない‥‥俺もクレイフェルと同じ目になるのかね」
黒川はため息を吐きながらマリを抱きかかえる。少しでもキメラとマリとを離すために黒川はマリを抱えて移動する事にしたのだ。
「射法八節、正射必中」
伊佐美は精神を落ち着かせるように呟き、鋭角狙撃でキメラの体を射抜く。伊佐美の攻撃によってキメラが怯んだ時、黒川はマリを抱えながら蹴りをくらわし、小鳥遊達のところまで戻したのだった。
「黒川! 例のアレ! やるで」
クレイフェルが叫ぶと、マリを伊佐美の所まで運び、黒川が前線に赴く。
例のアレをする為に小鳥遊とクレイフェルは牽制を中心に行い、黒川が指定の位置まで来るのを待つ。
「いい感じみたいね、そろそろ行くから隙を作って!」
黒川が近づいてきているのを見て、ナレインが牽制してくれている二人に向けて叫ぶ。
「ナレイン!」
黒川が来ると同時に「丈一朗さん! 背中借りるわよ!」とナレインが黒川の背中を台にして高く飛び上がる。
「‥‥いたそ‥‥」
遠くからそれを見ていた伊佐美とマリはポツリと同じことを呟いた。
「さぁ、覚悟なさい! 一撃で決めてあげるわ!」
ナレインは叫ぶと、飛び上がったことで勢いを増し、かかと落としをキメラに食らわせた。
流石にキメラと言えども脳天に強力な一撃をくらってはひとたまりもないだろう。
案の定、キメラは目を白くし、泡を吐きながら地面に倒れ、絶命したのだった。
●みんな! お疲れ様! え? セクハラ?
「皆お疲れ様〜! おかげで良い取材が出来たわ――と言いたいところだけど! ごろっちは私の取材受けてなくてよ!」
びしっと指差しながら沢村を指差すマリにため息を吐く。
「俺に拘りはねえ、何が有効かは状況によるからな‥‥強いて言えば敵や現地の情報だ。情報があればこんな苦労も減る」
「そっかぁ、分かった。ばっちり記事にさせてもらうわね」
「やれやれ、何とか任務完了だな――‥‥」
疲れたのか村田は肩を揉みながら呟く。
「そういえば、黒川さんのはセクハラにならないの?」
小鳥遊が呟き、黒川はギョッとした顔でマリを見ている。
「え? あぁ、全然OKOK!」
その言葉に一人納得の行かないのはもちろん疑惑を書き立てられたクレイフェルである。
「しっかし‥‥こんなんで記事になるのか?」
花柳がマリに問いかけると「そこは記者として腕の見せ所でしょ」と不敵に笑って答える。
「‥‥そういえば欲しいものあったかも」
ポツリと伊佐美が呟き「何?」とマリが問いかける。
「新しいファンデーション。マリは何を使ってるの? やっぱり女の子の武器は剣や銃だけじゃないし?」
「確かにそうね! 私のメイク一式あとで届けるわ! 今以上に美人になってキメラを悩殺しちゃってちょうだい!」
マリの言葉に『そんなんでキメラ倒せたら苦労しないよ‥‥』と思う面々だったのだった。
●クイーンズ新刊!
今回『クイーンズ』の記者であるマリは能力者に快く同行を許してもらい、武器などについての調査を行いました。
取材を行った後にキメラとの戦闘を拝見したのですが、やはり能力者にとって強い武器は必要なようです。
もちろん、強い武器が全てではないのですが、能力者達も命をかけて戦っています。
新しい武器などの開発があるように、この記事を書きました。
中にはハリセンで『何でやねん!』と戦おうとする勇気かつお茶目のある能力者・Kにも出会いました。
能力者にも様々な人がいるようです。
それでは、次回のクイーンズをお楽しみに! マリでした!
END