●リプレイ本文
―― 白の聖獣・白虎討伐へ向かう者達 ――
今回の能力者達が退治に向かうキメラは『聖獣・白虎』が模倣されたと思われる獣型のキメラだった。
「これで三回目、か」
白虎の資料を見ながらヴェイン(
ga4470)がため息混じりに呟くと、それとほぼ同時に林・蘭華(
ga4703)もポツリと呟いていた。
「玄武、朱雀と来て白虎‥‥聖獣キメラも三体目ね」
ヴェインと林は聖獣キメラを全て相手しており、互いに顔を見合わせて苦笑する。
「白虎だろうが、キメラだろうが畑を荒らすヤツはボコボコにしてやるです」
農家の人に謝れです、と拳を強く握り締めながら言葉を付け足したのは霧隠・孤影(
ga0019)だった。
「白虎ぉ? ‥‥聖獣の事は、別に詳しくないけどね――『聖』を冠するにゃ、ちぃ〜っとどぎつ過ぎやしないかな〜?」
聖・真琴(
ga1622)が呟き、資料をピンと指で弾く。その隣では天狼 スザク(
ga9707)がため息を吐きながら資料を流し読みしていた。
「前回の朱雀退治に参加出来なかった鬱憤を全て白虎にぶつけてやる、それにアンティークも増やしたいし」
彼は白虎の頭や爪を持ち帰ってアンティークにしたいらしい。でも、先ずその為には『白虎を退治』しなくてはならないのだけれど。
「ん〜、白虎の毛皮を売ったらいくら位になるのかな?」
首を傾げながら呟くのは、火絵 楓(
gb0095)だった、確かに白虎の毛皮は貴重かもしれないけれど、所詮はキメラの毛皮であり、高く売れるとは思えない。
「住人が数名死亡か」
ため息混じりに朔月(
gb1440)が呟く。
「四神の中で本来なら白虎は人間に一番好意的な神らしいが‥‥ま、キメラには関係ないか♪」
朔月は資料をパタンと閉じながら呟く、所詮人間に好意的な聖獣を模倣した所で人間を傷つける為だけに作られた存在なのだから好意的になるなど決してありえないのだ。
「虎退治なのに8人いる!? 7本槍じゃね〜! ‥‥とまぁさておき、今回は白虎ですか」
九条・護(
gb2093)が少し大きな声で呟き、そのまま言葉を続ける。
「話に聞く限りで特別な力がない辺り、サーカスで見かけたヤツのキメラ版って考えれば良いよね、獣だし」
九条が呟くと「ま、そんな感じだろうね」と朔月が言葉を返し、能力者達は『白虎』が潜む森へと出発したのだった。
―― 鬱蒼とした森で獲物を狙う鋭い目 ――
今回の能力者達は迅速に任務を遂行すべく、班を『囮班』と『奇襲班』に分けて行動すると言う作戦を立てていた。
天狼、火絵、朔月の三人が囮班として動いて奇襲班が攻撃を仕掛けやすい状況を作る。
ヴェイン、林、霧隠、聖、九条の五人が奇襲班として動き、もし万が一奇襲班が先に襲われても散開して白虎を囲むようにすると言う作戦も立てていた。
「何かあってもなくても、連絡は密に行うようにしましょ」
林が『トランシーバー』を見せながら呟くと、他の能力者達も首を縦に振る。
「それじゃ、無事に任務を遂行させよう」
ヴェインが呟き、能力者達はそれぞれの班に分かれて行動を開始したのだった。
※奇襲班※
「さて、狩人はどちらか‥‥」
ヴェインは森の中を歩きながら呟き、周りへの警戒を強める。
「‥‥玄武や朱雀の時と違って虎ってあんまりネタがないわ‥‥」
林は足音と気配をなるべく殺しながら白虎の足跡や糞を手がかりとして彼女は探しているのだが、鬱蒼とした森の中ではそれすらも見つからない。
「白虎ってどんなのなのかな? やっぱり神々しいとか? それとも普通の虎と変わらないのかな?」
聖が人差し指を口元に当てながら呟くと「単なる猛獣に毛が生えた程度だとボクは思うけどなぁ」と九条が小銃『ブラッディローズ』に視線を移しながら呟く。
「ま、どっちにしても倒しちゃうから問題ないンだけどネ〜☆」
けらけらと笑いながら聖は言葉を返し、白虎を見逃さないように周りを警戒する。
「囮班の方に足跡を見つけたみたい、こっちには足跡すら見かけないから囮班が居る場所周辺を根城にしているのかもしれないわね」
林が『トランシーバー』を切りながら呟くと「此方も向こうに移動するか」とヴェインが呟き、物音をあまり立てないように歩きながら囮班が白虎を探している方向へと移動を開始したのだった。
※囮班※
「奇襲班もコッチに向かうって」
火絵は『トランシーバー』を切りながら天狼と朔月に向けて話しかける。
「何かさっきから視線は感じるんですけどね」
天狼が苦笑しながら視線を移す、囮班の三人はわざと白虎が気づくように音を立てながら捜索していたのだが、それが逆に白虎に警戒心を与えたのだろうか。
周りをガサガサと移動する音は聞こえるのだが、襲ってくる気配はまだ感じられない。
「見られてるって分かってるのが逆に嫌だな」
朔月も音に合わせて移動する白虎らしき気配の後を視線で追いながら苦笑気味に呟く。
「来る――っ!」
天狼が呟くと同時に背後から白虎が襲いかかってくる、後ろから攻撃されるのが分かっていたのに、予想以上の素早さに先ず天狼が腕を負傷する。
「チッ‥‥」
ヴェインは忌々し気に呟くと小銃『S−01』と『スコーピオン』を構えて白虎の至近距離から発砲を行う。銃なのだから後衛で戦う事も出来るのだが、至近距離でないと当たる気がしないと彼は考えていた。
そこへ奇襲班から朔月に連絡が入り、彼女は奇襲班が居る場所を聞き出すと「誘導するぞ!」とヴェインと天狼に向けて叫ぶ。
白虎に一番近い位置にいた天狼とヴェインは一撃ずつ攻撃を仕掛けた後に後ろへと下がって、朔月が走る方向へと向かって二人も走る。
奇襲班は近くまで来ていたのだろう、5分ほど走った所で朔月は立ち止まって『【OR】天狼』を白虎に向けて構える。
そして白虎が朔月に攻撃を仕掛けようと走り出した瞬間、白虎の背後から霧隠が現れて「農家の人に謝れーっ!」と叫びながら『シルフィード』で攻撃を仕掛けた。
「ふぅ〜ん‥‥『聖獣・白虎』の姿をしてるだけあって、綺麗だねぇ♪」
こんな状況じゃなきゃ見惚れてるかな? と笑いながら言葉を付けたして聖は『キアルクロー』を構えて白虎に攻撃を仕掛けようと走り出す。
しかし、白虎は高くジャンプをして聖の後ろへと行く。
対する聖も『疾風脚』を使用して「逃がしゃしねぇってのよっ」と白虎を追いかけて攻撃を仕掛ける。
その時、チリンと鈴の音が能力者達の耳を掠める。勿論その音は白虎にも聞こえていたようで、白虎の視線が火絵へと向けられる。
「あたしは朱雀であなたは白虎だから〜仲良くしよう」
鈴の音の持ち主、火絵が白虎に握手を求めると言う行動に出たが、所詮は獣、所詮はキメラ、言葉が通じる筈もなく白虎は火絵を踏み台にするかのように圧し掛かってきた。
「な! あたしを踏み台にしたっ!」
火絵は少し大きな声で叫んだ後に『アーミーナイフ』を白虎に投げつける。彼女が放った『アーミーナイフ』は白虎の足へと刺さり、白虎は苦しげに呻いた。
「たとえ素早くても、ボク達に爆殺されるのには違いないんだからね」
爆殺開始、と大きな声で九条が叫んで『竜の爪』と『竜の瞳』を併用して小銃『ブラッディローズ』で攻撃を仕掛ける。小銃とはなっているけれど『ブラッディローズ』は散弾銃だ、たとえ高い素早さを誇る白虎とて容易に避ける事は出来ないだろう。
「HAHAHA〜〜、単なる猛獣に毛の生えた程度の奴に負けて堪るかよ! 虎ならウチのねーさん位に萌え要素を装備して襲いに来い!」
しかし萌え要素たっぷりの姿で襲いに来られても困ると言うのが現実である。
「疾風突き! シルフィードスラッシュです!」
九条の攻撃によって、動きを一時的に止めた白虎を狙って霧隠が『疾風脚』と『急所突き』を併用して攻撃を仕掛ける。
ざく、と言う鈍い音と共に白虎の足が確実に落ちた。
「はン☆ ナリは『聖獣』でも、所詮は『獣』ってか?」
くっ、と金色の瞳を輝かせて冷たく笑う聖は『疾風脚』を使用して足に装着された『砂錐の爪』で攻撃を仕掛ける。
彼女の攻撃を白虎は避けようとしたが、欠けた足のせいでバランスを崩してしまい、地面へと倒れこみ、再び九条が攻撃を仕掛ける。
「手負いの獣ほど恐ろしいものはない、と言うしな。悪いが手を抜く事はしない」
ヴェインは『スコーピオン』で倒れる白虎に容赦なく弾丸を叩き込んでいく。
「はっ、機械剣一閃です!」
霧隠は『機械剣α』で白虎に攻撃を仕掛けながら叫ぶ。
しかし、白虎は逃げる事を諦めていないのかずるずると足を引きずりながら少しでも能力者達から遠ざかろうと試みる。
「何処に行くのかしら‥‥‥‥こんなに美味しそうな狐が居るのにね‥‥」
林は妖艶な笑みを浮かべ『ロエティシア』でぐさりと白虎に攻撃を仕掛ける。
「流石にもう素早さを誇る事は出来ないようだな?」
覚醒を行い『朱雀』となった天狼が狂気的な視線で白虎を見て、小さく呟く。そして武器を『ゼルク』から黒刀『炎舞』に持ち替えて攻撃を行う。
天狼の表情、刀身から揺らめく炎、どれもが狂気的で白虎は少しだけ怯んだ表情を見せる。
「グアァゥッ」
白虎が天狼の足に噛み付こうとした時、火絵が『スブロフ』を投げ、それは白虎の頭に当たった事でバリンと割れて中身の酒が漏れ、白虎の目に入る。
これで火を投げつけたら勢いよく燃え上がるのだろうが、流石に『森』で戦っている現在では使う事は出来ない。
そして『流し斬り』と『両断剣』を使用して大剣『カマエル』で渾身の一撃を放つ共に『弾頭矢』を白虎の傷口に投げつける。
朔月も彼女の援護をするように『急所突き』で白虎の目を射抜く。
「『閃』ノ参‥‥『火燕』‥‥!」
天狼は低く呟き『紅蓮衝撃』『流し斬り』『二段撃』を併用して白虎に攻撃を仕掛け、見事白虎にトドメを刺して、任務を終了したのだった。
「任務完了」
表情を殺しながら火絵は絶命した白虎を見て呟き、大剣の血払いを行った。
「本来、白虎は風と鋼と豊作の神。真似るなら徹底して、それぐらい模倣してきやがれ!」
朔月は白虎を蹴りながら怒りを交えた口調で呟いたのだった。
―― 第三の聖獣・白虎が堕ちて ――
「キメラ如きが忍者に勝てる筈ないんですっ」
霧隠が拳をぎゅっと握り締めながら、今はもう物言わぬ死体となった白虎へと言葉を投げかける。
「いくら綺麗な生き物でも、キメラだモンね〜☆ 真似モンで勝てる筈ないし♪」
聖も大きく伸びをしながら呟く。
この戦いで多少なりとも傷を負った能力者達だが、体を走る痛みよりも退治出来た事、そして町への被害がなくなる事、其方の方の嬉しさが勝っていた。
「‥‥この爪と牙、武器に加工できそうだな」
ヴェインは白虎の牙と爪を剥ぎ取って「ふむ」と眺めながら呟く。
「毛皮剥いで絨毯にするというのもありかしら」
林が扇子を口元に当てながら「剥ぐまでがグロそうだけど」と言葉を付け足す。
「あ、頭ともう片方の爪は持って帰っていいですか?」
天狼が能力者達に問いかけると「ボクはいらないし」と九条が言葉を返し、他の能力者も「俺もいらないから」と口々に言葉を返す。
「しっかしこれが白虎ちゃんだとすると、青龍はどんなのが来るんだろ? あたしやばいかも‥‥燃えてきた‥‥」
やばい、と言うにしては火絵は何処か楽しそうな表情で呟き『燃えてきた』と言う言葉に偽りはないのだろう。
(「でも次で本当に終わりだろうか‥‥? 麒麟や鳳凰のように雌雄一対の敵が現れるかもしれないと、本部には一応報告しておくかな」)
朔月は考え込むように手を口元に当てながら、心の中で呟く。
「‥‥そういえば、虎ってどう料理するのかしら?」
「‥‥‥‥食うのか?」
林が何気なく呟いた言葉に、ヴェインがぎょっとしたような表情で言葉を返す。
「賛成! 賛成賛成賛成!」
はいはい! と元気よく手を挙げながら天狼が大きな声で叫ぶ。
(「食べるんだ‥‥」)
霧隠が少し引きつった笑みを浮かべながら心の中で呟き、天狼は楽しげに料理をしていく。
そして――出来上がったものは。
「うわぁ」
立ち込める煙、焼かれた肉を見て朔月が小さく呟く。本物の白虎ならば体にもいい『かも』しれないけれど、目の前のはただのキメラの肉。
「わ、私はいらないわよ」
林は今まで全てがハズレだと言う事が身に染みているので皿を渡される前に断る。
「今度こそ美味いかもしれないし!」
天狼はそう言って『食べる』と言った能力者にのみ皿を渡していく。
しかし、二度ある事は三度ある、三度ある事は決して覆らない――という言葉はないけれど、その言葉通りに白虎の肉も恐ろしいほど不味いものだった。
その後、能力者達は帰還し、本部へと報告や通告を行う者、白虎を食べて腹を壊して病院へ向かう者など様々だったのだとか‥‥。
END