タイトル:うわばみ姫マスター:水貴透子

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/12/26 02:33

●オープニング本文


うわばみ――‥‥。

それは大きな蛇の事を指すのだと言う。

※※※

夜の街には大蛇が徘徊するのだと、能力者達の耳に届いた。

身の丈が三メートルにもなる大きな蛇は、その外見と残虐な行動で住人達を恐怖に陥れていた。

「う、わ‥‥」

男性能力者は犠牲者の遺体写真を見て表情を歪め、吐き気を堪える為に口を手で強く押さえた。

「犠牲者は合計で七人。その全て全身を締め付けられるように殺されているわ」

女性能力者が資料を渡しながら男性能力者に言葉を返す。

「要は蛇女って事だろ?」

写真の隅に黒く映った影は何処か女性を思わせるもので、男性能力者は「今までにも何匹か出てるしな」と言葉を付け足した。

「でも今までと決定的に違う所があるわよ。写真をよく見てみなさいよ」

女性能力者の言葉に、男性能力者は再び視線を写真に落とす。

「別におかしい所――は――アレ?」

写真の不自然な部分に気がついたのか「ええ?」と写真をよく見ている。

写真についておかしな部分――それは前と後ろ、それぞれに女性のような形が映っているのだ。

写真を撮った住人も、襲われていたり、場所が暗かったせいで上手く撮れなかったと言っているようだが、確かに前と後ろにそれぞれの女性がいたと証言しているらしい。

「つまり下半身の尾は一つだけれど、上半身部分は前と後ろ――二人の女性がいると考えて間違いないでしょうね」

女性能力者の言葉に「‥‥そんなサービスいらねっての‥‥」と男性能力者はため息混じりに呟く。

「背中からの攻撃ってのが出来ないのかぁー‥‥どんな風に戦うのかねー」

男性能力者はため息混じりに呟き、資料に再び目を落としたのだった。

●参加者一覧

エクセレント秋那(ga0027
23歳・♀・GP
蓮角(ga9810
21歳・♂・AA
イスル・イェーガー(gb0925
21歳・♂・JG
蒼河 拓人(gb2873
16歳・♂・JG
ハイン・ヴィーグリーズ(gb3522
23歳・♂・SN
エル・デイビッド(gb4145
17歳・♂・DG
九頭龍・聖華(gb4305
14歳・♀・FC
トリシア・トールズソン(gb4346
14歳・♀・PN

●リプレイ本文

〜邪蛇を退治に向かう者達〜

「背後が無い敵ってのも面白いねぇ、久々にハードな戦いになりそうじゃないか」
 エクセレント秋那(ga0027)が資料に目を通しつつ不敵に笑みながら呟く。
 今回集まった能力者達が相手をするキメラは簡単に言えば蛇女なのだが‥‥上半身に二つの身体を持つと言う特殊なキメラだった。
「犠牲者は七人、か。さっさとけりをつけなくてはいけませんねぇ」
 蓮角(ga9810)が渋い表情で呟くと「もう七人もいるんだ‥‥」と蒼河 拓人(gb2873)が悲しそうな表情を浮かべて小さな声で言葉を返した。
「これ以上、増やさせるわけにはいかないね」
 蒼河は言葉を付け足して腰に据えた『アラスカ454』を軽く撫でながら再び資料に目を落とす。
「場所は‥‥教会」
 肩を竦めるようなアクションで呟くのはエル・デイビッド(gb4145)だった。
「教会が‥‥我達‥‥動き回れるほど‥‥広いか‥‥心配‥‥」
 エルの言葉を聞いて、思い出したように九頭龍・聖華(gb4305)がポツリと言葉を返す。確かに彼女が心配するもの無理は無い。教会が狭ければ、同時に戦闘の幅も狭まってしまうと言う事に繋がるからだ。
「‥‥確かに、それは心配かな‥‥」
 でも、とイスル・イェーガー(gb0925)と言葉を付けたしたのだが続く言葉が分かっているように九頭龍も首を縦に振る。
「ただ‥‥もう‥‥手を‥‥打つ時間が‥‥無い‥‥後は‥‥我に‥‥出来る事を‥‥全力で‥‥やるだけ‥‥」
 九頭龍の言葉に「そうですね、確定じゃない事を心配するより自分に出来る事をする、それは素晴らしいことだと思います」とハイン・ヴィーグリーズ(gb3522)が言葉を返した。
「私にとっては初めての任務だ‥‥キメラ退治、絶対に成功させるんだ――復讐、そして無事に彼の元に帰る為にも‥‥」
 トリシア・トールズソン(gb4346)は自らを奮い立たせるように『【OR】形見の短剣』を強く握り締め、目を伏せながら呟く。
「さて、そろそろ出発しますか」
 打ち合わせなども行い、能力者達は住人達を苦しめる邪蛇を退治する為に本部から出発したのだった。


〜教会内部に響く不気味な音〜

「誰もいないねぇって住人は避難しているんだから当たり前なんだけどさ」
 エクセレントが町の中を見渡しながら苦笑気味に呟く。確かに能力者達に渡された資料には『住人は避難している』と言う記述があった為、住人達がいない事は能力者達も知っていた。
「‥‥作戦内容は‥‥班に分かれてサポートしあう、だね」
 イスルが呟くと「うん、そうだよ」と蒼河が言葉を返す。
 今回の能力者達は蛇女キメラを迅速に退治する為に班を四つに分けて行動を起こす事にしていた。
 1班・前衛が蓮角、後衛がハイン。
 2班・前衛がトリシア、後衛がイスル。
 3班・前衛が九頭龍、後衛が蒼河。
 4班・前衛がエクセレント、後衛がエル。
 蛇女キメラが潜んでいる教会に突入する際には正面口から1班と2班、裏口にて3班と4班が準備を行い、無線で連絡を取り合いながら同時に突入すると言う作戦だった。
(「教会‥‥神に祈るところ、か‥‥ぶち壊してやりたいけれど、今回は教会壊すのが目的じゃないもんな‥‥」)
 教会が近づき、エルは立ち止まり今は機能していない古ぼけた教会を見上げながら心の中で呟く。
「さて、いきますか」
 蓮角は呟きながら『蛍火』を抜刀し、同時に覚醒も行っておく。覚醒と同時に伸びた髪と好戦的な表情が覚醒を行った事を他者に知らせた。
「‥‥キメラの目、潰せるタイミングがあったら‥‥これ、使うから」
 イスルは『閃光手榴弾』を見せながら他の能力者達に話しかける。
「‥‥もちろん‥‥使う時には、何かしらの合図を送るから‥‥」
 イスルの言葉に「宜しくお願いします」と言葉を返し、それぞれ突入する入り口へと移動を開始する。

 教会の中は全ての窓にカーテンで引かれていて視界が遮断されていた。
「せめて‥‥中が見えれば‥‥対策の一つも‥‥出来たかもしれないが‥‥」
 九頭龍は『蛇剋』を手に構えながら裏口にて待機する。
「大丈夫だよ、皆で力を合わせればきっと大丈夫」
 蒼河が言葉を返すと「‥‥そうだな」と九頭龍も答えた。
「うひゃ、どうやら中にいるのは間違いなさそうだなぁ」
 エルが窓に耳をつけながら小さな声で呟く。
「何か見つけたのかい?」
 エクセレントが問いかけると「音だよ」と教会を指差しながらエルが言葉を返した。彼の言葉にエクセレント、蒼河、九頭龍も教会の窓に耳を寄せると『ズル‥‥ズル‥‥』と何かが引きずられるような音が聞こえる。
「此方裏口‥‥中に何かがいるのは間違いなさそうだよ」
 蒼河が『トランシーバー』で正面口にて待機している4人に連絡を行う。蒼河からの連絡を聞いて「引き摺る音‥‥蛇、か」と蓮角が小さく呟く。
「そろそろ突入ですかね」
 ハインは『ドローム製SMG』を構え、いつでも突入できるように準備を行っている。
「‥‥絶対に成功させる‥‥絶対に」
 トリシアは呟き、やや緊張気味に見える彼女に「‥‥大丈夫」とイスルが短く言葉をかけた。
 それから数分後、能力者達は教会内部に突入したのだった。


〜突入、両面の不気味な女性蛇型キメラ〜

 4班は同時に教会内に突入して、前衛が蛇女キメラの警戒を行い、後衛が視界を塞ぐカーテンを引き、視界を広げていく。
「うひゃ、本当に前と後ろに顔があるや、化け物らしいねぇ、頭から齧られないように、気をつけてね♪」
 カーテンを全て取り払い、明るくなった教会内で蛇女型キメラが能力者達を威嚇するように睨み付けている。キメラの姿は情報通り背中合わせで二人の上半身を持つと言うもの、不気味な事この上なかった。
「‥‥蛇に女の人の体‥‥変なの」
 イスルが率直な感想を小さく呟く、確かに無理矢理二つの身体を繋ぎ合わせたような雰囲気があり、いくら上半身の女性が綺麗でも醜いとしか思うことが出来ない。
「教会内もこの広さなら、そんなに問題はない――ね!」
 エクセレントは『ロエティシア』を装備した手で蛇女型キメラに攻撃を仕掛ける、対抗して上半身の片割れが反撃を行ってくるが、エクセレントは『ロエティシア』を上手く使って攻撃を受け流す。
「キメラめ‥‥必ず仕留める。犠牲者達の為にも!」
 エクセレントが攻撃を行った正面ではなく、トリシアは側面から『【OR】形見の短剣』と『ゲイルナイフ』を振り上げて攻撃を行う。『ゲイルナイフ』の方で牽制攻撃を仕掛け『【OR】形見の短剣』で『円閃』を使用して攻撃を行った。
 まるで舞うように闘う彼女に対して、巻きつき攻撃を行おうと蛇女キメラの尾が動くがイスルの『ライフル』が尾に攻撃を行い、巻きつき攻撃を阻止した。
「‥‥イスル、支援します‥‥今のうちに一撃入れて‥‥っ!」
 イスルが射撃を行い、蒼河も『アラスカ454』で支援射撃を行うためにトリガーを引く。
「聖華ちゃん合わせて! ――――今っ!!」
 蒼河の言葉に合わせて「九頭龍聖華――いざ参る!」
 九頭龍は『蛇剋』を構え『スマッシュ』を使用して攻撃を行う。片方の上半身に攻撃を仕掛けると、もう片方が攻撃を仕掛けてくる。それを九頭龍は『エアストバックラー』で防ぎ、再び『スマッシュ』で攻撃を仕掛ける。
 この教会はまるで学校の体育館のような作りになっており、二階――と言っても普通の二階ではなく一階が見下ろせるような形になっていた。
 他の能力者達が蛇女の気を引いている間に蓮角は二階へと駆け上り「こっちだ!」と二階から蛇女キメラへと目掛けて飛び降りながら『蛍火』で攻撃を仕掛ける。落下中に蛇女キメラが蓮角に気づき、攻撃態勢を取ったのだがペアであるハインが『ドローム製SMG』で攻撃を仕掛け、蓮角に蛇女キメラの攻撃がヒットする事はなかった。
 彼の攻撃を受け、蛇女キメラは「あああああっ」と悲鳴のような大きな声で苦しそうに呻く。
「最近は変なキメラが多いですね」
 呟きながらハインは『鋭覚狙撃』と『急所突き』を使用して攻撃を行い、蛇女キメラの足を止める。
「このタイミングで‥‥閃光手榴弾、いくよ‥‥っ!」
 イスルは能力者達に合図を出し、能力者、そして使用するイスルも巻き込まれないように対策を取りながら『閃光手榴弾』を使用した。
 閃光手榴弾の影響をまともに受けた蛇女キメラは目を押さえながらごろごろと教会の中を転がりまわる。
「此処がチャンスだね!」
 エクセレントは『瞬天速』を使用して蛇女キメラに一気に詰め寄って『ロエティシア』で攻撃を仕掛けようとしたのだが‥‥蛇女キメラの髪がエクセレントの腕を掠め、その攻撃で一瞬の隙が出来たエクセレントは巻きつかれてしまう。
「チッ、やりやがる」
 まるで人質のように自分の前にエクセレントに巻きついた尾をちらつかせてくる。
「‥‥髪の攻撃なんて‥‥被害者達にも‥‥攻撃された跡、なかったのに‥‥」
 イスルがやや驚きながら小さな声で呟く、しかしすぐに能力者達を攻撃してこない所を見るとイスルの『閃光手榴弾』の影響がまだ続いているのだろう。
「被害者は全て住人‥‥大した抵抗された事がなかったから『使う必要がなかった』んだ」
 蒼河が拳を強く握り締め、苦しそうな表情で呟く。
「さて‥‥これから‥‥どうやって‥‥動けば‥‥」
 九頭龍が『蛇剋』を構えたままため息混じりに呟く。
「このまま攻撃を続けるんだよ! 関節技を喰らってると思えばこんなもん!」
 エクセレントの言葉が響き、能力者達は攻撃を開始する。
「こいつらは、それぞれに知能があるワケじゃない、1つの頭脳で身体を動かしてるはずだ、だから単調なものしか攻撃がない」
 エクセレントが自らが闘う中で気づいた事を能力者達に知らせる。不幸中の幸いか、エクセレントに巻きついている尾はあれ以上の動きを見せる事はない。
 だから他の能力者達は上半身に狙いを絞って攻撃する事が出来るのだ。
「ほら、こっちだ蛇女!」
 蓮角は『豪破斬撃』を使用しながら上半身の腕を狙って攻撃を行う。
「‥‥狙い撃つ‥‥っ!」
 イスルは『急所突き』を使用しながら片方の上半身の急所であろう頭に攻撃を仕掛ける。蓮角の攻撃に気を取られていたのか、イスルの攻撃は直撃して、片方の上半身はけたたましい声と共にだらりと機能しなくなった。
「仲間を傷つけるのは、許さない‥‥!」
 蒼河は苦しむエクセレントの表情を見て低く呟き『鋭覚狙撃』『ニ連射』で攻撃を行った後に『影撃ち』で攻撃を仕掛ける。
 本当は頭を狙った彼だったが、両手で防がれ、両手の機能を奪うだけに終わった。
「視界も戻ってきたんだね」
 蒼河は予め用意してきた『ペイント弾』を上半身の目を目掛けて撃ち込み、再び視界を奪う。
「ちっ‥‥手こずらせますね‥‥」
 ハインは忌々しげに呟き『強弾撃』を使用しながら攻撃を仕掛ける。その攻撃に合わせて蓮角が「くらえっ!」と叫び、蛇女キメラを斬る。
「さてと、腕に自信はないけど、うまく当たりますよーにっと」
 エルは『サイクロン21』で攻撃を行いながら呟く。しかし攻撃は外れてしまう。
「あれ? やっぱり上手くいかねーもんだなー」
 エルは苦笑しながら呟き、九頭龍が『円閃』で攻撃を行う、くるりと体を回転させながら攻撃する動作は何処か美しくも見えた。
 そしてメインである『スマッシュ』で攻撃を行い「お前はこの刃の檻から逃げられない!」とトリシアが叫びながら攻撃を行う。
 その後、攻撃を受けるにつれて尾の力が緩み、締め付けから脱出したエクセレントの攻撃と蓮角の『紅蓮衝撃』によって蛇女キメラは完全に絶命したのだった。


〜蛇女キメラ退治し終わり、そして〜

「‥‥凄い返り血」
 自分の姿に苦笑しながら蒼河が小さく呟く。そして顔についた返り血を拭う事なく、埃を被っているけれどまだ光り輝く事は失っていないステンドグラスを見上げる。
「懺悔はしないよ。だって、振り返ってる暇はないからね」
 蒼河は絶命している蛇女キメラに向けて言葉を投げ、目を伏せる。
「大丈夫ですか? 何とも不気味な相手でしたね」
 蓮角がエクセレントに話しかけると「あたしは大丈夫さ、関節技なんて喰らいなれてるからね」と自身がプロレスラーとして活動していた頃を思い出しながら言葉を返す。
「それよりも今回は無事に倒せてよかったね」
 エクセレントがイスルに話しかけると、イスルは俯きながら顔を真っ赤にして首を縦に振った。
「この教会もキメラさえ現れなければまだ綺麗なままだったのでしょうか、それともこんな時代だから神に祈る事を人はやめたのでしょうかね」
 ハインは寂れた教会内を見ながら小さく呟く。その隣では『サイクロン21』を見ながら唸るエルの姿があった。
「やっぱ銃って難しいや、もう少し練習しとかないとなぁ」
 エルは武器を見つめながら呟く。
「何とか‥‥無事に終わった‥‥。あの人の所へ無事に帰れそう」
 トリシアは小さく呟き、何かドスンと重いものが落ちる音のようなものが教会内に響き渡る。
 新手のキメラ? と思った能力者達だったが音の方を見て脱力した。何故なら九頭龍が蛇の尾部分を切り取っていたからだ。
「何をしてるんだ?」
 トリシアが問いかけると「持ち帰るのじゃ」と短い言葉が帰ってきた。
「人数分‥‥切り取っておいたから‥‥皆、持ち帰るといい‥‥」
 九頭龍が指差す方には確かに人数分に切り取られた蛇の尾。能力者達は全力で首を横に振り「いらない」と言葉を返す。
「蛇は滋養にいいのじゃぞ?」
 首を傾げながら言葉を返すが、結局彼女のみが蛇を持ち帰る事となった。それも人数分。
 その後、任務終了の報告を行うために能力者達は本部へと帰還していったのだった‥‥。


END