●リプレイ本文
―― 最後(?)の傭兵戦隊・出動 ――
「ラストになるかはっきり言って不明だけど、最終回行ってみよう〜!」
大きな声で楽しそうに叫ぶのはクイーンズ記者・土浦 真里(gz0004)だった。
「ついに最終回、ですか‥‥一応全てに関わってきた者としては感慨深いと言うか、寂しいというか‥‥感傷に浸るのは終わってからにしましょうか‥‥」
玖堂 鷹秀(
ga5346)がコマンダー・ホークの格好をして、マントをはためかせながら少し寂しそうな表情で呟いた。
「それにしても、また変なの見つけて来たものねぇ」
シュブニグラス(
ga9903)が資料の中の『ジョニー』を見ながらため息混じりに呟く。しかし彼女の表情は何処か楽しそうにも見える。
それもその筈、傭兵戦隊のラスボスをマリにしようと言うドッキリ企画を考えており、マリ以外のクイーンズ記者達に協力を求めていた。
皆、普段の鬱憤を晴らす為に乗り気で協力してくれており、その準備は順調に進んでいる。
「‥‥‥‥ま、最終回なんだ。きっちり盛り上げないとな」
嵐 一人(
gb1968)が呟くと「やっぱりノリノリなんじゃーん、あらしん!」とマリが背中を叩きながら話しかけてくる。
(「最終回だからな、今日くらいは『あらしん』も大目に見てやろう」)
嵐は心の中で大人な誓いを立てていたが、そんな事など微塵も分からないマリは『あらしん』を何度も連呼している。
「どーもー! 今回もまた良い写真撮ってくださいね」
平野 等(
gb4090)が他の能力者、そしてマリに挨拶をしてくる。
「よっろしくぅ、闘うのは皆の役目だから頑張ってね! 私も頑張って写真撮るから!」
ぐ、と拳を握り締めながらマリが言葉を返すと「おお、張り切ってんなぁ」とマクシミリアン(
ga2943)が呟いた。
「もっちろーん♪ 最終回だもん! まっきーにも協力してもらうんだからねー!」
久々に炸裂したマリの変なあだ名命名に「‥‥まっきー?」と首を傾げるマクシミリアンがいた。
「ま、俺は前回からの接点が無いから脇役や解説を中心に出来ればいいけどな」
マクシミリアンが呟くと「私も同じくですね」と辰巳 空(
ga4698)が苦笑交じりに言葉を返す。
「まぁ、やれる事はやるつもりですけどね」
辰巳が付け足すように呟くと「マリー! ヅラ用意してくれたか?」とリュウセイ(
ga8181)が他の能力者と喋りながら問いかけてくる。
「もちろーんっ! そんな面白い物をマリちゃんが用意しないワケがないじゃないのさ!」
ぽいっとリーゼントヅラをリュウセイに向けて投げると「等、レッツゴー!」と平野の頭にヅラを何故かポーズ付で装着する。
「‥‥おお、何かジョニーと似てるような‥‥」
平野も爽やかキラッ系なので、リーゼントを装着すると何処かジョニーと似ている雰囲気を持っていた。
「がすっちょは『秘密結社煩悩党』なんだよね、とりあえず最終回だけど頑張って!」
マリは紅月・焔(
gb1386)が言葉をかけて、傭兵戦隊の最終回に向けて行動を開始し始めたのだった。
―― 最終兵器はアメリカン? ――
能力者達がキメラがいる地点へ向かった後、辰巳はこっそりと変装をしながら打ち上げパーティーの用意を始めていた。
本当ならばクイーンズ編集室でパーティーを行いたかったのだが、ドッキリ企画や現地までの距離などを考えると編集室で用意をするのは難しかったのだ。
ちなみに辰巳がパーティー準備をする事についてはマリ以外全員が知っている。
「‥‥うわぁ、本当に濃いな」
現地へ赴くと、確かにキメラは直ぐに見つかり、嵐が顔を引きつらせながら呟く。
「人種差別はイカンが、あんまり濃いのは宜しくないな! ちゃっちゃと片付けようぜ」
マクシミリアンが「突っ張る事が男の勲章とでもってか?」とリュウセイが「ふ」と呟きながらキメラを見る。
「だが、俺が本当の漢の勲章ってのを見せてやるぜ!」
リュウセイは「等!」とキメラを指差しながら「れっつごー」と言う。ここで突っ込んではいけない。リュウセイは「俺が」と言っているのに、実際に行くのが平野だと言う事を決して突っ込んではいけない。
「私はいつも通りブラック役で補助をするわね、むしろアレに近づきたくないわ。濃い何かがうつりそうだもの」
シュブニグラスは鳥肌の立つ腕を押さえながら「無理無理」と手を振って呟く。
能力者達があんまり戦いたくなさそうなキメラ、ジョニー(マリ命名)は金髪リーゼントで歯を輝かせながら立っている。
「それじゃ、俺は巻き込まれた一般人でも装うかね」
マクシミリアンは大きく伸びをしながら呟き、キメラへと向かっていく。
「最終回、悔いのない物に仕上げましょう」
玖堂が呟き、平野が「きらっ☆」とジョニーに対する僅かな対抗心で爽やかさをアピールして『傭兵戦隊』の撮影を開始したのだった。
―― 傭兵戦隊・ファイナル ――
「今日こそ長きに渡る因縁に決着をつけるぞ! 傭兵戦隊!」
バッと玖堂がマントを翻しながら傭兵戦隊に向けて大きな声で叫んだ。玖堂と対峙するように並ぶのは傭兵戦隊のリュウセイ、シュブニグラス、嵐、平野で場を盛り上げるように強い風が吹く。
「今日こそ貴様等を屠る為、今日と言う日の為に用意したキメラ『ジョニー』よ! 出でよ!」
玖堂の言葉と同時に現れるムサイ爽やかなキメラがキラーンと輝きながら現れる。
そして玖堂と傭兵戦隊の間を寒い風が吹き‥‥「大バ幹部! 何でこんなのしかいないんだ!」と恥ずかしそうにジョニーを指差しながら叫ぶ。
ちなみに『大バ幹部』とは『おおばかんぶ』と読み、物凄くお馬鹿な幹部と言う意味であるが此処ではあまり関係ない。
「え! バ幹部って私!? えーと、えーと‥‥実はそう見えても我が社の技術を集結させたものなのだ!」
いきなり振られてマリは慌てて言葉を返す。
「たーすーけーてー」
マクシミリアンがジョニーに近寄って、攻撃を避けながら助けを求める振りをする。
「ふふふ、無抵抗な人間を人質に取る辺りが悪者じゃないか、行くが良い、ジョニー!」
玖堂がジョニーをけしかけるように叫び、少し後ろまで下がる。これから玖堂は傭兵戦隊がジョニーを倒すまで援護になるからだ。
「行くぜ! 竜・装!」
嵐が叫び、AU−KVを装着してポーズを決めながら「野望を蹴散らす白銀の嵐! ストームシルバー!」と快刀『嵐真』でジョニーに攻撃を仕掛ける。
しかしジョニーも背後からバットのような武器を取り出して、嵐とのチャンバラ合戦を始めた。
「爽やかさなら負けない! オリエンタルブルー!」
平野はリーゼントヅラを被りながら、とても素敵な笑顔、そして輝く白い歯で挨拶をした後に『エクリュの爪』で攻撃を仕掛ける。軽いノリのような攻撃をする彼だが、相手は本物のキメラなので油断は欠片も無い。
「そして‥‥悪に名乗る名前は持たないヒーロー! それがこの俺だ!」
リュウセイは『門松ブラスター』で攻撃を仕掛けながら大きな声で叫んだ。
「本当ならラグビー爆弾を使いたかったんだけどな」
リュウセイは後衛の方から『門松ブラスター』で攻撃を仕掛けながら少しだけ残念そうに呟く。
その間にマクシミリアンが『練成弱体』をジョニーに使用して防御力を低下させる。彼の補助に合わせてシュブニグラスも『練成強化』を嵐とリュウセイに使用して武器の威力を上昇させる。
そして紅月が『グラファイトソード』でジョニーに斬りかかり、僅かな隙を作る。さらに嵐が攻撃を仕掛けるが、ジョニーのパンチが繰り出され、嵐は避けるも緊張感を作る為にわざと吹き飛ばされた振りをしてみせる。
「くぅっ! 流石に強いな! だが――」
嵐が呟いた後、平野が『瞬即撃』を使用してジョニーに攻撃を仕掛ける。余談だが、余りにもマッチしすぎてどちらがジョニーなのか遠目では分かりづらい部分があった。
実はあまり強くないキメラであるジョニーは既にふらふら状態で、あと数撃入れば倒せそうな感じである。
それを見て玖堂は『練成超強化』を嵐に使用して、リュウセイ、平野、そして紅月、マクシミリアンも最後の攻撃に入り始める。
「ツインレーザーブレード!!」
嵐は『竜の角』を使用しながら『【OR】特殊機械剣ツイン』に持ち替えて、ジョニーに攻撃を仕掛ける。
「ドラグーン‥‥イン、パルスッ!」
ダメージを与えた後、手首を捻って逆側の刃で再び攻撃を仕掛け、ジョニーは何語か分からない悲鳴を上げてガクリと膝を折る。
「グッッバイ――‥‥」
平野はポツリと呟きながら『エクリュの爪』で何度もジョニーを殴りつける、それはまさにボクシングの伝説的な技にもある攻防一体の如くだった。
そして、リュウセイの『門松ブラスター』、マクシミリアンの『スパークマシン』の援護を受けて平野と嵐がトドメを刺す為に、それぞれが武器を構えてジョニーに攻撃を仕掛けた。
余談だが、攻撃する際の平野のリーゼント揺れがぶれてしまうのが難点だなとマリは撮影を行いながら心の中で呟き、ジョニーが倒されるのを見ていたのだった。
そしてこのシーンは雑誌発売時にはエフェクトなどが掛けられて、物凄くきらきらとしたシーンになるのを能力者達はまだ知らない。
―― 幹部、バ幹部、人畜無害な第三勢力? ――
「くくく‥‥これは単なる布石なのだよ‥‥諸君!」
紅月演じる第三勢力『秘密結社煩悩党』が低い笑みを響かせながら呟く。
「‥‥‥‥‥‥‥」
「いや、何か言えよ」
マクシミリアンがビシッとツッコミを入れるが、紅月は何も言葉を返さない。ちなみに彼の役割は『秘密結社煩悩党』のお偉いさん‥‥ではなく欠番戦士で『H』だった。特に意味はないがアダルトな役割を受けているワケではない。
「‥‥第三勢力と言うけど、これから私達・傭兵戦隊に敵対するのかしら?」
シュブニグラスが問いかけると「別に」と即答で言葉が返ってくる。
「じゃあ、何で第三勢力を名乗ってるんだ?」
嵐が問いかけると「ノリ?」と疑問系で言葉を返してくる。
「む、そろそろオヤツの時間なので失礼する」
そう言って紅月は退場して、第三勢力は人畜無害のまま傭兵戦隊の前から去っていったのだったが――目の前には「漸く私の出番か」と玖堂がマントを翻しながら呟く。
「長い戦いに決着をつけようか!」
嵐は呟き、玖堂に向かって斬りかかる振りを行う。勿論、この間にもマリは写真を撮っている。
‥‥と、そこへ謎の保険調査員・ダークエアを演じる辰巳が「すみません」と入ってくる。
「あ、私は怪しいものではありませんよ? ちょっと、此処で気になる事があって調べていたのですよね」
そう言って傭兵戦隊メンバー達に名刺を渡していき、マリの近くまで来ると「やっぱり‥‥いましたね」とため息を吐きながら牽制の為に名刺を投げる。
「全く人の悪い事で‥‥では、事情を聞かせていただきますよ」
ひゅ、とマリの先に回りこんで逃げないうちに確保した辰巳がにっこりと笑顔で話しかけるが、何故か笑っている感じがしない。
「え? や、まさかキメラ見つけてくるのが罪になるわけないわよね」
マリが呟くと「貴方が真犯人ですか」と無理矢理に話を繋げていく。
「えーと‥‥つまりこれはどういう事? なんてゆーか、さっきも思ったけど‥‥私がラスボス? いや、この場合完全に悪者じゃんかーーーーっ! 記者の私が何でラスボス!? こんな話は全く聞いていないんだけど!」
マリがぎゃあぎゃあと喚きたてる中、傭兵戦隊と玖堂との戦いが始まっており、ある程度の戦いシーンをカメラに収めて、後は編集をするだけとなった。
ちなみにラストシーンはマリが捕まっているので、チホや他の記者達が撮影を行っていたとか‥‥。
「ぜぇぇぇったい終わらせるもんかーーーっ! 私がラスボスってどういう事さ! しかも何気に鷹秀は『バ幹部』って言ったあああっ!」
(「‥‥細かい事、気にしてますねぇ」)
喚きたてるマリを見ながら玖堂は苦笑混じりに心の中で呟く。
「クイーンズは任せて、マリちゃんは確りとお勤めしてくるのよ」
シュブニグラスがマリの手を握り締め、うるうるとしながら話しかける。まるでこれから何処かの監獄にお世話になるかのような見送りにマリは「えええっ!」と驚きを隠せない。
「あら、暴れちゃ駄目よ――もう、仕方ないわね」
シュブニグラスの言葉と同時に『がしゃん』と音が響き、マリの手に『手錠』が付けられた。
「まさか本当に‥‥使う事になるとはね」
「シュブちゃん! 感心してないで助けて! ちょ、ちょっとぉっ!」
マリが一人騒がしくしている中、マクシミリアンはジョニーの遺体を見つめていた。
「ふー‥‥やっぱり俺のように颯爽としてないと女性にはモテないよな」
マクシミリアンはポケットからコームを取り出し、髪を整えながらジョニーに視線を落として呟く。
「‥‥ちょっと気になったから書いてもいいよな」
そう言ってマクシミリアンはジョニーの額と肩に落書きをして、満足そうな表情を見せたのだった。
―― お疲れ様! 手伝ってくれた人みんなにありがとう! ――
あれからマリが目隠しをされて連れられたのは、辰巳が用意していたパーティー会場。そこでアルコール無しの打ち上げを行う計画をひっそりと立てていたのだ。
「今回のパーティー費用はクイーンズ・傭兵戦隊の売り上げから出させてもらってるから心配しないで」
「俺! 遠慮なく食べる!」
平野が手を挙げて勢いよく食べ物を口の中へと詰め込んでいく。
「食べてますか?」
ジュースを飲みながら皆を見つめるマリに玖堂が話しかけると「バ幹部は大人しくしてるもん」と拗ねたように言葉を返した。
「‥‥根に持ちますねぇ、こう見えて結構傭兵戦隊が終わるのを残念に思っているんですけど」
玖堂の言葉に「‥‥別の企画と掛け持ちは出来なくなっちゃったんだもん」と俯きながらマリが言葉を返す。
「ま、私は真里さんが決めた事ならば従いますけど」
玖堂が呟いた時「俺特製料理ぃー」とリュウセイが両手に沢山の皿を抱えてやってきた。
「うわぁ、おいしそう!」
マリは皿の中から幾つかを口の中に入れて、暇そうにしている嵐に「あらしーん! ギターっ!」とリクエストをする。
「何でも弾いてやるから、リクエストしろよな」
嵐がギターを構えて、曲を演奏し始め、日付が変わる少し前まで打ち上げと言う名の宴会は続いたのだった。
―協力者―
・マクシミリアン
・辰巳 空
・玖堂 鷹秀
・リュウセイ
・シュブニグラス
・紅月・焔
・嵐 一人
・平野 等
―編集・撮影―
クイーンズ記者一堂。
今回で定期的に刊行していた傭兵戦隊は終わるけど、忘れた頃に帰って来るつもりだから覚悟しといてよね!
次は私じゃないラスボスを出すんだから!
(クイーンズ記者・土浦 真里)
END