タイトル:迫り来るものマスター:水貴透子

シナリオ形態: ショート
難易度: 易しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/04/07 00:21

●オープニング本文


それが町に到着するまで距離的には30キロ弱――‥‥。

能力者達が食い止めなければ、町が壊滅するのは必至だ。

※※※

山に囲まれた町、そこへ二匹の巨大キメラが向かっているという情報がUPC本部へとやってきた。

「‥‥招き猫?」

巨大キメラが近づいている町の住人が撮って送ってきた写真を見ながら男性能力者が首を傾げる。

そこにはあまりご利益のなさそうな、むしろ災いを呼びそうな招き猫が2匹写っていた。

「何処でこんなキメラを作ったのか、そっちの方が気になるわね」

女性能力者がため息混じりに呟き「まさか‥‥これ、生身で行けとか言わないよな」と男性能力者も苦笑気味に言葉を返した。

「流石に無理でしょ、三十数キロ先には小さな町があるから生身で戦って、もし勝ったとしても町に被害がないとは言えないしね」

だからKVで出撃ですって、女性能力者は付け足しながら言葉を返した。

「それにしても‥‥ぶっさいくな猫だなぁ。何を真似たらこんなご利益なさそうな招き猫が出来るんだ? しかも巨大化してるし、お子様向けの特撮漫画だな、これ」

「こんなのでも、踏み潰されたりしたら町は壊滅確実でしょ。楽観視出来る状況じゃないわよね」

女性能力者は呟き、資料を男性能力者に向けて放り投げたのだった。

●参加者一覧

沢辺 麗奈(ga4489
21歳・♀・GP
智久 百合歌(ga4980
25歳・♀・PN
不二宮 トヲル(ga8050
15歳・♀・GP
真田 音夢(ga8265
16歳・♀・ER
乾 幸香(ga8460
22歳・♀・AA
火絵 楓(gb0095
20歳・♀・DF
アンジェラ・D.S.(gb3967
39歳・♀・JG
橘=沙夜(gb4297
10歳・♀・DG

●リプレイ本文

―― 現われたるは招き猫(ご利益なし) ――

「それにしても‥‥でっかい招き猫もどきやなぁ〜」
 沢辺 麗奈(ga4489)が呆れたように招き猫型キメラの資料を見ながら呟く。
「私、可愛い物には弱いのよ――この巨大招き猫が、もし可愛いにゃんこ姿だったら‥‥危なかったわ」
 智久 百合歌(ga4980)も「ふぅ」とため息を吐きながら呟いた。
「KV戦は好みませんが‥‥巨大な招き猫が見れるとあっては仕方ありません」
 真田 音夢(ga8265)がポツリと独り言のように呟く、彼女は『招き猫』と言う言葉を聞いて今回の任務に参加したという事であり、KVコックピット内には敷き詰められた猫、猫、猫、と猫グッズの山にするほど猫好きなのだとか‥‥。
「でも全っ然可愛くない! 寧ろふてぶてしくて蹴り倒したい感じ? いや、蹴り倒せるサイズじゃないけど‥‥」
 智久が拳を『ぐっ』と握り締めながら招き猫キメラの不細工さについて語る。
「確かに‥‥こんなん御利益なんかあらへんさかい、ちゃらっとイワしてしまわんとな」
 沢辺もため息混じりに智久に言葉を返し、資料に写る憎たらしい顔に視線を落とした。
「‥‥そうでしょうか? なかなか愛嬌があって、可愛いと思いますけど‥‥」
 招き猫キメラの不細工について語る二人に対して真田が首を傾げながら話しかける。ちなみに彼女はどんな姿でも偏見を持たない性格であり、どんな外見をしていようと『可愛い』と言うらしい。
「‥‥こ、これが可愛いですか? 私にはぶっさいくな招き猫にしか見えないんですが‥‥きっとおネコ様好きの人が見たら、思わず逆上してしまいそうな御利益薄そうな外見だと思うんですけど‥‥」
 乾 幸香(ga8460)が苦笑しながら真田に言葉を返すと「そう、ですか?」と真田は再び首を傾げながら言葉を返した。
「うんうん、にゃんにゃんは不細工なくらいが、かぁいいんだよねっ。きもかぁいいとか、言うもんねっ♪」
 現地に着いたらお写真撮っておこっかな、橘=沙夜(gb4297)が笑顔で呟くと「ええっ!」と智久が驚いたように言葉を返す。
 ちなみに智久は相手が不細工な招き猫なので微塵の遠慮も要らないと思っていたらしい。
「う〜ん、まぁ‥‥招き猫でも招かれざるお客様‥‥ってね♪」
 不二宮 トヲル(ga8050)がにぱっと笑いながら呟くと「そうよね」とアンジェラ・ディック(gb3967)が言葉を返す。
「ある種の人達には冗談とか悪夢みたいな状況だけども、ワタシはそういう文化とは無縁なので、よく分からないしどうでもいい事よね、町に辿り着くまでに倒せば良いのだから」
 アンジェラの言葉に「そうね、皆で元気ににゃんにゃんしましょ!」と火絵 楓(gb0095)がにっこりと笑顔で言葉を返す。
「‥‥にゃんにゃん?」
 アンジェラが首を傾げると「敵のにゃんこを倒しましょうって事よ」と誤魔化すように言葉を返し、能力者達は招き猫が現われた地点へと急いで向かい始めたのだった。


―― 出撃! 能力者 VS 招き猫キメラ(二匹) ――

 今回のキメラはふざけた外見をしているが、大きさは巨大な物で数も二匹。
 だから能力者達もそれぞれを相手出来るように班を二つに分けて行動をする事にしていた。
 1班・智久、乾、不二宮、真田の四人。
 2班・火絵、沢辺、アンジェラ、橘の四人。
 班を二つに分ける事で二匹のキメラに対応出来るという作戦だった。

「うわぁ‥‥」
 ずしん、ずしんと近づいてくる招き猫に誰かが呟いた。だけどほとんどの能力者達が同じ事を考えているのだろう。呟きには複数の声が混じっている。
「KV戦は三回目だから手馴れている訳じゃないけど――あんなのに負けたくはないわね。コールサイン『Dame Angel』、まずは目標殲滅よ――‥‥」
 アンジェラが呟き、少々の情けなさを感じながら能力者達は戦闘を開始したのだった。

※1班※
「町に被害が出ないよう、そこは厳重に注意しないと‥‥」
 智久はちらりと町がある方角を見る、まだそれなりに距離がある為、ここでキメラを退治してしまえば町へ被害が行く事は無いだろう。
「見えない方が動きは鈍る、わよね」
 智久は呟きながら『スナイパーライフルD−02』を構える。そして少しずつ近づいてくるキメラが射程に入ると智久は目潰しを行う為に射撃を開始した。彼女が目潰し目的で射撃を行っている間に乾が『135mm対戦車砲』が撃てる射程まで近づき、砲撃を開始する。
「不細工は敵です! 罪悪です! 速やかに消し去るのがジャスティスです! と言う訳でとっとと倒されちゃってください!」
 乾は叫びながら砲撃を続ける。その際に牽制の意味も含めてキメラの下半身に火線を集中させた。
「っと! 此処から先は通行止めですっ! 迂回もさせないけどねー!」
 不二宮も『突撃仕様ガトリング砲』でキメラに攻撃を仕掛ける。一回の攻撃で50発撃ち放つそれはキメラの移動を足止めする結果となった。
「目を潰した後は耳、そして鼻!」
 智久は近づきながら射撃を繰り返し、段々と無残な姿になっていくキメラを見ながら「‥‥やっぱり可愛くない‥‥チッ」と舌打ちまでする。よほどキメラの不細工さが許せないのだろう。
「巨大生物との戦闘にはやはりド派手な演出はつき物かと‥‥吹き荒れる紅蓮の炎、轟く爆音‥‥これは絵になります」
 真田はこっそりと『【OR】偵察用カメラ 梟』でキメラとの戦いを激写して、真田秘蔵の猫アルバムに追加しようと心の中で呟いていた。
 そして写真を撮り終えた後『C−0200 ミサイルポッド』で砲撃を開始する。それと同時に不二宮も『突撃仕様ガトリング砲』で砲撃を行った――所で思わぬ出来事が起きた。
「「「「あ」」」」
 1班の能力者が思わず動きを止めて見てしまった事、それは足を狙われて攻撃を受けたキメラがバランスを崩して大きな音を立ててひっくり返ってしまったのだ。
「たーおれーるぞー‥‥ってきこりさんみたい」
 智久はポツリと呟きながらも
 もだもだとしながら必死に起き上がろうとするが、巨体と体重が邪魔をしてキメラは起き上がる事が出来ない。
「‥‥大丈夫です、可愛いおネコ様だったらその行動は悶絶モノですが、不細工な貴方には怒りしか湧き起こりませんから大丈夫です」
 乾は呟きながら『ヒートディフェンダー』を構えて攻撃を仕掛ける。
「これも激写しなくては‥‥」
 真田は再びカメラにもだつくキメラの姿を納めると『ヴァイナーシャベル』で接近攻撃に参加して、身動きの取れないキメラに攻撃を仕掛けたのだった。
 しかし、キメラはごろりとうつぶせになってのろのろと起き上がる。
「にゃんこが二足歩行してるんじゃないわよ。わんこアタックかけてあげるわ」
 智久は呟くと『マイクロブースト』を発動した後に『ソードウイング』アタックで攻撃を仕掛ける。
「四足の意地を見せてあげるわ」
 起き上がろうとしていたキメラは智久の攻撃を避ける事が出来ずに直撃で受けてしまい、再び地面へと沈む。
 そして地面に沈んだ所を狙って、四人は総攻撃を行って一匹目のキメラを見事退治したのだった。

※2班※
「射撃は苦手なんやけどなー。ま、諸々の恨み辛みを乗せて‥‥は〜い♪ 美味しく召し上がれ〜♪」
 沢辺は憎たらしい程に不細工なキメラに『突撃仕様ガトリング砲』で砲撃を開始する。
「とりあえず、貴方の諸々に怒りを感じている者、そしてこの先にある町の住人の為にもさっさとやられていただこうか」
 アンジェラも呟きながら『量産型M−12帯電粒子加速砲』に『SESエンハンサー』を発動させながら砲撃を開始した。
「んふふ、きもかぁいいってこんな感じなのかな?」
 橘はキメラを見ながら呟き『スナイパーライフル』で射撃を開始して、
「ん〜、イマイチ効いてる感じせぇへんな〜‥‥お、こういう時は『弾幕薄いぞ、何やってんの!?』ってな〜♪」
 かぁ〜、これいっぺん言ってみたかったんよね〜! と沢辺はやや興奮気味に叫び『突撃仕様ガトリング砲』を構える。
「‥‥さ、ジャンジャンバリバリ弾幕弾幕っと」
 呟きながら沢辺は砲撃を開始するが、キメラは手を振りかぶって火絵へと攻撃を仕掛け、彼女は『【OR】対陸専用大剣 ガルーダ』で受け止めた。
「伊達や酔狂で大きいわけじゃないんだからね♪」
 火絵は呟き『【OR】ヒートホーン』に武器を持ちかえると「この間合い! あたし向き!」と叫んで攻撃を仕掛ける。
 そして火絵は攻撃が終わると、キメラとの距離を取ると中距離まで移動してきていたアンジェラが『3.2cm高分子レーザー砲』でキメラにダメージを与えていく。ちくちくとした攻撃を行う事によってキメラの気を自分の方へと向けて、前衛で戦う能力者達の為に隙を作ろうという試みだった。
「ん、さよもチクチクするー」
 橘は特殊兵装『ラージフレア・鬼火』を使用してキメラをかく乱しながら町に被害が出ぬように短期決戦を心がけて攻撃を行う。途中でキメラが攻撃を仕掛けてくる事もあったのだが『機盾 リコポリス』で捌きつつ、他の能力者達と連携を取りながら地道に攻撃を行っていく。
「さぁ! うちのターン! もちろんガチ勝負で行くで!」
 沢辺は弾幕を張りつつキメラに接近して『メトロニウムシールド』で自らの身を守りながら『アグレッシブ・ファング』を付与した『ユニコーンズホーン』で攻撃を行った。
 そしてアンジェラが『3.2cm高分子レーザー砲』で援護を行い、火絵は『【OR】試作型フレーム 天鳳』を『アグレッシブ・フォース』を使用しながら、敵を翻弄する役割を買って出て、キメラの攻撃を避けながら接近で戦う能力者達の為に隙を作る。
 その後、橘が『ヒートディフェンダー』を構えて攻撃を行い、二匹目のキメラも無事に退治する事が出来たのだった。
「おっしゃ! エエトコいただきや!」
 沢辺は不敵に笑みながら退治したキメラに近寄ると、彼女が搭乗するKV『R−01改』を直立&腕組みをさせながら「‥‥成敗!!」とキメポーズを取ったのだった。


―― 後片付けまでする傭兵達は大変なんです ――

 全く御利益を感じさせない招き猫型のキメラを退治し終えた能力者達は、そのまま本部へ帰還――したわけではなかった。
 二匹のキメラを退治し終えて、町への被害も無く、任務は成功に終わったのだが――流石にキメラと戦闘をした場所は無事ではすまなかった。
 だから能力者達はKVを操縦しながら、消火活動などを行う事に決めていたのだ。
「困ったわねぇ‥‥」
 智久が退治したキメラを見ながらため息混じりに呟く。
「んん? どないしたん?」
 沢辺がそれに気づき、近寄ると智久が搭乗する機体・ワイバーンはキメラの方を向きながら自らの悩みを沢辺に打ち明ける。
「後からキメラ回収班とか来るでしょ? その際に回収し易いよう、斬り刻んだ方がいいのかしら?」
「き、斬り刻むん?! ど、どうなんやろ、でも斬り刻んだら血ぃの匂いやらで逆に‥‥」
 沢辺が言葉を返すと「そうかしら? でも回収班はこれをどうやって回収するのかしらね」と巨大なキメラを見ながら再びため息を吐いたのだった。
「ふぎゃっ‥‥派手にやっちゃったけど、町で地震起きてたり‥‥け、結構距離あるし、大丈夫だよね〜? あはは‥‥」
 不二宮は地ならしをしながら町の方角を見て、苦笑を漏らす。
「ふぅ、結構しんどいなぁ」
 沢辺が呟くと「情勢が情勢ですし、処理の為に重機やKVを出すのも大変でしょう」と真田が言葉を返してくる。
「出来る事があるのならば、やって損は無いはず‥‥少しでも正規軍の負担は減らしたいですから‥‥」
 真田が呟くと「せやな」と沢辺は言葉を返し、再び後処理に取り掛かる。
「静かにお休み‥‥次に生まれてくる時は、私のお膝の上に収まるくらいでお願いしますね」
 真田は今はもう動かぬ招き猫に向けてポツリと言葉を投げかけ、再び後処理の為に動き出したのだった。
「大きいキメラの処理も大変ですね〜、でもこのまま放置しておいたら周りの迷惑ですし、万が一、不細工招き猫の祟りなんて事になったら困りますものね」
 乾は独り言のように呟きながらへこんだ地面をならしていく。
「あーーっと、そこの火だけはまだ消さないで! サツマイモ持参してるから終わった後に皆で焼いて食べようよ」
 大きな勢いは無いけれど、一応火を消そうとした橘に火絵が慌てて話しかける。
「イモ? キメラを退治した場所で焼き芋‥‥なかなか珍しい事をするのね」
 アンジェラも消火活動を行いながら火絵に話しかけると「どうせなら皆で楽しくしたいでしょ♪」と彼女は言葉を返し、残り少ない処理場所を片付けに入る。
「焼き芋‥‥楽しみかも」
 橘が呟き、一箇所の火を残して処理を終えた能力者達はKVから降りて、焼き芋を焼く。
「さぁ! 楓ちゃんの愛情たっぷり焼き芋をたぁ〜んとめ・し・あ・が・れ♪」
 火絵は『【OR】模擬刀 ニライカナイ』で焼けたサツマイモを取って一人ずつ渡していく。その際に『ポットセット』に入れてきた飲み物を配る事も忘れない。
「‥‥‥‥ぐはっ」
 全員に渡し終えた所で火絵が突然鼻血を吹いて、その場に蹲る。
「だ、大丈夫!?」
 アンジェラが少し驚いた様子で話しかけると「ノープロブレム」と鼻を押さえながら彼女は言葉を返す。
 ちなみに彼女がいきなり鼻血を吹いたのは、戦闘のダメージがあるとかそんな理由ではなくて『今回の任務、全員が女性だから』と言う理由らしい。
(「‥‥戦闘中は我慢してたけど、興奮が抑えられないっ」)
 ぼたぼたと流れる鼻血を抑えながら、火絵は心の中で呟いていたのだった。



END