●リプレイ本文
―― 綺麗な大石・参上☆ ――
「四月馬鹿の力を借りて『綺麗な何か』に変わったふんど師匠ですか‥‥何の力であれ、綺麗な師匠は師匠じゃありません!」
大石・圭吾(gz0158)の一番弟子である千祭・刃(
gb1900)が何気に酷い事を呟く。
「‥‥とは言え、人助け依頼を請け負ったようですので僕も協力します」
千祭が呟いた時に「ローリング☆アターーーック」と叫びながら大石が転がって一緒に任務を行う能力者達の所へやってくる。フリル付の白いブラウスが泥に塗れて酷い事になっている。
「俺の青い春の為にがんヴぁ――(ドン☆)――」
大石が起き上がりながら叫んだ所にUNKNOWN(
ga4276)の車が彼を吹っ飛ばす。普通の人間にしては大問題なのだが『大石なんだから』と言う言葉で済まされてしまう状況。
「大石、私も手伝おう‥‥?」
UNKNOWNは道端にゴミのように転がる大石の姿を見て首を傾げる。
「いつもと違う格好だから判らなかったではないか」
UNKNOWNはそう言って大石の身ぐるみを剥ごうとするが、大石は「きゃーーっ」とダミ声で叫び、UNKNOWNから離れる。
そんな様子を見て「春じゃしのぅ‥‥」と秘色(
ga8202)がため息混じりに呟いた。
「まぁ、あやつは一年中斯様な状況らしいが」
「ううむ、あの大石ですら服を着る中であえて褌一丁の俺」
天道・大河(
ga9197)が腕組みをしながら「‥‥はっ、今回の俺ってもしかして轢かれる可能性が高いんじゃ‥‥」とUNKNOWNに視線を移しながら呟き、轢かれる自分の姿を想像して天道は体を震わせた。
「はて、噂に聞いていたのとはかなり違うのですね‥‥」
鍋島 瑞葉(
gb1881)は明らかに噂とは違う大石を見ながら首を傾げて呟く。
「‥‥うわぁ」
白雪(
gb2228)が‥‥と言うより彼女の姉人格である真白が『きらきら』と書かれた看板を背負った大石を見て、あからさまに蔑みの視線を送る。
(「私は大石さんのあの格好、面白くて嫌いじゃないけど」)
白雪が真白に心の中で話しかけると「芸人じゃないんだから‥‥。やってる事が軟派で正直好感は持てないわね」と真白がばっさりと切り捨てるように言葉を返す。
(「‥‥きっと、精一杯の努力なんだよ」)
白雪は言葉を返すが、何故か哀れみも込められているように感じるのは気のせいだろうか。
「あの人が、大石様ですか? 普段もあんな感じなんですか?」
榊 菫(
gb4318)が珍しそうに大石をジーッと見ながらポツリと呟く。
「いえ、普段のふんど師匠はあんなに綺麗じゃないんです。もっと汚いんです」
弟子である千祭がトドメにも似た言葉を返すが「そ、そうなんですか‥‥」と榊は少し後ずさりながら言葉を返した。彼女は千祭が苦手と言うわけではなく『男性恐怖症』の為、男性と話す時には少しどもったりしてしまうのだ。
「‥‥何か、色んな意味で疲れそうな任務だね」
レイン・シュトラウド(
ga9279)が大きなため息を吐きながら呟くと「そこのちびっこ美少女! 俺と一緒にビデオデッキしないかい?」と意味不明な言葉を投げかけられ、レインはずきずきと頭が痛むのを感じていた。
「あれあれ? 無視? むっしー!」
「うるさい‥‥黙らないと撃つよ」
レインは『スコーピオン』を構えながら大石に言葉を返すと「俺のハートは既に撃ち抜かれてるぜ☆」とウインクと共に答えてきて、再び激しい頭痛が彼・レインを襲う。
(「‥‥ボク、男なんだけどな」)
「どれ、この看板に濁点を書き足して『ギラギラ』にしてやろうぞ。彼女欲しさにがっついている様には、似合うておるじゃろうて」
秘色が大石の背負っている看板に濁点をつけて『ギラギラ』にしてやると、その不気味さは倍増した。
「‥‥よし、そろそろ出発しようか?」
UNKNOWNが呟きながら車の運転をするのだが『ドン☆』とぶつかり、再び大石は地面へと突っ伏す事になる。
「‥‥くっ、バグアめ。諸君、大石の意志を継いで頑張ろう」
まるで大石を亡き者のように話すUNKNOWNだったが、大石は死んでいない。
「あんのん! お、お前と言う奴は‥‥今日という今日は‥‥「美人の依頼主が待っているのだろう?」‥‥俺の青い春―――――っ!」
ここまでの馬鹿さ加減を見ていると、呆れを通り越してしまうのはなぜだろう――心の中で呟きながら能力者達は目的のメルヘン町へと向かい始めたのだった。
―― メルヘン珍道中 ――
今回の能力者達は班を4つに分けて行動を行う事に決めていた。
1班・AU−KVをバイク形態にして捜索する鍋島。
2班・鍋島と同じくAU−KVをバイク形態にして捜索する千祭。
3班・大石、秘色、天道、レインの四人は徒歩での捜索。
4班・UNKNOWNの車に乗って捜索する白雪と榊の三人。
※1班&2班※
「ただいま、町に危険なキメラが出没しております。危険ですので退治が完了するまで町の皆さんは建物の中でお待ち下さい。また、目撃した方はご連絡下さいー」
鍋島は『メガホン』を使用しながら町の住人達にキメラ出現と建物から出ないようにと警告を行い、キメラ捜索を行っていた。
「なんだか童心に帰ったような気持ちになりますね」
鍋島は呟きながらメルヘンな町を見渡し、再び捜索を続けたのだった。
「‥‥今までは誰かと一緒だったので、ちょっとだけ心細いですね」
鍋島と同じく、単独での捜索活動を行っている千祭がメルヘン町をAU−KVに跨って駆けて行く。
「ふんど師匠―――っ! 何処ですかー!」
何故か千祭は大石の名前を呼んでキメラ捜索をしている、ある意味キメラに近いものがあるのだが、大石はちゃんとした人間のはずだ。
「それにしてもふんど師匠のあの姿‥‥褌姿じゃなくなったらふんど師匠じゃありません。何としても目を覚ましてもらわないと」
千祭は決意を胸に、まずはキメラ退治――とキメラ捜索を再開したのだった。
※3班※
「お〜れの青い春ぅぅぅ〜、かもんかもんかもーん!」
歌いながらキメラ捜索をする大石に「さっきも言ったけど‥‥うるさいよ」とレインが再び銃を向けながら低い声で言葉を返す。
「おぬしも自分の事ばかりじゃのうて、一般人の安全の為に声をかけるくらいしたらどうじゃ?」
秘色が呆れたように大石に言葉を投げかけながら「わしらがキメラを退治するまで、しかと閉じこもっておくのじゃぞ?」と窓から覗いている一般人達に声をかけ、キメラ捜索を行っていく。
「おお! 何と言う他人を思いやる心! 俺の心はざっくりとやられたからハウスメイドでもしないかい?」
大石が秘色を口説いたのだが、言葉が返ってくる代わりに目の前に星のようなものが散るのを大石は感じていた。
「安心せい、峰打ちじゃ」
秘色は『蛍火(鞘付状態)』で思いっきり大石を殴った後に蔑むように言葉を掛ける。
「くっくっく‥‥向こうが綺麗な大石なら、こっちはカッコイイ大河を見せてやる!」
少し細い路地に入って天道は持ってきた衣装に着替え『ぺかーん☆』と漫画なら背景に無駄なキラキラが入っているようなポーズで再登場する。
「‥‥何で、ボクの周りにはこういうのが多いの」
レインは頭を押さえながら自分の不運を少しだけ呪いたくなった。それも仕方がない、天道の格好、それはキラキラ光る布の着物にちょんまげカツラ、武器は刀を持ち、どこぞの戦う将軍様にしか見えないからだ。
「まったく‥‥馬鹿が三人もおると此方は大変じゃて‥‥三人?」
自分の呟きに秘色は疑問を持ち、よく3班のメンバーを見ると――大石や天道の妙な格好に混じって王様風の見知らぬ男がちゃっかりと輪の中に混じっている。
「やれやれ‥‥他の班に連絡、じゃな」
秘色は呟きながら『照明銃』を撃ち、他の班に『キメラを見つけた』と言う連絡と場所を特定させる為の行動を取ったのだった。
※4班※
「む、どうやらキメラを見つけたようだね」
UNKNOWNは本部から借りた地図を見ながら運転をして『照明銃』が撃ちあげられた場所へと向かう。
「そういえば‥‥メルヘンってどういう意味?」
白雪が首を傾げながら真白に問いかけると『御伽噺と言う意味らしいわよ。確かに綺麗な町並みよね』と真白は言葉を返す。
「でも、こういう町って、可愛いですよね。私は好きかもしれないです、こういう雰囲気」
榊が可愛い町並みを窓から見ながら呟くと「確かに、こういう雰囲気もたまにはいいですよね」と白雪が言葉を返した。
「これで住人が外に出ていないかを確認していてくれないか?」
UNKNOWNが持参してきた双眼鏡を白雪と榊に渡して、車を目的地に向けて走らせる。
(「確かに綺麗な町なのよね‥‥‥‥一部以外」)
真白は見えてきた大石や何故か服装の変わっている天道を見ながら深いため息を吐き、キメラを逃がさぬように牽制している3班に合流したのだった。
―― 戦闘開始 ――
4班が3班と合流してから、数分も経たないうちに1班と2班の二人も合流してきて、戦闘開始となった。
「よぉし、俺の青い春のためにヴぁ――」
大石も気合を入れて戦闘に参加しようとしたのだが、UNKNOWNの停めた車のおかげで本日三回目のひき逃げ事件(犯人目の前)に遭遇してしまう。
ちなみに秘色は「あぶない!」と庇うように叫んだのだが、勢いよく車の前に大石を突き飛ばすという暴挙に出ていた。
「きゃー、バグアこわーい」
物凄く棒読みな台詞を真白が可愛らしく呟き、キメラとの戦闘に移る。
「おっと、すまないね」
UNKNOWNは『むぎゅ』と大石を踏みつけ、ロープを使用してキメラの動きを封じ、そのまま『スコーピオン』で射撃を行う。
「まぁ、こういう時もあるから踊ろうぜ!」
涙を流す大石の肩を抱き、他の能力者達が真面目に戦闘をしようとしている中で踊り始める二人。はっきり言って『戦えよ!』と言うツッコミを入れたくなるのは当たり前の事。
その時、大石の頬すれすれを銃弾が掠めて「真面目に戦わないと、次は当てますよ」とレインが少し怒りを交えた表情で二人に言葉を投げかけるのだが「怒ったー!」とからかうように言葉を返してくる二人に対して「ボク達で戦おう」とキメラとの戦闘に戻っていったのだった。
「えぃっ」
鍋島は小銃『S−01』で射撃を行った後『竜の翼』を使用して、キメラの背後に回りこみながら反転しつつ『竜の爪』を使用した『イアリス』で攻撃を仕掛ける。
「メルヘンチックだけど、キメラだから容赦しないよ。それと‥‥ふんど師匠を元に戻すんだからね」
明らかに千祭の主旨は別の方向を向き始めているのだが、ちゃんと戦っているために誰も何も言う事はしなかった。千祭は『竜の爪』と『竜の鱗』を使用して長刀『乱れ桜』で攻撃を行う。
「この王様キメラ可愛いわね。人形‥‥みたい」
呟きながら真白は洋弓『アルファル』でキメラの足を狙い、動きを止めた後に『両断剣』『流し斬り』『弾頭矢』を使用して攻撃を行う。
「せめて、苦しまずに逝きなさい」
真白が攻撃を終えた後、榊が前へと出て「世界観間違えてないかい? あたしの足元にひれ伏しな、覚悟は出来ているんだろうね!」と『円閃』で攻撃を仕掛けた。
そしてトドメを刺すために秘色が前へと出る、その間にレインが『狙撃眼』と『影撃ち』を使用して攻撃を行い、キメラの動きを止め、その隙を突いて秘色が『流し斬り』を使用して攻撃を行い、王様キメラは呆気なく地面へと沈んだのだった。
「激弱じゃのぅ」
秘色はため息混じりに呟き「さて、依頼人に会うんじゃ――てこんな時ばかりは早いのぅ」とかなり遠くで「早く行こう!」とわめき立てる二人を見ながら苦笑したのだった。
―― 大石と影武者 ――
「いたいた、さっきの捜索時に見つけてたんだよな、馬」
天道はにんまりと笑いながら馬に乗って、将軍様ぽく優雅に馬を駆るのだが『美少女な依頼人に会う』という下心が全開の為にあまり偉そうに見えない。
「俺はこの為にこの任務に来たんだぜ!!」
「この世で最強にカッコイイ、イケメン傭兵であるこの俺! 天道・大河を忘れてもらっちゃ困るぜ」
かなりのハイテンションに他の能力者達はローテンションになりつつあったのだが、そんな事は二人ともお構いなしで依頼人に会う為に早足で移動していた。
「おお! あそこに見えるは美少女依頼人!」
「俺が先に話しかけるんだヴぁっ!」
もう少しで依頼人の所に到着――という所でUNKNOWNが二人まとめて車で轢く。恐らくほとんどの能力者達が『グッジョブ』と思ったこと間違いなしだろう。
「大石、無事だったか‥‥?」
UNKNOWNは降りて、大石の脈取りを行い、悔しそうな表情をしながら「くっ、バグアめ‥‥またしても」と言いながら「私は大石の仇を取る、では」と追走――もとい逃亡していく。
ちなみに仇を取りたいのならば、彼は大石の前で一時間ほど正座をして説教を聞くべきなのかもしれない。
「この隙に元のふんど師匠に戻します。あ、女の人は後ろを向いていてくださいね」
千祭は普段の褌一丁な彼に戻すべく、一生懸命彼を着替えさせている。ある意味勲章を与えたい気持ちになるのは気のせいだろうか。
その後、いつの間にか依頼人は「ありがとうございました」と礼だけを述べて帰っていき、大石は激しく泣き始める。
「そうだ! 俺の初恋の人に似ているキミ! 俺と老人ホームに入ろうじゃないか!」
お付き合い、結婚、色々なものをすっ飛ばして白雪に老人ホームに入ろうと言い出す大石に「えっと‥‥気持ちは嬉しいんですが私、結婚してるので」と苦笑しながら言葉を返した。
「そんなの俺気にしない!」
気にしろよ、と言いたい白雪だったがすぐさま真白に変わり「‥‥ところで大石さん、何故人は苦しむのだと思いますか?」と哲学的な質問を投げ、それを考え込んでいる間に彼の前から姿を消す。
「それじゃあ! そこの大人しめな彼女! 俺と一緒にスタディしようぜ!」
大石は榊に話しかけるが男性恐怖症の彼女はカチンと固まってしまい「お断りです」と確りきっぱり言い切った。
「それじゃ! そこのキ――」
「うふふ、うフふ、いやデすわ。そんナことをおっしゃッては‥‥」
鍋島は黒い笑顔を浮かべて、そのまま大石をラリアットでなぎ倒してジャイアントスイング――という惨劇を作り出す。
「貴方が最初から褌一丁と言う大和魂に溢れた方だったら良かったのに」
去り際に言葉を残して「俺! 綺麗な俺を止める!」と大石は決意を大きな声で叫んだ。
「皆さん、お疲れ様でした。思いっきり、疲れましたので、憂さ晴らしにいきませんか?」
榊の提案にカラオケに行く事になり、倒れたままの大石と天道を放ったまま能力者達は報告の為に帰還していったのだった。
「‥‥自業自得だね」
高速艇の中でレインは独り言のように呟いていた。
END